こんばんは。ヴィスタリアです。
月組「夢現無双」の作品に続いてキャストについての感想です。
例によってヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちたものになります。
宮本武蔵/珠城りょう
トップスターがこれほど苦悩し打ちのめされ叱咤され、相手役とのラブシーンもないというのは珍しいような気がします。
前半はほとんど打ち負され傷を負ってばかりです。
そういった武蔵をいかにかっこよく見せるかがたま様の男役としての技量の見せどころではないでしょうか。
そしてたま様の武蔵はかっこよかったです。
ワイルドな髪型がよくお似合いで、関ヶ原の戦いの甲冑姿もこざっぱりとした藍色の着物、黒の着物姿もすてきでした。
登場のシーンで本位田又八と2人でせり上がってきて、ライトが当たる前のシルエットだけでもたま様は一目でわかります。
堂々たる体躯が剣豪宮本武蔵のイメージにぴったりでした。
立ち回りが多いですが長い手足で大きく動く武蔵は美しく、迫力もありました。
作品の感想でも書きましたが短い場面が続き時間と場所がどんどん動いていくなかで、武蔵の心情の変化、成長していく過程をていねいに表現していて、時間や場所の変化にメリハリをつけていると思いました。
この作品はたま様をはじめ月組生の芝居に助けられている部分が大きいのではないでしょうか。
沢庵/光月るうの導きによって新免武蔵から宮本武蔵へと生まれ変わった後ざんばらの髪で銀橋を渡るところ、
そして小次郎との対決を前にした舟での独白がかっこよくて特に印象に残りました。
お通/美園さくら
一途に武蔵を想い慕うお通はさくらちゃんにぴったりでした。
お通はただ武蔵を慕っているだけでなく、激しさや強さも持ち合わせています。
許嫁の又八から心ない手紙を受け取って「恥ずかしくてこの村にいられない」と言い、すぐに武蔵に一緒にこの村を出ようと持ちかけたりします。
お通は武蔵への思いを自覚しますが剣の道を選んだ武蔵は応えてくれません。
すれ違い、守られない約束、なかなか会うことさえできません。
しかしさくらちゃんのお通は健気でかわいそうな女性ではなく、芯の強さがありました。
お通の秘めた強さ、激しさが伝わってきましたし、さくらちゃんに似合っていると思いました。
ピンクや水色の着物もかわいらしかったです。
特に水色のお着物で脚絆や旅まで水色なのがとってもかわいくて清楚でお似合いでした。
得意の歌になると存在感が増すといいますか、さくらちゃんの「伝えたい」気持ちが花が一気に開くようでした。
佐々木小次郎/美弥るりか
このお芝居の第一声は小次郎のアナウンスでした。
幕が上がると本舞台には若き日の小次郎と武蔵の父 新免無二斉/紫門ゆりやの緊迫した場面で始まりました。
この公演で退団されるるりかちゃんへのはなむけにジーンとしてしまいました。
しかしその後しばらく小次郎の出番はなく、また出番の一つひとつも長くはありません。
短い出番でも小次郎の冷え冷えとした孤独と武芸の達人として研ぎ澄まされた、常人ではない空気がるりかちゃんのオーラ、目の使い方、歩き方、佇まいから伝わってきました。
吉野太夫/海乃美月に「寂しい人に」とキリシタンである自身の大切なロザリオを渡しますが、そういう小次郎こそが寂しい、誰にも心を許していないことが伝わってくるようでした。
立ち回りも多いですが、なんといっても武蔵と最初に刀を合わせたときの有無を言わせぬ強さが最高にかっこいいと思いました。
小次郎の一番の見せ場は武蔵との対決の前に銀橋を渡り「これが私の道」と歌うところでしょうか。
しかしせっかくの見せ場でありながら場面のつなぎ、転換の唐突さが気になりました。
舟島での武蔵との対決の描かれ方も淡々としており、できることならもう一歩深みのあるやりとりやなどがあってほしかったです。
本位田又八/月城かなと
正統派の美貌のれいこちゃんがダメな男を演じていました。
