こんばんは、ヴィスタリアです。
宙組「Never Say Goodbye」を観劇しました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。
「Never Say Goodbye」
小池先生のオリジナルの作品を観るのはなんだか久しぶりな気がします。
初演時はヅカファンをお休みしていたので映像で予習し、今回の初めて劇場で観ました。
ちょっと冗長かなあと思う場面があったり盆が回りまくるのに16年という時間が流れているのも感じました(最近はここまで盆が回ったり幕切れに組子勢ぞろいしたりしないので)。
スペイン内戦が題材ですが対フランコ将軍の戦いよりも、人民戦線のうねりと思想、理想、背景による分裂と分断を鮮やかに描いていて、
対フランコで立ち上がったのは同じはずなのに同志であったはずの人々はどうしてこうも対立しときに疑い合い、結んだはずの心が疑心暗鬼に変わってしまうのか――。
この思いをフランク・ワイルドホーン氏の名曲の数々と宙組生の想いのこもった、厚みのあるすばらしいコーラスが強く掻き立て、客席で思わず泣いてしまうこと度々でした。
「アナスタシア」でレニングラードを逞しく生きる人々のコーラスも歌声から一人ひとりの生き様が伝わってくるようであんまり感動して泣いてしまいましたが(泣くような歌ではないのに)、
今回は「ONE HEART」「NO PASARAN」など泣ける曲、状況によって変わる曲(信頼から分断へ)なので余計に泣けました。
しかもロシアのウクライナ侵攻が報道される今、ソ連からの武器提供、報道の自由が奪われることなどが切実に迫ってきます。
御園座の星組「王家に捧ぐ歌」もそうですが、世界で起きていることをより一層考えさせてくれる演目で、
宝塚歌劇の舞台は華やかで美しく豪華ですが作品が描くものは重たく深く、そして普遍的なものだな…と思いました。
フィナーレが長めで、男役娘役入り乱れての構成にKAORIalive先生の振付がかっこよくて最高!!でした。
酸欠になるかと思うくらい昂ってしまって体温も心拍数も上がりました。
かっこよすぎる!
何度だって見たいですフィナーレです。
宙組「Never Say Goodbye」役ごとの感想
◆ジョルジュ・マルロー/真風涼帆
ゆりかさん(真風涼帆)、とってもかっこよくてこれぞ男の中の男という感じでした。
どの衣装も、スーツもシャツも革のアウターもブーツもとにかくかっこよくて、男役のすごさを感じるといいますか、ゆりかさんは男役の盛りにいるのだな…と思いました。
サン・ジョルディの騎士のコスチューム物もまた素敵でした。
ポーランド出身で、名前を変え、ヨーロッパでもアメリカでもどこか居場所のないデラシネ(根無し草)だからこそ、
スペイン内戦を目の当たりにして自身のすべてを懸けるようにカメラのシャッターを切る生き様がよく伝わってきましたし、説得力がありました。
さらにカメラを置いて銃を手に取るようになり、どうしても素通りできないものがジョルジュのなかにあるのだな…と。
そしてこのデラシネだからこその悲哀やどこか寂しい雰囲気があるのと、戦線に加わるようになってからの力強い言葉、人の心を動かすリーダー的な求心力と意思の強さのギャップがまたよかったです。
名曲揃いでゆりかさんがしっかり歌い上げていてすばらしいでまが、キャサリン/潤花が自分の思惑とは違う行動をとるようになったときの呟くような歌もまたぐっときます。
男としてアギラール/桜木みなとにも嫉妬しているし、表現者としてキャサリンにも嫉妬している揺らぎが印象的でした。
◆キャサリン・マクレガー、ペギー・マクレガー/潤花
怒りを発露して魅力的な娘役さんが好きだと思うことがあります。
たとえば月組「BADDY」のグッディ/愛希れいかの怒りのロケットであったり、
花組「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」のビリー/華優希であったり。
キャサリン/潤花が自分の作品を「メロドラマ」として脚本家されたことに怒ってパーティー会場に乗り込んでくる場面の、プライドを傷つけられたからこその燃えるような、震えるのをやっとの思いで抑えるような怒り。
その後ライター仲間にぽんぽんと言葉をぶつけながら飲むときの発散するような怒り、自分を勝手に撮ったジョルジュ/真風涼帆に言い募る怒り。
活き活きとしていてとても魅力的で、いままでのかのちゃん(潤花)の役で一番好きかも…と思いながら見ていました。
舞台化粧も公演のたびに工夫されかのちゃんの愛らしさ、華やかさが際立つように思いますし、口紅の色がとても素敵でしたしキャサリンのイメージにぴったりでいいなあと思いました。
台詞の声が聞きやすく歌声も伸びやかになり、音域はこれから広がっていくのかもしれませんが研鑽と大きな進歩を感じました。
フィナーレのデュエットダンスはダイナミックなリフトといい(持ち上げて移動していくゆりかさんもすごい!です)、強い体幹、筋肉がないとできないであろうキメのポーズがいくかあってすごかったです。
◆ヴィセント・ロメロ/芹香斗亜
ヴィセント・ロメロという名前に柴田先生の「哀しみのコルドバ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
柴田先生ファンとしてただの偶然ではないと思いたくなります。
