観劇の感想

雪組「凱旋門」キャストごとの感想

雪組「凱旋門」の各キャストごとの感想です。
 
この週末はビッグニュースに動揺していた上に、贔屓OGの公演が始まったり別の趣味で遠征しており書くのが遅くなってしまいました。
 
Free-Photos / Pixabay
 
ではさっそくまいります。
 
もしこれがイシ様(轟悠)の最後の大劇場主演作品というなら、今回の主演の価値はあったとヴィスタリアは思います。
長い年月で磨かれたものはたしかにあると、ラヴィックの演技、男役としての芸や仕草といった見せ方には心を動かされました。
 
スーツの着こなし、座り方、歩き方、ジョアンとのラブシーンの艶、男役としての仕草の一つひとつが呼吸をするように自然で、芸を極めるというのはこういうことなのだと思いました。
これを後輩に伝えていくのはイシ様の役目なのは間違いないでしょう。
 
しかしイシ様の声は、歌は、厳しいものがあると言わざるをえないです。
冒頭の歌で残念に思い、また最後まで持つのだろうかとハラハラしながら客席から観ていました。
 
今後も主演を張るとするとこの声と歌はクリアしなければ批判は免れないのではないでしょうか。
芸事なわけですから精進してほしいと思います。
昔と同じ発声ができないのだとしてもなにかしらのテクニック、聞かせ方を身につける努力し舞台で見せるのがプロではありませんか。
 
それがもうできないのであれば引き際ということではないでしょうか。
 
 
ラヴィックという人物は生きることを諦観し、アンリにわかりやすく嫉妬し、復讐心からも逃れられない、人間的な男です。
イシ様の演技は「この人間的なラヴィックはイシ様の当たり役なんだな」と思わせる力がありました。
 
そして白眉はジョアンが死んでからの演技です。
 
ヴィスタリアはわりと淡々と観劇していましたし、ジョアンの死のシーンまでは心は動かされはしても、涙がでることはありませんでした。
しかしジョアンの死の後、戦争の足音がいよいよ大きくなってきてからは、ラヴィックの台詞、演技一つひとつに自然と涙があふれて止まらなくなり、幕が降りておりてからも暫く泣きっぱなしでした。
 
絶望とこの先の暗い未来を予感させる切迫感、なにもかもを手放すように身分証明書を拒否する諦観。
パリの街を振り返り「灯火統制か。凱旋門が見えない」という慟哭。
おそらくラヴィックやオテル・アンテルナショナールの人々は収容所から無事に戻ってはこれない。
そしてこういう人々がどれだけ多くパリにいたか。どれだけ多くの犠牲者がでたのか。
 
このイシ様の演技があるから、だいもん(望海風斗)たちの幕切れの「いのち」の歌唱がより胸にしみるのだと思いました。
この歌詞を味わうとやはり、この作品の焦点はラヴィックとジョアンだけに置かず、数多いたパリの亡命者たちに置くべきかと思います。
 
 
ボリス/望海風斗
幕が開いてライトがあたったとき、目深にかぶった帽子で顔は見えなくとも「トップさんだ」とわかりました。
トップスターのピンスポだからということでもなく、存在感、オーラ、舞台を支配している独特のものがありました。
 
「凱旋門」の主演はイシ様ですけれど、この舞台の主役はだいもん(望海風斗)だとヴィスタリアは感じました。
 
ボリスの狂言まわしは、時間の経過(ラヴィックがジョアンを助けてから3週間も会いにこなかった。ラヴィックが国境の町で3ヶ月も足止めにあった)や事件(工事現場でラヴィックが応急手当てをした)などを伝えなければならず、かなり難しいのではないでしょうか。
 
これが下手だと時間や場所の移り変わりが唐突になって客席でついていくのが大変なのですが、だいもんのボリスにはそういった心配がありませんでした。
 
ただ、どうしてもだいもんのキャラクターとボリスが乖離しているのが引っかかりました。
ボリスの「女は行きずりと決めている」「亡命生活に女は邪魔」「ラヴィックは恋に溺れるような男じゃないはずなんだが」というセリフに、だいもんのまっすぐさがちぐはぐに思えてしまうのです。
 
