おはようございます。ヴィスタリアです。
雪組「ファントム」のキャストごとの感想です。
役替わりはシャンドン伯爵/彩凪翔、ショレ/朝美絢でした。
例によってヴィスタリアの独断と偏見、偏愛に満ちています。
目次
エリック、ファントム/望海風斗
だいもん(望海風斗)の歌も演技も至高でした。
ライブビューイング(以下LV)でも思いましたけれど、 だいもん、ファントムの心をこんなにも伝えてくれて、見せてくれてありがとう、そんな思いでいっぱいです。
いえ、「ファントム」という作品がだいきほ(望海風斗・真彩希帆)を、エリックがだいもんを、クリスティーヌが真彩希帆ちゃんを待っていたと言うべきなのかもしれません。
だいもんは拗らせ系、鬱屈した思いや情熱を秘めた役が似合うと、「ドン・ジュアン」や今作のエリックを見ると思います。
端正かつ気品のある美貌とのそのギャップがたまらないのかもしれません。
LVを見た時点ではまったくストーリーを知らなかったのですが、今回はエリックがキャリエールのことを自分の父と認識していると思って見ました。
そうするとエリックはキャリエールに甘えていて、キャリエールに怒ったり、こうしろああしろというエリックの純粋すぎる、素直すぎる心をだいもんが表現していると感じました。
また今回は特にクリスティーヌに「お顔を見せて」と言われてからの場面がもう……たまらなかったです。
泣けてしかたなかったです。
エリックの動揺、一度は仮面を取ることを拒絶したエリックがクリスティーヌに説得されてだんだんと心の氷が融けるように、救いと愛を得て歓喜しているのが伝わってくるんです。
膝から崩れ落ち、仮面に手をするエリックはようやく救いと愛を得たと思ったからこそそうしたのに…。
クリスティーヌが去ってからのエリックの慟哭と、美しい森の布が一気に取り去られるのが象徴的だと思いました。
彼が信じていたもの、拠り所のしているものは本物ではなくすぐに醒めてしまうものだと感じたのです。
「ファントム」は名場面ばかりですがここは白眉だと思います。
キャリエールとの銀橋から、彼に「撃ってくれ」と悲痛に訴えるところも涙なくして見れませんでした。
だいもんはたくさんの美しい衣裳を着ておいでどれが一番とは決めきれないのですが、撃たれた腰骨を押さえていると細さが際立つと思いました。
フィナーレでデュエットで幸せそうにしているだいきほが見て救われました。
クリスティーヌ・ダーエ/真彩希帆
カルロッタがクリスティーヌの歌について「あなたは100年に一度の才能」というようなセリフがありますが、正にそのとおりのまあやちゃん(真彩希帆)のクリスティーヌだと思います。
美声に酔いました。
まあやちゃんは宝塚の歴史に残るディーヴァだとあらためて思いました。
まあやちゃんのクリスティーヌは才能がありながら、オペラ歌手になりたいという野心ではなく、夢を見ている慎ましい女の子というイメージがあります。
だからこそカルロッタに衣裳係にさせられても「オペ
ラ座にいられるだけで幸せ」と胸を高鳴らせ、エリックに「お顔を見せて」と言いながら恐怖が先に立って逃げ出したりしちゃうんですよね。
昔のことですが、演出家の柴田先生と生徒さんの対談をまとめた「タカラジェンヌとコーヒーブレイク」という本を読んだことがあります。
どなたとの対談だったかで、演技には2種類あるというお話がありました。
1つは役に自分が近づいていくアプローチで、この場合「クリスティーヌの真彩希帆」となる。
もう1つは役を自分に近づけるアプローチで、この場合「真彩希帆のクリスティーヌ」となる。
※クリスティーヌという役名と真彩希帆ちゃんの生徒名はこの場合ということで当てはめています。本の中では別の役、別の生徒さんでした。
※どちらがよい、どちらが悪いという比較の話ではありません。
楽譜を売ったりオペラ座を訪ねるときの愛らしさ、エリックの顔を見たときのクリスティーヌの人間的な反応をリアルな人物として感じさせてくれるまあやちゃんのクリスティーヌは後者だとヴィスタリアは感じました。
だからこそエリックの顔を見た後のクリスティーヌの反応に救いがなくて、エリックの傷つきようはいかばかりかと思わずにいられないのです。
どの衣裳もかわいくてまあやちゃんはカツラのセンスもいいなあと思うのですが、舞台で見るとタイターニアの白い透け感のドレスがとても美しかったです。
ジェラルド・キャリエール/彩風咲奈
