観劇の感想

星組ロックオペラモーツァルト新しい扉が開くキャストごとの感想

こんばんは、ヴィスタリアです。

星組「ロックオペラ モーツァルト」のライブビューイング、劇場での観劇あわせてのキャストごとの感想です。

いつもの通り感想はヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちたものです。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/礼真琴

すごかったです。歌・ダンス・芝居、なにをとってもすごかったです。
可能性も魅力も無限大の礼真琴というトップスターが星組に誕生したのだと感じました。

技術では圧倒的なことちゃん(礼真琴)であることを知ったつもりになっていましたが、
技術も表現力もまだまだ開けていない扉があって「こんなのも見てみる?」「これはどう?」「こんなこともできますよ」とその未知の扉を次々と開けて新しい礼真琴を取り出して見せた……そんな印象を受けました。

特にヴォルフガングの内面をさらけ出す歌がすごかったです。
酒場での「トラベルメーカー」、そして1幕最後の「バラの上で眠りたい」は打ちのめされたヴォルフガングの傷に触れているような、大切なものを失った絶望に押しつぶされるような、ものすごい迫力とプレッシャーで、
舞台からの圧に押さえつけられて客席で動けなくなってしまいました。

女たらし、あるいは人たらしでもあるヴォルフガングですが、母と父を失う前の天真爛漫さや怒られると犬ようにしょんぼりしてみせるところは微笑ましく、
たらしっぷりを発揮してやたらと距離が近いところは仕草がかっこよくてときめきました。

たとえば酒場で出会ったばかりのコンスタンツェの涙を両手でぬぐったり、アロイジアにメロメロになったりセシリアにお世辞を言って肩を抱いたり。

この距離の近さはいままでの男役像にはなかったものかもしれない、とも思いました。

ことちゃんはまだまだ開けていない扉があって、これからそれを目撃できるのが楽しみですし心から期待したいと思いました。

コンスタンツェ・ウェーバー/舞空瞳

ひっとん(舞空瞳)はとにかくかわいくてプリンセス誕生!という感じを受けました。
小さなお顔と長い手足で着こなす衣裳、凝った美しいカツラがよく似合っていて、中でもポスターにも使われている花柄のドレスは正にお姫様でした。

酒場でビービー泣き出してしまったり、母親に怒られて不平不満たらたらの顔をしたり、アロイジアに嫉妬したり、表情豊かな1幕が特に印象的でした。

だからこそ、結婚以降はヴォルフガングを支え理解者となる設定のコンスタンツェでしたが、セリフにあるように「子どもが大きくなっただけ」の女の子のままの奔放な人物像の方が一層魅力的だったのでは?とも思いました。
(これはひっとんのせいではありませんし、トップコンビの役となるとこういう形になるのが宝塚歌劇なのかもしれませんが)

ひっとんは歌も「GOD OF STARS-食聖-/Elair Brillant」よりずっとよかったですし、なんといってもダンスがすごかったです。

1幕最後の裸足で踊るところは技術もすごければ男役さんたちを率いる迫力があり、信じられないくらいすごいものを観ているのだと感動しました。
ぜひこれからショーでそういう場面が見たいです。

デュエットダンスも息の合った軽やかな動きにうっとり。夢を見させてもらいました。

アントニオ・サリエリ/凪七瑠海

こういうカチャさん(凪七瑠海)、いいですね。大好きです。

石田先生がようやくカチャさんの正しい使い方をしてくれて(という表現は語弊があるかもしれませんが)、つまり「壬生義士伝」のような役不足、もったいないことがなくて安堵しました。

嫉妬の炎を狂おしく燃やしている、それも冷たい炎を烈しく燃え立たせているサリエリは、「蘭陵王」に続いてカチャさんの当たり役ではないでしょうか。

1幕プロローグ、2幕とも魂が叫ぶような歌に心震えましたし、歌唱もとてもよかったです。
カチャさんが歌もダンスもできるのは知っていましたが実力をこれでもかと見せてくれる作品、役に出会えたのがこのサリエリだったのだと思いました。

ローゼンベルグ/紫藤りゅうを脅すときに出す「友だち」という単語の本来の意味とはまったく違う、冷え冷えとした、不吉な響きが強く印象に残りました。

そんな周りに人がいない、本当の意味での友人のいないサリエリが最後にヴォルフガングの言葉に救われる場面は、負けたことで勝負から解放されたのだと思うと涙が出そうでした。

黒ずくめの衣裳とロングヘアも素敵でしたし、フィナーレの変わり燕尾のふんわりとしたシルエットが華奢でスタイルのよいカチャさんにぴったりでした。

しかもビシッと作り上げたリーゼントが銀髪で、娘役さんの羽根扇の奥から登場した瞬間に素面なウィンク(ウィンクなんてしそうにない表情で入れてくる不意打ちウィンクのことです)なんて反則です。
舞台写真を買ってしまいました。

