作品・演出編に続いて「雨に唄えば」キャストごとの感想です。
長くなってしまった上に、ヴィスタリアの独断と偏見だけでなく、たまるりへの愛どころか偏愛が溢れてしまいました。
そのことをご承知おきのうえお付き合いいただければと思います。
目次
ドン・ロックウッド/珠城りょう
この間の「カンパニー」の愛する妻を亡くして仕事の意欲もやる気も見失ったサラリーマン青柳はどこにいったんでしょう。
たま様(珠城りょう)の大型な男役の色気と雰囲気に、映画界の超有名スターという役はとてもお似合いだとヴィスタリアは思いました。
たま様のドンはただの2枚目スターではなく、スターの意外な一面をうまく表現されていたと思います。
子どものころは親友のコズモといたずらしていた茶目っ気のある雰囲気。
キャシーに「映画なんて」と言われて自信を失い、コズモも「励ましてくれ」と懇願するところ。
そしてキャシーに恋をして舞い上がり、雨に濡れても踊りたくなっちゃうハッピーな感情。
しかしドンはさすが映画スターだけあってキャシーと恋仲になってからは色男っぷりが際立っています。
キャシーに思いを告げる脚立のシーン、雨のなか相合傘でキャシーを送っていくところなど、クサいくらいかっこいいのに、ナチュラルでさらりと爽やかなのはたま様らしいとヴィスタリアは思いました。
コメディエンヌぶりが試されるリナとの毒舌アフレコシーン、早口言葉の発声練習もばっちり、ちゃんとおもしろかったです。
いくらまゆぽん(輝月ゆうま)のリナが怪演していたとしても、あの掛け合いはたま様も笑いをとっています。
たま様の立ち姿、座り方、仕草の一つひとつがかっこよくて素敵だとヴィスタリアは思いました。
たま様はお顔がふっくらしているので誤解されるのかもしれませんが、劇場で見れば男役の姿の美しさ、手足の長さ、バランスのよさに圧倒されます。
ドンがディレクターチェア(だったと思います)に座るときの脚の組み方。
実際にあんな座り方する男性はいないと思いますが、たま様の長い脚がなおさらきれいに見えました。
衣裳の着こなしもよくて、タキシードから燕尾服から、無声映画のおフランスものからなんでもござれ。
シャツにざっくりしたセーター、パンツのコズモとお揃いのような衣裳を着ていると、ドンがまだ若い青年なんだなという爽やかさが伝わってきます。
このお衣裳のドンとコズモはかわいいとヴィスタリアは思いました。
タップダンスをはじめダンスナンバーもうまいとヴィスタリアは思いました。
歌は、まあ、このくらいの歌唱力であれば夢を見れるとは言えなくとも夢は醒めないとヴィスタリアは思います。
「BADDY」では歌詞が聞き取れない、声が聞こえないとヴィスタリアは感じるところがありましたが、キーの問題でしょうか。
ただ今回もどうしても聞き取れない歌詞がありました。
2幕のナンバーが続く、スターを夢見る男がオーディションを受ける、ポッキー巡査のような派手眼鏡にチェックのスーツで「○×△ウェ~」と繰り返すところ。
ファーアウェーなのかブロードウェイなのかひたまた違う単語なのか、ヴィスタリアには聞き取れませんでした。
次回「エリザベート」にむけて一層の精進を期待します。
夢の、いえ黄泉の世界につれていってくださいね。
コズモ・ブラウン/美弥るりか
かわいい〜〜〜〜。
…すみません、美弥るりかちゃんへの愛が暴走しました。
映画界の大スター ドンの大親友でタップダンスだって早口言葉だってドンと並んで息ぴったりにやってみせるけれど、いまはピアニストという裏方。
キャラクター的には三枚目で、るりかちゃん(美弥るりか)のニンではありません。
しかしこの舞台で初めてみやちゃんを観た人は、そんなこと気づかないんじゃないかとヴィスタリアは思いました。
それほどるりかちゃんの演技は自由自在でした。
