おはようございます。ヴィスタリアです。
星組「鎌足」の作品の感想に続いてキャストごとの、いつものヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。
どの役もはまっていてこれぞ当て書きの妙と言いたくなるキャスティングであり熱演だったと思います。
目次
中臣鎌足/紅ゆずる 弱さをさらけ出す強さ
子ども時代から晩年を演じたことで、べにーさん(紅ゆずる)の繊細な演技を存分に見せてくれたと思いました。
少年時代の無邪気さ。進むべき道を決めあぐねている不安定さ。
幼馴染入鹿との決別。
中大兄皇子という大義を見つけてからの大化の改新の断行、そして苦悩。
改革を進める才気あふれる鎌足のかっこよさはもちろんのこと、その反面負うことになった苦しみを抱える弱さ、揺らぎが響きました。
また与志古を失うシーンの歌詠み、再び得る場面での自らの弱さをさらけだす様には涙しました。
もっと泣いたのは2幕後半の、幼いころから渇望していた中臣以外の名を得たあとの慟哭です。
トップスターは白い王子様的な役だったり正義、あるいは強者の役が多いように思いますが、べにーさんのトップスター時代のなかでこの鎌足が一番好きな役かもしれません。
強さを見せることより弱さを見せることの方が難しいのではないでしょうか。
シリアスな話なのでギャグはほとんどないことにも安心したと同時に、与志古/綺咲愛里との食卓のシーンのいちゃいちゃっぷりにはふだんのべにあーをつい重ねたくなりほのぼのしました。
車持与志古郎女(くるまもちのよしこのいらつめ)/綺咲愛里
中臣鎌足/紅ゆずる同様子ども時代から晩年までをあーちゃん(綺咲愛里)が通しで演じているのですが、子ども時代がとにかくかわいかったです。
その後の娘時代、鎌足の妻としての幸せなときも少しずつ衣裳や髪形を変化させているのですがかわいくてかわいくて。
「ANOTHER WORLD」でも思いましたがあーちゃんは日本物でもほんとうにかわいいです。
中大兄皇子/瀬央ゆりあの参謀鎌足が本当は弱く繊細で、自分という支えが必要であると自負しているのも、べにあーの関係を重ねたくなりました。
もっとも印象的だったのは皇極帝/有沙瞳と中大兄皇子/瀬央ゆりあに妻の“交換”という非情な話があった場面の気丈さからの変化です。
狼狽する鎌足と同じくらい与志古も辛いはずなのに鎌足を叱咤してみせていたのが、鎌足が安見児/星蘭ひとみを娶るように言われた途端、表情が一変して動揺を隠しきれなくなったのです。
あの強張った与志古の表情、抑えきれない嫉妬と動揺は見事でした。
蘇我入鹿/華形ひかる 正気は帝に捧げた
今回、主な配役にみつるさん(華形ひかる)のお名前がなかったのがふしぎなくらい、大きな役でしたし、みつるさんの演技はすばらしかったです。
子ども時代の高貴さ、器の大きさから皇極帝との出逢い、その後の変化。
そしてメイクから衣裳の着こなしから佇まいから、なにもかもが美しくてかっこよかったです。
男役の美と色気とはどういうものなのかを見せていただいたように思います。
「ANOTHER WORLD」の貧乏神のかわいさも好きでしたが、こういうかっこいい、2枚目的な要素のある役のみつるさんをぜひまた見たいです。
「正気は帝に捧げた!」と叫ぶシーンでは思わず「ああ、捧げられたい」と思ってしまいました。
存在の大きさといい、トップスターのべにーさんと対峙したときの迫力といい、専科スターさんの必要性を感じました。
皇極帝/有沙瞳 傀儡から女へ、そして母・女帝へ
ヴィスタリアはくらっち(有沙瞳)が大好きで、今回「鎌足」をどうしても見たいと思った大きな理由が
「くらっちとみつるさんのラブシーンがすごい」という感想を見かけたからでした。
そして見たら実際にすごかったです!!
まず皇極帝の登場のシーン、寝所で琴を爪弾くときの人形のような感情のない表情や話し方が入鹿と話しているうちに人間、そして女になっていくのは秀逸でした。
そうした上での入鹿との寝所のシーンは、美しさ、艶、薄絹の使い方、これぞ宝塚のラブシーンでドキドキしました。
皇極帝と入鹿の道ならぬ恋ーー魂と魂が惹かれ合う過程がていねいに描かれていたからこそ感情移入できましたし、
僧旻/一樹千尋の「道は落ちてしまうもの」というセリフが沁みました。
「そうだよね、落ちてしまうよね。大切なものができたら守りに入ってしまうよね」と入鹿の心中を思いながら客席で聞いていました。
くらっちは日本物のお化粧も美麗で豪奢な衣裳や黄金色の大きな頭飾りがとてもよく似合っていました。
特に赤紫系の上着が華やかで、満開の艶やかな花が咲いたようでしたし、女帝としての高貴さもありました。
入鹿が倒れたところでこの上着をすっと広げて目を閉じるくらっちの横顔のなんと美しいこと。
感情を抑えた、冷たささえもなく目を閉じていたのが一層悲しかったですし、その後浮かべた微笑みには涙を誘われました。
(これを見た入鹿が「それでいい」と納得していくのが辛かったです。)
2幕では入鹿を失った皇極帝は女ではなく、母としての強さと為政者としての迫力、冷たさはまるで別人のような変貌ぶりでした。
くらっちの芝居の確かさを実感しましたし、くらっちの声が娘役さんらしい高い声でありながら艶があって聞きやすくて好きなのですが、この声がこれほど冷たく響とは。
采女安見児(やすみこ)/星蘭ひとみを鎌足に与えると告げたときの与志古/綺咲愛里の動揺を隠せない表情をとらえた皇極帝の射るような眼差しの力と冷たさはぞっとするほどでした。
「ドン・ジュアン」のエルヴィラに続いてくらっちの代表作を見たように思いました。
中大兄皇子/瀬央ゆりあ 本当は弱かったのかもしれない
若いときの頼りなさが天智天皇として冷たくなる変化が見事でした。
せおっち(瀬央ゆりあ)のこの冷たさが整ったお顔に非常によく合うんです。
こういう冷淡さのある役、陰のある役をもっと見てみたいと思いました。
晩年の鎌足との再会には涙を誘われました。
船史恵尺(ふなひとのえさか)/天寿光希 歴史を書き編むことの“傲慢さ”
ストーリーテラーの1人で、不気味さ胡散臭さ、高慢さと傲慢さの漂わせ方が一級でした。
この役がみっきぃさん(天寿光希)がでなかったから、この作品の「歴史は、作られる」というテーマがこれほど活き活きとしたものになったでしょうか。
腰を片方クイッとした感じの立ち方(うまく説明できなくてすみません)がキャラクターに合っていました。
安見児(やすみこ)/星蘭ひとみ 人の心を知らぬ采女
せーらちゃん(星蘭ひとみ)、とてもよかったです。
「霧深きエルベのほとり」の令嬢役であまりにも整い過ぎたお顔と雰囲気から、親の言い付けに疑問なく従うお人形のような感じがありました。
今回も人の心がわからない、神にすべてを捧げた采女が人の心に触れ感情が芽生えるところを短いなかで見せていると思いました。
そのほか石川麻呂/美稀千種の小物っぷり、笑いの取り方、
僧旻/一樹千尋の慈愛のある歌とストーリーテラーもこの舞台に欠かせないものでした。
1回しか観劇できずライブビューイングに行けなかったのが残念でなりません。
こういう作品もよくキャストの当て書きがハマった作品にまた出会えることに楽しみにしたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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