こんばんは、ヴィスタリアです。
青年館で初日から間もない「君の輝く夜に〜FREE TIME,SHOW TIME〜」を観劇しました。
この記事はヤンさん(安寿ミラ)ファンで宝塚ファンのヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、中にはネタバレにあたるものもあるかと思います。
目次
「君の輝く夜に」再演のパワーアップのカギはギャップにある
「君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~」は大人のためのお洒落で粋なミュージカルでなにもかもが最高すぎて、客席で感じた魅力や感動をいったいどう言葉にすればいいのかわからないまま書き進めています。
スタンダードナンバーと昨年佐山氏のオリジナル曲の音楽、生バンドの演奏が最高で、歌って踊る4人のパフォーマンスは極上。
そして4人が演じる役は絶妙のあてがきでこの上なく魅力的。
ストーリーは爽やかでありながらほろ苦さも適度にあって、季節に喩えるなら楽しくて明るいばかりの初夏や真夏ではなく、日の短さや風の涼しさに切なさや寂しさを感じる夏の終わり。
舞台から受ける印象、感想の大軸は昨夏の京都劇場での初演と変わらないのですが、初演では上演時間100分だったのが120分に拡大しており、拡大した分はブラッシュアップではなくパワーアップしていると感じました。
拡大したうちの10分はSHOW TIMEで、これについてはこちらの記事に書きました。
本編も約10分拡大していることになりその分ていねいに描かれているからなのか、演じている4人がいっそう役に入り込んで一体化しているのか、あてがきのはまり具合が何段階も深いものになっていると感じました。
4人それぞれの思い切りのよさのようなものが強調され、キャラクターたちのエッヂの利かせ方が一層際立っいるからこそパワーアップしていると感じるのかもしれません。
そしてエッヂが効くとはつまり、キャラクターの外見と内面や個性、その人をその人たらしめるものとのギャップが一層強くなることであり、ギャップというのは人を惹きつけてやまないものです。
役を生きる4人のキャストの感想
「君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME」は海辺のダイナーで出会い、1泊2日をともに過ごすことになった1人の男(ジョージ/稲垣吾郎)と3人の女たち(ビビアン、ライザ、ニーナ)の物語です。
4人とも日本人ではあるものの横文字の名前で呼び合うのですが、4人それぞれ名前の由来の違いにも個性が出ているのです。
ジョージ(森本譲治)/稲垣吾郎
彼の「ジョージ」だけが本名そのままで、彼の自然体の飾らないかっこよさを表しているように思いました。
飾らなさ具合がいかにナチュラルでさりげないかっこよさに見えるか。
これは真にオシャレでかっこいい人にしかできないでしょう。
ダイナーで出会った女3人に「一途だけどチャラい」と評されるジョージですが、ロマンチックにも思えるほどの一途さがありながら、
それを打ち消すように繰り出されるチャラさも許してしまうかっこよさなんです。
そしてそれを思い切り出す稲垣さんの魅力と確かな演技に客席が大いにわきました。
たとえばアジフライを作るとき「いいの!やるの!」と言い張る少年性が垣間見えるピュアな魅力を感じながら、コミカルさに笑わずにいられなくてバランスが絶妙なのです。
ビビアン/安寿ミラへの昔の恋人への伝言の頼み方にはすてきな夢を見させてもらいましたし、「やっぱりいい男だなあ」と思います。
このチャラさとピュアさのバランス、甘く優しい歌声に癒され、稲垣さんだけが作り出せる世界へと誘われました。
昨年亡くなられた佐山さんが稲垣さんのために作られた曲たち(「10 years」「夢にして僕を」など)、SHOW TIMEの「イパネマの娘」を聞くことができて本当によかったです。
カーテンコールでの愛ある厳しめの客席弄りも楽しかったです。
ビビアン(日比野杏)/安寿ミラ
ライザに「日々野杏…ビビアンね」と言われて「よく言われるわ」とさらっと受け流して謎めいた笑みを浮かべてみせます。
横文字のあだなが不自然ではないどころか「よく言われる」ほど美人でおしゃれで外見は完璧。
会社を経営してベンツを乗り回し社会的には成功しているけれどプライベートでは2回の離婚を経験している「愚かで酒飲み」の女性です。
ビビアンのミステリアスに見えて意外にも素直でわかりやすいギャップがヤンさんのギャップと重なってファンとしてはたまりませんし、
初演よりもギャップが一層際立っていてビビアンの情の濃さや嫉妬、感情の起伏、ツンツン具合がたまらなくキュートで魅力的で、ヤンさんのコメディセンスを存分に味わうこともできました。
ビビアンのミステリアスな雰囲気は2幕のジョージとの2人芝居での目力や圧、そして店を去るときのやりとりに生きていると思います。
ついジョージとビビアンの間には次の10年を待たずになにかがあるのでは…と想像したくなってしまいます。
芝居でもSHOW TIMEでも洗練された美しいダンスとポーズはヤンさんにしかできないもので最高でしたし、歌もいい!
