こんばんは、ヴィスタリアです。
いつもは宝塚歌劇ばかり見ていていますが、八月花形歌舞伎の三部「義賢最期」「伊達競曲輪鞘當」「三社祭」を観てきました。
歌舞伎を見始めたばかりのヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。
八月花形歌舞伎「義賢最期」「伊達競曲輪鞘當」「三社祭」の感想
急きょチケットを取ったのは身も蓋もないですがヴィジュアルのよさに参ってしまったからです。
三部の演目と配役を見ていると、歌舞伎を見始めたばかりでまだまだ手探りの自分でも「あの役者さん、かっこいい」「かわいい」と思う方が揃っているではないですか。
美しいものを見ることには価値がある――ということで終業後に歌舞伎座に行ってきました。
最初に背中を押してくれたのが義賢の幸四郎さんのこのお写真でした。
あんまりかっこよくてすぐにチケットを取りました。
しかもしかも仁左衛門さんに教えてもらっての初役とあるではないですか。
仁左衛門さんにとって縁の深い演目のようで「戸板倒し」を考案されているそうです。
「義賢最期」の場は長く上演が絶えていたが、1943年に十二代目片岡仁左衛門が復活。
その時指導した市松延見子に教わって1973年中座で片岡孝夫(現仁左衛門)が初演して、以後人気狂言になった。
(中略)
立ち回りの中で、義賢が襖を組んだ上に乗り、その襖が横倒しになる演出は現仁左衛門の創案である(「とにかく芝居がすき」)。
「歌舞伎演目案内観劇+」より
以下、歌舞伎美人の見どころを元に歌舞伎演目案内のあらすじで補完する形で整理しています。
平家全盛の時代。源氏再興を密かに願う木曽義賢/幸四郎は、病で館に引きこもっています。
その館に、百姓の九郎助/錦吾が娘の小万/梅枝、太郎吉/小川大晴親子を連れ、小万の出奔した夫の奴折平/隼人を訪ねてきます。義賢の後妻葵御前/高麗蔵は折平は外出中と言い、三人を奥で待たせます。折平と深い仲の先妻の娘
待宵姫/米吉は気を揉みます。
一方、折平が平家方から追われている源氏の武将多田蔵人であることを見抜いた義賢/幸四郎は、平家打倒を志す本心を打ち明け、折平に思いを託します。
そこへ清盛の上使として高橋判官と長田太郎が訪ね、源氏の白旗を差し出せと命じます。
義賢が突っぱねると、長田は義賢の兄義朝の髑髏を突き付け、足で踏めと迫りました。
堪えかねた義賢は兄の敵の長田を斬り捨て、行綱と待宵姫に後事を託して館から落とし、自身は単身で平家の討手を相手に討死する覚悟を決めるのでした。
勇将木曽義仲の父・義賢の壮絶な最期が描かれる本作は、組んだ戸板の上で立ったまま倒れる「戸板倒し」や「蝙蝠の見得」の後、直立のまま倒れ込む「仏倒し」など、歌舞伎ならではの激しい立廻りは必見です。
「義賢最期」は「源平盛衰記」「平家物語」を元につくられた「源平布引滝」という全五段の人形浄瑠璃の一部で、
二段目:義賢最期
三段目:実盛物語
としてそれぞれ人気演目として上演されているそうです。
「実盛物語」では木曽義仲が誕生するまでが描かれているようです。
こちらもいつか観る機会があるでしょうか。
義賢を演じる幸四郎さんの舞台を観るのはこれが初めてでしたが、すごかった…。
登場の声が舞台奥から病身らしく弱弱しい響きで聞こえてくるのですが、まずこの声からして引き込まれ、
登場されると声のみならず雰囲気、放つものすべてで歌舞伎座全体を支配しているのが痛いほど伝わってきました。
時折無音になると客席の集中力がものすごいのがわかって、その緊張感も幸四郎さんの義賢が創り出して、
思いのままにしているようでした。
泣いていないのに心で泣いているのか(どのような泣き方をしていてどのくらい泣いているのか)が伝わってきて、
立ち回りでは満身創痍で命をけずりどんどん深手を負っていって、戦いが、義賢が、今どのような状況なのかがつぶさに伝わってきました。
その満身創痍の立ち回りの大技戸板倒しは客席半減の歌舞伎座ですが(静かな)どよめきが起きました。
どうなるの?いくらなんでも絶対無理でしょ?というのが正に目の前で展開され度肝を抜かれました。
歌舞伎のアクロバティックさはもちろん仕掛けがあるのでしょうけれど仕掛け込みですごい!
