考えたこと

2019年を振り返るヅカバナのヅカデミー賞とラズベリー賞

おはようございます。ヴィスタリアです。

2019年もいよいよ押し迫ってきて観劇納めもすみましたのでこの一年の観劇を振り返り、アカデミー賞ならぬヅカバナのヅカデミー賞を選んでみたいと思います。

部門は作品賞(芝居)作品賞(ショー)主演男役賞主演娘役賞助演男役賞助演娘役賞です。
演出家に関してはラズベリー賞もあります。

1作品、1人を選ぶのが難しくて絞り切れていない部門もあります。

2019年の観劇を振り返る

2019年のヅカバナ的ヅカデミー賞のエントリー作品はこちらです。
いずれもヴィスタリアが観劇したもので、観劇回数はライブビューイングを含みます。

作品観劇回数
月組 ON THE TOWN1
月組 アンナ・カレーニナ2
星組 霧深きエルベのほとり/ESTRELLAS4
雪組 ファントム1
宙組 群盗1
宙組 黒い瞳/VIVA! FESTA!1
月組 夢現無双/クルンテープ**
雪組 20世紀号に乗って1
花組 CASANOVA2
星組 鎌足1
花組 花より男子1
宙組 オーシャンズ114
花組 恋スルARENA1
雪組 壬生義士伝/Music Revolution!2
月組 チェ・ゲバラ2
星組 GOD OF STARS-食聖-/Éclair Brillant4
花組 A Fairy Tale-青い薔薇の精-/シャルム!4
雪組 ハリウッド・ゴシップ1
月組 I AM FROM AUSTRIA1
星組 ロックオペラ モーツァルト3

これ以外にお茶会、友の会のトークスペシャル、外部のOG公演にも行き、宝塚歌劇にどっぷりはまった一年でした。

ヴィスタリアは全組観劇派でOGさんの舞台も観るので本公演/3回まで、別箱/1回までを自分に課しているのですが、守れていませんね(キッパリ!)。

贔屓はもとより好きなスターさん、トップスターの退団公演は「今しかない」とついチケットを追加してしまい、さよならショーや最後のご挨拶を見たくてライブビューイングにも行き回数が増えてしまいました。

突出している月組「夢現無双/クルンテープ」の観劇回数は……公表できません。
通いつめて最後の方は体力的にも集中力を維持するのもきつかったです。
公演時間が3時間と長く、観劇は体力がいると感じました。

宝塚歌劇を長く楽しむためにも来年はルールをちゃんと守りたいですが…すでに守れていない公演がありますが、できる限り守りたいです。

また今年は初めて新人公演を観劇し、すっかりハマって積極的にチケット獲得に参戦しました。

花組「CASANOVA」「A Fairy Tale-青い薔薇の精-」
月組「夢現無双」
雪組「壬生義士伝」
星組「GOD OF STARS-食聖-」

幸運にもこれらの新人公演を観劇しましたが、宙組の新人公演だけは来年以降に持ち越しとなりました。

そして未だに観劇できていない全国ツアーもまた2020年はぜひとも観劇できるようがんばる所存です。

作品賞(芝居)本公演「霧深きエルベのほとり」別箱は「鎌足」

本公演は上田久美子先生の星組「霧深きエルベのほとり」、別箱は生田大和先生の星組「鎌足を選びました。

本公演は雪組「ファントム」宙組「オーシャンズ11」もよかったのですが、宝塚歌劇のオリジナル作品のよさ、真髄に触れさせてくれたという点で「霧深きエルベのほとり」を選びました。

古い作品で上演が発表されたときには「えっ」と思いましたが、上田久美子先生が新しい風を吹き込んでくれました。

シンプルでありながら過不足ない描かれ方がされているので想像力をかき立てられ、登場人物たちの描かれていない関係や物語のその後などの余白に浸ることができました。

マルギットとフロリアンはなぜカールを探しに来たのかこんにちは、ヴィスタリアです。 星組「霧深きエルベのほとり」を3回観劇して気づいたこと、考えたことがあります。 マル...

