こんばんは、ヴィスタリアです。
宙組「夢千鳥」のディレイ配信を視聴しました。
簡単にですが視聴しての独断と偏見と偏愛に満ちての感想を書きました。
栗田優香先生のデビュー作「夢千鳥」退廃的な美を極上の美にする
「夢千鳥」は栗田優香先生のバウデビュー作です。
「龍の宮物語」で指田珠子先生が鮮烈なデビューをされましたが
「夢千鳥」も見応えのある佳作で、宝塚歌劇団の女性演出家の先生方の活躍がうれしくなります。
大正時代の竹久夢二の物語と、その映画を撮っている昭和とを行き来する物語であることが本編前に
主演の和希そらくんがコメントで教えてくれました。
ありがたや~。
栗田先生の「夢千鳥」は一つひとつを挙げることはしませんが台詞の美しさ、言葉のセンスが光っていると思いました。
また鳥籠が舞台を覆うようなセットや鳥というモチーフ(赤と青の対比)、衣装などの細部とヴィジュアルにも美しさへの拘りが感じられ、
この先の作品も楽しみになりました。
2つの時代を行き来し混ざり合うのも演劇的でおもしろかったですし、実力者揃いの配役が絶妙で見応えがありました。
特に嫉妬する夢二と他万喜が着物で裸足でタンゴを踊り、周囲に現代の服装の黒いシャツ・パンツの男役さんと黒いミニドレスの娘役さんが踊るのは演劇的かつ宝塚的でとてもよかったです。
ここは台詞で説明される夢二と他万喜の関係性も愛憎にまみれていて退廃的で刹那的で、
すみれコードぎりぎりでは!?と思いつつ、美しさもあって忘れがたいものになりました。
夢二と3人の女性だけでは宝塚歌劇になりきらなかったのでは…?とも思わなくもないのですが、
ラストシーンの白澤/和希そらと礼奈/天彩峰里が美しい結末へ導き、かつフィナーレもたっぷりあって浸れました。
フィナーレが長めでスーパーショースターなそらくん、そして充実している宙組生の実力が堪能できてうれしかったです。
まさかロケットまであるとは!
役ごとの感想
実力者揃い、かわいい娘役さん揃いでぜひとも劇場で観たかった…と思いました。
こんなにすばらしい公演が数日で中止を余儀なくされたことが残念で悔しくてなりません。
◆白澤優二郎・竹久夢二/和希そら
黒髪の、ウェーブをかけた前髪が額にかかっているのが陰とどこか退廃的な色気があってとてもかっこよかったです。
他万喜/天彩峰里とは諍いばかり、魂と魂がぶつかるような争いとすれ違いばかりでしかし離れがたく、
彦乃/山吹ひばりの前では笑ってみせるけれど彼女だけでは救われず、
お葉/水音志保の前ではまっすぐな彼女にかっとして嫉妬する。
鳥がテーマになっていますが夢二の比翼連理は見つからなかったのだなと思いつつ、執着と嫉妬と芸術へと衝き動かれ命を削るように描かずにいられない、
正統派な男役像とはまた違う役に芸達者な和希そらくんの新境地を見た思いです。
そらくんは芝居・歌・ダンスとずば抜けた実力があって、なおかつちょっと陰と湿度のある色気がある男役さんだなあと思いました。
うんと明るい陽のキャラクターもお似合いだと思いますが、それだけではないのだと存分に魅了してくれました。
「アナスタシア」をSS席どセンターで見たとき、客席をものすごく見てくれるし、視線を逸らそうとすると舞台からじ……っと圧をかけてくるのが印象的で、
存在感と目の離せない色気があったのを思い出しました。
彦乃を失ってのソロのダンス、フィナーレはこれぞそらくんですばらしかった!
