観劇の感想

マスカレード・ホテル演出と出演者の力量(瀬戸かずや様と音くり寿ちゃんがすごい)

こんばんは、ヴィスタリアです。

明日花組「マスカレード・ホテル」が大千秋楽を迎えます。

別箱は1回限りの観劇であることが多いのですが、今回チケットのご縁があって初日の感想を記事にした後、
2階後方下手と1階前方寄りセンターで観劇する機会がありました。

初日の感想では書ききれなかったことや3回観劇してあらためて思ったことなどを書いてみることにしました。

なおいずれもヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちていますし、内容に触れています。

「マスカレード・ホテル」宝塚歌劇での成功

正直に言うのなら、同じ作品をリピートして観劇するとき作品の出来によっては「しんどい」と思うことがあります。

出演されている生徒さんの責任ではありませんしスタッフの方々には申し訳ないと思いながら、
話に入り込めなかったり、回収されない伏線や矛盾に気を取られたり、冗長な展開に客席で置いてけぼりになったり…。

「マスカレード・ホテル」は短期間の間に3回観劇したのですが、そういうことがまったくなく、毎回期待を膨らませて楽しく観劇しました。

楽しい観劇になった理由は大きく3つあると思っています。

1.力のある原作でストーリーがしっかりしている上に刈り込み方がうまい。かつ、宝塚歌劇らしさも満喫できる。

2.場面の転換、展開がスムース。音楽・照明・演者の力が活きている。

3.出演者の実力が高い上に見せ方がすばらしい。

1つずつヴィスタリアの思ったことを書いてみます。

力のある原作の見事な活かし方と宝塚歌劇化

東野圭吾氏の原作がしっかりとしたストーリーがあり世界が確立していることが大きいことは、小説も映画も大ヒットしていることを見れば言うまでもないでしょう。

ヴィスタリアは原作を読み(映画は未見です)観劇したのですが、谷正純先生の刈り込み方が非常にうまいと感じました。

キャラクターを減らしエピソードを削り、フィナーレ込みで2時間の公演時間に収まるように計算されています。

キャラクターで言えば原作では複数人登場する警察関係者の上層部を稲垣係長/和海しょうに集約させています。

またエピソードの削り方としては山岸尚美/朝月希和が大学受験時にホテルコルテシアのおもてなしに大感動して就職につながったエピソードが歌の1フレーズになっています。

2幕では新田浩介/瀬戸かずや山岸尚美/朝月希和に操作上の重要な秘密を明かすシーンを紗幕の後ろに配し、
幕前を音くり寿ちゃんが意味ありげに歌って横切る形にしていました。

時間を削れる上に音くり寿ちゃんのキャラクターが印象づけられました。

こうして削れるものを削り、事件の説明などの削れないものを膨大なセリフに取り入れつつ、宝塚歌劇らしいナンバーを楽しむこともできます。

新田浩介/瀬戸かずや山岸尚美/朝月希和のデュエット、
タイトルの由来となったゴージャスな仮面舞踏会のナンバーがあるのは宝塚歌劇ならではですし、
2幕冒頭の警察関係者たちのスーツにハットのナンバーもかっこいいです。

またフィナーレが見ごたえがありました。
紫色の変わり燕尾で優雅に美しく踊る花男にドレスの裾を美しく翻し気品を纏って踊る花娘たちにうっとりでした。

真ん中で踊るあきらさん(瀬戸かずや)ひらめちゃん(朝月希和)のデュエットダンスも夢々しくて揃い方もすばらしかったです。

大技のリフトがあるのですが、あきらさんに乗っかる瞬間、ひらめちゃんの体重が消えるように見えるんです。

3回見たのですが毎回そうでした。
すごいリフトだなあと客席で思うことはありますが、乗る瞬間に娘役さんの体重が消えたように感じたのは初めてでした。

谷正純先生の最近のお仕事ですとオリジナルは星組「ANOTER WORLD」がスマッシュヒットだったと思うのですが、
今回原作のある「マスカレード・ホテル」でも演出家としての力量を存分に発揮されていたと思うのです。

「ANOTER WORLD」の後しばらく谷正純先生のお名前を見かけなかったので退団されたのかしら?と思っていたのですが、
また谷正純先生のヒット作、いい作品が見られることを期待したいです。

スムースな展開を可能にした照明・音楽・演者の力

青年館の舞台は盆もセリもないのですがホテルコルテシア内のフロント、客室、別の客室、総支配人室に会議室といった場面転換が照明と音楽、そして生徒さんの演技によって実現されていました。

