こんにちは、ヴィスタリアです。
花組「A Fairy Tale-青い薔薇の精-」新人公演を観劇しました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。
目次
「A Fairy Tale」新人公演は「お伽話」で友情の物語
この作品は脚本が矛盾だらけで植田景子先生ワールドについていけないというのが本公演を観劇してのヴィスタリアの正直な感想です。
新人公演では特に大きな変更などはありませんでしたが、若く学年差の無い生徒さんが演じられ、またトップスターの退団公演、次期トップスターやトップコンビといった本公演の「中の人」たちつい重ねたくなる背景が無い分、作品そのものを純粋に見られた気がします。
まあ重ねて見てはいけないのかもしれませんが。
なので新人公演ではストレートに伝わってくるものがありました。
・Mysterious Lady(とMysterious Old Lady)が語りハッピーエンドに導く物語ーーお伽話であること
・エリュの恋と、友情の物語であること
・ハーヴィーのニックおじさんやエリュへの思い
といったことです。
花組の新人公演メンバーがまとまって一つの作品を作り上げてくれたからでしょう。
エリュ/聖乃あすか(明日海りお)
「CASANOVA」新人公演のコンデュルメル閣下(本役 柚香光)のときも感じたのですが、ほのかちゃんは舞台の真ん中に立つオーラ、存在感のようなものがずば抜けていると、出てきて「ようこそ私の花園へ」と第一声を発した瞬間に感じました。
華やかで美しいお顔に目を引かれるのはもちろんのこと、真ん中で放つ堂々たるオーラがすごいのです。
だからこそなのか、青くなったエリュにフェアリー感だけでなく帝王感を感じました。
これは本公演を観てエリュと「エリザベート」のトートを重ねたからかもしれません。
精霊たちに囲まれていながらシャーロットを求めるヒリつくような強い感情、掟を破ってでもそうせずにはいられなかった説得力を感じました。
もう一つ説得力を感じたのはハーヴィーにシャーロット探しを依頼したことです。
脚本では明かされず観る側にゆだねられていることですが、エリュ/聖乃あすかとハーヴィー/帆純まひろのデュエットからの心の通わせ方がとても深みがあり、
「エリュにとってはハーヴィーしかいなかった」と思わせるものがありました。
ほのかちゃんは歌も声量豊かでこれだけ歌えると安心して聞いていられます。
シャーロットとようやく再会した場面で涙を流していたエリュですが、頬に流れる一筋の涙が青色に見え、エリュの悲しみと罪が洗い流されていくようだと思いました。
エリュの以前の姿白い薔薇の精/天城れいん(本役 聖乃あすか)はスタイルがよくお顔が小さくて、真っ白の衣裳とロングブーツがよく似合っていました。
シャーロット・ウィールドン/都姫ここ(華優希)
ことかちゃんの自然なお芝居に好感を持ちました。
特に少女時代の、ウィールドン家の庭で繰り広げられたドラマがとてもナチュラルでよかったです。
猫のヒゲのことで諭されて泣く姿は微笑ましく、10代になっても可憐で想像力豊かで、夢がいっぱいに広がって弾むようなシャーロットでした。
結婚以降の精神の均衡を失った悲痛な叫び、老年を迎えてのエリュとの再会はもう一歩深くなるといいなあと思いますが、まだ104期生。
初ヒロインの大抜擢に充分こたえていたと思います。
歌も丁寧に歌おうとしているのがわかりましたし、いまこれだけ歌えたら充分でしょう。
シャーロットの幻(9歳)/愛蘭みこ(本役 都姫ここ)とシャーロットの幻(11歳)/星空美咲(本役 美羽愛)もとてもかわいかったです。
組配属されたはかりの105期生みさきちゃん(星空美咲)は「おとめ」を見てかわいいなあと思っているのですが、舞台姿もかわいくて、
今回はセリフのない役でしたがどんなお芝居をされるのかこれからが楽しみです。
ハーヴィー・ロックウッド/帆純まひろ(柚香光)
今回で新人公演卒業となる99期のホッティー。
主演は「CASANOVA」1回限りとなりましたが、今回まひろくんのハーヴィーが見られて本当によかったと思いました。
ヴィスタリアは花組の男役さんではまひろくんに注目しているのですが、
観劇していてなぜ目が吸い寄せられるのか、決して整った美貌だけではない「何か」を感じていたものの、その「何か」がわからないでいました。
しかし今回のハーヴィーの演技を見てまひろくんが表現しようとしているものが琴線に触れるのだと確信しました。
本役のれいちゃん(柚香光)とは違う、まひろくんのハーヴィーが息づいていました。
れいちゃんのハーヴィーは働くことに疲れていて心が荒んでおり、誰も触れぬことのできない氷のようなものが心の中にあるのを感じます。
まひろくんのハーヴィーは仕事熱心で真面目な青年。
生い立ちゆえか性格ゆえか、周囲のことをよく見すぎて一歩引いているようなところがあるように感じました。
特によかったのがウィールドン家の庭を再生させようと決意する場面です。
ニックおじさんにひきとられた自分とガラスケースのなかで守られて育つ植物との重ね合わせ、忘れていたなにかを思い出し、エリュたちに心を開いていくのがとても自然に伝わってきました。
エリュ/聖乃あすかとのデュエットは2人の心の距離が変わりなにかが重なっていくのがありありと伝わってきて、
だからこそ最後の場面でエリュに忘却の粉をかけられることに「忘れたくない」と抵抗したり、友情の証としてエリュに握手を求めるのが自然に見えました。
またハーヴィーが「ニックおじさんのためにあの庭をもう一度」と決心するのをきちんと表現しているからこそ、最後の場面でニック/侑輝大弥が他の登場人物たちよりも前の段階で召喚されている(?)のがすとんと腑に落ちました。
「CASANOVA」のジャコモ・カサノヴァといい今回本役のマシューといいハーヴィーといい、まひろくんが演じると人のよさが滲むなあと思います。
まひろくんのハーヴィーはヴィッカーズ商会に現れた精霊たちをいつのまにか気にかけるようになっていて、自分でも気づかないうちに精霊たちの立ち位置に近づいていっているんです。
グリフィン夫妻の子どもたちが精霊が見ているらしいことも気づいて驚いた顔をしていました。
歌のソロは「がんばって…!」と固唾をのんでいましたが、新人公演を卒業されこれから本公演でいっそう磨いていってくれるとことを期待したいです。
ニック・ロックウッド/侑輝大弥(水美舞斗)とフローレンス・ウィールドン/咲乃深音(城妃美伶)
ニックのだいやくん、とってもかっこいい!
