こんばんは、ヴィスタリアです。
雪組「炎のボレロ」のライブ配信を見てのキャストごとの感想です。
いつものヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。
アルベルト・カザルス/彩風咲奈
咲ちゃんがとってもかっこよくて、かつ真ん中の存在感があって堂々たる主演だと思いました。
最後のシーンで「我々の星」「新しい星」と希望をこめて呼びかけられる言葉が何の違和感もないのはスターの証でしょう。
アルベルトのまっすぐで情熱を燃やすような生き様、「俺はいつも一生懸命生きていく」という歌詞がしっくりとはまっていました。
作品の感想でも書きましたがヴィスタリアは咲ちゃんがちょっと冷たくてひどい男を演じているのが好きなので、
こういう熱い役が似合うというのは新たな魅力の発見でした。
またさきちゃんの長い手脚に小さなお顔、バランスの良さは令和どころか人類の進化形ですけれど、
舞台化粧や衣装の雰囲気は昭和レトロといいますかどこか懐かしい、古き良き宝塚が似合うという新たな発見がありました。
登場シーンの襟の高い白いシャツに白いブーツから始まって祭りのビジューがついた黒い衣装、酒場の裾の長い袖なしの上着(なんて言えばいいんでしょう)にブーツ、
数々の衣装が咲ちゃんの超絶スタイルにとてもよく映えていました。
特にポスターにもなっている凝った刺繍の軍服風の衣装がかっこよかったです。
プログラムを見ると衣装スタッフは薄井香菜さん。初めて見かけるお名前だと思います。
プログラムに載っている初演の舞台写真を見るといずれの衣装も初演の雰囲気をかなり残しながらいまの時代とキャストに合うようにしているのがよくわかります。
NOW ON STAGEで「まっすぐな役はまっすぐだからこそ難しい」とお話されていましたが、芝居が丁寧かつ自然になって役を生きていると感じる瞬間が何度もありました。
それは「ああ、うん」と答える一言であったり、自身の復讐からメキシコの革命に身を投じることを決意した変化を語る熱い言葉であったり、
カテリーナへの恋情の示し方であったり。
また美しいメロディーの歌に数々のナンバーで踊る姿もたくさん見ることができました。
突撃レポートで咲ちゃんが永遠の贔屓ヤンさん(安寿ミラ)の振付についてお話していました。
(プロローグは)自分も曲が変わるごとにわくわくしますし、ヤン先生の素敵な振付で、この言い方変かもしれないんですが、宝塚っていいなあって思います。
画面の前で感じていたことを舞台の咲ちゃんも感じていて、こうして言葉で聞けてうれしいです。
(そして「ヤン先生」という珍しい呼び方も。たいていヤンさんかANJU先生と呼ばれていると思うのですが。)
今回ヤンさんの振付で踊る咲ちゃんを見て思ったのは手脚が長くて体の使い方が柔らかくて、どこか余韻のあるダンスを踊るということです。
公園のシーンで共和派の仲間たちと踊る振付で何度か開脚して飛ぶのですが、それがすごく柔かいのに滞空時間が長かったり、
脚を上げて下げるまでの時間が一拍どころか二拍くらいあるのではというくらい、余韻を感じました。
カテリーナ・ドロレス/潤花
まっすぐで熱いアルベルトに相対するカテリーナもまっすぐで、貴族の令嬢でありながら自分の心を迸らせて生きている自由闊達な女性です。
咲ちゃんもですがじゅんはなちゃんも役が合っていて、
明るい笑顔やアルベルトに向ける純度の高い感情がそのままあふれた言葉に役を生きていると感じました。
一方で伯爵令嬢としての育ちのよさや思いやりがところどころからうかがえるのが柴田先生のセリフで
(婚約者ローランについて)「合わないのかなあ」
(フラスキータに)「彼も都合悪いみたい」
というネガティブなことを直接言葉にしない、やんわりした一言がとても効いていました。
じゅんはなちゃんは夜会のきらびやかなドレスから町娘風の可憐な衣装までよくお似合いで、天性の華があります。
