おはようございます。ヴィスタリアです。
スカイステージで放映された「霧深きエルベのほとり」新人公演を見ました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想ですが、劇場ではなく映像として切り取られている分さらに偏ったものになっていると思います。
こういう感じ方をした一個人がいるくらいに思ってください。
名作「霧深きエルベのほとり」の余白をどう表現するか
「霧深きエルベのほとり」は劇場で何度か観劇したのですが、観劇するたびにいろいろなことを考えさせる名作でした。
人物たちのこれまでの生き方や人間性を想像させてくれる余白、懐の深さがありました。
この人物はどんな信条で生きているのか。
あの人物はこの後どうなるのか。幸せになれるのか。
多くを語らないこの人物の胸の内は…。
逆に演者は想像させる余地を持って演じなくてはこの作品、役の魅力は半減してしまう部分がああるので難しい作品であり、勉強になる作品なのではないでしょうか。
星組の新人公演は「もう少し余白、人物の背景が見えたらいいな」と思うところが全く無いとはいいませんが、難しい作品に真っ向から取り組んでこの名作の素晴らしさを感じさせてくれました。
劇場で見たらきっと泣いていたと思います。
プロローグの大階段を使ってのビア祭りは華やかでテンションが上がります。
ぴーすけ(天華えま)は歌もダンスも安定感があり、長い手足のダンスが美しかったです。
カノンくん(天飛華音)は第一声のブラボー!が勢いがあって元気いっぱいでした。
そしてしんくん(極美慎)の華やかさ、小さなお顔と抜群のスタイルは眩しいくらいです。
あいちゃん(小桜ほのか)の髪型が凝っていて可愛かったです。
まめちゃん(桜庭舞)も三つ編みがかわいくて、歌もいいです。
ゆりちゃん(水乃ゆり)はダンスが軽やかで妖精のようで、背中に羽が生えているのではと思うほどでした。
キャストごとの感想
劇場ではなく映像での感想なのでいつも以上に偏ったものかもしれません。
()内は本役です。
◆カール・シュナイダー/極美慎(紅ゆずる)
しんくんはプロローグもお芝居も真ん中の華やかさとオーラがあります。
綺麗な男役さんですから粗野な水夫の役をどう演じるんだろうと思っていたのですが、皮の上着で大汗をかきながらの熱演でした。
肩を揺するような歩き方や乱暴な口調も大袈裟すぎなくて、カールの持っている純粋さがまっすぐ伝わってきました。
これまで女を振ったことがないという優しさも滲んでいましたし、純粋すぎて「手切金を返さず下衆に思われたらあまりに浮かばれない」という涙を拭きながらのセリフに本当にかわいそうになってきました。
特に印象的なのが出会ったばかりのマルギット/水乃ゆりに港で忘れられない女について訊かれ「こんな人だ」と答えるところです。
しんくんのカールの惚れたら真剣で一途なのがよく表れていると思いました。
後半のかつての恋人アンゼリカ/星蘭ひとみとのシーンで謝る彼女を見送って「気にすんな。幸せになれ」と告げるところもめちゃくちゃかっこよくて、振られてばかりなのがよくわかりました。
特にラストの名曲のソロが沁みました。
◆マルギット・シュラック/水乃ゆり(綺咲愛里)
縦に巻いたブロンドが綺麗で、本役のあーちゃんの宇んと細いコテで巻いたような髪形とはまた違って似合うものをよく研究しているんだと思いました。
またスタイルのよさもありドレスの着こなしが美しくて、家出をしたときの白いワンピース、シュラック家での白いドレス、カールを探しに行くときの装い、どれも素敵でした。
ゆりちゃんは先日視聴した「龍の宮物語」でも令嬢の役を好演していましたが、かわいくて自然体の演技が素直に伝わってくるのがいいなあと思います。
「お払いをさせて」やカールのお披露目パーティーで「カール」と呼びつけるところなどのフックはもう少し強調した方が後半の「私自身をも信じない」というセリフが活きる気もしましたが、
自然体のマルギットには不要のことかもしれません。
◆フロリアン・ザイデル/天華えま(礼真琴)
ぴーすけはダンスも歌も抜群の安定感で、「わくらばの恋」の歌もよかったです。
本役のことちゃん(礼真琴)は嫌味なほどの分別臭」草さの滲ませ方が巧すぎると舌を巻きましたが、ぴーすけはぴーすけのフロリアンを作り上げていました。
基本的に優しい人物で悪者には絶対になれないというのがその印象です。
フロリアンがシュザンヌに「あるいは君を愛するかもしれない」と言う時、ことちゃんはまったくそう思っていなくて言外に諦めるよう伝えていると感じるのですが、