後述しますが「人生の風のように」には心を打たれました。
初演のときとは歌い方(場面のあり方、見せ方)が変わったといいますか、スターのオーラを強く押し出しているのが印象的でした。
SHOW TIMEでは装飾的な白燕尾とケーンに深紅の口紅でロングヘアをひるがえして踊り歌う姿のかっこよさと美しさ、どの瞬間を切り取っても完璧で心のすべてを奪われました。
ショースターとしてのヤンさんのオーラ、見せ方、キメ方、視線の投げ方にときめかずにいられませんでした。
ライザ(高橋清子)/北村岳子
彼女だけが自分の名前とはまったく関係のない、自分の好きなライザ・ミネリにちなんでみずから「ライザ」と名乗ります。
これだけをとってもライザの自由な生き様、ポジティブなエネルギーが伝わってくるようですし、北村岳子さんの弾けるような、自由自在のパフォーマンスと重なって一層輝いています。
ライザ/北村岳子の酸いも甘いも味わっているであろう大人の女の力の抜き具合、
ジョージ/稲垣吾郎にグイグイ迫りながらもちゃっかり恋人はいて、いろいろある人生を思い切り楽しもうとしているであろう前向きさは粋です。
このジョージ/稲垣吾郎への迫り方がまあすごい!
グイグイどころではないのですが笑ってしまいます。
そして北村岳子さんのエネルギーは歌とダンスにも存分に発揮されていて、ハスキーでジャズに合う歌声、歌唱もダンスもすごいんです。
SHOW TIMEのタップダンスは必見ですし、プログラムの座談会のなかでさらりと「私はタップダンサーですから」と言うプロとしてのさりげない自負とプライドもかっこいいです。
客席もノリノリで手拍子せずにはいられないのでした。ブラボー!
ニーナ(蜷川宏美)/中島亜梨沙
彼女はライザによって苗字にちなんで「ニーナ」と呼ばれます(そしてなんと呼ばれても「私は私」と気にしていなさそうな気がします)。
ニーナ/中島亜梨沙は美貌と長く細い手脚のすばらしいスタイルとワイルドで健康的な溌剌としたエネルギーのギャップがたまらなく魅力的です。
「謎めいた美女」という言葉はビビアンもニーナにもあてはまりますが、ビビアンがミステリアスならニーナはワンダー。
ビビアンが自らの謎を”演出し作り出している”としたらニーナは自分の思うままの”自然体”でいたら謎になっていた…そんなイメージを抱きました。
4人で痛飲した翌朝、ニーナの自己嫌悪に陥っての暴れっぷりがすごかったです。
ヴィスタリアが観劇したときはジタバタと暴れすぎて壁に頭をぶつけてしまい、「痛い……」と呻くアドリブがありました。
このジタバタ具合にもニーナの元気いっぱいのヘルシーさ、エネルギーがあふれていて魅力的です。
ワイルドでヘルシーなニーナがSHOW TIMEでショートパンツの白燕尾になると白燕尾がプリンセスのドレスになるように、華やかなオーラが一気に花開いて目を奪われました。
ヴィスタリアは宝塚歌劇時代の娘役スター羽桜しずくとしての中島亜梨沙さんは未見なのですが、すてきな娘役さんであったことが目に浮かぶようでした。
背中を押してくれた4人に乾杯!
最後にヴィスタリアが本筋とは関係のないところで心を動かされたところを書いておきます。
1つはビビアン/安寿ミラの生い立ちを歌い上げた「人生の風のように」です。
ある日それは 突然だった こんな私
愛しく 思えて いたのよ
愚かだけれど 酒飲みだけど これが私なのだ
宇宙に たった 一人の 女
ビビアン/安寿ミラの響く歌声、オーラと存在感を強く押し出す見せ方に釘付けになりながら、
この歌詞が沁みて(ヴィスタリアは酒飲みなので特に)、愚かでいやになることが多い自分だけれど「自分は自分。これが私」と思っていいのかもしれないと励まされました。
もう1つ同じように力をもらったのがニーナ/中島亜里沙の自己嫌悪からのポジティブな立ち直りっぷりです。
ニーナ/中島亜里沙は「私は酷い女なのよ」とわーわー泣いているところをジョージ/稲垣吾郎に慰められ力を得て、でもそのままジョージになびいたり心を残したりはしません。
ニーナ/中島亜里沙は自分の力で困難に立ち向かうことを決意し、新たな旅へ向かう切り替えの早さ、バイタリティ、前向きさにはまっすぐな勇気と元気をわけてもらったように思います。
舞台は生ものですから観劇するときの自身の心身の状態によって感想や感じるものも変化しますが、この「君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~」は元気になれる、さわやかな気分転換をくれるように思います。
たとえるなら夏の夕暮れに気持ちのいい風に吹かれながら飲むキリっと冷えた1杯の白ワインあるいはシャンパンのような…それも極上のやつ。
次の観劇が待ち遠しく何度も見たくなる舞台でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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