帝劇「モーツァルト!」の6月18(月)のソワレを観劇しました。
目次
どのキャストでみるか、それが問題だ
この公演はダブルキャスト、トリプルキャストで組合せも様々ですが、ヴィスタリアは特別こだわらずにチケットをとりました。
強いていうならヴィスタリアは一時期アイドルグループのファンだったので、生田絵梨花ちゃんを観てみたかったのですが叶いませんでした。
初演(2002年)を観て感動してCDを激しくリピートしたこのミュージカルを超久しぶりに観たいと思い、取れたチケットがたまたまこの日だったのです。
あの公演実況CDをまた聞きたくて捜索したのですが見つからないままです。どこにやっちゃったのかしら。
キャストにはこだわらなかったと書きましたが、男爵夫人だけは たーたん(香寿たつき)か かなめさん(涼風真世)かでかなり迷いました。
チケットを取ったときのヴィスタリアはまだみやちゃん(美弥るりか)に出逢っていなかったのですが、いまだったらかなめさんを選んだと思います。
みやちゃんの憧れの原点であるかなめさんの舞台を観てみたい~。
ヴィスタリアはかなめさんの現役時代を知らず、ほとんど観たことがないのです。
一方たーたんは在団中の舞台も映像もいくつか観ていますが、ヴィスタリアはちょっと苦手でした。
実力があるのはわかるのですが、口跡も歌もダンスもベッタリしている感じが受け付けず…。
しかしこの「モーツァルト!」の舞台を観ていくうちに、ヴィスタリアは舞台上の誰よりもたーたんの男爵夫人に拍手を送っていました。
苦手と思ってスルーしていた過去の自分を「目を覚ませ!」と殴ってやりたいです。
前置きが長くなりましたが、ヴィスタリアの独断と偏見、そして偏愛に満ちた観劇の感想です。
《ヴィスタリア的採点》
作品の熟成度 ★★★★★
観て楽しい度 ★★★☆☆
舞台の熱気 ★★☆☆☆
ヴィスタリアは前日に月組「雨に唄えば」を観ていたのもあり、考えてしまいました。
歌や演技はうまいとは言い切れず難がある部分もあるけれど、熱や気持ちがこもっている舞台。
客観的に観て歌や演技がきちんとできていて完成度は高いけれど、温度は低い舞台。
いったいどちらがいいんでしょう。
もちろんパフォーマンスの完成度が高いうえに熱意、気持ちのこもっている舞台がベストだとは思いますが。
「モーツァルト!」は何度も再演されているだけあって作品は完成しきっているとヴィスタリアは思います。
キャストも何度もその役をやっていたりキャリアがあったり、すでに芸事が完成されている方が多かったと感じました。
舞台の歌、芝居は一定水準の、高いクオリティのものであったとは思います。
しかし作品や役、表現に対するエネルギー、熱のようなものがこの舞台全体に乏しかったようにヴィスタリアは感じました。
もう一度観たい、いましか観られないこの舞台を見逃したら後悔する、と思わせる魔力のようなものを受けとることができませんでした。
そのあたりで「観て楽しい度」「舞台の熱気」は★を減らしております。
舞台装置について
この舞台は装置がおもしろいとヴィスタリアは思いました。
舞台中央の盆には巨大なグランドピアノが置かれています。
グランドピアノの蓋が全開になって壁のようになったり、そこに映像が投影されたりするのです。
あるいは蓋がフラットになったり、ちょっと傾斜がつけられて坂が表現さたり、いろいろな変化します。
また袖、上部を囲うのは五線譜を模したライトで、これが色を変えながら狭まったり広がったりします。
この2つの仕組みで場面転換がスムースになっていました。
とてもよく考えられた装置だと思います。
キャストについては皆さんほとんど初めて拝見する方ばかりなので簡単にまいります。
ヴォルフガング 古川雄大
お顔が小さくてスタイルが異次元のよさです。
今回は変わった髪型で額を出していますけれど前髪をおろしたところを拝見してみたいとヴィスタリアは思いました。
歌は「すごい!」と引き込まれるところと、ふつうに「上手だなあ」と思うところの差がはっきりとあるようにヴィスタリアは感じました。