これを見るとだ「だいもんのラヴィックを見てみたかった」と思ってしまうのです。
キャラクターとしてはボリスよりラヴィックの方が合うのではないでしょうか。
アンリに嫉妬したり、嫉妬からジョアンを突き放たり、過去の恋人の復讐をどうしてもせずにはいられない情念のようなものを、だいもんだったらどう表現したでしょうか。
 
 
ジョアン/真彩希帆
ジョアンは同じ女性としてはまったく共感はできないのですが、こういう女性いますね。
 
自分の感情にまっすぐで、誰かがそばにいないとダメで、贅沢を夢見ているし与えられるものは素直に受け取る。
そういったジョアンをよく演じていると思いました。
真彩ちゃんのジョアンを見ていると「なんてだめな女なの。だめだけれど、あなたはそうせずにはいられなかったんだね。理解はできないけれどわかるよ」と、納得させられました。
 
イシ様と学年差があるだけでなくラヴィックとジョアンは年の離れたカップルだと思いますが、大人の男に夢中になっている雰囲気も滲ませていたように思います。
 
声が「ひかるふる路」のときと少し変えているような、ときどきぐんちゃん(月影瞳)の声を思い出しました。
 
メイクをお写真で見ると「もっと似合うものがあるのでは」と思わなくもないのですが、2会後方からオペラで観るとそんなことはなくかわいらしかったです。
 
 
アンリ/彩風咲奈
アンティーブでジョアンと踊るところ、キラキラしていると思いました。
美しいですし華があると思います。
 
しかし演技はもう一歩がんばってほしいです。
ジョアンを撃って狼狽して助けを求めにくるところは、愛する女性を撃った後、人はこんなふうになるでしょうか。
迫真さが出ると場をさらえるのではないでしょうか。
 
 
ヴェーベル/彩凪翔
芝居心のある人なのかなと、映像ですが「ひかりふる路」の女装と、今回の舞台を見て思いました。
 
出すぎす出なさすぎす、演技が的確でうまいと思いました。
また立ち姿が美しいと思いました。
 
 
ハイメ/朝美絢とユリア/彩みちる
あーさ(朝美絢)はまず美しい顔に息をのみます。
演技も自然で、ラヴィックとの再会などいい青年らしさが出ていると思いました。
 
みちるちゃんはまず最初に歌声がいいなあと思いました。
演技よし、歌よし、かわいさよしの娘役さんですね。
ハイメへの思いのあふれさせ方も娘役さんらしくてかわいらしかったです。
 
2人でどうか幸せになってください。
 
 
ローゼンフェルト/永遠輝せあ
きれいなお顔ですね。目立ちます。
演技はもう一歩、踏み込んだものが出るといいかなあと思いました。
 
フランソワーズ(美穂圭子)との宿代のやり取り、身分証がないゆえに買い叩かれながらも絵を売るセリフなど見せ場があるのですが、さらりとし過ぎているように思います。
 
「ナウオン」を見たら今回が大劇場公演ナウオン初出演とのことでした。
これからどんどん活躍の場が与えられるのでしょうからがんばってください。
 
 
マルクス/煌羽レオ
最初に目を引いたのは、酒の場面でだいもん含めた3人で歌って踊るシーンでした。
動きがキレキレで美しく、目が吸い寄せられました。
 
その後はマルクスが登場する度に注目していたのですが、不吉でギラついた凶暴さが出ていていいなと思いました。
プログラムのポーズもお顔もいいではありませんが。
 
「ドン・ジュアン」で美麗な腹筋と女装姿をされていた方なんですね。
今後も楽しみにしています。
 
次はショーの感想ですが早く書かないとだんだん記憶が…夏休み中に当日券でもう一度観に行こうか感が中のヴィスタリアでした。
 
 

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