おはようございます。ヴィスタリアです。
宙組梅田芸術劇場「FLYING SAPA」のライブ配信を見ての独断と偏見と偏愛に満ちたキャストごとの感想です。
なお作品の内容に触れております。
オバク(サーシャ)/真風涼帆
「オーシャンズ11」のダニーを見たときはスーツ姿のあまりのかっこよさに「どんな男性よりかっこいい!優勝!」と思い、
オバクの白いロングコート、ざっくりとしたニットに「世界中の男性よりかっこいい…ぶっちぎりで優勝!」と思いました。
丸首のセーターをこれほどさらりとかっとこよく着こなす男役さんどころか男性もなかなかいないとさえ思います。
セーターと髪型のバランスも最高で長い首の美しさ、首筋につい目がいってしまいます。
幕開きで声の出し方、喋り方が変わったように感じました。
詩を口ずさんでいるような、どこか茫洋ところを漂っているような、諦観を湛えていて、このふしぎな作品世界へと誘われました。
感情があまり見えてこない、冷え切った人物として登場しますが、
自分の記憶を失っていることに怒り焦燥し、SAPAで出会った人々をごく自然なリーダーシップで導くなかで血の通った存在へとなっていきます。
また総統01/汝鳥伶との対峙しての魂が叫ぶセリフには心を揺さぶられました。
気迫のある演技に目が熱くなってなにかが溢れてしまいそうなくらいでした。
トップスターとしての代表作の一つになると確信しましたし誰もができる役ではないです。
ミレナ/星風まどか
まどかちゃんをかわいいかわいいと思って見てきましたが経験を積んでトップ娘役としての堂々たる貫禄さえ感じます。
複雑な役で芝居のうまさを存分に発揮していました。
オバクと出会ったとき最初は目が死んでいるのも、
SAPAに着いてからの男たちを相手にした似合わない振る舞いに似合ってなさがちゃんと漂っているのも、
そして子ども時代になると幼くて疑うことを知らないピュアさがあふれるのも、自然なうまさがありました。
テウダとの2人で語るシーンや行軍のなかでオバクとのネックレスのやりとりなども印象的でしたし、一瞬ごとの表情が魅力的です。。
こういう細部に人物のリアリティがあるとミレナというふキャラクターが実在しているような気さえしてきます。
いつもとはまったく違うテイストの衣装がいずれもよく似合っていて、まるでゲームの中から飛び出したような肩やお腹を出したパンツスタイルも着こなしていてさすがです。
事務局長となってからの水色のドレスとピンヒール姿で颯爽と働く姿は凛と美しく、赤系の髪色によく合っていました。
ノア/芹香斗亜とイエレナ/夢白あや
一番惹かれたキャラクターがノア/芹香斗亜でした。
精神科医というプロフィール以外の過去も明かされず、自分のことはほとんど語りません。
しかし愛したイエレナ/夢白あやを、SAPAの人々を、この作品そのものを包み込んで癒やすような優しさと大きな力を感じました。
イエレナ/夢白あやに示す愛が深く正しいゆえに肯定的な力を持つものであることが諭す言葉になっています(だからこそイエレナは反発するのでしょうが)、
何も言わなずにイエレナを見つめているときの沈黙や視線にこそ愛がいっぱいで溢れているのが伝わってきました。
イエレナを諭す場面で、一瞬おいた間にノアの深い思いを感じて切なくなりました。
「止めても行くもんな」
「一緒に行ってやろう。どんな最低な地獄までも。僕はどんな君だろうがともかく君を愛したんだからな」
こうしたセリフのかっこよさ、まだSAPAのキャンプでの皆を癒やし鼓舞する言葉の力には彼のリーダーたる資質を見るようでした。
キャンプで口ずさむ、ささやくような歌も心に染みましたし、
歌が英語で始まっていつの間にか日本語になっていることも多様性、差異が悪とされるポルンカ(水星)において意味深いものだと感じました。
ノアという人物に残されたままの謎と包容力はキキちゃんとのイメージとも重なりました。
少し前にタカラヅカニュースでご自身を色にたとえるなら「そのとき演じる役によって色を変えたい。透明とか…できるだけナチュラルに透明でいられたら」と言っていたことを思い出しました。
このどこか透明な、変幻自在に役に染まれることがキキちゃんの魅力だと感じています。
イエレナ/夢白あやは過去と現在がまるで別人のように変わっていますが見事な切り替え、変貌ぶりでした。
ショートカットにダークめの色味の化粧、スキニーな黒い衣裳はかっこよく、令嬢の姿は淑やかで美しく、本当に同じ人物なのかと思うほどです。
声も変えており、ミレナの「「あなただと気づくことができないほど変わってしまった優しいイエレナ」という独白に説得力が増しました。
どんなに容貌が変わっても声で気づくということはあるものです。
オバクに向ける視線はまるで目だけで殺せるのではないかというぐらいギラついていて獰猛なものでした。
放たれる強い言葉は自身が深く傷ついていることの裏返しでもあり、そんな彼女が母となり幸せになれることを祈るばかりです。
背が高くて華奢なスタイルが美しいキキちゃんとあやちゃんが並んでいると絵のようでした。
スポークスパーソン101/紫藤りゅうとペレルマン/瑠風輝
幕開きの第一声はスポークスパーソン副官/山吹ひばりの長ゼリフですが、
彼女は能面のように表情も声も感情を失っていてセリフはただ情報として与えられます。
