こんばんは、ヴィスタリアです。
雪組「fff」の作品に続いてキャストたちの感想です。
初見で作品についていくのに必死だった部分もありましが、ファーストインプレッションとして書いておきます。
なおいずれも独断と偏見と偏愛に満ちたもので、また作品の内容や役の正体に触れています。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/望海風斗
いつもながら歌声の音の圧がすごくて轟く第一声にガツンとやられてひれ伏しました。
のぞ様の歌声はいい意味でぶん殴られたような衝撃を与えてくれます。
その歌声がこれ以上ないほど引き立つ登場のインパクトであり、
また驚異の滑舌とたしかな演技力に圧倒されっぱなしでした。
作品が観念的なこともあって難しい役だなあ…という印象を抱いたのですが、
人生がうまくいかなくて荒んでいるルートヴィヒの魂がむきだしのまま伝わってきてひりひり痛いほどでした。
人物としては正統派の二枚目でも白い役でも(そして黒い役でも)なく、トップスターがやる役としては珍しいタイプだと思います。
しかしこういう、一筋縄ではいかないクセのある役をトップスターが演じるのはなんと魅力的なことか。
生い立ちは不幸、恋人たちには振られ続け独身で、耳は聴こえず掴んだはずの栄光から転落していく。
しかも自らの不幸を豪語して仕事に没頭し、恋愛だけでなくナポレオンあるいはゲーテなど理想の人物を心に掲げて入れ込む。
信仰と言ったら語弊があるかもしれませんが何かしらの”推し”がいないと生きていけないタイプ、
生きている辛さを推しで支えている面もあるのかもしれないと考えたりもしました。
心に掲げた人が救ってくれることはあるし、その人が自分の理想と違う言動をして裏切られたと思うこと、あるよね…と
かつてアイドルグループのファンをしていて推しがいた身として思いました。
そんな彼がナポレオン/彩風咲奈との想像上の場面で”推し”という拠りどころから脱却して
幼いころからずっと纏わりついていた謎の女/真彩希帆に名を問い、正体を彼自身の言葉で運命と名づけ受け入れるのは圧巻のクライマックスでした。
役を生きているのぞ様だからこそ納得させる説得力があり、
歓喜の終幕が祝福に満ちたものとなる、強い肯定がありました。
いままでのだいきほの「ひかりふる路」「ファントム」などの関係性のその先の境地でもあり
「SUPER VOYAGER!」でのハッピーなスタートのデュエットとはまた違う歌唱であり、
このお2人がこれまで以上の高みを見せてくれたことに感動しました。
謎の女/真彩希帆
高笑いといいオーケストラボックスからぬっと半身を表す黒衣の謎の女のなんと不吉で不気味なことか。
魔性を感じさせ、これまで以上に絞り込んだ華奢なお体に黒いコルセット、レースのパンツスタイルが似合います。
娘役だけれど娘役のおさまらない不思議な存在としてきぃちゃんは強い輝きを放っていました。
ルートヴィヒも難しい役ですが謎の女もまたしかり。
「ひかりふる路」でロベスピエールの命、復讐を狙ったマリー・アンヌを連想するような武器を携えるシーンもあるのですが、
マリー・アンヌのように「復讐」という一言で説明しきれない存在であることを
語り囁くように歌うはりつめた緊張感はすごかったです。
途中でうんとかわいらしいピンク色のドレスを着てのルートヴィヒ/望海風斗とのコミカルなやりとりも楽しかったです。
「20世紀号に乗って」で全力で渡り合っていただいきほを思い出しました。
そのときよりもうんと力を抜いて楽しんでいるのを舵ました。
そうした過去のだいきほの名作を思い出しながら、
寄り添うのでも対立するのでもない新たなトップコンビの関係性を可能にした、真彩希帆だけがたどり着いたトップ娘役としての在り方に心からの賞賛を送ります。
男役さんを素敵に見せるには1人の娘役として魅力的でなければいけないという研鑽が導いた高い境地に到達されたのではないでしょうか。
ナポレオン/彩風咲奈
さきちゃんの芝居を見ていると長い手足と超絶スタイルに目がいくだけでなく、
立ち方・歩き方から役をつくっていくタイプなのでは?と思うことがあります(勝手に)。
(舞台化粧も役によってかなり変わる印象があり研究されているんだなと感じます)
「ファントム」キャリエールのときは年を重ね仕事を追われた男性の肩の落とし方がありましたし、
「ひかりふる路」のダントンの豪放磊落さは映像でしか知らないのですが明らかです。
今作のナポレオンはタイプでは言えばダントンに近いのかもしれませんが、ダントンのような粗野さは抑えられ
威風堂々たる軍人、皇帝らしさがきちんと表現されていました。
長身に軍服、特に肩章のついたコートとブーツが映えて軍人でありながら品があり精悍でかっこよかったです。
また皇后ジョセフィーヌ/杏野このみをともなっての戴冠式は豪華絢爛な衣装に負けない華やかさがあり、
ジョセフィーヌも美しくて絵のような戴冠式でした。
語る理想は高く、見やる世界は広く、憧れのゲーテ/彩凪翔に世界が自身に追いついていない、ロシアへは行くなと諫められるという彩彩の場面もあれば、
ルートヴィヒの想像上の場面では終幕へつながるキーとなるのぞさきの場面もあり