ぴーすけは優しくて「もしかして」と思わせるものがあると感じました。
その方がシュザンヌにとっては残酷かもしれませんし、優しい聖人ぶっているからこそフロリアンの嫉妬が伝わってくるのかもしれないとぴーすけは感じさせてくれました。
優しいと見せかけてシュザンヌに「わかればいい。君が幸せなら僕も嬉しい」という笑顔の裏に隠されものはなんなのか。
カールの目の前で「マルギット、君とは兄妹のように育った」と言うとき優しく諭しているように見せかけてマウントをとっているのではないか。
スーツ、最後のシーンのスターさんしか着こなせない仕立てのいいコートの着こなしもかっこよかったです。
◆トビアス/天飛華音
デニムにテンガロンハットという衣装をいかにかっこよく着こなすか、パイプをかっこよく持つか、居方からして難しい役なんだなあと感じました。
ヨーニーに厳しいことを言ったり警察たちを蹴散らす眼光の鋭さ、押し出しの強さがしっかり出ているのがかっこよかったです。
石投げをしながらベティ/瑠璃花夏と話しているときの「ああ、本当にこの子かわいいなあ」と恋の衝動がベティに向かっているのが伝わってきてときめきました。
そして前半の眼光の鋭さがベティとの結婚が決まって馴染みの仲間と別れるシーンではすっかり柔らかいものになっていたのが印象的でした。
◆シュザンヌ・シュラック/桜庭舞(有沙瞳)
この物語で一番救われないのはシュザンヌなのではないかと思うことがあります。
清楚な良家のお嬢様のかわいらしさ、控えめながら芯のあるまめちゃんのシュザンヌでした。
歌が上手ですばらしかったです。
ヴェロニカ/有沙瞳(英真なおき)
ヴェロニカの水色×濃紫色のドレスは「激情」のカルメンでちゃぴちゃんが着ていました。
みほちゃんは爪をその濃紫色のネイルにしていて、1回限りの公演なのに凝っているなあと思いました。
婀娜っぽくて蓮っ葉でどこか投げやりで、でも酒場の女将として客たちを受け入れる懐の深さがあってカール/極美慎がわあわあと泣きつくだけの女である説得力がありました。
「あんた、昔の亭主に似ている」という常套句を客の心をゆるめ本音を聞き出し癒すために言っているような気がしました。
この場面はヴェロニカも涙を流して両頬を濡らしていて、カール/極美慎の純粋さが際立つようでした。
ヴェロニカ役とはうって変わってプロローグのビア祭りではとってもかわいい笑顔で踊り、劇中のカール似の男では「♪かもめよ〜」と低めの声で一節歌ってまがこれがマルギット似の女/朱紫令真のアドリブ「うまい」の通り本当に上手でした。
最後の新人公演の長の挨拶も落ち着いていて立派でした。
◆ベティ・シュナイダー/瑠璃花夏
ちなちゃん、巻いた前髪におさげがかわいいです。
重ための目元、けぶるような睫毛がちなちゃんのお顔立ちによく似合っていて印象的です。
田舎から出てきた設定ですが、方言も走り方もやりすぎることなく自然で好感を持ちました。
◆マインラート夫人/小桜ほのか
第一声のツンとした表情といい「マルギットさん」と上から声をかける様子といい、カールを紹介された時の意地悪そうな表情と、どこを切り取っても上手です。
また上流階級の人間として手本にならなければいけないと臆面もなく堂々と言ってのけるのにも「自身も自分がいる階級も選ばれたものである」という意識が感じられて、あいちゃんの芝居の実力を感じました。
そのほかヨゼフ・シュラック/遥斗勇帆(一樹千尋)の重厚さ、ホルガー/朱紫令真(美稀 千種)の素朴な優しさの表現が深くて光っていると感じました。
星組は安泰ですね。ブラボー!!
婚約パーティーに警察がいる理由
ところでカールとマルギットの婚約披露パーティーになぜカウフマン警部がいるのか、本公演のときから不思議に思っていました。
今回新人公演を映像で見て家出をしたマルギットが発見されたとき、カールが刃物を取り出したこともあってシュラック家からまったく信用されていない上に、
何か口実さえあればヨゼフのセリフ通り刑務所送りにされていたのかもしれないということに思い至りました。
「霧深リエルべのほとり」は見るたびに発見があり考えさせてくれる作品だと感じました。
久しぶりに感想記事を書けて楽しかったです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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