観劇の感想

月組「ダル・レークの恋」月城かなと✕海乃美月の美とキャストごとの感想

こんばんは、ヴィスタリアです。

赤坂ACTシアター月組「ダル・レークの恋」のキャストごとの感想です。

いずれもヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちたもので
作品の内容、セリフなどに大いに触れています。

ラッチマン/月城かなと、カマラ/海乃美月

美しいものを見ることには価値がある――とは「神々の土地」の台詞ですが
正にうみれいこのそれぞれの美、並びの相性のよい美×美を見ることに価値があるのはポスターの静止画でも納得です。

しかもうみれいこが兼ね備えた実力で極上のロマンスを見せてくれるのですからたまりません。

遠い昔にどこかで「どんなに美しい容姿でも色気がないとおもしろくない」と目にしたことがあるのですが
ラッチマンのれいこちゃんは端正な美貌に男役としての危険な色気をあらゆる濃淡で纏っていて非常に魅力的でした。

色気のある男役さんは纏う空気に色がついて見えると感じることがあるのですが
れいこちゃんがラッチマンという役の様々な色気を見せてくれたのがそう感じたのかもしれません。

「ピガール狂騒曲」シャルル・ジドレーヌ役でも新たな扉を開いたと感じたのですが、
ラッチマンで開いた扉から色気が大放出されていてしかも扉の先にはまだ見ぬ底知れないものが待っている…と感じました。

カマラ/海乃美月が「あなたの軍服に恋したのです」と棘で武装した言葉をぶつけますが、
その言い訳も通ってしまうのも納得の男っぷりで
ラッチマン大尉がポスターの軍服で堂々と登場されたときお隣の席の方が「わぁ…っ!」と悲鳴を抑えきれない気配が伝わってきました。
(わかりますよ…と心のなかで声をかけたくなりました)

このターバン✕騎兵大尉の制服から始まって数々の衣装の着こなしもすばらしく、
カマラとの一夜で悠然とターバンを解いて長い黒髪がなびくのはため息ものでした。

プロローグでもターバンから黒髪を出していましたがこの長髪といい肌の色合いといい
なんてれいこちゃんの端正な美貌にお似合いなんでしょう。

一方で2幕の地毛✕タキシードにマフラーも正統派のスタイルでありながら
職業は無頼漢です」とうそぶくようにどこか野性味があるのもかっこよく、濃い色気を感じました。

タキシードからサスペンダーがちらちら見えるように着ているのがまた最高でした。

芝居も歌も実力と魅力のあるれいこちゃんですが
特に印象的だったのがカマラやインディラたちの前で前科12犯の詐欺師ラジエンドラの嫌疑をかけられたところです。

震えるほどの強い怒りが燃えていて、心から愛するカマラの変わり身を信じたくない心情が手に取るように伝わってきたんです。

そして取引としてカマラに要求したことに怒りと哀しみと独占欲が渦巻いているのもよかったです。

怒りは心底傷ついたときに生まれるものではないでしょうか。

だからこそラッチマンの選択とラストシーンが沁みました。

カマラ/海乃美月は美しさと生まれながらの高い身分の気高さを兼ね備えながら
ラッチマンとの恋に夢中になっている乙女らしさもありました。

カマラは大人っぽい女性のように見えますが女官になる前の若い乙女なんですよね。

うみちゃんのたおやかな美と淑やかさ、気品がオーラとして輝いていて目が離せないのはもちろんのこと
表情がこまやかで、また背を向けてインディラやラッチマンのセリフを聞いている場面も多いのですがその背中が雄弁で目が離せなくなってしまうことが多々ありました。

これはうみちゃんの芝居の巧さとヒロインのオーラが為せることだと思います。

そして心にもない言葉をラッチマンにぶつけながらも表情が雄弁でカマラの心が伝わってくるようで
だからこそ祭りの場面での心と言葉、行動が一致した短い幸せがたまらなくて…泣けてきます。

