観劇の感想

花組「アウグストゥス」役ごとの感想(恋愛に留まらないトップコンビと、男役スターの大恋愛)

こんばんは、ヴィスタリアです。

花組「アウグストゥス」の役ごとの感想です。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちていて、作品の内容に触れています。

オクタヴィス/柚香光、ポンペイア/華優希

れいはな(柚香光・華優希)それぞれの美しさはもちろんのこと並びの相性のよさは目から幸せで、
また芝居の深みを引き出し合うような相性のよさに心震えました。

オクタヴィウス/柚香光ポンペイア/華優希を訪ねていって対峙した場面で、ほぼ全編を彩るように流れている音楽が絶えて静寂のなかで台詞が交わされるとき、
ものすごい緊張感と集中力の高さで固唾をのみました。

トップコンビにしては恋愛要素はあまり――いえ、ほとんど描かれていない関係性なのが珍しく、正直物足りない気もします。

しかし恋愛よりももっとスケールの大きくて高次元な、魂が共鳴しあうような唯一無二の存在同士であったのかもしれませんし、
れいはなだからこそそう感じさせてくれました。

◆オクタヴィウス/柚香光
くすんだ金髪に藍色の軍服、マントがれいちゃんの美貌に映えます。

軍人としてはからっきしで、知識を得ることは好きで、ユリウス・カエサルの後継者に選ばれたことに悩み戸惑う様子が繊細に表現されていると思いました。

大叔父ユリウス・カエサル/夏美ようの後継者として託されたものに戸惑い苦悩するオクタヴィウスにとって
ポンペイアは魂を救ってくれるような存在、他の誰にをも明かすことのできない心をなぜか見せることができる存在なのも伝わってきました。

キャラクターはまったく違うのですが、大勢の中から1人の人間に選ばれる運命に戸惑い悩み、ときに苦しむ姿は「ポーの一族」のアランを思い出しました。

あるいは島原の乱を1人生き残った「MESSIAH」の山田リノもですが、
れいちゃんにはこの人にしか耐えられない苦難や受難、運命めいたものが似合うなあと思いました。

一方で「花より男子」「NICE WORK IF YOU CAN ET IT」で見せたようなコメディセンスは天才的で、喜劇から悲劇までこなすギャップがたまりません。

ところで後半に着ていたグリーンのグラデーションが美しい衣装に十字架を思わせるモチーフが輝いているのが気になりました。

アウグストゥスの宗教観や死生観はどのようなものだったのか、ポンペイアのドラマとあらせて考えたくなりました。

◆ポンペイア/華優希
緩やかなウェーブを描く金髪のロングヘアにどのお衣装もお似合いで素敵でした。

歌も「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」のころから自信をもって堂々と歌い表現しているのを感じます。
すてきなトップ娘役さんになられて輝いているのに今作で退団なのが残念でなりません。

ポンペイアはいったいどんな人生を送り、父ポンペイウスの敵討ちを決意しカエサルのところへ乗り込んできたのか。
ブルートゥスらポンペイウス派の議員たちにとってどういう存在であったのか。

この作品では描かれていませんが、はなちゃんがポンペイアを演じるというより生きているのを見ると想像したくなります。

オクタヴィウスが背負うものも大きいですが、ポンペイアが一身に受けたものもあまりにも大きくて、
彼女が父親の形見の剣を手にしなればならなかったことの悲しみが突きつけられます。

アントニウス/瀬戸かずや、クレオパトラ/凪七瑠海

ヴィスタリアはあきらさん(瀬戸かずや)のことを男役としてかっこいいと思っていると同時に人として尊敬しており、
カチャさん(凪七瑠海)のノーブルな男役(今回は女役ですが)も大好きなのと89期を愛しているので贔屓目かもしれませんが、
今作はアントニウスとクレオパトラの物語に惹かれました。

