考えたこと

タカラジェンヌがメタモルフォーゼする瞬間を目撃したい~座付き演出家に望む

こんばんは、ヴィスタリアです。

贔屓との出会いは一目惚れか徐々にか

劇場(あるいは映像)で宝塚歌劇を観ていて生徒さんに運命的に出会うことがあります。

ヴィスタリアの場合は一目惚れが贔屓になることが多くて、
永遠の贔屓ヤンさん(安寿ミラ)は映像で見て激震が走るほどの一目惚れでした。

そして大好きな美弥るりかちゃんは「カンパニー/BADDY」を
たまたま観劇して射抜かれ落ちました。

いま大注目しているホッティー(帆純まひろ)
「ポーの一族」ライブビューイングで「ものすごく美しい男役さんがいる」と目に飛び込んできたのが、
みほちゃん(有沙瞳)はKiller Rougeの振付動画を見て
「このかわいらしさは只者ではない」と衝撃を受けたのが出会いでした。

ヤンさんは宝塚歌劇との出会いであり、るりかちゃんは長いブランクを経ての宝塚歌劇との再会でもありました。

一目惚れの生徒さんのことを知りたくて過去作品を見て好きな役、場面が増えていったり
インタビューを見たり読んだりして感銘を受けると「やっぱり素敵な方だなあ」と思えるのもうれしいことです。

一方で一目惚れではなく見ているうちにだんだんと、じわじわと生徒さんの魅力を知って
気がついたら沼に首までどっぷり浸かっていた…ということもあります。

ヴィスタリアはお兄様(七海ひろき)凪様(彩凪翔)がこの気がついたらどっぷりの男役スターさんです。

生徒さんがメタモルフォーゼする瞬間を目撃したい

こういうファンになる、贔屓と運命的に出会うのとはまた少し違いますが
生徒さんの魅力が大きく花開く瞬間との邂逅もまた幸せなものです。

後ろの方にいらっしゃる下級生に光るものを見つけてお名前を調べたり新人公演をチェックして
「次から必ず注目(あるいは応援)しよう」と心に誓うこともあります。

またこれまで何度も見てきたはずの生徒さん、スターさんの魅力がスパークしているのを目撃したり
表現であったり歌やダンス技術的なこと、芸の進化に目と心を奪われて
「自分はいままで何を見ていんだろう」と節穴の我が目を呪いたくなることもあります。

最新のことで挙げるなら月組「ピガール狂騒曲」のシャルル・ジドレーヌ/月城かなとがそうです。

「BADDY」ポッキー巡査(ギャップが最高)、
「エリザベート」のルキーニ、
「アンナ・カレーニナ」のカレーニンなど印象的な役も多く
れいこちゃんの正統派の美貌とたしかな実力はわかっているつもりでした。

しかしそれはまだプロフィールに並ぶような言葉をわかっていたつもりになっていて
れいこちゃんの本当の魅力をわかっていなかったことをシャルルで知りました。

ムーラン・ルージュのスタッフたち、ジャック/珠城りょうとのコミカルなやりとり、
ジャックへの思いと結末が自然に見えるよう芝居で緻密に張った伏線、
恵まれない生い立ちから抱いた夢とその夢を失いそうになって彷徨する歌。

「ピガール狂騒曲」はシャルルの物語だと思わせてくれる役を魅力的に息づかせる深く、幅の広い表現にスターのオーラのようなものが加わって一層大きな存在になったと感じました。

チケットが取れるものでリピートしたのですが毎回れいこちゃんが楽しみでした。

ショー「WELCOME TO TAKARAZUKA」もシャベ化粧に和装姿が美しく
ソロで舞う「越天楽」も鏡をモチーフにした「花の巻」もすばらしいものでした。

またさきちゃん/彩風咲奈は「ファントムジェラルド・キャリエール役でメタモルフォーゼされたと感じています。

初観劇の「凱旋門」では正直に言うと芝居で疑問に感じることがあったのですが、そういうことがまったくなくなりました。

キャリエールに「壬生義士伝」大野次郎右衛門という難役から「ハリウッド・ゴシップ」の等身大の青年コンラッドまで
魅力的に演じていました。

特に「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」マックス役ではルックスを含めてさきちゃんが大好きになり、
ヅカ友さんが「後年のマックスの隣にデボラがいるのがちゃんとわかる役作りをされている」というのに大きくうなずきました。

