こんばんは、ヴィスタリアです。
KAATで花組「銀ちゃんの恋」を観劇しました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に大きく触れています。
2021年に水美舞斗主演で「銀ちゃんの恋」だった必然
宝塚歌劇では初演(1996年月組 主演:久世星佳)、再演(2008年花組、2010年宙組 主演:大空祐飛 現大空ゆうひ)に続いて4度目の上演となります。
ヴィスタリアは第一次ヅカファン時代に初演の上演からわりとすぐ映像で見て、
のんちゃん(久世星佳)、ヤス/汐風幸、小夏/風花舞はじめ芸達者な月組生の作り出す深い芝居の世界が大好きになりました。
真ん中も充実、脇もハマりすぎで楽しい舞台で、テンポもよく音楽もいいので今でもスカイステージで放映しているとついつい見てしまう好きな作品です。
石田昌也先生のよくある内輪向けなネタ、女性の描き方やキャラクターの造形などひっかかるところはありつつ、
原作のある作品で劇中劇(映画)という形式を取っていることで丸く収まる……気がするのがこの「銀ちゃんの恋」という作品だと思っています。
正直石田先生の芝居作品ではこれが一番好き……というか、自分にとっていろんなことが気になりにくいのかもしれません。
今回もヅカファンをイジり揶揄するような台詞(わざわざ客電までつけて)、
直近のショー「Cool Beast!!」を知らないとわからない小道具など内輪ネタが仕込まれていて
ちょっと戸惑ってしまいました。
お好きな方、楽しまれた方もいらっしゃるかと思いますが、
自分はこういうのに遭遇すると石田先生の「おもしろいでしょ?」というしたり顔が脳裏に浮かんで冷めてしまうんです……ごめんなさい。
4度目の上演が決まったときは、いくら劇中劇の形を取っているとはいえ暴力・ハラスメントの嵐のこの作品を2021年に上演するのは時代の感覚と合っていないように思い、とても驚きました。
しかも銀ちゃんのかっこよさは男役のこれぞというかっこよさとは違う、かなり独特な世界でのかっこよさですから、二枚目のマイティー(水美舞斗)の主演作に選ばれたこともふしぎでした。
しかし劇場で観劇するとマイティーが倉丘銀四郎を見事に息づかせ演じ、言動はハチャメチャだけれど繊細で孤独という矛盾が人間味があって、
スターの哀愁があって銀ちゃんのかっこよさを成立させていました。
小夏に酷いことをしてヤスたち子分を殴る蹴る――こうして文字にするとめちゃくちゃな銀ちゃんというキャラクターをかっこよく見せられる。
また小夏に復縁を迫ったり、大決断をしたヤスに戸惑い、その決断に銀ちゃんなりの敬意を見せて、「本当は寂しくて傷つきやすい人なんだなあ」と思わせ心情を寄せたくなる。
そんなマイティーの銀ちゃんを見ていると、
マイティーが芝居・歌・ダンスも巧くてたしかな力量があるからこそ、持ち味とは違う作品が選ばれ任されたのかもしれないと得心するほどでした。
またマイティーは
バウ主演作「セニョール・クルゼイロ」
特別出演の「Dream On!」
スペシャルライブ「Aqua Bella!!」
とショー、ナンバーに比重をおいた作品が続いていたからこそ台詞で展開していくこの芝居作品で新たな魅力を発揮するという意図があったのかもしれません。
だとしたら今回の再演はすばらしい成果があったと舞台を見て確信しました。
公演の冠言葉は「プレイ」で膨大な台詞で展開していく合間に歌あり大立ち回りあり、
ナンバー中のダンスもありで「ミュージカル」であってもおかしくないくらいだと思います。
そしてマイティーはそのすべてが安定した実力がありました。
特に立ち回りはNOW ON STAGEで殺陣の先生から「マイティーは宝塚で一番速い殺陣ができる男役」とお褒めの言葉があったというエピソードがありましたが、
新撰組土方歳三の扮装、色気の滴る着物の着流しでの立ち回りはどちらもスピードも迫力もすごい!