大劇場のLVよりもキャリエールという役にさきちゃん(彩風咲奈)が近づいているように思いました。
エリックとの銀橋の場面は今回もやはり、涙が止まりませんでした。
演技も歌も今回一段レベルアップしたのではないでしょうか。
雪組はさきちゃんに目を奪われることが多く、2番手でこの先のことを考えると演技や歌をより一層磨かれてすばらしい舞台を見せてくれることを期待しています。
さきちゃんならできる、そう確信したキャリエール役でした。
それにしても劇場の3次元で見るとさきちゃんのスタイルのすばらしさには圧倒されます。
フィナーレのダンス、華やかさも目を引かれました。
特に 銀色の衣裳で銀橋を渡るときの柔らかな笑顔がすてきでした。
オペラ越しですがこちらを見てくれて(2階センターなので見やすかったのでしょう)ドキドキしました。
フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵/彩凪翔
凪様(彩凪翔)は美しくて非常に品のある貴族様でした。
佇まいやまとっている雰囲気に貴族である、という育ちのよさや血筋のようなものを感じました。
LVでは凪様のアラン・ショレを見ましたが、これはヴィスタリアの個人的な好みですが、凪様はアラン・ショレの方が作り込み、芝居巧者っぷりがわかるので好きです。
アラン・ショレ/朝美絢
最初のうち声がこもっているというか妙にまろやかに聞こえてこんなお声だったかな?と思ったらそのうちいつものあーさ(朝美絢)のお声になっていて安心しました。
愛するダーリン、カルロッタを追いかけるときの小走りや椅子から立ち上がるときのヒョイとした仕草など工夫していると思いました。
フィナーレの男役群舞でスポットライトはあたっていないのに光を纏っている男役さんがいる、と思ったらあーさでした。
カルロッタ/舞咲りん
映像より生の舞台の方がずっとずっといいと思いました。
歌にわざと下手さを出していることがよくわかりましたし、この作品のなかでカルロッタという役がやるべきことをしっかりしていてバランス感覚がすばらしいと思いました。
カルロッタがアドリブで「湿度がほしい」と言いながら舞台を捌けていかれました。
東京はこの1月ほとんどお湿りがなく非常に乾燥していてコンディションを保つのも大変かと思います。
大千秋楽までどうぞお気をつけてください。
リシャール/煌羽レオ
LVではなかなか見られなかったこともあり、舞台はカリ様に注目して見ていました。
カリ様(煌羽レオ)は「凱旋門」のマルクスがかっこよくて、以来注目しているんです。
マルクスのギラついた、不吉さを感じさせる黒い役から一転して今回のリシャールは柔らかな笑顔が美しかったです。
劇中の「カルメン」で赤い衣裳を着て踊っているのもかっこよかったです。
エリックの生い立ちの「アヴェ・マリア」のダンスも目を引かれました。
春の別箱はバウ「PR×PRince」組とのことで見に行けなさそうなので残念です。
従者たち/沙月愛奈、笙乃芽桜、鳳華はるな、諏訪さき、眞ノ宮るい、縣千
セリフはありませんがすばらしいダンスで、表情で、彼らの心とエリックの心が痛いほど伝わってきました。
プロローグの、空気を切り裂くようなダンスがあまりにすごくて気がついたら泣いていました。
エリックも傷つきながら生きているけれど浮浪者だったという彼らもまたそれは同じなんだと感じました。
エリックが「僕が食べ物を与えなければ死んでしまう」と言ったときの従者たちの不安げな表情も悲惨な過去が立ちのぼるようで印象的でした。
娘役さんが男役さんと同じ衣裳、同じ振付で踊るのは非常に珍しいことだと思いますがかっこよかったです。
その他…一言ずつ
一言ずつですみません。
ソレリ/彩みちるちゃんの黄色のリボンを編み込んだヘアスタイルがとてもかわいかったです。
ルドゥ警部/真那春人の仕草のかっこよさが警官たちとは明らかに違うことが舞台だとよくわかり、かっこいいなあと思いました。
ベラドーヴァ/朝月希和の歌がLVより伸びやかでよくなっていると思いました。
ディーヴァのまあやちゃんと似た声という設定で難しいと思いますが、エリックの母の心が伝わってきて泣きました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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