こんばんは、ヴィスタリアです。
月組バウ「アンナ・カレーニナ」の千秋楽ライブビューイング(以下LV)を見てきました。
映画館の大スクリーンで見てバウでは見えていなかったことに気づいたり、2回目ということでセリフや演出などを考える余裕もあったように思います。
とはいえ大写しで美弥るりかちゃんのあんなシーンやらこんなシーンを見て舞い上がってしまい、今回の感想は偏愛が暴走しています。
そんなヴィスタリアの独断と偏見、偏愛に満ちた感想です。
美しすぎるし愛が過ぎる 美弥るりか様のヴィロンスキー伯爵
なんかもう……言葉になりません。すごすぎて。
のっけからすみません。でもこれがヴィスタリアの一番正直かつ端的な感想かもしれません。
なにがどうすごかったのかできるかぎり書いてみます。
まず美弥るりかちゃんのアレクセイ・ヴィロンスキー伯爵のヴィジュアルが美しい上に色香がすごかったです。
るりかちゃんのヴィロンスキーは舞踏会でご婦人方がヴィロンスキーにうっとりして褒めそやす言葉が誇張でもなんでもない美貌のエリート将校でした。
しかも彼自身それを自覚しているプレイボーイっぷりを匂わせている上に、キティについて「彼女は私に恋をしている」とさも当たり前のように言ってのけます。
いいですよね、自分の価値を正しく知っている色男って。
金髪のウェーブがかった前髪を片方にたらしたヘアスタイルもかっこよくてすごく似合っていて、白軍服をはじめに数々の衣裳もかっこよかったです。
そんなるりかちゃんのヴィロンスキーがスクリーンに映ると、どのシーンでもなにをしても絵になって至上の美がここにあると思いました。
しかもるりかちゃんのヴィロンスキーはただかっこいいだけではなく色気が、色香がしたたるようでドキドキしました。
キスシーンはいったい何回あったんでしょう。
どれもこれもすてきでときめきましたが、
・舞踏会でアンナにマズルカを踊ってほしいとひざまずいて手の甲にキスをする
・恋仲になったアンナの黒いレースの手袋に覆われた手首にキスをする
といったシーンがあまりにも耽美で、唇にするだけがキスシーンではないのだと思い知らされました。
そしてるりかちゃんのヴィロンスキーの情熱的で愛があふれる言葉たちもすごかったです。
まずアンナとの駅での出会いからして情熱的にアンナのことを見つめすぎでした。
目は口ほどに…ですが情愛があふれていて、あんなに見つめられたらアンナだって火がついてしまうのは無理もないと思いました。
(アンナだってヴィロンスキーに惹かれていたでしょうけれど)
モスクワからペテルブルクへ帰るアンナを追いかけて迫った言葉。
ペテルブルクのベッツィの晩さん会かなにかで、つれないアンナにぶつける「あなたは残酷な方だ」という苦しげな言葉。
そしてアンナに「私はあなたに平穏は与えられない。愛ならいくらでも差し上げよう」という愛ゆえに傲慢ささえ感じられる言葉。
(だからこそ産褥熱で生死をさまようアンナを見て、与えていたのは愛ではなく苦しみだったと苦悩するのでしょう。)
いやー、もうたまりません。
「ル・サンク」を出してほしいし脚本を読んでじっくり味わいたいくらいです。
またアンナが悲劇を迎えたあとの慟哭、セルビアの戦線へ出発するときのヴィロンスキーの中から大切なものがすべて失われた透き通るような空虚さもすごかったです。
喪失感さえ美しいと思いました。
みやうみれいこの美のトリデンテがまるで絵画
ヒロインのアンナ・カレーニナ/海乃美月が華やかで美しい大人の女性で、恋敵となるカレーニン/月城かなとが端正な美貌で最高のキャストであったことは言うまでもありません。
アンナのしていることは不倫ですし夫も子どもも捨ててヴィロンスキーと出奔し、あまりにも自分に正直すぎて「カレーニンに対してあまりに残酷では」とも思います。
一番はカレーニンが道徳について語るときにアンナは自分の愛について語るところです。
私だって一個人である、と主張しているその実は夫に自分の恋について語っているわけですから。
競馬の場面でも夫が隣にいながらヴィロンスキーのことを夢中で応援し落馬したとあっては取り乱し、あまりにも正直に「あの方を愛しています」と告げる場面よりも胸に刺さりました。
アンナは愛ゆえにどこまでも自由であること、一方で愛だけが支えゆえに不安定になってしまう繊細さを、この美貌であれば無理もないと、うみちゃん(海乃美月)は思わせてくれました。
れいこちゃん(月城かなと)のカレーニンは1幕でアンナに道徳を語るときは愛よりも立場、対面を重んじる四角四面の人物かと思いきや、内面にはアンナへの愛と嫉妬を秘めているのが「愛の煉獄」の歌で伝わってきました。