ドンや撮影所の仲間を明るくする、チャーミングでちょっと調子のいいコズモにしか見えません。
「グランドホテル」のオットーからコミカルなコズモまで、なんでもできるところまでみやちゃんの芸は完成されているのだとヴィスタリアは思いました。
たとえば2幕でドンとキャシーと3人のナンバーの後、キャシーがドンのほっぺにキスをして、コズモもキャシーにキスをお願いするシーンがあります。
みやちゃんの妖しいほどの色気と艶やかな雰囲気からしたらもっとも似合わないシチュエーション(みやちゃんだったらあらゆる立場の人に「あなたの口づけがほしい」と言われるような、妖しい役の方がお似合いではないでしょうか)ですが、それをさらりとナチュラルに演じてみせます。
タップダンス、歌の盛り上げもすごいです。
舞台全体を通してナンバーごとに舞台も客席が盛り上がっていき拍手が大きくなっていくのですが、その最初はみやりゃんのMake ‘Em laugh でした。
劇場中が美弥ちゃんが作り出す世界にぐーっとひきこまれていって空気が変わるのがわかった、とヴィスタリアは感じました。
劇場の空気を美弥ちゃんはすべて自分のものにしていたのではないでしょうか。
フィナーレのパフォーマンスもすばらしくて、美弥ちゃんが登場すると拍手が起きるのは当然としても捌けても拍手がなかなか終わりませんでした。
ドンとの息もぴったりで、大親友なのが演技というより空気で伝わってくるようだったとヴィスタリアは思いました。
たま様の次の相手役にもっともふさわしく、互いの魅力を引き出し合い、高め合い、この二人でなければ成立しないと観客に思わせるパフォーマンスができるのはもしかしてあなたなのではないですか。
芸もオーラも自由自在、劇場の空間も支配できる、しかし出すぎない、やりすぎない。
そういうバランス感覚のよさが、ヴィスタリアのみやちゃんの好きなところです。
金髪さらさらヘアのセンターパートってなかなかお見かけしないと思うのですが、爽やかでかわいくてお似合いでした。
リナ・ラモント/輝月ゆうま
間違いなく今公演のMVP、熱演ではすみません。怪演(褒めています)です。
ある意味、期待通りのリナがそこにいました。
キャラクターがはっきり決まっていて、観ている方のなかにも「リナってこういうイメージ」というのがあると思うのですが、それを軽々超えていくほどレベルが高かったです。
もう、おもしろくておもしろくて、おなかが捩れるほど笑いました。
あまりにおもしろすぎて舞台上でリナの発声を指導する先生(ミス・ディンスモア 玲実くれあ)が途中で笑いをこらえきれなくなってしまっていました。
そして舞台後方でもドンとコズモもちょっと笑ってました。
まゆぽんがおもしろすぎるので仕方ないとは思いますが、そこは早く慣れて演技に徹することができるといいなとヴィスタリアは思います。
女役(というべきか娘役というべきか)の仕草やドレスの着こなしなどもよかったような気がします。
ちょっと月組再演の「ガイズ・アンド・ドールズ」のきりやん(霧矢大夢)のアデレイドを思い出しました。
ファッション、髪型がアデレイドと似ているからかもしれません。
しかしリナことまゆぽんのお顔立がはきれいなのは、劇中の無声映画の映像であらためて感嘆しました。
モノクロだと誤魔化しがききませんからね。
そしてリナは芝居、歌、ダンスどれもできないという役ですがまゆぽんの歌とダンスが確かなのはフィナーレを見れば一目瞭然です。
「BADDY」の宇宙人のメイクで男役総踊りをしているのを観たときから只者じゃないと知っていましたが、この先も芸を極めて観客を楽しませてほしいと心から思います。
まゆぽんのような芸達者な生徒さんは貴重です。
今後の活躍も楽しみにしています。
キャシー・セルダン/美園さくら
