おはようございます。ヴィスタリアです。
エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサートのアニバーサリースペシャルバージョンを視聴しました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ち満ちたものです。
望海風斗のトートがすごかった
すごかった…の一言に尽きます。
豊かな歌唱力はもちろんのこと、芝居の表現、役の掘り下げ方が深い上に的確で
こんなトートがあり得るのかという衝撃を受けました。
つい2日前にはルキーニの圧倒的な演技と歌に打ちのめされ、今回はトートの解釈・表現と歌に激震が走り、
望海風斗という稀有な舞台人に心からの敬意を抱かずにいられません。ブラボー!!
これは個人的な意見ですが、のぞ様の現役時代はトートのイメージがわかず、
同じウィーンミュージカルなら「モーツァルト!」の育ちと才能がゆえに苦悩する姿の方が似合いそうだなと思っていました。
宝塚歌劇では上演されない演目ですがきぃちゃん(真彩希帆)のコンスタンツェともども見てみたいと妄想していました。
配信を見終えてそのイメージは消え去り、
雪組公演で望海風斗さんのトートだってありえたんだ…と考えが変わりました。
まずトート/望海風斗のヴィジュアルがすごすぎて登場のシーンから度肝を抜かれました。
黒髪にシルバー✕紫の混じったロングヘア、
細く吊り気味の眉、黒い口紅にゴージャスな衣装は本公演のトートさながらで
「今日はフルコスチュームバージョンじゃないよね?」と思いました。
カツラ、舞台化粧の雰囲気に初演のいっちゃん(一路真輝)のトートのヴィジュアルを想起しました。
終演後のご挨拶でのぞ様が「初演の一路真輝さん、星組の麻路さきさん…」とお名前を出されていましたが、
原点回帰あるいは深いリスペクトの表れ、もしくはヅカファンとして「やったみたかった」を実現されたのかしら…と妄想想像しました。
さらにトート/望海風斗は右の額から耳の横にかけて黒いペイントを施し、
ペイントの所々と下瞼の中央にラインストーン(ラメ?)がキラキラと光っていました。
この目の下のラインストーンがきらきらするのがトートがずっと深い孤独を抱いて、分かち合える誰かを追い求めて泣いているかのように見え非常に効果的に感じました。
特に強く感じたのが2幕のルドルフ皇太子/澄輝さやとを失ったエリザベート/明日海りおが「死なせて」と縋り口づけようとして
彼女が自分を受け容れていないことに気づくシーンです。
カメラアングルがトート/望海風斗を正面から捉えたとき、
表情とライトに輝くラインストーンの煌めきに涙がこぼれているようだったのです。
トート/望海風斗は自身の孤独を分かち合える誰かとしてエリザベート/明日海りおを熱望し執着し、
それは恋情よりも強い、彼の孤独な魂の叫びのように感じました。
1幕の「最後のダンス」でシシィに拒否され、トート閣下がシシィに恭しくお辞儀をして手をすっと出すシーンがあります。
このトートの手はお辞儀の延長の優雅な仕草であることが多いように思うのですが、
トート/望海風斗の手はシシィ/夢咲ねねを明らかに求めて伸ばされていました。
その手をシシィ/夢咲ねねに拒絶された後、トートの表情は揺らいでいて、
こんなお辞儀をするトート閣下も、トート閣下のこんな表情も見たことがないと衝撃を受けました。
2幕の「私が踊る時」の後では自信にみなぎり堂々と対峙するエリザベート/明日海りおの背中を
憎々しげな表情で強い目を据えていたのもそうです。
さらにラストシーンでセットの階段の上――黄泉の国から彼女を迎えにくるときは勝ち誇るような表情を浮かべていて、
これも衝撃的でした。
なぜならトートとシシィの長年の対立が恋情とは違うもののように感じられたからです。
副題が「愛と死の輪舞曲」であることは承知の上ですが、のぞ様のトートとみりおちゃんのエリザベートを見ていると、
2人の関係は恋愛ではなくもっと次元の高い、あるいは根源的な魂の片割れを渇望するものではないかと解釈したくなりました。
明日海りおのエリザベートもすごかった