劇場で観たかったです。
◆赤羽礼奈・他万喜/天彩峰里
じゅっちゃんったらいつの間にこんなに深紅の口紅が似合うようになったんでしょう。
少し前に「アナスタシア」で幼いアナスタシアで愛らしい少女を演じていたというのに、匂い立つような色気がありました。
他万喜の何も言わずに目を伏せて無言で夢二を責める雄弁さといったら。
黒✕赤の着物に抜いた襟もかっこよくて、色気があって強く印象に残りました。
夢二との責め苦のようなタンゴに折檻(!)も、男たちに囲まれて気を引くのも艶っぽくてどきどきしました。
「私の愛からは逃れられない」という叫びが鬼気迫っているのも、彦乃の良心に常識の範疇に収まらないお願いごとをするシーンの微笑みにもぞわぞわするような凄みがありました。
歌もダンスもよくて、フィナーレのドレスにデュエットダンスも素敵でした。
◆彦乃/山吹ひばり
「青鞜」を読み耽る女学生は「はいからさんが通る」の環であり紅緒でもあるんですね。
かわいくて華があって、少し硬質寄りの声もかわいくて、歌もお上手で、これから新人公演や別箱ヒロインなどで活躍されるのでは――見てみたいなあと思いました。
夢二に「大きい声出るね」と言われて恥ずかしがるところで本当に頬が校長しているように見えて、
色そのものは映像ですから見間違いだとしても、ひばりちゃんの纏う空気にその心がちゃんと表れていると思いました。
東郷青児/亜音有星の前で正直で、また嫉妬を隠さないのも魅力的だと思いました。
◆お葉/水音志保
熟れた果実のような艶のある美しい女性だと最初に登場したときは思いました。
社交的で華のような女性かと思えば、お葉にも烈しさがあって、そのまっすぐさに胸打たれました。
「アナスタシア」でもかわいくて印象的でしたが和物でもかわいくて美しくて、特に横顔が本当に絵になるような美しい娘役さんだなあと思いました。
◆笠井定代/美風舞良
美しい、パワフルな歌声に圧倒されました。
最後に組替えのご挨拶があってうれしかったですし、涙を浮かべながらも満開の花のような明るい笑顔ににこちらの気持ちも明るくなりました。
花組でのご活躍も楽しみにしています。
◆藤岡正・久本 信夫/凛城きら
こんな優しくて聞き上手なマスターのいるバーに通いたいです。
「アナスタシア」でも思ったのですがりんきらさんの黒燕尾がとても美しくて映像でも目を引かれました。
◆紺野陽平・恩地 孝四郎/留依蒔世
バーテンダー(昭和)と狂言回し的な役(大正)の2役でした。
こんなかっこよくて軽妙さのあるバーテンダーさんのいるバー、通いたいです。
2幕の大正の場面で彦乃を失った夢二にぶつける言葉のまっすぐさ、深くしみる歌がとてもよかったです。
◆神崎社長/穂稀せり
巧いですねえ。出てくると安心感がありますし、こういうお偉いさんいるなあと思わせてくれます。
ダブルのスーツの着こなしもどっしりとした大物感があってよかったです。
◆笠井宗重/若翔りつ
こちらも巧いですねえ。
彦乃の父親役なので壮年の男性ですが、威厳・貫禄はもちろんおこと、1幕の最後で捌けていくときの歩き方、腰が落ちているのがその年齢の男性らしくて唸りました。
99期はいぶし銀の実力者が多いと思っているのですがりっつくんはその筆頭だと思っています。
◆菊子/花宮沙羅
神楽坂の芸者さんで、口跡がいいのと明るい声がかわいかったです。
声が元花組トップ娘役のゆきちゃん(仙名彩世)に似ているような気がしました。
好きな声です。
◆西条湊・東郷青児/亜音有星
他のキャラクターは大正と昭和で演じるキャラクターが重なっているのですが、キョロちゃんだけはまったく違うキャラクターで鮮やかな演じ分けが楽しかったです。
西条はちょっと浮ついていて、東郷は思いつめていて。
フィナーレのロケットのセンターでキレキレのダンスと笑顔が輝いていました。
終演後のご挨拶で一生懸命お話するそらくんが涙を流していて、次は劇場でたくさん拍手をして笑顔が見たいと思いました。
終演後に劇団のホームページを見ると5月12日からの公演再開のお知らせがありました。
公演再開はうれしいですが、この2週間の公演中止はなんだったのかという悲しみと虚しさも感じています。
公演が再開されるとすぐに劇場に行くことになりそうなので直接大きな、心からの拍手を届けてきます。
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