父親の影やコロレド大司教の支配からどう逃れればいいのかという苦悩を「自分の才能のままに音楽に身を投じたい、だって自分のやりたいことは決まっていてる。僕の道は音楽しかない」というキッパリさっぱり絶ちきる、フレッシュなエネルギーを感じました。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人/香寿たつき
舞台全体のエネルギー値が低いと厳しい感想を書きましたが、一人だけ違う、深い表現で存在感があるとヴィスタリアが思ったのがたーたんでした。
もしたーたんがいなかったら、この舞台には締まったり緊張感が高まるところがどこにもないまま、ふんわりと幕をおろしていたでしょう。
相変わらず口跡にベッタリした感じがあるのは苦手ですし、歌はさ行、特に「し」で息の漏れるのが気になりました。
しかし演技はすばらしかったです。
男爵夫人が舞台に登場し立っているだけで空気が変わり、ソロ「星から降る金」で劇場中の空気が張りつめてたーたんに向かっていくようだとヴィスタリアは感じました。
たーたんの歌の背景には夜空とヴォルフを導く星の光が見えるようでした。
立ち姿、ドレスの着こなしも美しかったですし、山口さんのコロレド大司教を「コロレド」と呼び捨てにする貴族のパワーも感じさせました。
レオポルト/市村正親 コロレド大司教/山口祐一郎
偉大な舞台俳優お二方をニコイチで書いて申し訳ないですが、ヴィスタリアにとってはニコイチでした。
功績は偉大ですし、ダブルキャスト、トリプルキャストにしようにも他にできる舞台俳優がいないかもしれません。
山口さんの怪しい、そして妖しい雰囲気と立ち姿は健在です。
市村さんの頑迷で溺愛した息子に捨てられて寂れていく悲哀の表現はとてもよかったと思います。
しかしお2人ともセリフの口跡がもたついていたり、歌で声が出ていなかったり苦しそうでした。
市村さんは最初の方のセリフで口がまわりきっていないように聞こえ、ハラハラしてしまいました。
山口さんも歌の聞かせどころで音程や声があやしくなって、結果として迫力を欠くところがあったと思います。
初演から16年の月日がお2人に流れたことの悲しさをヴィスタリアは感じずにはいられませんでした。
コンスタンツェ/平野綾
演技はまあ、及第点ではないでしょうか。はすっぱな感じは表現できています。
しかし歌と衣裳の着こなしに問題があるとヴィスタリアは思いました。
歌はコンスタンツェ一番の聞かせどころであるソロの「ダンスはやめられない」で厳しいところがありました。
声を張って叫ぶように歌うところで声がでなくなってしまい、どなって誤魔化しているようにヴィスタリアは聞こえました。
より一層レッスンに励んでいただきたいです。
そして衣裳はプラター公園のミニスカ衣裳がアイドルにしか見えないように思いました(悪い意味で)。
そして「ダンスはやめられない」でドレス姿になると首~肩、腕まわりがなんだかモタついている感じが出てしまっていると思いました。
体型としては痩せているはずなのに、です。
飲み歩いているコンスタンツェらしいといえばらしいのかもしれません。
ナンネール/和音美桜
演技も歌もナンネールの音楽をあきらめた悲しみ、父親と弟の間でさまよう頼りなさ、父への愛情などよく表現されていたと思います。
好演といっていいとヴィスタリアは思いました。
セシリア・ウェーバー/阿知波悟美
初演からつとめているそうですが、安心の安定感だったとヴィスタリアは思いました。
シカネーダー/遠山裕介
初演と比べるのはとフェアではないというのがヴィスタリアの信条ですが、シカネーダーだけはどうしても初演の吉野圭吾さんと比べてしまいました。
吉野さんの出すキャラクターの濃さを超えるのはなかなか簡単ではないかもしれません。
アマデ
ぷくんとしたほっぺ、歩き方やヴォルフに「もー!ちゃんとしてよ!」とぷんぷん怒っている仕草もかわいらしかったです。
ちなみに今回はA席、1階後方かつ端の方の席でした。
作品自体、装置の妙を楽しむのならB席でもよいからセンターで観たかったと思いながら劇場を出たヴィスタリアでした。
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