ローゼンベルグ/紫藤りゅう

るりこちゃん(紫藤りゅう)、はじけていました。
コミカルな、「喜劇、悲劇」のナンバー通りまさに悲喜劇的で小物感のあるローゼンベルグを思いっきり演じていて、全身で、心から楽しんでおられるのが伝わってきました。

ローゼンベルグを見ているといつの間にか頬がゆるんでしまうくらい、役の心とるりこちゃんの心が伝わってくる芝居で胸があたたかいものでいっぱいになりました。

衣裳の着方、お髭などヴィジュアルも含めて二枚目のスターさんからすると思い切った、徹底した役づくりだと思います。
フィナーレの黒髪の美しいかっこいい男役さんと同じ人物とは信じられません。

るりこちゃんが宙組で一層輝かれることを応援しています。
宙組生として初公演となる「FLYING SAPA」大注目して観ますよ。

ジュースマイヤ/極美慎

歌のよさに目を見張ったのは娘役さんたちだけではなく、しんくん(極美慎)もそうでした。
酒場の歌オペラップのソロ、よかったです。

「GOD OF STARS-食聖-」新人公演のニコラス役(本役:瀬央ゆりあ)を観劇したとき、歌はこれからに期待をしたいと思った印象がガラリと変わりました。

1幕では狂言回し的な役どころもしっかりこなし、なんといっても見目麗しくて目を引かれました。
サリエリ/凪七瑠海と並ぶと超絶スタイルの双璧で眼福でした。

また滑舌に非常に神経をつかっているのが伝わってきてそれがすごく好感が持てて応援したい気持ちになりました。

星組の歌姫たち 小桜ほのか・夢妃杏瑠・白妙なつ・桜庭舞

ここに名前を挙げた娘役さんたちは歌えることは知っていたつもりですが、本当の意味では知らなかったのだと衝撃を受けました。

彼女たちの「歌える」がこれほど美しく豊かなものだったとは…と舌を巻くと同時に、いったい今まで星組で何を見ていたのかと猛省しました。

アロイジア・ウェーバー/小桜ほのか

1幕プロローグでサリエリ/凪七瑠海をセンターにコンスタンツェ/舞空瞳アロイジア/小桜ほのかが左右に並ぶ絵に驚き、またうれしさでいっぱいになりました。

アロイジアは娘役2番手といっていい大きな役でしたが、小桜ほのかちゃんのかわいさと美声を存分に活かせる役がようやく来てくれたことがうれしかったです。

アロイジアのソロ「ビン、バン、ブン(Bim Bam Boum)」はこの作品のハイライトの一つと言っていいでしょう。

蠱惑的で神秘的。夜の女王か月の女神か、悪女か聖女か。
甘く豊かな声、そして囁くような「あ・い・し・て」に魂を蕩かされそうになりました。
そりゃあヴォルフガングも骨抜きになってしまいますよね。

ほのかちゃんの青いドレスの着こなしはもちろん、長く伸ばした爪の手の使い方のなんと美しいことか。
目尻を跳ね上げ、目元を光らせた化粧もいつもとは雰囲気が違って工夫されているのを感じました。

ランゲ/朝水りょうに「ありがとう」と甘えるところは要領のいい甘え上手なのが滲んでおり、
直前のヴォルフガング/礼真琴に告げる「またどこかで」は我が身かわいさゆえの無情さがていねいに表現されていて印象に残りました。

ヴォルフガングがこれ以上濡れないよう傘を渡しますが彼女が入る傘はありますし、この言葉は何も約束をしていないのですから。

フィナーレで黒いタイトなドレスの大人っぽい着こなし、明るい金髪をキチっとセットしていたのも艶めいていてよかったです。

マダム・カヴァリエリ/夢妃杏瑠

あんるちゃん(夢妃杏瑠)の歌のうまさはわかっているつもりでしたが、まったく、全然わかっていなかったのだとマダム・カヴァリエリのオペラ的な歌唱に聞き惚れながら思いました。

いくつもの場面であんるちゃんの美声が非常に効果的なアクセントになっていました。

様々な衣裳の着こなしもすばらしかったです。
ゴージャスな喪服のドレス、完璧なスタイルあってこその「後宮からの逃走」のオリエンタルな踊り子。

「ANOTHER WORLD」の阿漕、「Thunderbolt Fantasy」の形亥と色濃い役の印象が強いのですが、今回きちんと抑えた演技を拝見してあんるちゃんの違う魅力を知ったような気がします。

もし「1789」をこっとんの星組でやるのならと妄想することがあるのですが、ポリニャックはぜひともあんるちゃんで観たいと思いました。

オランジュ皇妃/白妙なつ

なっちゃん(白妙なつ)は高貴な身分の品があり、役もエトワールもすばらしい歌声でした。
頭飾りが豪華でもはや芸術品です。

オランジュ皇妃の音楽会の後、ウェーバー家の4姉妹が歌う「死んでしまえば」ではやはり歌の実力のあるヨーゼファ/音咲いつきがコーラスをしているのがとても贅沢でしたし、
ゾフィー/星蘭ひとみが歌も演技も堂々と、急成長しているのを感じました。