華やかで豪奢な衣装が華奢なスタイルにお似合いで、デュエットダンスで見える腹筋には綺麗な筋が入っていて拝みました。

美しいセリフの駆け引きと人間の心を描いだドラマ、至極のラブシーンをうみれいこが存分に見せてくれて引き込まれました。

ペペル/暁千星とリタ/きよら羽龍

NOW ON STAGEでれいこちゃんの「役以前に男役としてどうかみたいなところが求められる」という言葉にありちゃん(暁千星)は深くうなずいていました。

そして「ダンディズム!などを見返して私は真矢みきさんと思ってやっています」と仰せでした。

ここで真矢ミキさん(現芸名)のお名前が出てくるのをふしぎに思ったのですが
ありちゃんはプロローグもフィナーレも踊りまくりですばらしいダンスを存分に見せてくれるのですが、
ペペル役としてのナンバーが多く、これが男役としてたっぷり見せるものでなるほど…と得心しました。

ぺぺルはうんと悪くて、口がうまくて、でもたまらなく色気のある男です。

短い出番の中で強い印象を残し男役の美学をたっぷり見せないと成立しない役ですから簡単な役ではないのですが
実力に加えて色気もあるありちゃんが新境地を拓いたと思いました。

ペペルと言えばの黒ターバン✕白ストライプのスーツもパリのクラブのうんと洒落たスーツの着こなしもかっこよかったです。

プロローグのシヴァ神もフィナーレも踊りまくりでさすがでしたし、
真珠の男と女の場面で情緒のある歌を聞かせてくれたのもよかったです。

カマラの妹リタ/きよら羽龍は「アンナ・カレーニナ」のキティに研1の終わりで抜擢されたときは一生懸命さを感じましたが
いまはもう余裕がありおはねちゃんなら大丈夫と安心して観ていられました。

ぺぺルに夢中ではしゃいでいるのがカマラとラッチマンの恋とも対比されていて印象的でした。

女官長になるために厳しく育てられた姉とは対照的にわりと自由に、甘やかされて育ってきたこと、
ゆえに進歩的な考えを持ち祖父チャンドラにも口答えできる闊達さが生き生きと輝いていました。

おさげをそれぞれ3にわけて三編みにしているのがとってもかわいかったです。

クリスナ/風間柚乃とアルマ/夏月都

クリスナはカマラの年上の従兄弟で、出番も多ければ歌もある重要な役です。

しかも妻アルマ/夏月都と学年差があるので配役が発表されたときは驚き、
同時に「おだちん(風間柚乃)なら何の不安もない。きっとやってくれる」とわくわくしました。

そしておだちんは期待以上に王族らしい鷹揚さと威厳のあるの男性を自然に演じていました。

クリスナの優しさはチャンドラ・クマール/千海華蘭の「領民に慕われてもいれば馬鹿にされてもいる」という言葉にも表れていますが、
おだちんのクリスナはこの言葉も納得させてくれます。

兄妹のように育ったカマラのことを心から気にかける優しさにあふれていますが
情愛に流されすぎることはなく、この作品で描かれている身分社会で生まれながらの王族であるという前提がしっかりとありました。

このバランスが自然だからこそクリスナに説得力があると同時に
身分社会がどういうものかを浮き彫りにしていたように思います。

歌唱も安定していてすばらしかったです。

ドラマシティでは正反対とも言うべきペペルをどのように演じるか楽しみです。

クリスナの妻アルマ/夏月都はおしゃべりで即物的で、目に見えるものだけがすべてだと信じていそうな女性です。

その視野の狭い言葉、変わり身のはやさに客席から笑いが漏れるのはなつこさんのうまさのなせる技でしょう。
穏やかな声、口跡のよさも耳に心地よいです。

自分は笑うよりも、アルマが何の疑いもなくこの社会に王族として生きていることに
人間の浅はかさ、愚かさのようなものを感じました(時代も場所も遠く離れた客席から観ているからこそ)。

そんなアルマをクリスナは達観して見て自由にさせている…といった夫婦でしょうか。

このお2人は07年月組版と明確に違う役づくりをしていたのがとてもおもしろかったですし
このお2人にしかできないものを作り上げたことに大きな拍手を贈りたいです。

その他の役たち

一言ずつですが触れさせてください。

◆ラジオン/蘭尚樹とビーナ/詩ちづる
この作品の清涼剤ともいうべき若き「アツアツ」のカップルです。

まおまお(蘭尚樹)ちづるちゃんもかわいいー!そしてうまいー!