2幕でアンナと離婚しない決意を語る場面の演技が光っているだけに、アンナの悲劇をどう受け止めるのか、アンナの日記をどんな気持ちで読んだのかと思うとやりきれません。
恋敵のヴィロンスキーにアンナの日記を渡し、彼とアンナの娘を自分の娘として育てるという、大きな愛と許しをれいこちゃんのカレーニンは示していました。
アンナとヴィロンスキーの激しい愛、コスチャとキティの純な愛とも違い、広い愛です。
それにしてもこの3人の並びの美しさはどうでしょう。
うみちゃんとるりかちゃんが寄り添っても美しく、うみちゃんとれいこちゃんが並んでも美しく、るりかちゃんとれいこちゃんが対峙すれば美と美が対峙する。
3人が三様に美しいうえにそれぞれの相性のよさを感じました。
朝日新聞さんが写真多めの記事を出してくれましたがもはや絵のようです。
しかも3人とも演技、ダンス、歌に上品さとなにをとっても素晴らしく、非常に完成度の高い舞台だったと思います。
みやうみれいこ(美弥るりか・海乃美月/月城かなと)の3人は最高の組み合わせだし、この3人の舞台がもっと見たいとヴィスタリアは心底思います。
また三角関係ものの上に悲劇ですけれど柴田先生の「哀しみのコルドバ」とかどうでしょう。
ロシア貴族社会という「華やかな檻」で生きる人々
今回LVであらためて見て「アンナ・カレーニナ」の舞台はロシア貴族の社交界から始まりそして終わるということに気づきました。
始まりも終わりも社交界を取り仕切るベッツィ/美穂圭子から始まります。
幕切れにベッツィが貴族社会を「華やかな檻」と喩えていたのが印象的でした。
この「華やかな檻」のなかでどう振る舞うべきかをキティ/きよら羽龍は母親のシチェルバツキー公爵夫人/清華蘭からきつく言われます。
「(それができなければ)明日からモスクワ中の笑い者になるわ」と母親から言われますがキティは「できない」とコルスンスキー邸の舞踏会を飛び出してしまいます。
シチェルバツキー公爵夫人/清華蘭は他の貴族のご婦人とはちょっと違う髪型が華やかかつ似合っていてすてきでした。
キティ/きよら羽龍はかわいらしくて初々しくてキティにぴったりで、これからどのような娘役さんになっていくのか楽しみです。
キティは歌も演技もすばらしかったですが、特にコスチャにダンスを申し込まれて「ええ」と答えるときの、とりあえず、仕方なく受けているだけなのがちゃんと伝わってくるのがうまいと思いました。
アンナが裸足になるということ
今回のLVで印象に残った点があります。
まずハプニングめいたことがありました。
オペラハウスでアンナが倒れた後、アンナが息子セリョージャのために買ったという大きな地球儀をベッドの上に置いてしゃべるシーンがあります。
地球儀が不安定だったのかベッドから落ちそうになったのを、るりかちゃんのヴィロンスキーがさりげなく手で押さえて落ちないようにしていました。
さらにその直後、アンナを抱き寄せるとヴィロンスキーのジレの前合わせとアンナのロングヘアか衣裳のふわふわした飾りが絡まりそうになり、るりかちゃんが片手でさりげなくジレの前を直していました。
マジックテープになっているのかペリペリという音がマイクに入っていて、なかなか無いものを見たと思いました。
また列車に飛び込んむ際にアンナが靴を脱いで裸足になったことも非常に印象的でした。
これは今回のLVでスクリーンには美しく見えるように置かれた黒い靴が大写しになったことで気がつきました。
twitterで書いている方がいて膝を打ったのですが、靴をぬいで列車に飛び込んだアンナと裸足のアンナーーヴィロンスキーとの愛により目覚めた自由を求めるもう一人のアンナとリンクしているのではないでしょうか。
裸足のアンナが初めて登場するのはアンナがヴィロンスキーと運命的に出会ったモスクワを離れるとき、列車の車中で本を読みながらも頭に入ってこず、ヴィロンスキーのことを思い出すところです。
またイタリアの海辺でもアンナは途中で靴を脱いでいます。
(たしかこのときヴィロンスキーは靴を履いたままだったと思います。Blu-rayで確かめるつもりです。)
そして秋がきて冬のロシア、愛息子セリョージャを思い出し祖国へ帰る決意をするとき、アンナは靴を履いていたように思います。
「裸足のアンナ」がこの舞台に欠かせない、大きなモチーフになっていることに初めて気がつきました。
ほかにもそういうものがあるでしょうからBlu-rayでじっくり見て味わいたいです。
千秋楽のお楽しみ、カーテンコールについては別記事で書きたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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