身分差のあるカップルの恋の始まりから世紀の大恋愛っぷり、そして終焉まで描かれるんですから仕方ないですよね(←開き直り)。

◆アントニウス/瀬戸かずや
黒髪の長髪と立ち上げた前髪がかっこよすぎて、野心と欲望がどろどろに渦巻いているのもかっこよすぎて、
オクタヴィス/柚香光を恨みクレオパトラ/凪七瑠海に溺れるのもまたよくて、いいお役で感無量です。

クレオパトラに強引に迫って落とすときのキスシーンが大変素敵でオペラグラスを下ろせませんでした。

また銀橋センターの感情むき出しの歌も揺さぶられましたし、このシーンの後ろ姿とライトの中で拳をぐっと握っているシルエットが絵のような完成度でシビれました。
KAORIalive先生の振付なんですね。

ローマの王にはなれなかった彼がプトレマイオス朝の女王と結ばれることで豪奢な王の装いをしているのも
儚くてよかったです。

2人の結婚式の場面がエジプトの儀式だったのも(手に道具を持っていましたよね)ローマの神々には受け容れなれなかったことを象徴しているようでたまらない気持ちになりました。

というのもクレオパトラのもとで愛に溺れているアントニウスのところへローマが彼を捕らえるための使者を送ってきたと
アポロドラス/和海しょうが告げたとき、
怒りのあまり手が震え、掌が破けて血が流れてしまうのではと思うこと強く拳が握られたのが見えたんです。

台詞や表情に心情が込められているだけでなく、こうした身体での演技が光っていたなと今公演のあきらさんを見ていて思うポイントが多かったです。

自刃の刺し方といい後ろに倒れるのも巧くて、後頭部はどうやってカバーしていらっしゃるんだろう。

死に方がすごい役といえば宙組「神々の土地」のラスプーチン/愛月ひかるが思い浮かぶのですが、
インパクトは怪僧の圧勝かもしれませんがアントニウスも相当なものです。

マントさばきもすばらしかったです。

◆クレオパトラ/凪七瑠海
今回の花組本公演出演で5組制覇を果たすカチャさんが女役と発表されたときは複雑な気持ちもあったのですが、
舞台の超絶スタイルと美しさで君臨するクレオパトラ様を見たら「これはカチャさんの役だわ」と深く納得しました。

登場のナンバーは目が釘付けでしたし、歌がいいことは言わずもがな、女性として美しいことはもちろん
為政者のプライドと気高さ、人の上に立つ器といったスケールの大きさも感じさせてくれました。

またあきらさんとの並びが美しくて目も幸せでした。

アントニウスに強く迫られて心が揺らいだときに漏れる「あなたがカエサルならよかったのに…」が切ないほど悲しくてよかったです。

カエサルはもう自分から離れ政治のパートナーとして対等にも見てくれないことがクレオパトラには痛いほどわかっていたことでしょう。

作品の感想で「ドラマなのか歴史なのか」と書き、ドラマとしては物足りなく感じました。

しかし歴史としては押さえるべきところを田渕大輔先生はきっちり押さえていたのではと思う箇所もあって、
その一つがクレオパトラのルックスです。

我々がクレオパトラといえば思い浮かべる黒髪のエキゾチックなスタイルは彼女本来のものではなく、
ふだんはマケドニア王朝の血の引く者らしくギリシア風に出で立ちであったことが塩野七生「ローマ人の物語」にも書かれていました。

だからこそアレキサンダー大王の果たせなかった夢というキーワードが出てくるのでしょう。

そんな大望を抱いていた女王が最後にアウグストゥスに乞い願う場面にはたまらない悲哀を感じました。

アグリッパ/水美舞斗、マエケナス/聖乃あすか

史実ではカエサル/夏美ようが若き後継者オクタヴィウスのために引き合わせたブレーンたちです。

アグリッパは軍事面、マエケナスは政治面でアウグストゥスを大いに助けました。

舞台中央の階段のセットで中央にオクタヴィウス/柚香光
左右にアグリッパ/水美舞斗マエケナス/聖乃あすかが並ぶとザ・花男の美✕美✕美で最高でした。

◆アグリッパ/水美舞斗
マイティーの笑顔は世界を救うと、客席でいつも心洗われているのですが、
苦悩することの多かったであろうオクタヴィウスもまたこの友に救われていたのでは――と、アグリッパが銀橋で歌う友情の歌が思わせてくれます。