ダンスも見事で長い手足で生き生きと踊る姿が鮮やかでした。
芝居の登場シーンの赤いリボンを編み込んだロングヘアに素朴な衣装、またアルベルトとデュエットダンスを踊る花を散らしたドレスがかわいくて特に印象的でした。
また舞台化粧が「ハリウッド・ゴシップ」のときよりずっと綺麗になったことにはっとしました。
嫌々顔を出した夜会で気鬱を装うために唐突に「フィガロの結婚」を歌うところで、初演(南風まいさん)とまったく違う作り方をしていて、
これが仮病であることがよく表現されていて「こういう見せ方もあるんだ」と膝を打ちました。
「フィガロの結婚」は伯爵が初夜権を復活させフィガロと婚約中の小間使いスザンナを狙う話ですから、
婚約者の父ブラッスール公爵がどのような目で自分を見ているのかをわかった上での一矢でもあったでしょう。
これもカテリーナのネガティブなことは直接口にしない彼女らしさの表れだと思います。
ジェラール・クレマン/朝美絢
前作「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」が女役でしたから久しぶりに男役のあーさに会えました。
かっこよかった…とてもとてもかっこよかったです。
軍服、ときに軍服に白手袋をすっと着こなす姿に品があり、あーさの美貌が際立ってかっこよかったです。
そして恋人モニカ/彩みちるのあしらい方、手練手管がすごくて思わず悲鳴をあげてしまいそうでした。
顎に手を添えてひきつけるようにキスしたり、お尻をポンと叩いて引っ込ませたり。
泣いて喚いてすがるのを口づけで黙らせたり。
顎クイのところは(見間違えでなければ)ちょっとやり直していましたけれど、それもまたモニカに「え、なに?」と思わせて気を引くのをナチュラルにやっているように見えてよかったです。
ジェラールのかっこよさの極めつけが最後のシーンです。
フランス人でありながら本国に帰らずメキシコに残ることを選んで、どこか晴れやかさを湛えて言うのがこのセリフです。
「後どれだけ生きられるか。だが生きている間は好きな女と一緒にいたい」
はぁ……柴田先生の書く男役のかっこいいセリフのベスト10に入るのではないでしょうか。私は入れます。
そしてジェラールが花道を去っていきながら後ろをついてくるモニカに手を伸ばすことはないけれど、
立ち止まって振り返り「しょうがないな」という表情で見るのもたまりませんでした。
この自分からは手をさしのべないのがジェラールで、モニカとのデュエットでも「抱きしめてやりたい」と歌いながら
背中から抱きしめようと伸ばした手をすっと引いて離れるんです。
モニカを愛してはいるけれど思うままには愛を示さない、示せないジェラールがアルベルトのまっすぐな愛し方と対照的でした。
アルベルトとカテリーナが歌うメロディをジェラールはどこか虚しさ、もの悲しさを漂よわせて歌う歌唱もよくて心に残りました。
モニカ/彩みちる
中村A先生はプログラムで「すれっからし」と評していますが、みちるちゃんのモニカは酒場で働いている女性の飾らなさと品の両方がありました。
泣いて泣いて、愛するジェラールにとりすがるシーンが多いのですが、好きで好きでたまらないのがあふれていました。
セリフは少なめなのですがみちるちゃんの芝居心が発揮されていて
ぽつんとつぶやくような「痛いわ」
「どんなに嫌われてもついていく」
「いいもん!」
というセリフの一つひとつがいじらしかったです。
「今夜は休まないと倒れるよー!」と呼びかけるセリフにジェラールより年上なのかな?と思いましたし、その方がこのカップルは味わい深いように思います。
「凱旋門」につづいてあーさとみちるちゃんのカップルを見ましたが、相性のよさを感じました。
真那春人・久城あす・叶ゆうり・奏乃はると 芝居を締める上級生たち
初演では麻月鞠緒さん、萬あきらさん、夏美ようさんという錚々たる芝居巧者が演じていた役々を
雪組の上級生たちが存分に演じていて見ごたえがありました。
