観劇の感想

花組「TOP HAT」観劇の感想(かわいいがいっぱい)

こんばんは、ヴィスタリアです。

梅芸メインホールで花組「TOP HAT」を観劇しました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で作品の内容に触れています。

花組「TOP HAT」作品の感想

観劇したら感想を書きたいので書きますがどう書こうか悩みながら書き始めています。

それは「TOP HAT」の舞台を思い出そうとすると浮かぶ言葉が「かわいい」に始まり「かわいい」に終わる、とにかく「かわいい」に尽きるからです。

かわいくてかわいくて、そして楽しかった――それがすべてな気もするのですが、なにがどうかわいかったのかをできる限り自分なりの言葉で解きほぐしてみたいと思います。

映画も宙組版も見ておらず、何も予習せずに今回の花組の舞台を観ました。

話もかわいくて(シンプルな筋で明るいハッピーミュージカル)、ストーリーを彩る各役も恋して夢中になったりときにすれ違ったり嫉妬しているのがかわいくて、とても楽しい舞台でした。

衣装は植村麻衣子先生という初めて知るお名前で、これがまあかわいくてときめきました。

特にデイル/星風まどかの乗馬服は娘役さんには珍しいパンツスタイルで、Cheak to Cheakのピンク色のドレス(ポスターのやつですね)、フィナーレのデュエットダンスのれいちゃん(柚香光)の変わり燕尾があまり見たことのない色合い、生地感で強く印象に残りました。

薄井香菜先生(雪組「炎のボレロ」、月組「桜嵐記/Dream Chaser」)に続いて新たに才能のある先生がデビューされるのはうれしい限りです。

衣装監修に加藤真美先生のお名前があり、加藤真美先生がそういう立場に立たれるようになられたことも感慨深いです。

齋藤吉正先生は映像の使い方がやや過剰なところがあって(舞台で生徒さんがパフォーマンスしているのに映像でその生徒さんを映したり、舞台の本筋とは関係ない映像に必要以上に凝っていたり)あまり好きではないのですが(お好きな方ごめんなさい)
今回の映像の使い方は映画の舞台化であることへのウィットがありつつ過剰さもなくてよかったです。

が、かわいくて楽しい、ハッピーな作品ですが、気にならないことがなかったといえば嘘になります。

一つは外国人の喋り方がカタコトで、且つ笑いをとるシーンがあったことです。

ロンドンに来たイタリア人のデザイナーアルベルト・ベディーニが片言の喋り方で笑いを誘う場面がありました。

強烈なキャラクターでジェリー/柚香光とのやり取り、アドリブもおもしろく自然と客席も大いに沸いていましたしそれはいいのですが(自分も笑い楽しみました)、
その人物にとっての外国語を懸命に話していることをカタコトで表現しそれが笑いにつながるのには強い違和感をおぼえます。

齋藤先生は「I AM FROM AUSTRIA」という新しいミュージカルでもカタコトで喋る外国人を登場させていましたが、外国人は片言で喋らせないと気がすまないんでしょうか。

もう一つは舞台関係者をオカマ(嫌な言葉ですがそういう描き方をしているのであえて使います)として描き、やはり笑いにつなげていたことです。

宝塚歌劇を見ていると度々目にしますが、バレエ教師や舞台スタッフ、美術に関わるトランスジェンダーと思われる(客席からは正確にはわからないのでここでは「思われる」とします)人物の女性的な言動で笑いを誘うのをやめてほしい、人権意識をアップデートしてほしいと心から願います。

新作主義で柔軟に対応ができる劇団です。
こうした意識、多様性に対してもそれがきっとできるはずだとファンとして信じたいです。

花組「TOP HAT」役ごとの感想

役ごとの感想も「かわいい」しか出てこなくなってしまいそうですが、できる限り書いてみますね。

◆ジェリー・トラバース/柚香光
フレッド・アステアを深く敬愛するれいちゃん(柚香光)、この作品はきっと念願で特別な思いで舞台に立たれているのではないでしょうか。

踊りまくり歌もありセリフも膨大、タップでコート掛けを相手に一人踊った後にすぐにデイルとの台詞になるシーンは息が落ち着く間さえなさそうで、非常にハードな公演ですね。

しかしれいちゃんのダンスをこんなにたっぷり見られて見惚れずにいられませんし、歌の安定感が増したなあとも思います。

ブロードウェイのスターダンサーで華麗なタップにダンスを次々と披露するジェリーはれいちゃんにぴったりですし、
デイル/星風まどかに恋してまっすぐに想うジェリーがとても、とてもかっこよかったです。

