観劇の感想

花組「殉情」初日の感想(帆純まひろ・竹田悠一郎先生の演出)

こんばんは、ヴィスタリアです。

バウホールで初日を迎えた花組殉情」(主演帆純まひろ)を観劇してきました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。

花組バウ・ワークショップ「殉情」4回めの上演で変わったこと

殉情」は谷崎潤一郎の「春琴抄」を石田昌也先生がミュージカル化したもので再演を重ねてきました。

1995年星組 絵麻緒ゆう・月影瞳
2000年雪組 絵麻緒ゆう・紺野まひる
2008年 宙組 早霧せいな・和音美桜/蓮水ゆうや・すみれ乃麗

2008年の宙組も今回の花組バウ・ワークショップと銘打たれて若手の活躍の場になっているようです。

4回めの上演となる今回は石田先生が監修・脚本、竹田悠一郎先生が殉色・演出をされていまから出演される生徒さんだけでなく演出家の先生にとっても”ワークショップ”なのでしょう。

この作品は「春琴抄」の春琴佐助の世界と現代の若い恋人たち(マモルユリコ)の会話が交互で進んでいますが、
4回めの上演で演出家の先生が変わってもこの形式に変化はありませんでした。

形式に変化はなかったものの、このマモルとユリコの会話が過去の上演とガラリと変わって2022年の時勢を反映したものになっていました。

同時に現代のマモルとユリコから春琴と佐助への言及も減ってストーリーテラー的な役割もなくなり、
現代パートと「春琴抄」の間に決して渡ることのできない深い川(←「Never Say Goodbye」の歌詞より)が流れることになったような気もします。

現代パートにストーリーテラー的な要素がなくなったということは説明過多なところがなくなり春琴と佐助のドラマは見応えのある、引き込まれる部分が増えたものの、
マモル・ユリコと春琴・佐助の世界が同じ作品で成立する意味がぼやけたように思いました。

またどこまでが石田先生のお仕事でどこからが竹田先生のお仕事なのかはわかりませんが、客席いじりを含めたアドリブや「ね、こういうのおもしろいでしょう?」というしたり顔が浮かぶようなギャグもあって、
こっちのセンス、美意識の方もアップデートしてほしかったような気がします。

ほかにもいろいろ変わっているところはあるかもしれませんが、特に驚いたのは春琴の身の上に酷いことをする人物はこれまでぼかされてきましたが、今回ははっきりとその人物が特定できる形で描かれていたことです。

このあたりはストーリー上の必要性なのか、生徒さんに出番・役割を増やすという意味あいなのか気になりました。

各メディアの記事も貼っておきますね。

毎日新聞さん。美麗なお写真5枚↓

朝日新聞さんも美しいお写真5枚。2枚めが特に好きです↓

神戸新聞さん。お写真5枚↓

サンスポさん。佐助のあのシーンの写真が…↓

デイリースポーツさん↓

スポーツ報知さん。春琴の爪を切ってあげる佐助↓

花組「殉情」帆純まひろ 満を持しての主演

主演の99期のホッティー(帆純まひろ)はカーテンコールの2回めだったか(3回めだったかもしれません)、一列に並んだ出演者一同を何度も見ながらこんなことを言っていました。

バウ・ワークショップということで下級生も役や出番が多く、上級生の方にも引っ張っていただき、この25名で果敢に挑戦できていることがとてもうれしいです。

限れられた時間のご挨拶の中で上級生にも下級生にも触れ、そして大きな挑戦の場であることにもさらりと触れていました。

この日は初日ということで客席の緊張感も高くて、有名な小説が原作ですし再演ものにもかかわらず「これからどうなっていくのか、何がおこるのか」と固唾をのんで見守るような空気がありました。
拍手もとても大きかったです。

そのビリッとした緊張感はもちろん舞台上にもあって、カーテンコールではその緊張が緩んでホッティーがほっとして力が抜けていることが、柔らかな笑顔や言葉の選び方でわかりました。

「人間の心はわからない、わかりそうで…」というお話からうまいことまとめていたのですが(記憶しきれていなくてすみません)、
いつもトークがうまくて言葉の選び方に知性と優しさのあるホッティーの話し始めが定まらずどこに着地するのか見えない感じが意外だったんです。

そこからちゃんと短い時間でまとまってホッティーならではのことを言って着地していて、舞台だけでなくこうしたお話の仕方に滲む人間性が魅力的なスターさなんだな…とあらためて思いました。

帆純)あと12日…じゃない、12回の公演なので千秋楽まで進化していきたい。

4回目のカーテンコールはスタオベになって、隣の美風舞良組長

帆純)大阪弁で「がんばります」ってなんて言うんですか?

美風)…がんばります?

帆純)明日からもがんばります⤴
本日は本当にありがとうございました。

「春琴抄」の世界、大阪の船場言葉のイントネーションでご挨拶をしていました。

なごやかで明るいカーテンコールでした。

ホッティーの佐助は「和物の芝居に憧れがあって」と力強く語っていただけあって芝居もよかったですし、滑舌も発声もよくなり、歌唱も安定し着実に向上していました。

春に「TOP HAT」アルベルト・ベディーニでソロを歌っていましたがそのときよりずっとずっと声も出て感情ものっていて心に届きました。

こいさん――春琴/朝葉ことのの手引きをして身の回りの世話をすることが幸せだと言い切る佐助の献身さと、
こいさんのことが好きで好きで、狭い世界に入りきっている危うさと陶酔感、視野の狭さも表現されていました。

佐助は献身的に世話をしている奉公人という立場ではあるものの、決して控えめな、わきまえた男というわけではありません。

ホッティー佐助は言い通す意思の強いところもあれば嫉妬深いところもあって、感情の好悪は表情にすぐ出て、人間的で男っぽいキャラクターが息づいていました。

こいさんに贈り物をもらえば満面の笑みで笑ってみせる――これがちょっと気色悪いくらいニマニマしていて(←うまいということです、褒めています)、こいさんから見えないからってなんと素直なんだろう…とはっとしました。

利太郎/峰果とわがこいさんに無理に言い寄れば嫉妬と怒りを隠すことなく燃え上がらせてみせる。

ホッティーの佐助はこうした豊かな表情が鮮やかであったのはもちろんのこと、
歯痛で苦しんでいるときや自らの身体を傷つけて全身で苦しがるときの身体表現としての芝居もうまくて、お芝居が本当に好きなのが伝わってきました。

涼やかな美貌は知っているつもりでしたがシュッとしてすっきりとして一層美しさに磨きがかかり、和服もとてもお似合いでした。

研10のホッティー(帆純まひろ)の満を持しての主演でした。

まだ観劇する機会があるので他のキャストの感想はあらためて書きたいと思います。

本当にすばらしい初日でしたし、花組は公演中止が続いていましたから無事に初日があけてほっとしています。

初日おめでとうございます!
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