幸四郎さんの次に印象的だったのが小万/中村梅枝で、女形の立ち回りを初めて見たのですが強くて粋でかっこいい~~~!
シビれました。
声がとても通って、響きもいいのが印象的でした。
役替わりの太郎吉/小川大晴は梅枝さんのご子息で、花道をきりっと凛々しいお顔で睨むのが印象的でした。
その太郎吉を背負ったまま立ち回りをする九郎吉/松本錦吾、すごいですね。
折平/中村隼人は今日もイケメンでこちらは荒々しさのある色男、そりゃあ待宵姫も嫉妬するでしょう。
二幕の「伊達競曲輪鞘當」は優男風な名古屋山三というまったく違う役を演じています。
個人的には名古屋山三の柔らかくおっとりとした美男子の方が似合う気がして印象的でした。
待宵姫/中村米吉はかわいくて華やかな、自分の感情を隠さないで生き生きと表現することに何ら臆さないお姫様です。
愛しい折平に相手と子どもがいることを知って動揺し、嫉妬して詰るのも父義賢との別れにわっと泣いて後ろ髪を引かれ、
感情をまっすぐに表すお姫様と米吉さんの溌溂とした持ち味が合っていていいなあと思いました。
これぞお姫様な拵えでかわいかったです。
お次は2幕。
桜咲き誇る吉原仲之町。華やぐ廓のなかでも、ひときわ目を引く粋な姿の不破伴左衛門/歌昇と名古屋山三/隼人が思わぬ再会を果たします。
二人はすれ違った際に互いの刀が当たったことから斬り合いとなり、茶屋女房のお新/新吾が止めに入りますが…。
荒事味あふれる伴左衛門と、和事味漂う山三による「渡りぜりふ」は聴きどころ。
また、対照的な艶やかな衣裳や、当時のかぶき者の風情をもとにしたといわれる、両手両足を優雅に大きく動かす「丹前六方」など、歌舞伎の様式美に富んだ華やかなひと幕をお楽しみください。
不破伴左衛門の中村歌昇さん、かっこよかったです。
先月の国立劇場「義経千本桜」とのギャップにやられました(どちらもかっこよかったです)。
姿だけでなく声も印象的で、また観る機会があるのを楽しみにしたいと思います。
舞台が吉原で、イヤホンガイドの解説を聞いていた先日見たシネマ歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」の補足にもなりました。
花魁道中でじゃらん、じゃらんと杖のようなものを鳴らしているのはその店の用心棒であることを知りました。
最後は「三社祭」
浅草浦近くを流れる宮戸川(隅田川)のほとりでは、二人の漁師(兄浜成、弟竹成)が網を打っています。三社様ゆかりの観音像の縁起などを踊って見せた後、舟を下りた二人の頭上に黒雲がたちこめ、竹成に悪玉/染五郎が、浜成に善玉/團子が二人に取りつき、軽快に踊り始めます。
浅草の三社祭を素材とした『弥生の花浅草祭』の一場面で、清元の代表的な舞踊です。
それぞれ「悪」と「善」の面をつけた二人が、悪尽くし、善尽くしの振りを躍動的に踊る展開が最大のみどころ。息を合わせる二人の競演にご期待ください。
染五郎くんはこの記事がたいへんお綺麗で色気もすごくてはっとしました。
歌舞伎座『八月花形歌舞伎』に染五郎の悪玉×團子の善玉が登場! コミカルな舞踊『三社祭』の見どころを聞く#八月花形歌舞伎 #市川染五郎 #市川團子 | https://t.co/J8vHTzLR97 pic.twitter.com/eyH099li9V
— SPICE[舞台情報メディア]/e+ (@spice_stage) August 3, 2021
舞台で踊りまくる若くてフレッシュなお2人がまぶしかったです。
コミカルな要素の多い、テンポも展開も速い舞踊であっという間でした。
重たい題材、立ち回り、かっこいい役者さんの対峙に舞踏とバラエティーに富んでいて楽しかったです。
よい気晴らし、憂さ晴らしになりました。
来月は仁左玉の「四谷怪談」を観に行きます!
読んでいただきありがとうございました。
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