古い音楽ですと暗転して「ジャジャジャーン」で場面が変わったり幕前芝居が挟まれたりして退屈してしまうのですが、
植田浩徳先生の洗練された音楽がそれをかき消してくれています。

また照明も大きな力を発揮していて、新田浩介/瀬戸かずやが面倒な宿泊客栗原/高翔みず希の客室に向かう前、
菱形のスポットライトの中でネクタイを締め直すところは「一人で乗っているエレベーターの中」に見えました。

(そしてあきらさんが毎回不機嫌MAXの顔をホテルマンの愛想笑いに作り替えて栗原/高翔みず希に相対するのがよくわかりました。)

なにより生徒さんたちの演技力によるものも大きく、体の向きを変え方で別に客室に移動したことがわかったり、
目線の動かし方でホテル内を逃走する不審者の動線が見えたり、丁寧に表現されていました。

スマートフォンの通話でやりとりをして時間の経過をきちんと表現していた能勢巡査/飛龍つかさも見事でした。

出演者の磨き抜かれた実力と見せ方 瀬戸かずや様の男役芸

なんといっても短期間で3回観劇して毎回楽しかったのは作品がよかったことはもちろんですが、舞台の真ん中から端まで実力も見せ方も磨かれた生徒さんに魅せられたからです。

新田警部補/瀬戸かずやが2幕では冒頭からスーツで登場するのですが、
このあきらさんのスーツがかっこいいのなんのって。

劇場のほぼ天辺、2階席後方から観劇したとき、生徒さんのシルエット、衣裳の着こなし、背中や肩のラインや姿勢がとてもよく見えました。

そしてあきらさんの背中、肩のラインがもうかっこよくて!

ただ立っているだけで見せ方が完璧で、計算し尽くされていて緊張感がありながらとても自然、すっとそこに立っているだけに見えるんです。

眉目秀麗な顔がまったく見えない後ろ姿であっても背中が、肩が、すっごくかっこよくてこれは何方にでもできるものではないと思いました。

ちょっと座ったとき、ポケットに手を入れたときの仕草のなんと何気なくかっこいいことか。

我が道を行くプライドのある刑事の役がぴったりであると同時に、あきらさんの男役の芸の極みを見たように思います。

また警察関係で言うと稲垣係長/和海しょうの引き締め方もすばらしかったです。

しぃちゃん(和海しょう)が事件について語り新田/瀬戸かずやを叱責すると場面にピシッと緊張感が生まれます。

ゆうちゃんさん(汝鳥伶)が「我々上のものが責任を取ればいい」と稲垣係長/和海しょうに語りかけますが、
この上司から見事に綺麗に責任を負ってくれるであろうと感じました。

そして能勢巡査/飛龍つかさは回を追うごとに客席の反応が大きくなっていきました。

2幕の新田/瀬戸かずやと仲違いした後、呼び出されて馳せ参じるところではショーストップ気味に大きな笑いが起きていました。

飛龍つかさくんの思い切った、バランスのいい演技がすばらしかったですし、
プロローグなどでの歌のソロもよかったです。

音くり寿ちゃんの存在感が一際光っていた

そしてやはり音くり寿ちゃんが凄かったです。
名演、いえ怪演と言うべきものだったと思います。

1幕は老婦人として登場しますがまずこの歩き方や喋り方がうまい!

ぺたんこの靴を履いているのが染み付いているような歩き方ですし、声が本当に老婦人のものに聞こえるんです。

くりすちゃんの演技に背筋がぞわわ〜っとしたのがチェックアウトするときの「心の底から謝るわ」という一言です。

この何気ない一言がちゃんと引っかかるのは巧みに潜ませた悪意がごくわずかに立ち上るのです。

2幕では正体を明かすのですが、老婦人の変装を解くときの声の変化、悪意を剥き出しにする変わり方にも背筋が凍りつきました。

この後の歌を交えての告白は歌もセリフもものすごい迫力でした。

プロローグはトレンチコートにベレー帽がかわいくて、フィナーレではドレスの裾捌き、長手袋の手と腕の見せ方も美しくて品があって目を惹きます。

それだけにあの老婦人が同一人物なのが信じられないくらいです。

デュエットダンスの影ソロもすばらしい美声で、くりすちゃんから目も耳も離せません。

くりすちゃんは花組の舞台に欠かせないすばらしい娘役さんだと思います。
くりすちゃんに大きな活躍の場があることを心から祈ります。

先日記事にした感想と重複する部分もあったかもしれませんが花組「マスカレード・ホテル」が好きで書かずにいられませんでした。
花組最高!

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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