こんにちは、ヴィスタリアです。
元星組のカイちゃん(七海ひろき)が細川ガラシャ役で出演している「科白劇舞台 刀剣乱舞/灯 綺伝いくさ世の徒花 改変いくさ世の徒花の記憶」をライブ配信で見ました。
刀剣乱舞の予備知識0、一ヅカファンとしての独断と偏見と偏愛に満ちた感想を書きました。
なお作品の内容に大きく触れています。
「改変」という新しい舞台の模索 マウスシールド・ディスタンス・講談師
「科白劇舞台 刀剣乱舞/灯 綺伝いくさ世の徒花 改変いくさ世の徒花の記憶」というこの棒線の入った長いタイトルそのものがコロナ禍による上演形態の変更を表していると思われます。
コロナ禍で上演形態、席数のみならずチケットの販売方法も当初のものから変わったのではないでしょうか。
ライブ配信で見てはっきりと感じたのは新しい生活のなかでの舞台の在り方を模索し追求しているということです。
1.マウスシールドの装着
2.ソーシャルディスタンスの維持
3.講談師による場面転換、照明・音楽・映像の効果
出演者は全員マウスシールドを装着し、すべての場面においてソーシャルディスタンスを維持したまま舞台が進んでいくのです。
これを可能にしているのがストーリーテラーの役割を果たす講談師の存在です。
まず幕開きは講談師/神田山緑の「マスクは皆様に見えないものととして記憶されるでしょう」というような口上から始まり、
大きな場面転換があると臨場感と緊迫感の語りで動かし客席を誘っていくのです。
舞台装置はシンプルで転換がほどんとないのは”科白劇”というタイトルが示す通りですが、
凝った照明と音楽に映像は”科白劇”というものを超えた迫力があり、違和感のない舞台公演だったのではないでしょうか。
こういう空間的な五感に訴えてくるものは生の劇場でないと本当の効果や臨場感はわからないのですが、ライブ配信の映像でもそう思えるものがありました。
特に刀剣乱舞と称するくらいですから気迫のあるソロでの立ち回り、殺陣のシーンに照明と音楽は欠かせないものだったと思います。かっこよかった!
殺陣のシーンはかなり多いのですがソーシャルディスタンスの維持は失われることなく、接近戦もその場で刀を抜いて講談師のセリフがカバーしているのが印象的でした。
7月半ばからだんだんと劇場が、舞台が動き出すなかで客席を守る対策がなされていますが、この”科白劇”は出演者・スタッフも守る新しい舞台の可能性が形になったと言えるかもしれません。
多くの模索と検討、追求があったことでしょう。
21日間38公演が無事に大千秋楽を迎えたことは舞台芸術、エンタメ界にとっても明るい希望となったと思います。
七海ひろきが巻き起こした旋風 細川ガラシャは刀ステのトート閣下かオスカル様か
七海さんが演じるのは細川ガラシャ役で、2016年から上演されている舞台「刀剣乱舞」(通称:刀ステ)シリーズ史上初の女性キャストだったそうです。
刀剣乱舞の世界を知らない者が軽々しく言うべきではないのかもしれませんが、このことを知ったときに七海さんが新しい風を起こそうとしていると感じました。
そして実際に初日の幕が開けるとtwitterのタイムラインにガラシャ様に落ちたという宝塚歌劇を知らないであろう方たち、刀ステファンのツイートがものすごい勢いで流れてきて
七海さんは風ではなく旋風を起こしたのだと勢いを実感していました。
七海さんは退団後も変わらぬビジュアル、かっこよさで退団後の初主演作「RED and BEAR」は男役なのか男装している女性なのか詳らかにされなかったこともあって、
女性の役を演じているとどうなるのか想像がつかないところがありました。
細川ガラシャ/七海ひろきはまず明智光秀の娘、細川忠興に嫁いだ気高い女性、凛と清らかなキリシタンの信仰を持つ者として登場しました。
七海さんが生身の女性から男役というフィルターを通した上で女性の役を演じる(宙組「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラ)のではなく、女性として女性の役を演じるのを初めて見たわけですが、
美しさとどこか神秘的な静謐さにはっとしました。
ガラシャの女性的な柔らかさや繊細さ、女性ゆえの悲哀も丁寧に表現されていて、(七海さんがやりたいかどうかは別として)外部の舞台で女性の役をなんら違和感なく演じられると感じました。
ガラシャの物語は夫細川忠興/早乙女じょうじとの悲しいすれ違いの愛憎劇が主軸になっています。
ものすごくざっくりとした、大雑把な筋書きの要約を書いてみます(※ネタバレを含みます)↓
ガラシャ/七海ひろきの父明智光秀が細川忠興の主君織田信長を討ったことで互いを想い合う夫婦の仲は引き裂かれる。