シュザンヌはその後どうなったのか、フロリアンとマルギットはその後結婚したのか、アンゼリカとカールの恋がどのようなものだったのか。
観劇するたびに様々なことをに思いを馳せられる懐の深さがありました。

最近になって思うのはなぜシュラック家にカウフマン警部/天寿光希が居たかということです。
あれはシュラック家の人々がカール/紅ゆずるを警戒してなにかあれば警察に突き出すつもりでいたのでは…考えすぎでしょうか。

こういう余白と余韻のあるどこか懐かしい、しかし深い本質を描いた芝居と新鮮なナンバー(ビア祭り、トビアスの旅立ち)のバランスもよく、ぜひ上田久美子先生の手腕でOnce upon a time in Takarazukaをシリーズ化してほしいと思いました。

たとえば「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」「ダル・レークの恋」といった名作をぜひ、原作に立ち返りつついまの風を取り入れた新演出で見たいです。

別箱は星組「龍の宮物語」を観劇できていれば、という後悔があります(宙組「リッツ・ホテルくらい大きなダイヤモンド」も)が、観劇できたなかでは生田先生の星組「鎌足」がすばらしかったです。

生田先生の花組「CASNOVA」は演出の手法といい元ネタといい小池先生に寄りすぎで生田先生のオリジナリティについて疑問を感じないではなかったのですが、
「鎌足」はテーマ、当て書きのはまり具合、2人のストーリーテラー(僧/一樹千尋、船史恵尺/天寿光希)のメッセージに蹴鞠の使い方とすばらしい完成度とアイデアがあったと思うのです。

「正気は帝に捧げた」、あーちゃん(綺咲愛里)がサヨナラのご挨拶に使った「これでよかったのです、私の人生は」といった名シーン、名セリフも光っていました。

上田先生は「これは宝塚歌劇なんだろうか?」と思うこともありますし生田先生はオリジナリティが気になりつつ、脚本・演出のレベルは高くこれから宝塚歌劇団を引っ張っていく期待の演出家2人ということなのかなと思った2019年でした。

また両先生とも「霧深きエルベのほとり」はトビアス/七海ひろき、「CASNOVA」はベアトリーチェ/仙名彩世、ダニエラ/桜咲彩花、ゾルチ夫人/花野じゅりあといった退団者へのはなむけがきちんとあったことも好印象でした。

作品賞(ショー)「Eclair Brillant」はレヴューの金字塔

ショーは酒井澄夫先生の星組「Eclair Brillant」しかない!と思って即決でした。

2019年どころか長い宝塚歌劇の歴史の中でもレヴューの名作といえる作品だと思います。

一つひとつの場面が長めでシンプルな構成でありながら主題歌の美しさと選曲のセンス、品があってきらびやかな衣裳が優れており、色とりどりの宝石が並んでいる宝石箱をうっとりと眺めるような気持ちになりました。

なかでも若央りさ先生振付の「ボレロ」は一糸乱れず表情も変えずに踊る星組生の気迫、階段を使った多構造の展開、次々と押し寄せる星組生は芸術的でした。

星組「ESTRELLAS」はJ-POPが多くてげんなりしていたので「ボレロ」「クンバンチェロ」「マシュケナダ」といったお馴染みの曲を使いながらも手垢のついた感じがまったくないことも非常によかったです。

次点は中村一徳先生の雪組「Music Revolution!」です。

まったく趣の違う両作ですが、「Music Revolution!」はバラエティのある場面構成、中詰以降の「Dance Revolution」の圧巻のダンス、「Music is My Life」の雪組の充実ぶり、
畳み掛けるような怒涛のフィナーレに客席で熱狂しました。

なおショーのフィナーレの定番である男役の黒燕尾はヴィスタリアの永遠の贔屓ヤンさん(安寿ミラ)の振付による月組「クルンテープ」花組「シャルム!」が退団する美弥るりかちゃんみりおちゃん(明日海りお )へのすばらしいはなむけになっていました。

主演男役賞 望海風斗「ファントム」「20世紀号に乗って」

非常に迷いましたが今年はだいもん(望海風斗)が一歩抜きん出ていたという結論になりました。

「ファントム」のエリックは宝塚歌劇の枠さえも超えて悲しきオペラ座の怪人の魂に触れさせてくれたと思いました。

幕開きの歌い出しから心を鷲掴みにされましたし、クリスティーヌに素顔を見せた後の慟哭が未だに忘れられません。
役の設定を活かす歌唱力の高さ、それも心情の込められた歌もすばらしかったです。

その次がコメディミュージカル「20世紀号に乗って」のイケオジ オスカー・ジャフィでこれもまたおなかが痛くなるほど笑いました。

オリジナルではなかったという点で「ファントム」「20世紀号に乗って」は作品賞受賞から遠ざけてしまったのですが、
舞台作品としての完成度は抜きん出ており完璧なキャストが完璧な作品を見せてくれました。