ちゃぴ(愛希れいか)退団後の娘役トップとなるのか、注目されていますね。
演技、ダンス、歌ともに過不足なかったとヴィスタリアは思います。
スターになる前の、まだ開花する前の女の子のかわいらしさがあり、いまのさくらちゃんにぴったりの役でしょう。
台詞の声がかわいすぎない、作りすぎていないのもよかったのではないでしょうか。
作りこまれすぎた娘役はかえって夢が醒めるとヴィスタリアは思うのです。
たま様とさくらちゃんが並ぶと2人とも背が高くて手脚が長いので大型コンビ誕生!という感じがします。
似合ってなくはないと思いますが、しかしなぜか2人が並ぶとどこか垢抜けないような気がしました。
単体だとそれぞれそんなこと思わないのにふしぎなものです。
そしてヴィスタリアが思ったのは、「BADDY」で銀橋にねそべるバッディを扇いでいた、あのかわいい小悪魔スパイシーはどこにいっちゃったの?! ということです。
あのシーンでこの2人の組合せはなかなかよいのではないかと思っていたのですが、今回はなぜか垢抜けなさが拭えませんでした。
1階最後方からオペラグラスで観る限り、さくらちゃんはメイクに研究の余地がありそうに思います。
さくらちゃんは今公演のヒロインとしてはよかったと思いますが、娘役トップとしてはまだ、いまのところはよいとは言い切れないというのがヴィスタリアの正直な気持ちです。
ショーでもの凄いスターのオーラを放っていたちゃぴと比べるのは酷だとは思いますが、そういうオーラ、華が弱いと感じてしまいました。
今後の成長と変化に期待したいです。
ドラ・ベイリー/五峰亜季
映画コラムニストで台詞が多めで、安心して観ていられました。
ヴィスタリアの第一次ヅカファンのときから在団されている生徒さんが出演されているとなんだかうれしいです。
R・F・シンプソン/光月るう
撮影所の所長。
るうさんの「カンパニー」の脇坂専務の役作りがおもしろくて大好きなんです。
「BADDY」の海のベテラン♪オイスター、そしてフィナーレの総踊りの笑顔も大好きなんです。
今回も舞台を締める、質の高い演技をされていました。
こういう上級生がいるからこそ宝塚の舞台はお遊戯会にならないのだとヴィスタリアは思います。
ただ、所長がちょこっとタップダンスをして、客席が(ちょっと戸惑った感じで、いま拍手をすべきタイミングかを迷いつつ)拍手すると、所長は重役が「まあまあ」と沈める仕草で拍手を収めていました。
るうさんのダンスのレベルからしたらこのくらいのタップダンスは別に普通のことのように思うので、あの拍手はなんだったのかなとヴィスタリアにはふしぎでした。
ロスコー・デクスター(映画監督)/蓮つかさとロッド(映画会社の宣伝マン)/春海ゆう
今回は主役級ばかりに目がいってしまったので、それぞれについて書けません。
次はしっかり観たいと思います。
発声方法の先生/朝陽つばさ
見事な早口言葉芸を見せてくれていますが、代役なんですね。
お稽古たいへんだったことと思います。
早口言葉はすごいです。
これは朝陽さんの演技とは直接はないのですが、この日は朝陽さんがちょっとした手品を見せて、ドンとコズモがりょうちゃんとるりさんに戻るようなやりとりがありました。
ファンは楽しいですけれど、こういうシーンは、今日初めて宝塚を観るお客様が必ず客席にいることを考えてほしいとヴィスタリアは思います。
日々アドリブが入るようですが、あまりやりすぎないでほしいというのが正直なところです。
いろいろと思うままに書きましたが、月組のキャラクターの濃さとパフォーマンスの素晴らしさ、ミュージカルの楽しさがあふれている舞台でした。
2回目の観劇がいまから楽しみでなりません。
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