又八は勇気もなければ武芸も極められず、お甲/白雪さち花に溺れヒモとなり、そのお甲が別の男に乗り換えるのも見ているしかないという男です。
れいこちゃんがこのだらしない又八を演じると美しさと色気がありました。
お甲の派手な真っ赤な着物を羽織って寝そべり酒を飲むところなど絵になっていました。
芝居も歌もさすがの安定感で、小次郎/美弥るりかと遭遇してしまったところは笑いを誘っていました。
後半の宮本村に帰ってからの又八なりの心の入れ替え方の演技もさすがの巧さでした。
吉岡清十郎/暁千星
ヴィスタリアは「カンパニー/BADDY」から観劇しはじめたので、ありちゃんには「カンパニー」の蒼太や「ON THE TOWN」のチップの元気いっぱいの男の子のイメージがありました。
今回のありちゃんはそういったイメージのまったくない役でちょっとどきどきしました。
今回の吉岡清十郎役でありちゃんの凄みのある美と色香を見たように思います。
京言葉で黒く長い髪をはらりとたらし、朱実/叶羽時の顎を扇子で持ち上げるところなどドキドキしました。
スタイルがよくて着流し姿が美しかったです。
吉野太夫/海乃美月
只者ではない遊女をうみちゃんは好演していました。
うみちゃんは「THE LAST PARTY」ゼルダ、「エリザベート」ヴィンディッシュ、そして「アンナ・カレーニナ」のアンナと、存在感と華やかさを加速度的に増していると思います。
今回の吉野太夫も艶やかで、彼女もまた戦いの場所に身を置く”つわもの”である迫力が感じられました。
上手前方で観劇した際に琵琶を弾くうみちゃんがよく見えたのですが、弾き方も工夫しているのがわかりました。
小次郎/美弥るりかに「寂しい人」と言われたときの反応、余白に彼女は自分の寂しさは誰にも埋められないと思っているのかなと思いました。
その他印象的だったキャスト
芝居の月組だけあって芝居巧者が多く、見ごたえがありました。
一言ずつですが触れさせてください。
◆沢庵宗彭(そうほう)/光月るう
歌ってよし、ストーリーテラーしてよし、お通に下世話なことを言ってし、呵々と笑ってよし。
るうさんの演技は自由自在で存在感がありました。
武蔵を厳しく叱咤し新免武蔵の死を告げるところは迫力がありました。
◆お杉/夏月都
いやな婆なんです。
又八を猫かわいがりしたりお通に厳しく当たったり、ほんとうにいやな婆だなあと心底思うほど上手でした。
でも彼女には自分の息子を大切にしているというという彼女なりの理屈があるのもわかり、憎めませんでした。
◆宍戸梅軒/風間柚乃
眼帯姿の野武士スタイルがワイルドで、男くさい雰囲気のおだちんによく似合っていました。
◆お甲/白雪さち花
お色気た~っぷりなさち花さん。
これ以上ないぴったりな配役でした。派手な着物や髪型、日本物のメイクも美しかったです。
◆朱実/叶羽時
いいお役でした。武蔵へのまっすぐな思い、「好きだよ」というときの表情がよかったです。
「かもね」「不潔」など一言の言い方がぐっときました。
彼女には幸せになってもらいたいです。
◆城太郎/結愛かれん
子役がたくさん登場して、冒頭から登場する武蔵(少年)/香咲蘭の巧さも光っていると思いましたが、かれんちゃんの城太郎は本当に上手でした。
「こういう男の子、いるいる」と思いました。
◆白い烏、小茶/天紫珠李
白い烏の伸びやかな踊りが目を引きました。非常に目立っていました。
少女の小茶もかわいかったです。
そのほか蓮つかさくん、夢奈瑠音くんの侍姿が美しくて印象的でした。
朝霧真くん、佳城葵くんも好きなので注目して見ました。
以上、キャストごとの感想でした。
次はショー「クルンテープ」の感想に続きます!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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