こんばんは。ヴィスタリアです。
前回の記事の続き、今回はちゃぴちゃん(愛希れいか)のエリザベートについてです。
自由と自立を追求したエリザベート/愛希れいか
「愛と死の輪舞」という副題で愛と対峙しているのが死=トートだと思っていましたが、今回の月組「エリザベート」は2人の男の愛の物語であったというのがヴィスタリアの感想です。
そしてその2人の男の愛と対峙するエリザベートは自立と自由を求めた女性だったとヴィスタリアは思いました。
それはエリザベート、シシィが舞台に登場するシーン、シシィの第一声から明示されていたことでした。
「鳥のように青の天空をいけるなら
私は歓びのうちに褒めたたえよう
自由という名の神を」
ちゃぴザベートのこの詩を読む読み方がまるで知らない楽譜を初めて読んで音を拾うな感じで、きらきらと光る宝物(自由という概念)を発見したように聞こえました。
このセリフをこんなふうに表現することができるのかと舌を巻きました。
この言葉がいい意味でひっかかり、「自由」がシシィにとってさらりと流せるものではないことが伝わってくるようでした。
そうやって舞台を見ていくと「自由」「鳥」「かもめ」というキィワードが聞き逃せなくなりました。
エリザベートが求めた自由には自立が切り離せないものだったのではないでしょうか。
親からも、フランツからも、宮廷からも、何ものにも侵されない確固たる自分というものを打ち立てて生きようとしていたからです。
自分の意思をはっきりと自覚して目醒めたシシィが「私だけに」を歌い上げて倒れ込んだとき、ものすごい拍手が起こりました。
倒れて気を失ったシシィの体が震えているのはシシィの感情の昂ぶりなのか、ちゃぴちゃんが泣いているのか一瞬わからなくなりました(前者だったと思いますが)。
ここでなぜエリザベートが倒れるのかがヴィスタリアはよくわからず以前からふしぎに思っていたのですが、ちゃぴザベートを見て納得がいきました。
自分では制御できないような感情のうねり、昂ぶり、宝物(自由)を自分の手でつかむのだと自覚したターニングポイントだったのでしょう。
2人の男に対峙し、より添わないから魅力的な娘役
自我に目覚め自由と自立を求めるシシィはトートとフランツ2人の男からの愛にきっぱりと対峙してみせます。
これは「BADDY」のグッディがそうだったように、男役に寄り添うという形以外で男役を、そして自身を魅力的にみせるという新しい娘役の道を切り拓いたちゃぴちゃんならではのエリザベート像ではないでしょうか。
ちゃぴザベートは2人の男性から熱烈に愛され、特に夫フランツの愛を当然のものとしながら、その愛を頼らないで生きていくことを求めているようでした。
トートが扮するドクトルに夫フランツの決定的な写真を見せられて「陛下の愛を失ったら生きていけない」と慟哭するとき、シシィが失うことをおそれているのは本当にフランツの愛でしょうか。
自分の自由と自立を押し通すための皇帝の後ろ立てなのではないでしょうか。
だからフランツの過ちを逆手に取るという転換をしてみせ、トートからの愛を「あなたには頼らない」と拒絶するのです。
ルドルフの助けを「陛下には頼めない」としりぞけるのにもそれを感じさせました。
エリザベートは自分を優先してルドルフを犠牲にした、切り捨てたのがわかっているから、ルドルフを失ってあれほど取り乱すのだとヴィスタリアは思いました。
そうやってトートにもフランツにも頼らず自由と自立を求め続けたシシィはとても孤独で、ルキーニの凶刃を受け入れたときにこれまで固執していたものよりもはるかに高い次元に真の自由があり、それは魂の安らぎ、死なのだというエンディングをすんなりと受け入れることができました。
愛希れいかのみずみずしい演技は輝いていた
ちゃぴザベートのよかったところを挙げればキリがないのですが、思い出せるところをいくつかあげてみます。
お見合い〜婚礼の途中まではほんと子どものままで、フランツから最初のキスを受けるときのガチガチの緊張具合がかわいかったです。
そしてフランツの告白を聞くうちに途中から恋する乙女の表情になっていきました。
婚礼翌朝のゾフィー襲来の場面でゾフィーを「おかあさま」と呼びかけようとするのもよかったです。
ライブビューイングで見るまでは「少女時代と若いときはよさそうだけれど老年はどんなふうになるんだろう」と思っていたのですが、年を重ねてからの方が輝いているように思いました。
これはぜひ、東京で、劇場で目撃したいところです。
長くなりましたが、トート・エリザベート・フランツの3人が一緒に出ている場面はほとんどないのに、珠城りょう様・ちゃぴちゃん・美弥るりかちゃんのトリデンテで作り上げられた、いまの月組にしかできない「エリザベート」だったとヴィスタリアは思いました。
これまでさらりと聞いてきた歌詞、セリフのどれもが息づいていました。
その他のキャストについては次の記事につづきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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