こんばんは、ヴィスタリアです。
先日ヴィスタリアの永遠の贔屓ヤンさん(安寿ミラ)が出演されているミュージカル「イヴ・サンローラン」を観劇しました。
もう1度観劇してから感想をアップしようと思っていたのですが、急な仕事で行けなくなってしまい1回のみの観劇になってしまいました。
なのでファーストインプレッション的な、偏愛に満ちた感想です。
気づいていない、見えていないことがたくさんあるかと思いますがご容赦ください。
目次
荻田ワールド 生者と死者、実在と架空の人物の自由自在な視点
オギー(荻田先生)の幻想的な香りのする演出が光る舞台でした。
セットは白い、段数のことなる階段が置かれているシンプルなものが基本で、転換はほとんどありません。
この階段の一部が開いて寒色系のタイル張りの小さな噴水が出てきました。
水の音が舞台に流れるのが印象的で、この水はなにを象徴しているんだろうか…と思いながら見ていました。
(後半、この噴水の水が止まるところがあったのです。
考えを巡らせたいところですがヴィスタリアの頭では1回見ただけでは答えを見つけられませんでした。)
この白い階段でイヴ・サンローランの半生が様々な視点から語られます。
語る者は生者、死者を問わず、実在の人物あるいは架空のキャラクターをも問いません。
この 語る者の移動が自由自在に、頻繁に行われることが、この舞台に複雑な輝きと広がり、奥行きをもたらしていると思いました。
またこの白い階段が照明、音楽、演者によってパリ、イヴの故郷アルジェリアのオラン、戦争が起てからのアルジェリア、イヴとピエールが暮らしたマラケシュ、ニューヨークとあらゆる場所と時代をも自由自在に変化します。
なんと複雑で緻密で、そしておもしろい演出なんでしょう。
荻田先生の見事な手腕を目の当たりにしたと思いました。
荻田先生の頭の中は一体どうなっているんでしょうか。
そしてこうして思い返してみて印象的だったのは、 生者と死者の区別がいつの間にかなくなっていることです。
この幻想的な世界観は荻田ワールドの魅力ではないでしょうか。
上質な音楽と衣裳 おしゃれで緻密な舞台は完璧なカットを施された宝石
荻田ワールドを彩り、作品世界をより確かなものにしているのは 上質かつ繊細な、非常に完成度の高い朝月真次郎さんの衣裳と斉藤恒芳さんの音楽です。
衣裳はイヴ・サンローランを始め、シャネル、ディオール、スキャパレリといったデザイナーたちがそれぞれのブランドの特徴を表した衣裳を着て登場します。
最初イヴは白シャツをズボンにインというシンプルな衣裳を着ていますが、デザイナーとして大成したイヴはパンタロンに凝ったデザインのダブルのスーツを着ています。
ポスターにもなっているスーツですが、プログラムに朝月さんが非常に興味深いことを触れておいででした。
イヴがご存命の頃は、メンズラインはイヴ・サンローランでは製作されていなかったものですから、イヴ自身は他のブランドを多数私服としてお召しになっていたようですが、東山さんや海宝さんが演じるイヴのダブルジャケットも少し私流にアレンジをほどこしました。
このダブルのパンタロンスーツはいかにもサンローラン的だと思いながら見ていたのですが、当時のメンズラインにはなかったとは。
朝月さんのサンローランの解釈をこうして衣裳という形で見せていただいたのだと思いました。
どの役のどの衣裳も“これしか考えられない”というくらいぴったりで美しく、イヴ・サンローランのデザイン(モンドリアンなど)も登場して見ているだけで楽しいです。
斉藤さんの音楽は、ミュージカルというだけあって楽曲が多く、耳馴染みのある曲も挿入されていましたが、ほとんどが新曲でしょう。
音楽の洪水と言っていいほどの曲たち、そのどれもがおしゃれで洗練されているんです。
出演者の歌のレベルの高さもあり、上質の舞台で浴びるように音楽を、歌を聞けることはなんと贅沢なことかと思いました。
古典あるいは定番化し耳に馴染んでいるミュージカルの名曲とは違う、新鮮さも魅力でした。
楽曲としては難易度が高いであろうことは素人の耳でもわかりましたが、かといって覚えにくいということもなく、いくつかのメロディを覚えて帰ることができました。
3人の女性をそれぞれの魅力で輝かせる安寿ミラ様
ヤンさんは3人の女性を演じられました。
◆ココ・シャネル
美とプライド、強くありながらもしなやかな女性でした。
自分の才能と手腕で「シャネル」を作り上げた才女、シャネルの人生を歌い上げる歌が絶品でした。
歌にしても佇まいにしても見据える目の意思の強さにしても、劇場の空間が締まります。
そしてクラシックなシャネルスーツにパールの首飾りたちの素敵なこと、10cmはあろうかというピンヒール、そして足の甲の美しさといったら。