見る者を本質的にこの水星(ポルンカ)の世界へと導くのはスポークスパーソン101/紫藤りゅうです。
穏やかなアルカイックスマイル、柔らかい声、親切な歓迎の言葉、
決して崩れることのない隙のない美しい型を体現した仕草、立ち居方。
それらが総統01が作り上げたこの水星ポルンカの絶対的な肯定、疑いのない賛美からくるものだと伝わってきました。
冒頭で記憶を漂白された兵士タオカ/留依蒔世が導入プログラムとして総統01の代理を名乗るスポークスパーソン101の言葉を流し込まれるとき、
見ている者たちもまたポンルカへと導かれていくのです。
もっとも惹かれたキャラクターがノアなら、もっとも惹きつけられた芝居はるりこちゃん(紫藤りゅう)でした。
SAPAの者たちを”救出”する報道番組のときの、フィルターを通した心配を浮かべる表情に断定的なセリフが
メディアの上っ面さを表現している不気味さもありました。
そんな完全に総統01側に同化し美化していると思われたスポークスパーソン101が最後にした選択に考えさせられるものがあります。
総統01に近しく仕えるもう1人の男がペレルマンこと科学大臣98/瑠風輝です。
もえこちゃんの超絶スタイルのいい長身に細身のスーツ、金属フレームの眼鏡がとてもかっこよかったです。
またスポークスパーソン101が総統01への疑いのない称賛を捧げているとすれば、同じ科学者であるペレルマンは畏怖9割、崇拝1割で仕えていると感じました。
「10年ぶりにお会いできる」という慄くセリフが印象的でした。
また婚約者であるミレナに「美しい人」「愛しい人」と呼びかけますが、愛や思慕は感じられず、
あくまでも総統01の娘、後継者としてやはり崇拝に近いものを抱いていたり、総統01の意思でミレナと婚約したのかなと思わせるものがありました。
宙組「音楽の宝箱」ですばらしい歌声を聞かせてくれているので、次の公演はもえこちゃんのソロがぜひ聞きたいです。
その他のキャストたち
一言ずつですが触れさせてください。
◆総統01/汝鳥伶と難民ブコビッチ/穂稀せり
ゆうちゃんさん(汝鳥伶)の常軌を逸した思想を淡々と言い実行するのがおそろしくて背筋がゾワゾワしました。
一つひとつのセリフに重みがあってズッシリきます、自分がしていることを自ら「独裁」と言うあたりに彼のまっとうさもあることが悲しかったです。
そして若き日を演じるほまちゃん(穂稀せり)のリンク具合がすごすぎました!
もう目つきが尋常じゃないんですよ(褒めています)。
戦争によって失ったもの、負わざるをえなかったものへの怒りと復讐と絶望で燃えているのがわかりました。
ブラボー!!
◆キュリー夫人/京三紗
SAPAでホテルを経営する女性ですが、客たちをドスをきかせた声で一括する迫力はタダモノではありません。
どの衣裳も着こなしがすばらしくて楽しませていただきました。
プリムローズさん(「二十世紀号に乗って」)も思わぬ形で特出していて思わずにやりとしました。
◆タルコフ/寿つかさ
ゆりかちゃんと同様に声の出し方から変わったと第一声ではっとしました。
いつもより柔らかさがあってタルコフの人情味、温和さが声からあったと思います。
「50年分の記憶とおさらばだ」とか、映画をおごるシーンとか、一言の演技にこめた情報量が多いのがさすがです。
◆テウダ、少年/松風輝
幕開きでは水星(ポルンカ)の総統01の独裁を支えるデータベース「ミンナ」による”意識の矯正”をされる少年として登場します。
この少年が放つものに何とも言いがたい不吉さ、不気味さがあって心がざわざわとしました。
毛先だけ黒くしたマッシュルームカット、それも少年の目元がまったく見えないのも秀逸でした。
そして母親テウダは子どもへ注ぐ無条件の愛の深さと子どものために見せる強さ、
そして柔らかくしとやかな声で優しく歌う子守唄がすばらしかったです。
見せ場として歌い上げるのではなくかすかに、包み込むように歌うのです。
上田久美子先生は「神々の土地」アレクサンドラ/凛城きらにしてもテウダにしても、男役さんにこれぞという女役を当て書くと思いました。
◆タオカ/留依蒔世
ギラついたオーラが戦う者、衝動を抱えた者にぴったりでした。
兵士となってコード02を捕えようと触ろうとするとき、本能的な凶暴さが剥き出しになっていて見ていて怖さを感じさせるうまさがありました。
2幕では兵士から将軍になりますが、記憶が上書きされると目の色が変わって別人になっているのがよくわかりました。
サイドを長く垂らしたヘアスタイルと帽子がとてもよくお似合いでかっこよかったです。
◆記者8324、アンナ/天瀬はつひ
この公演でのご卒業される99期のはっちゃんは2役を演じています。
記者8324はおしゃれな働く女性、こういうレポーターいるなあという思いました。
髪型がスタイリッシュで、メイクの色味も変えているのかこの作品世界によく合っていました。
もう1役アンナはサーシャ/真風涼帆の母親で、夫と息子を支えるおおらかで懐のあたたかさがじんわりと滲んていました。
大千秋楽まで公演ができることを祈っています。
明日からはもう一つの宙組公演「壮麗帝」の公演が始まります。
こちらもライブ配信で見るつもりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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