なんだか婚約者を失ったオクタヴィア/音くり寿といい雰囲気に見えますが、
「はいからさんが通る」の優しい狼さんこと鬼島森吾と環を彷彿とさせました。

そろそろ本公演でマイティーの恋愛、相手役さんのいる芝居が見たいです。切実に。

◆マエケナス/聖乃あすか
長髪の男役さんが多い中で金髪をきっちりリーゼントにしたほのかちゃんがなんという麗人。
スターオーラと美しさで発光しているのがわかります。眩しいーーーー!

軽妙さのある役柄といいヘアスタイルといい、こういう感じもお似合いなんですね。
ロマコメとかお似合いなのでは…と妄想が膨らみました。

ブルートゥス/永久輝せあ、元老院議員たち

ひとこちゃんはいつも声量と滑舌でガーン!と殴ってくれるのが好きです。
そしてのぞ様(望海風斗)の雪組で育ち研鑽されてきたことを感じます。

金髪と目元のハイライト(かな?白っぽい感じの舞台化粧なんです)が冴え冴えとした美貌に映え、
元老院議員のトーガを翻すのも美しかったです。

ブルートゥスと行動をともにする元ポンペイウスはの議員たちには花組の男役スターさんが揃っていました。

カッシウス/優波慧
キンベル/飛龍つかさ
シンバ/帆純まひろ
トレボニウス/希波らいと

これは演出家の先生へ願うことであり、そして今回に限ったことではないのですが、ぜひ台詞の中に役名を入れてほしいです。

全員ずっと一緒の場面に出ていて、同じ衣装で、皆美しくて、宝塚歌劇や組のことをあまり知らない方が見て
「あの方誰だろう」と思ってプログラムをめくっても誰が誰やら…。
台詞のなかに役名があると手がかりになります。

今回で言うなら、ブルートゥス以外でお名前が出てきたのはカッシウスだけでした。

その他の役たち

一言ずつですが触れさせてください。

◆オクタヴィア/音くり寿
親に言われた結婚であろうにアントニウス/瀬戸かずやを愛しているんですね。

可憐さと恋をしているかわいらしさを纏っていて、色濃い役だけでなく寄り添うような娘役さんらしさも感じさせてくれるスターさんだなと
くりすちゃんを見ていると思います。

歌声も淡い水色の衣装の着こなしも美しかったです。

母親のアティア/鞠花ゆめの厳格さとやや冷たい感じもうまく、きらきらと輝く衣装も美しくて印象的でした。

◆レオノラ/美花梨乃
仕えるポンペイアへの愛と慈しみ、そしてコミカルさもあって印象に残りました。

たいへんな美貌と華やかさのある娘役さんでずっといてほしいと思っていました。
ご卒業されると寂しくなります。

◆シャーミアン/冴月瑠那
やはり今回でご卒業されるるなさん、なぜ女役だったんでしょう…。

配役発表で驚きましたが、舞台を見ても女役でないといけない理由も感じられずふしぎでした。

◆歌うまの男役たち
民衆のアンサンブルが多いのですが、サレナス/航琉ひびき
ガルバ/羽立光来ルフィオ/峰果とわがソロで歌っているのは安心感があります。
適材適所ですね。

新人公演があったら大いに鍛えられたのでは…と思いますが花組の新人公演復活はまだ先なのでした(涙)

以上、my初日の感想でした。
ショー「Cool Beast!!」は別記事で書きます!

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