本来であれば離縁となるところを忠興はガラシャ愛しさゆえに山奥に蟄居させる。
しかしガラシャはいっそ愛する夫の手にかかりたいと望んでいた。
愛憎相半ばする2人は旅の果に対峙し、「私もあなたが憎いのです。憎くて憎くて、愛おしくて身を裂かれそう。あなたに斬られるなら本望です」と言い募るガラシャに忠興は刀を振り上げる。
しかしその刀が下ろされる前に忠興はガラシャを慕う高山右近の凶刃に倒れ、ガラシャの目の前で命を落とす。
深い悲しみのあまりガラシャ/七海ひろきは人ならざるものに化身するーー
まずこの愛憎を抱いた夫を失った深い悲しみと慟哭が圧巻でした。
「私の罪を誰かに許してほしかった。私が背負った罪は愛する人を憎んだこと。
どんな神とてこの罪を許すことはできない。
私の罪を許すことができたのは、私を蛇と呼んだあの男だけだった」
そしてこの変貌を遂げたガラシャ/七海ひろきのメタモルフォーゼが衝撃的で、画面の前で思わず悲鳴をあげてしまいました。
白い軍服にマントを纏い、白銀色の縦ロールのロングヘアをなびかせる姿はトート閣下かオスカル様か、あまりの美しさとかっこよさにひれ伏しました。
さらに凝った装飾のほどこされた薙刀を振り回しての立ち回り、見得の決め方にも元男役の経験がいかんなく発揮されていました。
なぜこのガラシャ役に七海ひろきがキャスティングされ、多くの方々がガラシャ様に落ちていっているのかがよくわかりました。
そしてこの変貌のネタバレをしないでくれていた、twitterなどでフォローしたり仲良くしてくれている七海ひろきの妻たちへの深い感謝を感じました。
舞台、ライブ配信をご覧になっていない方はどうぞぜひガラシャ様をご覧ください↓
刀ステ38公演。
この様な状況の中で無事に千秋楽を迎える事ができたのは、皆様のお陰です。細川ガラシャとして板に立つことを快く受け入れて下さいまして、本当にありがとうございました。
とても幸せな21日間でした。
一生忘れません。 pic.twitter.com/AeBysbSraR— 七海ひろき (@hirokinanami773) August 9, 2020
科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』のゲネプロ撮影写真その3です。
続く pic.twitter.com/7Rbl8UCIDR— でじたろう@ニトロプラス (@digitarou) August 9, 2020
七海さんのすごいところは、たしかにこの変貌は男役の経験があってこそできるものだと思いますが男役そのものではない、新たな人物を作り上げて表現しているところです。
イメージや設定で言えば「ベルサイユのばら」のオスカルに通ずる部分があり
人ではないという意味では「エリザベート」のトートのようでもあり、
またヴィジュアルではなく内面からすると娘役の役どころですが「龍の宮物語」の玉姫の悲しみも思い出しました。
七海ひろきという女性が→ガラシャという女性の役を演じ→ガラシャが男役的に変貌し→さらにガラシャの戦国の世に生きる女性の悲哀と愛が溶け込んだ存在は言葉にしがたい、ミステリアスでふしぎな魅力がありました。
一言では言い尽くせないこのガラシャ様をもし生の劇場で観ていたらどんな思いを抱き、どの瞬間にセリフに心を揺さぶられたでしょう。
いつか”改変”ではない形で上演される機会があればこの目で観てみたいです。
千秋楽のご挨拶で七海さんは凛と誇りのある言葉を残してくれました。
いまここに、一輪の奇跡の花が咲きました。
この舞台に関わるすべての方が命がけで咲かせてくださった花だと思いました。
皆様の胸に咲いた花がいつか、実を結びますように。
あなたこそ徒花ではなく唯一無二の細川ガラシャという一輪の大輪の花でした。
なおこの「刀剣乱舞」はディレイ配信が本日20時からあります(詳細はこちら)。
七海さんご自身は新たなフィールドを拓ききっと新たなファンを増やしたでしょうし、
刀剣乱舞を知らない宝塚ファン(私です)を刀剣乱舞の世界に触れる機会をつくり、また宝塚を知らない方が宝塚に興味を持つきっかけをもつくられたかもしれません。
久しぶりに七海ひろきさんが最高にかっこいい、刀剣乱舞と同じニトロプラスさん原作の星組「サンダーボルトファンタジー」を見直したくなりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ランキングに参加しています。
ポチッとしていただたらうれしいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