最後まで迷ったのは「アンナ・カレーニナ」のアレクセイ・ヴィロンスキー伯爵/美弥るりかの繊細な演技、
「霧深きエルベのほとり」「鎌足」さゆみさん(紅ゆずる)の役者と役の心がまっすぐ伝わってくる演技、
また男役ーー人間ではない上に難しい脚本をまとめきった「A Fairy Tale-青い薔薇の精-」エリュ/明日海りお もすばらしいものでした。

主演娘役賞 真彩希帆「ファントム」「20世紀号に乗って」

主演男役賞同様、悩みましたが今年はまあやちゃん(真彩希帆)がすごかったという結論になりました。

「ファントム」のクリスティーヌはだいもんのエリックと同じく、宝塚歌劇の枠を軽々と超えていたと思います。
特にオペラ座デビューするまでの「どんな仕事でもオペラ座にいられるだけで幸せ」という
夢を見るクリスティーヌ、歌唱力がすばらしかったです。

「20世紀号に乗って」のリリー・ガーランドの全力投球のコメディ、「ヴェロニク」などのパワフルで圧倒的な歌とパフォーマンスも心を動かされました。

最後まで迷ったのは「CASAOVA」ベアトリーチェ/仙名彩世のニンではない役さえ生き生きと演じたこと、
「アンナ・カレーニナ」アンナ/海乃美月の美と繊細さ、
「花より男子」のエネルギーが迸っていた牧野つくし/城妃美伶でした。

助演男役賞 若手 風間柚乃か専科 華形ひかる・凪七瑠海か

3人とも質の高い演技が光っており選べませんでした。

「チェ・ゲバラ」フィデロ・カストロ/風間柚乃は研6とは思えない演技・歌・存在感で堂々とエルネスト・ゲバラ/轟悠と渡り合っていました。

黒塗り、髭も似合い、ゲバラの上に立つカストロを演じきる器の大きさがありました。

「ロックオペラ モーツァルト」アントニオ・サリエリ/凪七瑠海は歌唱力の高さ、モーツァルトへの嫉妬と畏怖と最後に示した友情がすばらしかったです。
1幕最初以降は出番が少ない中で存在感がありました。

「鎌足」蘇我入鹿/華形ひかるはこれぞ男役冥利に尽きるという役だったのではないでしょうか。
ラブシーン、立ち回り、どこをとっても最高にかっこよかったです。

助演娘役賞 男役か娘役スターか

専科の女役さんは「20世紀号に乗って」レティシア・プリムローズ/京三紗(雪組「20世紀号に乗って」)と「ハリウッド・ゴシップ」アマンダ/梨花ますみの怪演ともいうべき名演が心に残りました。

また男役さんですが「CASANOVA」コンデュルメル夫人/鳳月杏の存在感、美しさ、歌唱力は頭抜けていました。

ヴィスタリアの一押しは「鎌足」皇極帝/有沙瞳です。
傀儡の人形から女、そして母、為政者へと変貌していくのが見事で、蘇我入鹿/華形ひかるとのラブシーンはちょっとすごかったです。

ヒロインもできる娘役さんですがこういう色の濃さ、情念のある役も似合うと再確認しました。

ヅカバナのラズベリー賞

アカデミーデミー賞があればラズベリー賞(演出家部門)もあります。

石田先生の「壬生義士伝」「ロックオペラ モーツァルト」は原作の良さを活かしきれていないように思いました。

「壬生義士伝」はストーリーテラーである鹿鳴館の場面がとってつけたようで、原作の現在と過去を行き来する構造を昇華しきれていないのではないでしょうか。

「ロックオペラ モーツァルト」は展開のテンポがよくなく、名曲ぞろい・すばらしい歌い手ばかりなのにストーリーに入り込めないのが残念でした。

齋藤先生は「夢現無双」で長大な「宮本武蔵」をダイジェストにしてしまったこと、劇団史上初の横浜アリーナ公演「恋スルARENA」のセットリストが空回りしていたには猛省を促したい、というのが正直な気持ちです。

植田景子先生の「A Fairy Tale-青い薔薇の精-」は脚本の矛盾が多く疑問が残りました。

来年はラズベリー賞が無しとなること、そしてヅカデミー賞の選考に悩みに悩む名作・代表作に出会えることを祈ります。

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