シュッとしているとはこういうことを言うんでしょうか。
だいやくんの整った美しい細面をずっと見ていたくて、ニックの出番がもっとあればいいのに…と脚本を恨みたくなりました。
庭の手入れをするマイムもうまく、急いで何かを切っていたり工夫されていました。
幼いシャーロットが放ったジョウロを落としていましたが、これは拾えても拾えなくてもどっちでもいいことですね。
フローレンスは本役のしろきみちゃんが少女のような女性、母親だとするなら、ゆうきちゃんは一人の女性であることが強く出ていると思いました。
ニックとの「Dear friend」のデュエットの後、たまらなくなったニックがフローレンスになにかを言いかけたときの動揺の大きさ、
まるでニックを遮るように「この絵を描き上げたらあげる」と言う必死さにフローレンスの女心が出ていました。
デュエットもしっとりと大切に、丁寧に歌われていました。
Mysterious Lady/音くり寿(乙羽映見)とMysterious Old Lady/若草萌香(美花梨乃)
おとくりちゃんが登場すると舞台がパッと明るくなるようなオーラがまばゆくて、本当にキラキラした粉が周りにあるのでは?と思うくらいでした。
幕開きの歌声は美しく伸びやかでうっとり……聞き惚れました。
本役さんとは身長も持ち味もまったく違いますが衣裳を綺麗に着こなしていたこと、最後の場面のカツラときらきらとしたヘアアクセサリーにセンスを感じました。
光の女神デーヴァ様がなぜMysterious Ladyとして動くことになったのかが脚本に描かれていないのでふしぎだったのですが、エリュたちのことを思ってのことなのかもしれないと、最後の場面のMysterious Ladyを見て思いました。
デーヴァ様の怒りもまた、時間が経ちすぎて薄れたように感じられたのです。
またこの最後の場面でMysterious Old Lady/若草萌香と目を合わせていたずらっぽく微笑みあっているのもよかったです。
これがあったおかげで2人が同一人物であることがわかり、庭の再生とエリュへの許しを示すために行動しているのかな…と思えました。
老婆のリリちゃんは落ち着いた声、セリフまわしはもちろんのこと、ハーヴィーとマシューにニックが手入れしていた庭について昔語りをするのもなにか意図があるのだと匂わせているのがうまかったです。
そして品があるのがとてもよかったです。
この品があってこそMysterious Ladyへとふしぎな糸が繋がると思うのです。
この2人と光の女神デーヴァ様がリンクしたことでこの作品を「お伽話」と捉えることができました。
オズワルド・ヴィッカーズ/一之瀬航季(瀬戸かずや)
やり手の社長、ビジネスマンをはなこちゃんは押し出し強く、グイグイ突っ走るワンマンっぷりを見せてくれました。
Mysterious Ladyにもグイグイいくけれど下心もそんなにないというかあるとしてもビジネス目当てという印象を受けました。
マシュー/希波らいと(帆純まひろ)
らいとくんのマシューはキリッとした仕事のできるエリートな助手で、らいとくんらしい役作りだと思いました。
グリフィンの妻ネリー・グリフィス/美羽愛が子どもたちとマフィンの差し入れに来たとき、マシューは落ち着いた大人として子どもたちの相手をしています。
そんなマシューが「クリスマス・キャロル」について熱弁するギャップがよかったです。
本公演は仕事に疲れ荒み、どこか心に壁があるというか氷のようなハーヴィーに対して人がよくて素直なマシューがいい組合せでしたが、
新人公演は仕事に誠実たらんとするハーヴィーになんでもそつなつこなすマシューの組合せでどちらもいいコンビだったと思います。
その他気になったキャスト
一言ずつですが触れさせてください。
◆ネリー・グリフィス/美羽愛(春妃うらら)
あわわちゃんは本公演のシャーロットの幻(11歳)がとってもかわいくて儚げな美少女で注目しています。
良妻賢母のネリーも美しくかわいかったです。
◆メアリー・アン/糸月雪羽(芽吹幸奈)
上手ですね。芝居に安定感がありくすりと笑いを誘う間もよかったです。
シャーロットが嫁いだ後、髪の毛に白いものを混ぜているのが流れた時間が表れていました。
またシャーロット、ウィールドン子爵への思いやりの示し方になんて心優しい女性なんだろう、と感じさせるものがありました。
あと短いセリフのなか芝居心を感じた馬丁/南音あきら、
精霊たちのなかで手と腕の使い方、見せ方が美しかったプルケ/詩希すみれが印象に残りました。
新人公演を見ることができ、作品自体にも別の見方ができて貴重な観劇となりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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