ジェリーは「大抵の女の子は僕を好きになる」とさらりと言ってのけたりしますが、スターでモテモテでも浮ついたところがなくてデイルに夢中なのがたまりません。

タップで海外ミュージカル、恋のすれ違いとくれば「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」もそうですがジミーに比べるとジェリーはずっと一途な青年で、
どんな役も呼吸から立ち方、居住まいからその役になって自然と演じるれいちゃんの役者としてのすばらしさをあらためて感じました。

どのシーンも、ナンバーもかっこよくて洒落ていて好きなのですが、デイルに苦情を言われたにもかかわらず恋に落ちて、「よく眠れるように」と砂を蒔いて踊るシーンです。

恋にのぼせデイルに夢中になっているのが伝わってくる上にダンサーらしい思いつきでなんとロマンチックなことか。

そういうことをするのが自然に思えるれいちゃんのジェリーです。

◆デイル・トレモント/星風まどか
ファッションモデルのデイル、まどかちゃんがとってもとってもかわいかったです。

金髪に合わせた舞台化粧をいつもと変えているのか目元など本当に外国の女性のように見えましたし、ツヤツヤのチーク、お肌が瑞々しくてなんと綺麗なことか。

前述の乗馬服、Cheek to Cheekのふわふわ付きの広がるピンクのドレス、他にもかわいいお衣装をかわいく、美しく着こなしていて目から幸せでした。

そして最初はジェリー/柚香光に対してツンツンしているのが変化していくのがかわいくて、デイルも彼に夢中なのが伝わってきます。

特にCheek to Cheekのデュエットダンスではジェリー/柚香光と踊っているうちに腕の中でうっとりと、完全に恋する、蕩けるような表情になっているのも印象的でした。


ロマンチックで美しくて、歌詞にある通り正にheavenですね。

乗馬服にブーツでのジェリー/柚香光とのタップ、Cheek to Cheekのデュエットダンスもその後のソロの歌唱もすばらしかったです。

ピンク色のドレスで堂々と歌い上げるまどかちゃん、存在感があって感情が強く伝わってきて圧倒されました。

「アナスタシア」が好きでよく映像を見返すのですが感情が昂ぶると台詞が走りがちなところがあるように思えたのですが、それがなくなって台詞が聞きやすくなったなあと思いました。

◆ホレス・ハードウィック/水美舞斗
花組きってのダンサーであるマイティー(水美舞斗)がダンスを封印して喋る、喋る、歌う、喋る、喋る…チャーミングなホレス・ハードウィックに大いに笑い、そしてマッジ/音くり寿への愛に幸せな気持ちになりました。

れいマイ(柚香光・水美舞斗)れいマイしていて最高に楽しかったですし、飛行機のシーン、寝室のシーンは声を出して笑ってしまいました。

おそらくジェリー/柚香光がその日、その公演でアドリブを仕掛けているのだと思う(そう見える)のですが、それに翻弄されつつきっちり応えるホレスがおもしろくておもしろくて。

「銀ちゃんの恋」主演を経て芝居、滑舌に一層の磨きがかかったのではないでしょうか。
ホレスには自然とうんと笑わせられました。

また次々とお着替えされるスーツにお髭がとてもかっこよかったです。
スーツがダブルなのも仕事のできる男性という感じで素敵でした。

マイティーのダンスがもっと見たかったという思いはあれど、劇中でできないタップを下手なりに一生懸命踏むところはちゃんと下手でちゃんと必死なのが巧いなと思いました。
巧くないとできない”なんちゃってタップ”でしょう。

フィナーレではようやくマイティーのダンスを見ることができて、マイティーが踊るとぱっと明るくなるようでしたし、
この公演でご卒業される桜月のあちゃん礼哉りおんくんと踊っているのにじーんとしてしまいました。

◆マッジ・ハードウィック/音くり寿
くりすちゃんの舞台にいつも驚かされているような気がします。
巧すぎて、すごすぎて。

マッジもすごかったです。巧すぎて。

赤毛に碧の瞳、深紅のネイルも役にぴったりかつお似合いで、マッジはデイルと仲良しですが(そして同じ100期生同士ですが)年上の女性にちゃんと見えるのもお見事です。

「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」もなかなかに強烈なキャラクターをインパクトのある舞台化粧で好演していましたが、マッジも個性的で、自由気ままに生きているお金のかかる女性が鮮やかに息づいていました。

自由すぎてときに強烈な言動に!?と驚くこともありつつ、なんだかんだ言って夫のホレス/水美舞斗を愛してるのがわかるのがかわいいのなんのって。

「ホレス(怒)!!」と怒り心頭で突撃するところもぷんすかしてるのがかわいくて、ホレスとの「大嫌い」ソングも本当にお互いに愛してるんだなと幸せな気持ちになりました。

マッジとしての出番は2幕からで1幕はショーガールなど各ナンバー、シーンで歌い踊っているのですがダンスも歌もうまくて、(マッジとはまた違う)笑顔がとても愛らしいです。

◆ベイツ/輝月ゆうま
専科生として初めての花組出演を果たしたまゆぽん(輝月ゆうま)、おめでとうございます!

