観劇の感想

花組「殉情」役たちの感想(帆純まひろ主演)

おはようございます。ヴィスタリアです。

バウホールで花組バウ・ワークショップ「殉情」(主演帆純まひろ)を観劇しました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。

花組「殉情」(帆純まひろ主演)役たちの感想

初日に続いて2回めを観劇してきました。


初日を観劇したときも感じましたが、ホッティー(帆純まひろ)の表情、仕草、体の動かし方といったすべてから佐助の心情が伝わってきました。

いったい何度「へぇ」「へぇ…」「へぇ!」と奉公人としての返事をしているのかと思いますが、
この「へぇ」がちゃんとすべて違っていて、佐助の思いがちゃんと色づいているんです。

戸惑い、喜び、動揺、呼んだ春琴との距離感といったことが短い「へぇ」でちゃんとわかるのはホッティーが佐助を生きているからでしょう。

自分の一番好きな「へぇ」は床に入った春琴が按摩をするように言いつけるシーンでの戸惑いに満ちた、
しかし戸惑いの奥底に春琴の意図に気づいたかのように極々かすかに喜びが滲んだ「へぇ…」です。

佐助と春琴はちょっと理解できない閉ざされた上に耽美でどこか妖しい世界にいますが、歯を痛めた佐助が春琴に「脚が冷えるからあっためて」と言われて、
春琴の脚に腫れた歯を押し付ける佐助のどこか陶酔した表情も大変やばくて(←語彙)よいです。

佐助と春琴は2人にしかわからない世界にいて共感はできませんし、佐助がする選択も常軌を逸していると言わざるをえませんが、
ホッティーの佐助からはその選択をすることが一点の曇もない幸せであることが伝わってきて泣いてしまいました。

共感はできない、でもわかる、心を揺さぶられる、そんな昏くてまぶしい佐助と春琴の世界であり美しいラストシーンでした。

◆春琴/朝葉ことの
103期の朝葉ことのちゃん、歌も演技もしっかりと実力のある娘役さんだと思っています。

ダンスもよくて、大人っぽい雰囲気の美人さんで、新人公演のヒロインがいつ来たっていいのになぁと思っていたら
ようやく今回のバウ・ワークショップで初ヒロインとなりました。

きっとすばらしい春琴を見せてくれると期待していた通り、高慢で傲慢で美しくてかわいいお嬢様で厳しい琴の師範で、
でも本当は素直になることが到底できない女性なのが伝わってきました。

時折佐助に明かす本心や「おおきに」という感謝の言葉が沁みました。

歌声も美しく響き、たくさんの振袖を次々と着替えているのもお似合いでした。

春琴は究極のツンデレ――いえ、ツンデレという言葉には収まりきらないくらい、ツンとデレのギャップがあります。

ツンツンしたきつい物言いで時に手も出る春琴ですが、
佐助や利太郎に三味線の稽古をつけるときの「ちーがーうー」は怖くさえなるような凄みを感じるほど。

観劇した後にスカイ・ステージでNOW ON STAGEを見たのですが、かわいいことのちゃんがお話しているのを見て、本当にあの春琴だったの?と結びつかないくらいで。
それだけことのちゃんの芝居が自然と溶け込んでいたのだなと思いました。

◆利太郎/峰果とわ
宙組(2008年)を映像で見るとすっしぃさん(寿つかさ)がものすごいお化粧をしていましたが、
今回のゆかちゃん(峰果とわ)はふつうの舞台化粧でほっとしました。

髪型が不自然なんですけれど利太郎としてはオシャレなんでしょうね。

ゆかちゃん、自由自在に芝居の巧さ、コメディセンスを存分に発揮していました。

遊び人で阿呆ボンと言われるのがぴったりで、かといってやりすぎにもならなくて絶妙でした。

現代のマモルとユリコの会話も2022年版にアップデートされていますが、ゆかちゃん利太郎というキャラクターの存在の仕方もふさわしいものにしているのを感じました。

洒落者でいろいろとお着替えをしていますが、キザなスーツにハットも見られてかっこいいです。

利太郎だけでなく、しげ/美風舞良、安左衛門/羽立光来の鵙屋夫妻、春松検校/舞月なぎさ、石橋教授/紅羽真希、番頭/高峰潤といった上級生らが
両バージョン(帆純まひろ主演・一之瀬航季主演)に出演していますが、舞台がぐっと締まる安定感があります。

◆お蘭/詩希すみれ
芸者のお蘭は歌のソロも多くて、これはぜひとも詩希すみれちゃんで見てみたいと、振分が発表になったときから思っていました。

願っていた通りの配役が実現した上に想像以上のお蘭が息づいていてすばらしかったです。

103期のすみれちゃんは「はいからさんが通る」で芸者さんのお役で三味線を弾いていました。

タカラヅカニュースで「がんばっていること」についてこんなふうにお話されていたのを覚えています。

「はいからさんが通る」の公演で演奏しているお三味線をがんばっています。

お三味線初挑戦ということでお稽古が始まってからたくさん練習を重ねてまいりました。
今回、公演の中で唯一の生演奏になっておりますので、お客様に楽器の生の音をお届けできることをとてもうれしく思っています。

お蘭が三味線を弾くシーンはありませんが、このときよりも大人っぽくて艶めいた芸者を息づかせ、美しい歌声をたくさん聞かせてくれました。

お化粧も上手でお似合いでした。

酔っ払ったり拗ねたり嫉妬する様子も鮮やかでしたし、
利太郎と千吉の残酷なたくらみに気づいたときのうちひしがれた、女が弱者であることが痛烈に身にしみて、でも何もできないでいる様子が強く印象に残りました。

◆千吉/天城れいん
104期の天城れいんくん、お芝居をこんなにたくさん見るのは初めての機会でした。

かわいらしいお顔立ちを強調するようなお調子者の幇間の舞台化粧で、言動もとにかく調子がよくて利太郎を持ち上げているのですが、それだけじゃないんです。

春琴に恥をかかされた形になった利太郎をそそのかし耳から毒を注ぎこむようなことをするのですが、そのときの冷え切った表情にぞっとそるようなものが感じられて、一番怖いのはこの男なのでは――と客席でぞわぞわしました。

◆マモル/希波らいと、ユリコ/美里玲菜
103期の希波らいとくんマモルは1幕の幕開きから台詞があって、
現代の大学生らしいお衣装で足元がスニーカーなのですが脚の長さと顔の小ささに視覚がバグりそうになります。

初日はのっけからアドリブを入れて客席いじりもして堂々たる舞台度胸でした。

マモルの傍にいるユリコは104期のみさこちゃん(美里玲菜)、スチールも天才的なかわいさでしたが舞台姿もかわいくてお人形さんのようでした。

178cmのらいとくんと163cmのみさこちゃんが並ぶと長身が舞台映えします。

現代パートは説明的な台詞が多く、また脚本の言葉そのものがやや不自然に感じられて(生徒さんの演技ではなく)、春琴抄の世界との行き来に集中力を保つのが私は難しかったです。

こうして書いてみると103期生、104期生に活躍の場があって、新人公演の中止を余儀なくされたからこそこうしたバウ・ワークショップが公演されたのかなと思いました。

残りの公演、そしてはなこちゃん(一之瀬航季)主演の「殉情」も全公演が無事に公演できますように。

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