せーらちゃん(星蘭ひとみ)は溌溂としたお転婆末娘の演技と歌に今回殻を破ったと確信しました。

千秋楽後に発表された怪我による休演(タカラヅカスペシャル)がとても残念ですし心配です。
一日も早く回復されますように。

専科では映像を中心に活動されるとのことですが、宝塚歌劇団なのですからまた舞台に立たれる日を待っています。

ナンネール/桜庭舞

素朴で素直で明るい女の子、そんなナンネールの心が弾むような歌にとても明るい気持ちになりました。

歌も上手ですしかわいかったです。
このナンンールはまめちゃんしかいない!と思いました。

まめちゃん(桜庭舞)は100期生。
どうか新人公演ヒロインを…を願わずにいられません。

その他のキャスト

一言ずつですが触れさせてください。

◆セシリア・ウェーバー/音波みのり
歌がすばらしかった娘役さんの名前をたくさん挙げましたがこの方も星組に欠かせない上級生の娘役ーーはるこちゃん(音波みのり)セシリア・ウェーバーは名演でした。

同じ母親役でも「GOD OF STARS-食聖-」のバリバリのビジネスパーソン エレノア・チョウ役とはまったく違う、
声が大きくてうるさくてがめついセシリアを存在感たっぷりに、絶妙に演じていました。

しかもヴォルフガング/礼真琴が「4人の子羊を守る番犬になります」というのもお世辞でもなさそうな色気と美貌です。

女役も娘役ーーそれもヒロインもできるというのは貴重な存在です。

1幕最初にヴォルフガング/礼真琴の登場とともに雪崩れ込んでくる市民女では厚めの前髪がかわいくて勢いがあり、
フィナーレでは黒いタイトなドレスを着て踊る姿、黒いベルベット(でしょうか?布地だと思いました)のアクセサリーは美しくて目を引かれました。

はるこちゃんのダンス、背中の美しさ、ヘアアクセサリーのセンスは星組ショーで楽しみにしているポイントです。

◆コロレド大司教/輝咲玲央
いつも思うことですが、レオさん(輝咲玲央)は声がとてもいいですね。
2幕の冷酷な笑い声が恐ろしくて背筋がゾーっとしました。

大人の色気がダダ漏れで愛人がいるのは納得ですし、愛人/彩園ひなの可愛がり方がまあ凄くて、オペラでしっかり見ました。

これはレオさんのせいではなく石田先生のセンスの問題ですが、石田先生のことですから絶対無理矢理にでも入れてくるだろうと思った「俺の尻をなめろ」がやはり無理矢理入っていたのには鼻白みました。

◆ヨーゼフ2世/ひろ香祐
皇帝の威厳と広い心が伝わってきました。

あちこちの場面で市民男として踊りまくっていますがダンスもすばらしいです。
宝塚のダンサーの中で型、見せ方の美しさはずばぬけていると思います。

◆ヨーゼフ・ランゲ/朝水りょう
まずプログラムのスチールの怜悧な麗しさに「きゃー」となりました。

新婚旅行でパリに訪れたアロイジア/小桜ほのかをエスコートする優しさや広い心と愛が見えるようで素敵でした。

バレエ教師も一つひとつの仕草を楽しく観ました。

◆後見人/桃堂純
大袈裟や手ぶり身振り、背中を丸めるような立ち方など胡散臭くて厭らしい後見人を非常によく工夫されていて、上手いと思いました。

手ぶり身振りだけでなく、大きな手が表現する禍々しさ、不吉さがしっかりと伝わってきました。

とのように役作りをされたのかを聞いてみたいです。

◆女官/オランジュ皇妃の取巻/瑠璃花夏
星組の若手娘役さんで大注目しているちなちゃんは様々な場面に出演していました。
上半身と腕の使い方がこんなに綺麗で踊れる娘役さんはそういないと確信しています。

コロレド大司教の女官ではセリフもあり、捌けるときドレスをつまむ仕草が綺麗でした。

またオランジュ皇妃の取巻ではツンとした背の反らせ方が美しく、捌けるまで一瞬たりとも気を抜かない完璧さがありました。

得意のダンスはパリジェンヌの水色のドレス姿は(パレードもこの衣裳でした)可憐で、フィナーレの濃ピンクの派手派手衣裳のエイトシャルマンは小柄な体からエネルギーと色気が弾けていて魅力的でした。

主役のトップコンビもどのキャストも台詞のある役もない役も、すばらしい舞台でした。

ことちゃんについて新しい扉が開くと書きましたが、新しい星組の、星組生一人ひとりの未知の新しい扉が開いたのかもしれません。

新しい星組が全員そろっての本公演を観るのが楽しみです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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