京都劇場で「FREE TIME,SHOW TIME 君の輝く夜に」を観てきました。
各SNSで見かける撮影スポットはあいにくの逆光でした。
すばらしい舞台に興奮しすぎてうまく書けないのですが、それも含めてヴィスタリアの感想ということで、偏愛に満ちた感想を書いてまいります。
ネタバレを大いに含みますのでご注意ください。
自然体の4人が極上のセッションを見せてくれるFREE TIME
この舞台の完成度、音楽、パフォーマンスは最上級といっていいと思いますが、完成度が高いからといって完成品を見ているわけではないとヴィスタリアは感じました。
ヴィスタリアは1回しか観劇できなかったのですが、この舞台は一度完成したらおしまいではなく、おそらく回ごとに変化していて”ナマモノ”感の強い舞台ではなかったかと想像するのです。
ヴィスタリアがその1回で感じたのもは、「今日はこうしてみたい」「こうしたらどう」という、スタッフとキャストの極上のセッションを見ているような楽しさでした。
“FREE TIME”とはよく言ったもので、自由な空間で自由度の高い演技を見せてもらった楽しさからそう感じたのだと思います。
セッションのようだと思ったのは、4人がものすごくナチュラルに舞台に存在していて、役との境界線がわからなくなるような瞬間があったからです。
舞台は虚構なのでときどき感情がついていけなかったり、演技がちょっと……だと白けるといいますか、照れて恥ずかしくなることがヴィスタリアはあるのですが、この舞台はわざとらしさみたいなものがどこにもなく、キャストとキャラクターの境目がわからなくなりそうでした。
稲垣吾郎さんは一途なところのあるチャラ男に、北村岳子さんは年下のイケメンを狙う気のいい大人の女性に、中島亜梨沙さんは男の見る目のないややワイルド味のある美女というイメージが固定してしまいそうです。
違う違う、それはジョージで、ライザで、ニーナ。皆さん本当は違うパーソナリティなんだから…と自分に言い聞かせました。
パフォーマンスもバンドも音楽がすばらしい
休憩なしの100分は、幕は下りないのですが暗転で1幕・SHOW TIME・2幕と場面転換がされます。
1幕、2幕の芝居はオリジナルの楽曲が、SHOW TIMEはガーシュインの名曲を中心にミュージカル好きにはおなじみのメロディが盛り込まれています。
この音楽が軽妙で、洒脱で、楽しくて。最高の一言です。
まず開演前から流れるバンドの演奏がすばらしいです。
バンドの演奏そのもののレベルの高さはもとより、心から楽しんで演奏しているのが伝わってくるのです。
明るい客席で待っている観客のみなさんが思わず手拍子をしてしまうほどでした。
宝塚のオーケストラは音楽の大切なところで音がハズれたりヒヤヒヤすることが多いので、外の舞台で演奏のレベルが高いとそれだけでも感激してしまうのですが、開幕前から拍手をしたくなる舞台のバンドはなかなか無いようにヴィスタリアは思います。
そしてこの演奏にのせてキャスト4人が歌い踊るのがまたすばらしいのです。
オリジナルの歌詞はときどきふしぎで、アジフライの作り方を教えてくれたりするのですが、とてもオシャレ。
レベルの高さは遊びじゃないのですけれど、レベルが高いからこそ、いい意味で“遊び”でやっているように見えます。
大袈裟なもの、力みはどこにもない。
ただそこに、ジョージ・ビビアン・ライザ・ニーナという4人がいて、さらりと歌ったり踊ったりしているだけ、そんなふうに見えました。
SHOW TIMEはヤンさんの燕尾服に心を奪われる
幕間のSHOW TIMEは4人が黒燕尾を着て、ケーンを手に歌って踊ります。
ヴィスタリアはヤンさんファンなので、すっかりヤンさん(安寿ミラ)に目と心を奪われてしまいました。
着こなし、立ち姿の圧倒的な存在感は言葉になりません。
尋常じゃない美しさで、端正で、男役の残り香が立ち上るようで、いまこうして言葉を並べていてもヤンさんの燕尾服のすばらしさと見ているときの心の動きに追いつかないです。
ヤンさんの燕尾服は「元男役のトップスターだからさすがだね」では済ませられないものがあると、見ていて思うのです。
この着こなしを1995年に退団されてから維持するためにヤンさんはどれだけのことをされてきたのでしょう。
あのときと同じことを同じようにされていても、いまこれほど心を奪われたりはしないと、退団後のヤンさんを見ていて思います。
そして踊れば流れる動きは洗練されていて軽やかで美しく、キメの動作はため息ものです。
ヤンさんのすてきなところを見るたびに息を飲み続けるものだから酸欠になりそうでした。
途中で大いに酔い、燕尾服の上着を脱いで腕まくりをして踊るのですが、ここがまたかっこいいのなんのって。
歌も伸びやかでした。
気持ちよく歌っておられるのだろうなあと伸びる歌声に包まれて幸せでした。
できればもう一度、もう何度でも見たかったです。
ジョージとビビアンのこれからの10年は?
もっとも印象に残った場面は、ビビアンがジョージに自分の正体を明かしてからの流れでした。
ビビアンはジョージの昔の恋人サエコの親友でした。
ビビアンはサエコにかなり入れ込んでいるというか、特別な友情を感じているようです。
このジョージとビビアンの言い争いは、関係性が変わる、空気が変わるのを目の当たりにしているおもしろさに胸が躍りました。
ジョージもビビアンもこの出会いをこのままにするのは惜しく、ダイナーを去りがたいと感じている、でも一方でこのまま別れた方がいいようにも感じているのが伝わってきました。
ジョージが思い切ってビビアンを誘うとビビアンは答えます。
「またここで会いましょう。10年後に」
なんて気の利いたフリ方、別れ方なんでしょう。
でもこんなに惹かれ合っている2人ですから、運命かなにかのいたずらで、10年経つ前にどこかでばったり会うようなことがあってもおかしくない気がします。
そんな続編を期待してしまうほど、ジョージとビビアンの別れは心に残りました。
ヴィスタリアが劇場で感じたことの半分も書けていないのですが、ひとまずまとめました。
思い出したことを言葉にできたらまた書きたいと思います。