観劇の感想

「アンナ・カレーニナ」繊細で美しい完璧なキャストたち

こんばんは、ヴィスタリアです。

「アンナ・カレーニナ」の作品雑感に続いてキャストごとの感想です。

例によってヴィスタリアの独断と偏見、偏愛に満ちています。
今回やや愛が暴走気味です。

アレクセイ・ヴィロンスキー/美弥るりか 愛と破滅に突き進む激しさと色香

るりかちゃんのヴィロンスキーをなんと言えばいいのか、なんかもう……たまらなかったです。

るりかちゃんの見たみたい役はいろいろありますけれど、「こんな役こそ見たかった」という役の極致がアレクセイ・ヴィロンスキーかもしれません。

ヴィロンスキーは宝塚の主役で2枚目の貴族のエリート青年将校ですが、白い役とは言いきれないと思うのです。

ヴィロンスキーはキティという名門貴族の令嬢に言いよったりダンスを申し込んでいながらも結婚するつもりは毛頭なく、人妻のアンナを略奪し、軍隊での出世も責務も捨てて愛に溺れます。

ヴィロンスキーもアンナも2人が生きている貴族社会の人々のルール、常識、「人生とはこういうものだ」という平穏さから逸脱して激しい愛を追求します。

そうした社会に縛られていては掴めないきらめくようなの愛へと突き進むわけですが、行き着く先は社会からの抹殺、破滅です。

そんな 愛の果ての破滅に突き進むことを制御できない美青年の激しさがるりかちゃんからほとばしっていました。

これは宝塚にふさわしい表現ではないのかもしれませんけれど、ヴィスタリアが感じたこととして正直に書きます。
不快に感じられたら申し訳ありません。

アンナとの恋が始まる前、駅で偶然出会ったときからもう、 ヴィロンスキーのるりかちゃんはアンナをぎらついた目で見ているんですよ。

ヴィロンスキーはアンナのことを諦観をたたえた冷え冷えとしたものを感じさせる目で見つめながら、しかし熱っぽくて情熱的というよりは野性的な欲望さえ孕んでいいることを隠していないと感じました。

るりかちゃんの危うい色気、色香がすごかったです。
こんな表情の男役さんを見ちゃっていいのかしら…と心配になるくらい。

るりかちゃんは愛にまじる渇望や欲望を”清く正しく美しく”から外れてしまう寸手のところで品の男役として表現していたと思います。

別邸のシーンは宝塚の美しい、大変濃厚かつ濃密なラブシーンで、見てはいけないものを指の間からこっそり、でもしっかり見るような感じでドキドキしました。

こういうのを耽美といえばいいのでしょうか。
よいものを見させていただきました。ありがとうございます。

ヴィロンスキーは熱烈にアンナを求め、跪いてダンスを請い、モスクワを離れるアンナを追いかけて列車に飛び乗り、夫を紹介されれば拗ねているのではないか?というくらい素直に動揺しかき乱された心を隠そうともしません。

るりかちゃんの表情、目や指の動きがヴィロンスキーのそんな激しい心を繊細に表現していると思いました。

特にアンナがヴィロンスキーとの間にできたアニーを産んで産褥熱で生死を彷徨ったときのヴィロンスキーの取り乱しよう、滲む涙には見ていて心が痛くなりました。

また終幕のアンナの日記を抱きしめて天を仰ぐ表情…忘れません。

るりかちゃんの繊細で情熱的な演技はすばらしく歌にも心を打たれましたが、今回 特筆すべきはダンスシーン、それも優美かつ優雅なダンスをたっぷり見せてくれたことではないでしょうか。

競馬の軽やかに踊るシーン、うみちゃん(海乃美月)のアンナとのデュエット、あらためてるりかちゃんのダンスの優雅さと美しさに気づきました。

また センターで、真ん中で踊ることのきらめきがこんなにも似合ってしっくりくるのだと示していたように思います。

ヴィロンスキーはアンナとカレーニンとの三角関係が軸ですが、アンナを失ってからの旧友セルプホフスコイ/英かおととの対比が泣けます。

コスチャ/夢奈瑠音とキティ/きよら羽龍との若くて初々しいカップルとの対比より、ライバルで同じくエリートだったセルプホフスコイとの対比があることでヴィロンスキーの愛と破滅の運命が際立つと思いました。

ところで今回ポスターもですが舞台でも白い軍服に手袋、イタリアのシーン、旅立ちのコートなど美しい衣裳が多くてうれしかったです。

アンナ・カレーニナ/海乃美月 繊細で華やかな美の極致

うみちゃんは「THE LAST PARTY」のゼルダ、「エリザベート」のヴィンディッシュ嬢、そしてこのアンナ・カレーニナ役と精神の均衡を失う美女役続いていますね。

そして今回のアンナも大変な美しさでした。

「THE LAST PARTY」を観劇はできなかったのですが、うみちゃんのゼルダが写真でさえはっとするような美しさがあり、うみちゃんは何か特別な高みへのステップを上がっていってるように感じていました。