思わず頬がゆるむ幸せいっぱいのかわいいカップルな上に歌も達者ですばらしかったです。

まおまおはナンバーでの軽やかなダンスも目を吸い寄せられました。

◆インディラ/梨花ますみ
組子、副組長として月組で長い時間を過ごされたみとさんが「出島小宇宙戦争」に続いての月組出演はうれしいことです。

またれいこちゃんは雪組でご一緒でしたから
初日のご挨拶でとてもうれしそうに声をかけられていました。

この舞台でもっとも身分、年齢の高いお后様の威厳と高貴さ、プライドがあふれていて
杖をつきながらの一挙手一投足、セリフの重みのある一言一言がすばらしくてみとさんの好きな役が増えました。

衣装の着こなし、豪奢なアクセサリーもすばらしかったです。

◆チャンドラ/千海華蘭
お髭のスチールが最高に渋くて美しいです。
人のいい、かわいいおじいちゃんに見事に変貌していました。

「ピガール狂騒曲」ロートレックの低身長・短足を見事に作り出していたのには驚愕しましたが(中の人のスタイルのよさと違いすぎて)、
今回も膝の折り方、よたよたした歩き方に驚愕しました。

プロローグ、フィナーレとのかっこよさとのギャップがすごくて
「あ、あの男役さんの見せ方が素敵」と思った視線の先にはからんちゃんがいることが多いので尚のことです。

◆金の男A/夢奈瑠音
金の男としての出番はなかなかないのですが、プロローグ・フィナーレのダンスのキレとスタイルのよさは
さすがるねくんで目立ちます。

そして2幕のパリのクラブのパリジャンもかっこよくて小芝居をしているのに目が吸い寄せられました。

ドラマシティでクリスナを演じますが、るねくんに似合うのではと大いに楽しみにしています。

◆ハリラム/蓮つかさ
お髭のスチールが最高に渋くてかっこいいです。

ラッチマン/月城かなとの父親ですが、本当に父親が息子を諫めているように見えました。

年齢から分類すれば老け役になるのかもしれませんがれんこんくんの芝居が光っていて強い印象に残りました。

1幕では酒場の亭主として祭りでのソロ歌唱があります。

歌唱としてとてもよかっただけでなく、
その土地の祭りであり祀る対象(土地なのか信仰の対象なのかはわかりませんが)、芯を感じさせる表現が聞きごたえがありました。

◆ジャスビル/礼華はるとパタナック/柊木絢斗
おとぼけ具合といい冗長なセリフといい(今回かなり変わっているとは思いますが)セリフの間など相当難しい役なのではないでしょうか。

それをぱるくんみよっしーが自然に演じていたと思います。

ぱるくんの2幕のパリのクラブのパリジャンが超絶スタイルでかっこよかったです。

◆ミシェル/楓さき
パリのクラブの女主人として艶とときにハッタリだってきかせられる迫力も感じました。

最後のミシェルのセリフが非常に重要だと思っているのですが、やりすぎ感も足りないところもなく絶妙でした。

◆支配人・ポトラジ・ジョルジュ/佳城葵
月組でいつも楽しみにしているやすくんは各場面で口跡のよいセリフを聞かせてくれました。

クマール家に運転手として仕えているポトラジの終幕のセリフに彼の優しさが滲んでいます。

ダル湖のホテルに集まった人々、祭りの民衆たち、パリのクラブに集う男女など
後ろの芝居が自然かつ巧いのでずっと見ていたくなるのも月組らしくて好きだなあと感じました。

何度でも見たい、そして多くの方に見てほしいすばらしい名作の、充実の再演でした。
月組バンザイ!

読んでいただきありがとうございました。
はげみになりますので応援していただたらうれしいです。
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