宮廷のシーンなど人物の思惑が交錯していてヒリつくような緊張感がありました。
こういう芝居、芸がたしかで滑舌や口跡の鮮やかな上級生がいてほしいですし、活躍できる作品に出会うとうれしくなります。
◆タイロン/真那春人
一番底が知れない人物です。
出番は多くはないのですがその度に強い印象を残し、しかし残しすぎないバランスが絶妙でした。
目と表情で語るものの豊かさがライブ配信だからこそよく見えたのもよかったです。
◆ブラッスール公爵/久城あす
NOW ON STAGEで「悪役は楽しい」とお話されていましたが、心の底から悪役を楽しんでいるのが伝わってきます。
クセのある歩き方、ネチネチとした喋り方に節回し。
いずれもやりすぎならない一歩手前で抑えていると思いました。
権力は持っているものの器の小さな利己的な人物であることもよく表現されていて、
あすくんが喋っているのを聞いているとだんだん憎たらしくなってくるほどでした。
そして死ぬのも上手ですね。
◆ローラン/叶ゆうり
悪役の息子は貴公子でした。
この作品で一番心優しき人格者がもっとも辛い目に遭うなんて…。
父親がどういうことをしているのか、カテリーナをどういう目で見ているのか、
そしてカテリーナが自分をどう思っているのかも正確に理解しており、
自分に許されている範囲内で最大限のことをしている人の良さが伝わってきました。
言葉数が少ない分、直接言葉にはしない心情のにじませ方や表情の表現が印象的でした。
金髪に貴公子の衣装が美しかったです。
ドロレス伯爵/奏乃はると
立ち居方、歩き方、肩の落とし方、そういった身体からして役になりきっていると思いました。
子どもたちを愛し、そしてわりとおおらかに育てている伯爵です。
ブラッスール公爵に「私の前では立て」と言われた後の抱えこんできたものの発露のさせ方が巧くて好きでした。
その他の役たち
◆フラミンゴ/縣千
あがたくんがマリコさん(麻路さき)の役を演じていることが感慨深いです。
初観劇がマリコさんの星組だったこともありマリコさんは好きなトップスターさんでした。
男役としての器の大きさ、それもちょこっとずば抜けたものが通ずるものがあるのでは…と思いました。
酒場で踊りまくるのにはダンスもいいしオーラもあって、ちょっと伸ばし気味にしたラフなヘアスタイルと片耳の大きめのイヤリングがとても似合っていてかっこよかったです。
◆テオドール/ゆめ真音
カテリーナの弟ですが、とてもいい味を出していて画面の前で拍手を送りたくなりました。
芝居も歌も上手で光るものがあります。
芝居の間がよくてとても自然なんです。
細かいことですが「おねえさん」というカテリーナへの呼びかけのセリフが自然に馴染んで聞こえるのに舌を巻きました。
「姉さん」「お姉さま」ならよくありますけれど「お姉さん」と自分の姉に言う、ただ一文字の違いですがその言葉を選ぶテオドールに、
伯爵家の御曹司でありながら自由に育っているであろうことと貴族の品が詰まっているからです。
これからのさらなる成長に大いに期待しています。
◆フラスキータ/音彩唯
お顔が小さくてほっそりとした手脚が長くて目立ちます。
少女の役なのですがアルベルトに何の衒いもなく「好き!」と言ってみせ、得意そうにぴたっと寄り添う姿に
「こういうおませさん、いるなあ」と微笑ましくなりました。
ナンバーの多い作品なので踊るべき人が踊り歌うべき人が歌い、雪組生の活躍がまぶしかったです。
またかわいい娘役さんが多くて目が幸せでした。
ショー「Music Revolution!-New Sprit-」の感想も書きたいと思っているのですが体感5秒だったのでちゃんと書けるかなあと思っているところです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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