炎のボレロ」アルベルト・カザルス役はかっこよくてBlu-rayを自分へのクリスマスプレゼントにしました。

同じく大作ミュージカルの大役で加速度的に成長と魅力を開花されたと感じているのがずんちゃん(桜木みなと)です。

オーシャンズ11テリー・ベネディクト役がそうで、次にずんちゃんを見たタカラヅカスペシャル2019で
「王家に捧げる歌」を堂々と歌う姿に歌唱力の格段の進化とオーラが爆発しているのを感じました。

主演作品「壮麗帝」スレイマン役は芝居の巧さと男役の色気がすごくて
東上がなくなってしまったことを本当に残念に思いました。

アナスタシア」もおいしい役をこれ以上ないほどおいしく見せる実力を発揮されているのを感じ
劇場で見られるのを楽しみしています。

娘役さんの劇的なメタモルフォーゼを目撃したのは「パッション・ダムール」の彩みちるちゃんでした。

たった1ヶ月半前の「炎のボレロ/Music Revolution!-New Spirit」からいったい何が起こったの思うくらい
すばらしいダンサーに変貌を遂げていたからです。

これまでみちるちゃんは芝居巧者としての印象が強かったのですが
生まれ変わったような変化でダンスという新たな魅力を発揮されていました。

スタイルも相当絞られていましたしダンスのうまいカチャさん(凪七瑠海)と組んで踊りまくっていました。

また小桜ほのかちゃんの「アルジェの男」アナ・ベル役で芝居心を、
ロックオペラモーツァルト」アロイジア役で歌唱力を知ることができたのも
生徒さんの魅力を知ることができた思い出深い作品です。

座付き演出家の仕事とはなにか

大作ミュージカルの大役で生徒さんがメタモルフォーゼするのは生徒さんの研鑽あってこそであると同時に
作品・役が持つ力のようなものも感じます。

宝塚には座付き演出家の先生方がいらしてオリジナルの新作が次々と上演されているのですから
生徒さんの魅力を引き出すような役あるいは場面を作ってほしいと願っています。

敬愛する柴田侑宏先生の対談集「タカラジェンヌとコーヒーブレイク」のなかにこんな言葉があります。

(昭和53年9月号汀夏子さんとの対談)
役者に変身願望というものがあるなら、僕ら作者はそれに応えるというか、挑戦していかなければいけない。

それには、その人の成長過程、僕はタテの線と言っているんだけれども、それを知っている必要がある。

つまり、前にこういう仕事をしてこういう成果があったから、今度は更に新しい何かを引き出すというのが座付作者の仕事だと思う。
だから、生徒一人一人の舞台をずっと見ているというのも仕事の一つだと考えている。

(昭和54年3月号麻実れいさんとの対談)
君たちは自分で作品を作って自分で演るのではなくて、役を与えられる立場にいるから、常に自分の思うように絵を描こうと思っても無理だということは言える。

だから、この問題(研10を迎えるにあたり、下級生のころから騒がれていたにしては爆発する時期が来ていない感じがする)はターコだけの責任ではなくて、むしろ与える側の責任が多いと思うけどね。

さらに榛名由梨さんとの対談では「ベルサイユのばら」直後だからこそ作ったという「あかねさす紫の花」のお話があります。

センセーションを巻き起こした「ベルばら」の直後だけに、ショーちゃん(榛名由梨)とオトミ(安奈淳)の2人を違う形で魅力的に見せようとという自負心と、責任を負わされてしんどいという気持ちと両方があった。
(中略)
中大兄皇子はアクション(ウェストサイド物語)、オルレアン公(さらばマドレーヌ)の線上にあるんだけど、オスカル、アンドレを経たショーちゃんはやはり以前と違っていたね。
中大兄を単なる敵役に終わらせなかったのはショーちゃんの功績だと思う。

ショーちゃんを褒めておられますが、柴田先生は単なる敵役以上のものを引き出そうという気持ちもあって
「あかねさす紫の花」を書かれたのではとお話から思いました。

柴田先生の作品のすごいところはこうしてあて書きで初演の生徒さんの魅力を引き出す一方で
作品の完成度が高くて再演を重ねていることにあるのではないでしょうか。

大作ミュージカルは役が限られていることもありますし、
座付き演出家の先生のオリジナルの作品で主演コンビだけでなく多くの生徒さんの魅力を引き出す役や場面が生まれ、目撃できることをヅカファンとして期待しています。

読んでいただきありがとうございました。
はげみになりますので応援していただたらうれしいです。
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