1幕は夢咲ねねちゃんがシシィを演じ、
2幕はこれが退団後の舞台では初めての女性の役となるみりおちゃん(明日海りお)が演じるという夢のようなキャスティングです。
エリザベート/明日海りおの登場のシーンがオーストリー・ハンガリー二重帝国の戴冠式であることもあり、
女性である以前に君臨する誇り高い人物という印象を抱きました。
戴冠式はこの作品においてエリザベートのキャリアの頂点、勝利の証でもありますから、
その面を強く打ち出してきたのか…と興味深く思いました。
最初は女性の役として、それこそもぎたてのフルーツのようにフレッシュでまだ硬さがあるのかしら?と頭に浮かんだのですが、
在団中に女役だって演じ退団後に映像の世界で次々と女性の役を演じているみりおちゃんがそんなわけはないとすぐに思い直しました。
このトートだからこそこのエリザベートなのだと。
トート/望海風斗と対峙するみりおちゃんの散らす火花がバチバチで、
男役が常に主役である宝塚歌劇のトートとエリザベートではないんだとも感じました。
あんまりバッチバチにスパークしているので「明日海さん、まだトート(男役)がやり足りないのかな」と頭をよぎりました。
この強く気高いエリザベート/明日海りおがトート/望海風斗と対等に攻防しているからこそ
トートとエリザベートが恋愛関係ではないと思ったのです。
レマン湖のほとりでルキーニの凶刃に倒れてトートに迎えられ抱きしめられるエリザベートが幸せと愛に満ちた表情ではなく、
どこか怪訝そうな、眉を寄せたなんとも表現しがたいふしぎな表情を浮かべていたのも理由の一つです。
……ここまで完全に独断と偏見に満ちた解釈を書いていますが、のぞ様とみりおちゃんがどんなふうに役作りをして場面を作っていったのか、
ストーリーをどう深めていったのか、ぜひお話を聞いてみたくてお茶会のある世界が心底恋しくなりました。
ルドルフ/澄輝さやとのすごさ
本来ならば宙組フルコスチュームバージョンでロイヤルなあっきーさんのルドルフに劇場でお会いできるはずでしたが(涙)、
今回のスペシャルバージョンの配信で画面越しにお会いする形となりました。
お衣装が扮装でなくともあっきーさんのロイヤルな美しさに何の変わりがありましょう。
むしろ今日のとろりとした記事のシャツに軍服風のアウターも素敵で、筋張った首筋のなんと美しくかっこいいことか。
あっきーさんが横顔を見せてくれる度に画面の前できゃー!!でした。
襟足の長い、セットされた髪型も超絶スタイルにロングブーツも最高にかっこよかったです。
トート/望海風斗との「闇が広がる」では
ルドルフが洗脳されるようにトートに操られて進む道を選んでいることがはっきりとわかって慄きました。
ルドルフ/澄輝さやとの繊細さ、寂しさゆえに心もとなく揺らいでいるのも
トートに操られていることが際立っていました。
(まぁ様(朝夏まなと)のトートに対してのあっきーさんのルドルフがどうだったのか見てみたかったです(涙))
トート/望海風斗にとってルドルフという存在は
エリザベートを手に入れるための手段でしかないことが出会いからして表現されていました。
少年ルドルフに出会った場面で「猫を殺した」と言うのを聞いて、トート/望海風斗はほくそ笑んだのです。
まるで「これはいいものを見つけた」とでも言うかのように。
追い詰められた皇太子ルドルフが絶望し銃を渡すところもまた憐れみやいたわりも一片もなく、
トートにとってルドルフがどういう存在だったのかが伝わってきました。
以上、いま書ける限りの感想でした。
アニバーサリーバージョンの配信はまだ見る予定なので、気づいていないことや見落としていることをあらためて書けたらいいなと思っています。
配役も変わり、役の皆様も進化と深化をされまた違うことを感じるかもしれません。
こんなトートがあり得るのかという衝撃的な出会いができたこと。
その隣にこれぞというエリザベートがいたこと。
画面越しですが目撃できて最上の幸せを感じています。
読んでいただきありがとうございました。
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