同時にれいマイの95期との共演を果たすことになり、こちらもおめでたくうれしいことです。

ジェリー/柚香光ホレス/水美舞斗とのシーンがあるとつい中の人を重ねてうれしくなりニヤけてしまいます(マスクがあってよかったです)

フィナーレでれいちゃんのすぐ後ろで踊っているのも高まりました。

まゆぽんがなんでも巧いのは知っているつもりですがやはり巧いですねえ。

2回観劇したのに同じところで新鮮に笑わせてくれて、特にステーキ肉のシーンはホレスが依頼したときからオチは見えているのに笑い声をもらさずにいられませんでした。

次は古巣の月組「グレート・ギャツビー」への出演が発表になっています。

すでに宙組、花組は出演済、専科生として5組出演を果たす日も近いでしょう。
楽しみにしています。

◆モーリス、ジャン、漁師/一之瀬航季
通し役の方が少ない作品ですがはなこちゃん(一之瀬航季)があの役、この役で八面六臂の大活躍をしています。

冒頭の記者モーリスは渋い声でバリっと、チップをねだるウェイターはにやにやしていてイタズラ小僧の趣、ホテルのダンサーは華雅りりかさんと白いお衣装で美しく踊っていました。

自分のお気に入りはウェイターですね。
my初日ではベディーニ/帆純まひろに「チ、チ、チ…」とチップをねだりながら最後にぼそっと「気持ち悪い」と言っていたのですが、そういうウェイター君のにやにやしたお顔が気持ち悪くて(←褒めています)最高でした。

またゴージャスな歌姫カーラ/若草萌香
かわいくてちょっとふしぎな雰囲気のフローラ/糸月雪羽
やはり変わった雰囲気で一生懸命なメイドティリー/詩希すみれと娘役さんがかわいくて目が足りません。

あわちゃん(美羽愛)みさこちゃん(美里玲菜)もかわいくてオペラ泥棒でした。

帆純まひろのアルベルト・ベディーニ 心優しきデザイナー

このブログをご覧の方はご存知かと思いますが花組はいつもホッティー(帆純まひろ)を楽しみにしています。

そしてこの公演のMVPを一人選ぶとしたらアルベルト・ベディーニ/帆純まひろを選びたいと、自分は思っています。

ホッティーの役作りもパフォーマンスも想像を軽々超えてきたことがその理由です。

ホッティーといえばなんといっても美貌が目をひきますが、最近ショーでも色気をふりまいていていい男役さんだなあと見惚れているのですが、
イタリア人デザイナーのベディーニをコミカルに、生き生きと演じていました。

まず舞台に出てくるところ、捌けるところからして様子がおかしい(←褒めてます)。

大仰で、感情的で、謝るときは心底素直に謝っていて、大勢がわちゃわちゃとにぎやかな舞台を3階席から見ていてもベディーニが出てきたのがすぐわかるんです、一人様子がおかしいから。

こちらの毎日新聞さんの記事の2枚目に写真があり、お召し物も様子がおかしいのがわかります↓

エキセントリックな言動、ジェリー/柚香光とのアドリブ合戦でも笑いをとっていますが無理がないですしテンポがよく進めていくのもいいですね。

アドリブも日替わりでいろいろ仕込んでいるようで、こんなにいろんな技を繰り出してくれるなら通える限り通いたかった…!と思っています。

ホッティーは新人公演で6回れいちゃんのお役を演じているそうですが、別箱での共演は滅多になく、こうしてお2人のかけ合いが見られるのもうれしいです。

そして口跡がよくなってカタコトなのに何を言っているかちゃんとわかる上にいつもの男役の声とは違う声色をたくさん使っている多彩な表現にはっとしましたし、
「ラテン」の曲では舞台に一人で歌い上げていて、これだけ歌えるんだ…!という感激もありました。

またベディーニという人物の役づくりについても心の優しさが自然と滲んでいるのが印象的でした。

モデルのデイル/星風まどかのことが大好きで、故郷イタリアでデザイナーとしてトップに立つという夢に一生懸命で、デイルのCheak to Cheakのドレスが話題をかっさらってその夢が実現したとき、彼はデイルにこう言います。

本当に素敵なのはベディーニでもドレスでもなくて、君なんだよ。

この台詞がこれ以上なくしっくりくるホッティーのベディーニでしたし、
真剣にそんなことを言える心優しきアルベルト・ベディーニが幸せになれることを願わずにいられません。

99期、男役10年の節目の年が飛躍の年になることを期待しています。

以上、観劇の感想でした。
4月3日(日)にはライブ配信がありますので見るつもりです。

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