今回のタイトルロールはそれ以上、華やかな貴婦人の美貌も加わり、さらなる高みへと昇っていっていると思いました。

深紅や漆黒のドレスと上品なデザインの宝石、黒いレースの手袋、黒の長手袋、すべてが完璧な美でした。

うみちゃんのアンナは品があって貞淑な妻であり母であり、しかし一方で一目でヴィロンスキーを惹きつけキティから憧憬のまなざしを向けられる美貌と華やかさ、人々の心をつかむ魅力(兄スティーヴァの子どもたちからモテモテだったり、ドリィに親身になった)があって、このバランスが絶妙かつ最高だと思いました。

競馬の場面ではヴィロンスキーを見つめて愛がきらめきときめくのを隠そうともしない高揚が伝わってきました。
そこから一転して動揺するのもアンナの繊細さが表現されていると思いました。

観劇の翌日にスカイステージのNOW ON STAGEをたまたま見たのですが「アンナは貞淑な妻であろうとするときはデコルテの詰まった衣裳で、ヴィロンスキーが来る舞踏会などでは肩まで出した衣裳を着ている」というような指摘が大変印象的でした。

うみちゃんはるりかちゃんと並んでも美しく、れいこちゃんと並んでも美してバランスがよく、そしてこの3人の組合せは最高の相性の良さだと思いました。

カレーニン/月城かなと 嫉妬を超えて見せた広い心

れいこちゃん(月城かなと)は耐える男で最初は淡々とアンナを諭していましたが、競馬の場面の歌、アンナを見つめるところで静かな嫉妬の炎が燃えているのがとてもよかったです。

アンナはヴィロンスキーと出会って自分のなかに激しい愛、女でも母でもない“裸足のアンナ”がいることに気づきますが、カレーニンは嫉妬という感情に気づくのですよね。

れいこちゃんは演技はもちろんのこと歌も上手くて聞き応えがありました。

「エリザベート」のルキーニの熱演も心にのこっていますが、端正な美貌の二枚目なのでフロックコートのシンプルな衣裳がよくお似合いでした。
フィナーレの燕尾服も美しかったです。

そしてカレーニンがどういう気持ちでアンナと離婚しないという決断をしたのか、どういうことを考えてどれほどアンナを思っているのかを示した場面、いい男でした。

嫉妬を超えて男として広い度量を示すカレーニンはヴィロンスキーが進路を決めた後の振舞いも立派で、静的な役をれいこちゃんが丁寧に演じていると思いました。

コスチャ/夢奈瑠音

貴族ですけれど純真、純朴な青年を的確に演じていました。
キティの部屋の前まで行くのにもう一歩が踏み込めない優しすぎるセリフがよかったです。

お顔が小さくて手足が長くてスタイルに惚れ惚れしました。

キティ/きよら羽龍

研1で大抜擢されたきよら羽龍ちゃん。
本当に研1?と思うほどの舞台でした。

かわいくて歌もダンスも上手でした。
これからいくつもの舞台を経験されてどのように成長されていくのか楽しみです。

1幕よりも2幕のヘアスタイル、ドレスが似合っていると思いました。

オブロンスキー/光月るう

るうさん、色男スティーヴァが美しいお姿にぴったりでした。

遊んでいるけれども妻ドリィのことは大切で、ここぞというところは外さない。
火遊びはほどほどに、これからもドリィと子どもたちと仲良く暮らしていってほしいです。

2幕のコスチャとキティのシーンではコミカルで笑い、ほっとしました。

ベッツィ/美穂圭子

社交界を取り仕切るベッツィにぴったりでした。
歌もさすがです。

美穂さんは専科として多くの公演に出演されていますが、この役が一番好きかもしれません。

ヴィロンスキー伯爵夫人/五峰亜季

五峰さんは老婦人という年齢ではないと思いますが(フェアリーには年齢はありませんけれど)、肉布団・歩き方などで年齢を上げる工夫をされていました。

歩き方は片脚をひきずるようにしていました。

オペラハウスのシーンでアンナに詰め寄るところは凄みがあり怖かったです(褒めています)。
アンナが突然倒れるのも納得の迫力でした。

蘭世惠翔くんが目立っていた

蘭世惠翔くんは子役のセリョージャを演じていましたが、他にも色々な役で登場していました。

幕開きで1人執事役をしていたり、2幕のイタリアの場面では仮面をつけてはいるものの1人ピエロ役で踊っていました。

またフィナーレの黒燕尾の総踊りでは1人踊りから抜けて歌うところもありました。
この歌も上手でした。

華やかなお顔立ちで歌の実力もあり、今後どのように活躍されていくのか注目したいと思います。

一日経っても夢のようで、何度でも見たい舞台、作品で最高のキャストでした。

なんといってもヴィロンスキー/美弥るりか、アンナ/海乃美月、カレーニン/月城かなとの主要キャスト3人がそれぞれすばらしい上に相性がよく、完璧なトリデンテでした。

この3人の公演をもっと観たい、できればもっと大きな劇場で。
そんなことを願わずにいられない公演でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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