カーテンコールの黒いドレスも美しかったです。
背中と腕の鍛え抜かれ削ぎ落とされた細さとしなやかさには惚れ惚れを通り越して圧倒されます。
一度袖に捌けるときルルちゃんの首根っこを掴んでいたのがツボでした。
◆イヴの母ルシエンヌ
金髪のウェーブヘア、小花を散らしたワンピース、こういう女性いる、たとえば少し前のフランス映画にーーと思いました。
ワンピースの裾を揺らして吹き抜けるさわやかな風が見えるような、可憐で魅力的な女性でした。
息子イヴを溺愛している母親でありながら、どこか少女らしさを残した母親像だと思いました。
◆イヴの”ミューズ” ベティ・カトルー
プログラムはおろか開幕前のインタビューでもベティの名前は挙げられていないくらい出番としては少ない役です。
しかしヤンさんのベティはあまりにも鮮烈でした。
あまりにもかわいかった。あまりにもかっこよかった。
かっこかわいいとはこのことだと、あまり好きな形容詞ではありませんけれどこの形容詞がふさわしかったです。
マニッシュなスーツを着こなす細みの体、タバコ、踊るように歌うように自由に生きている、そんな女性です。
ヤンさんはスーツが大変お似合いですし踊るように生きておいでですが(勝手にそう思ってます)、ベティのスーツはモード感バリバリで新鮮でした。
イヴ・サンローラン/東山義久
気弱で繊細で、神経の線の細いイヴがそこにいました。
ピエールに寄り添い甘えきっているのに、他の男や友人たち、酒に溺れ依存せずにもいられない。
ルドルフ・ヌレエフ/中塚皓平や他の男たちに向けるじっとりとした湿度のある視線、その奥底に欲望がちらちらと燃えている表現がうまいと思いました。
動きの美しさはもちろんのこと、歌もすばらしかったです。
ピエール・ベルジェ/上原理生
芸術を愛しイヴを愛しビジネスの面で支え続けた人物です。
ピエールの心のなかは狂おしいほどにイヴへの愛でいっぱい、焦がれているのだと、上原さんの表情、演技から伝わってきました。
幕開きのイヴを失って茫然と立ち尽くす寂しさ、彼の中にどれほどの空虚さが広がっているんだろうと思いました。
イヴにはピエールだけではなかったけれどピエールにはイヴしかいなかったんだと思いました。
ピエールは資金集めに奔走したりビジネス面でイヴを支え、イヴにすべてを捧げている人物として描かれていました。
嫉妬し激高するのではなく、ピエールの愛以外にも”依存”しなければ生きていけないイヴのすべてを受け止めている、イヴのそういうところさえ愛しているのではないかと思わせました。
なのでイヴと親しい関係にあった「ルドルフ・ヌレエフをオペラ座から追い出した」と語られたのが非常に印象に残りました。
ルル/皆本麻帆
ルルは狂言回しの中心をつとめる役といえばいいのでしょうか。
この作品ではいろいろな人物が狂言回し的に喋り役割を担いますし、ルルも場面の人物になったりするので狂言回しに固定されているわけではありません。
この多視点がこの舞台の特徴と言えるかもしれません。
ぽってりと塗った真っ赤な口紅のルル、かわいかったです。
これからいろいろな場所で活躍されるのかなと思いました。
カーテンコールで宝塚のパレードのような背負い羽根とレオタードの衣裳で登場したのがふしぎで、客席にも「???」という雰囲気がありました。
これはサンローランが衣裳を提供したバレリーナ ジジ・ジャンメールへのオマージュのようです。
サンローランが亡くなったときの記事に羽根を背負った女性の写真がありました。
ルドルフ・ヌレエフほか/中塚皓平
男性4人、女性2人のダンサーが登場しますが、前々から知っている中塚さんに目が行きがちでした。
ヤンさんの「FEMALE」などで何度も見ているという贔屓目もあるかもしれません。
しかし中塚さんのバレエの美しさはすばらしく、ヌレエフ役にふさわしかったです。
プログラムを見て気づいたのですが2018年に宝塚歌劇の雪組「Gato Bonito!!」で振付をされているのですね。
(プログラムを見直したらシンガプーラとサバンナの場面でした。)
すべてのキャストさんに触れられなくてごめんなさい。
短い公演期間の間に主役のイヴだけでなくピエール・ベルジェ、ディオールも配役が変わるという豪華なキャスティングでした。
できることなら海宝さんのイヴも見たかったです。
上質で緻密かつ繊細に作り上げられた絶品のミュージカルです。
東京は3/3までです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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