この着流し姿、大変な色気ですがファンのみなさまの心臓は大丈夫なんでしょうか…と心配になるくらいです。
「主役は俺だー!」と大暴れするスターとしての明るさも眩しかったです。
ある公演を観劇したときマイティーはカーテンコールで
今日は2代目の銀ちゃん、ヤス、小夏が観劇にいらしています。
(客席に向けて)飛龍つかさです(頭を下げさせる)。
星空美咲です(同)。
銀ちゃんらしく紹介していました。
客席のお三方は手を高く掲げて拍手で応えていました。
初日のカーテンコールについて前記事で書きましたが
マイティーの優しさが沁みていいチームだなあと思いました。
花組「銀ちゃんの恋」キャストごとの感想
銀ちゃん以外のキャストについての感想です。
◆ヤス/飛龍つかさ
主役はもちろん銀ちゃんですが、出番の割合・ストーリーで果たす役割からすると
ヤスが成立していないとこの作品そのものが成立しないというくらい需要な役だと思います。
初演からこうちゃん(汐風幸)、
みつるさん(華形ひかる)、
みちこさん(北翔海莉)という芝居巧者が演じてきた役をつかさくんが任されたのは当然というすばらしいヤスを見せてくれました。
ヤスはソロ曲もあってこれが沁みるいい曲なので歌のうまいつかさくんがしっかり聞かせてくれるのもうれしいです。
つかさくんは刈り上げた短髪、髭、ジャージが似合いすぎで、
劇中映画の勤皇の志士の着物姿も大部屋俳優らしい着こなしが絶妙でした。
物語を動かしていく動の芝居だけでなく、秘かに抱いていた小夏への慕わしい気持ち、
銀ちゃんが小夏に昔に戻ろうと話すところに行き合って聞いているときの表情や佇まいなど静の芝居も巧くて引き込まれました。
大部屋俳優らしい小物感もちゃんとありながら覚悟を決めた者にしかないかっこよさ、緊張感がヒリヒリして、この日ばかりはヤスが主役になるというのもわかります。
銀ちゃんもかっこいいけれどヤスもまたかっこいい男です。
◆小夏/星空美咲
みさきちゃんは長身で等身が高く、手脚が長くてスタイルがとてもいいですし、とってもかわいかったです。
バウ「PRINCE OF ROSES」は未見なので演技を見るのはこれが初めてになりますが、
105期生の抜擢という学年のことを忘れる芝居・歌で小夏を演じていました。
自分は映像で見た初演のゆうこちゃん(風花舞)の小夏を思い出す瞬間があって、
そのくらいみさきちゃんが小夏として魅力的なんだなあと思いました。
みさきちゃんはセリフの声も歌声も綺麗で、
ただ初日は声を張る台詞が聞き取れなくなってしまうことが何回かあったように感じたのですが、2回目に見たときはそれがよい方向に変っているのがわかりました。
これから多くの舞台を経験されていく中でさらに進化されていくでしょう。
この先も大いに楽しみな娘役さんです。
◆橘/帆純まひろ
橘は銀ちゃんのライバル(同期)で、銀ちゃんが子役あがりなら橘はNOW ON STAGEによると元歌舞伎俳優がモデルで、現在の東洋映画における状況も水と油な存在です。
劇中映画では坂本龍馬役ですが、着物に長髪の扮装がホッティーの凛と涼やかな美貌に映えます。
かっこいい!(次はぜひ新撰組隊士の扮装が見たいです。絶対似合います)
売出し中のスター俳優らしいカラッとした明るさ、勢い、チャラさ、イケイケ感(←古い)が非常にうまく出ていましたし、
子分たちとの関係性も銀ちゃんとの対比がきちんと出ていてコミカルさに思わず笑ってしまいました。
そんなふうに銀ちゃんとは水と油でも、仕事、映画にすべてを懸けるという根幹は一致しているからこそ
銀ちゃんと一対一で対峙して胸ぐらを掴まれ揺さぶられた後の橘に起きる変化が迫ってきました。
この変化は台詞だけでなく階段落ちの撮影シーンの表情と行動に凝縮されているのですが、一つひとつの表現が丁寧で、
ホッティーは他の役の演技を受けたり台詞を聞いているときの演技が格段に進化していると「アウグストゥス」に続いて思いました。
この演技の進歩があるからこそ銀ちゃんのライバル役としてマイティーの芝居を受け止め、一対一で対峙できるようになったのだと思いました。
◆ジミー/侑輝大弥
かわいいかわいいだいやくんがかわいいかわいいジミーちゃんを演じています。
ふわふわのパーマに濃い目のチーク、揃った両手と指先。
(この手が大きくて華奢な指が長くてとてもお綺麗で目が吸い寄せられます)
ぺたんこの靴にジーパンにシャツなのに脚が長いのがよくわかります。
これは助監督/希波らいともそうですね。
お二人とも美貌がキラキラと眩しかったです。
◆監督/悠真倫
巧いことは言うまでもありませんが、
自由自在というか、まりんさんらしく演じて、役を生きているのが見ていて楽しいです。
ご本人も楽しんでおられるのが伝わってきます。
◆ヤスの母/京三紗
巧いことは言うまでもありませんが(2回目)、
ものすごい方言でところどころ正確に自分のわかる言葉に変換するのが難しいくらいなのですが、
ヤスの母の心は痛いほど伝わってくるのが巧さの証だと思います。
いっちゃんさんがこの役でよかったです。
◆朋子/都姫ここ
銀ちゃんの新しい若い恋人です。
自己中心的で勝手若くて、銀ちゃんや小夏とは年の差のギャップもあります。
その朋子のキャラクターをことかちゃんはなりきって貫いていました。
登場すると空気、流れが変わるのが朋子の役割ですがそれを果たしていました。
◆玉美/糸月雪羽
ヤスの田舎のエキセントリックな女性ですが、メイク・仕草・歩き方・すべてがぶっとんでいる役です。
いとちゃんがやっていると言われても信じられないくらいの変貌ぶりで、思いっきり演じていたと思います。すごい!
以上、初日と日を置かずに観劇しての感想でした。
千秋楽までの間に、そしてドラマシティ公演の間に進化されていくのを楽しみにしています。
読んでいただきありがとうございました。
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