キキちゃん(芹香斗亜)、とってもかっこよかったです。
「アナスタシア」もそうでしたが何かを背負っていたり苦悩していたりするキキちゃんが自分で思っている以上に好きなようです。
歌も伸びやかでどの曲もいいですが、特に内戦へ身を投じることを決意するときのソロ曲が迫力があって何もかもを削ぎ落すような覚悟も感じました。
耳の中でずっと「二度と闘牛できなくても~♪」という強い歌声がリフレインしています。
この決意をするまでうつむくようにして座っているのもまたかっこよくて、ビリビリとした緊張感があって、恋人テレサ/水音志保にも決して明かさないものを内面に抱えているのでは…と感じました。
でもテレサ/水音志保を常に抱き寄せ隙あらば口づけを交わしているんですから、ヴィセントとテレサがいるとオペラでずっと見てしまいました。
絵になるお二人です。
またこのキキちゃんの大きな手の表情もまたかっこいいんです。
男役の手がいかに大切なのかよくわかります。
バルセロナ出身の闘牛士で映画にも出演するスターで、それも納得のかっこよさ、灰色✕金色の刺繍のマタドールのお衣装がとてもお似合いでしたし、
短髪の黒髪にブルーグレイのアイシャドウにほとんど色のない口紅も印象的で、男っぽさもあって好きです。
華やかなマタドールの衣装から藍色の市民兵としてのふつうのお衣装も好きでした。
◆フランシスコ・アギラール/桜木みなと
トップスターと2番手スターが同じ側にいて、それに対立する役どころは「オーシャンズ11」のテリー・ベネディクトと重なりますが、
ベネディクトと違って人の命を何とも思ってなさそうな底知れぬ恐ろしさ、暴力の気配が漂っているのが怖かったです。
こんなにゾワゾワと怖がらせられるずんちゃん(桜木みなと)、すごいな…と、「シャーロック・ホームズ」のワトスン、「アナスタシア」のポポフとのギャップにはっとしました。
黒い革のジャケット、ブーツもまたなんだか怖れを抱かせる装いで、アッシュの髪色のオールバックともお似合いでした。
専科のコマロフ/夏美ようも何を考えてるのかまったくわからない表情が恐ろしくて、さすがの存在感でした。
◆エレン・パーカー/天彩峰里
スター女優として登場するときの歌声からして歌うまで「もっと聞かせてくれ〜」と思ってました。
エトワールもすばらしいです。
じゅっちゃん(天彩峰里)は本当に歌も芝居もうまいなあと思います。
エレンはスターなので驕慢で高飛車なところがありますがじゅっちゃんは本当にそう見えて、でも実のところジョルジュのことを心底愛しているんですよね。
写真家としての才能も高く評価していますし、「忘れてしまったの…」と呟くように歌うところでエレンの恋心に切なくなりました。
◆ラ・パッショナリア/留依蒔世
いやー、すごかった!です。
配役が発表になったときからあーちゃん(留依蒔世)の歌をとても楽しみにしていました。
スカートをなびかせて銃を手に取り力強く大地を踏みしめ、人民戦線の先頭に立つ――男役を経験しているからこの力強さ、押し出しもあったでしょう。
でも「プロミセス、プロミセス」もそうでしたが女役として自然で巧くて、色濃い存在でもやりすぎにならないところがすごいなあと思います。
フィナーレでも女役として踊っていて、にこりともしない強気の美女がいる…と思ったらあーちゃんでした。
次の公演「カルト・ワイン」では男役が見られることも期待しています。
宙組はコーラスもすばらしいですがソロ歌唱がすばらしい生徒さんもたくさんいてあーちゃんはその1人ですし、市長/若翔りつもすばらしかったです。
◆人民オリンピックの外国人選手たち
宙組の男役スターさんが揃っています。
マックス・ヴァン・ディック(オランダのレスリング選手)/紫藤りゅう
ビル・グラント(イギリスの高跳び選手)/瑠風輝
ナセール(アルジェリアのボクシング選手)/優希しおん
ビョルン(スウェーデンのフェンシング選手)/鷹翔千空
ハンス(ノルウェーのフェンシング選手)/風色日向
タリック(モロッコのボクシング選手)/亜音有星
1本物な上に初演はトップコンビ(和央ようか・花總まり)の退団公演で役が少なく、ほとんど同じ行動をしていますから宙組のスターさんが充実しているのでもったいない…という気持ちはあります。
が、舞台にいる時間は長く、フラッグを振ったり歌ったりといった見せ場もあり、自分は宙組を見るときいつも楽しみにしているるりこちゃん(紫藤りゅう)を目で追っていることが多かったです。
金髪が美貌にとてもお似合いでしたし、初演ですっしぃさん(寿つかさ)が演じていたお役というのもうれしく、胸に迫るような台詞もありました。
◆ピーター・キャラウェイ/春瀬央季
この公演でご卒業されるかなこさん(春瀬央季)、プラチナブロンドがお似合いでとても美しかったです。
フィナーレではさらに赤い口紅がちょっと変わった色合いで金髪と美しいお顔によくお似合いでした。
パレードの階段おりでは組長、副組長の前にやはりご卒業されるせっちゃん(瀬戸花まり)とおりて来るのに大きな大きな拍手が贈られていました。
以上、観劇の感想でした。
大劇場の公演中止の影響もあってかチケ難で確保できたのはこの1公演だけだったのですが劇場で観劇することができてよかったです。
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