ヨーロッパがナポレオンを中心に動いていくのと組が動いていくのを重ねて見ている部分がありました。
中の人を重ねて見てはいけないのでしょうけれど、
このヨーロッパの一時代を動かした英雄を説得力もって見せられる大きな存在になったんだなと感じました。
このルートヴィヒを雪原で助けていく中で放つナポレオンのセリフが胸に迫るもので涙が自然とこぼれていました。
また2人の高まっていく音楽のように交わされる言葉にも胸が熱くなりました。
ヴィスタリア自身がさきちゃんを好きなのもありますが
自然と目が引き寄せられて追わずにいられない華を感じました。
ゲーテ/彩凪翔
中の人を重ねてはいけないと思いつつ大好きな凪様が本当にかっこよくて、
ゲーテとして作品を締め、また最後のシーンでまぶしいくらいの笑顔を見せてくれるのがたまらなくて、冷静に見ることができませんでした。
作品として、公演としてちゃんと見なくては…と理性が呼びかけても感情がついていきません。
凪様が登場すると場面がぐっと引き締まって劇場中の空気が変わることを
これまで何度も客席で感じていました。
最後のお役となったゲーテもそうで、史実よりは年齢をぐっと下げてはいますが、
ナポレオン/彩風咲奈もルートヴィヒ/望海風斗をも諫める重厚感は
役としての年齢・経験以上の存在感がありました。
作品のなかでもっとも低い音がところどころで響くような、楔を打ち込まれるような重みにスターとしても舞台人としても得がたい男役さんだと強く感じました。
登場のシーンで花道のそれぞれのセリからゲーテとナポレオンがせり上がってきて
本舞台の0番のルートヴィヒを対のように並ぶのは感無量でした。
凪様ご自身が宝塚おとめで好きな役にも挙げておられる「春雷」を思い出す
このゲーテという役で、
ウェルテル/諏訪さきとロッテ/沙月愛奈が舞台上にいるというのも粋なはなむけでした。
あと髪型がとてもすてきだった…眉間のシワがよく見えますし(そこ?)凪様の美貌が引き立ちます。
もう少し見ていたかったーーという惜別をこめて拍手を贈りました。
ゲルハルト/朝美絢
時間軸としてはルートヴィヒ、ロールヘン/朝月希和と同じ時代を生きて、
ルートヴィヒとロールヘンの幼少時代は別の生徒さんが演じておられますが、
あーさは通し役です。
作品がドラマチックにストーリーを追うものではない分、出番が細切れになるのは否めず通し役でないと出番がもっと少なくなってしまうのもあるのでしょう。
医師見習いの青年時代の希望から後年の悲しみ、そして危ういルートヴィヒを支えようとした友情を
短い出番の中で的確に、鮮やかに見せていました。
特に深い悲しみのなかでのルートヴィヒとの再会の場面が印象的でした。
次の観劇でもっとじっくり見たいと思っているお1人です。
ロールヘン/朝月希和とジュリエッタ/夢白あや
ジュリエッタ/夢白あやもロールヘン/朝月希和もルートヴィヒの叶わぬ恋の相手ですが、
はっとするほど鮮やかな真っ赤なドレスのジュリエッタと
清楚さと優しさを連想される水色のドレスのロールヘンはまるでなにかを象徴し対比しているかのようでした。
途中で違う色のドレスに着替えているので明確な意図があるとも限らないのですが、お2人がいると鮮やかな対比で美しかったです。
あやちゃんは大変な美人でした。
ロールヘンはルートヴィヒに宛てた最後の手紙が強く心に残りました。
その他のキャストたち
一言ずつですが触れさせてください。
◆小さな炎/笙乃茅桜
衣装に明確な意味があるのは黄色~オレンジのドレスで長いリボンを操りながら踊る小さな炎です。
謎の女とは違う形でルートヴィヒの傍で舞い続ける彼女はルートヴィヒの音楽、生きる喜びの象徴であり、
だからこそ幕開きのオーケストラたちも黄色い衣装であり終幕の歓喜にもその色があるのでしょう。
すばらしいダンサーであるひーこさんが技術も表現力も存分に見せてくれます。
雪組の娘役さんが踊っているとひーこさんとあゆみさん(沙月愛奈)を目で追わずにいられなくて目が足りなくて大変でした。
寂しくなります。
◆メッテルニヒ/煌羽レオ
品があって見目麗しく金髪が映えますが、まとっている不穏さ、只者ではない存在感が凶刃を思わせるのがさすがカリ様、大好きです。
特にボヘミアの場面でセリ上からルートヴィヒを睨めつける視線の鋭さといったら。
大活躍のせりで一気にヨーロッパ情勢が変わるとメッテルニヒの押し隠していた本当のところが顕になり、がらりと雰囲気が変わるのは圧巻でした。
大好きです(2回目)。
◆ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン/奏乃はると
ルートヴィヒの父親なのですが、これが少年ルートヴィヒ/野々花ひまりを殴る蹴るのひどい父親なんです。
酒飲みで金にがめつく貴族に媚びへつらうーー本当に酷い人物ですがにわさんが巧いだけに酷さが際立ちます。
◆ルドルフ大公/綾凰華
濃青の軍服が映えます。
ルートヴィヒのパトロンであり友人のようでもあり、庇いきれなくなったときの狼狽と別離が印象的でした。
◆モーツァルト/彩みちる
芝居心があって少年役がうまいのは「るろうに剣心」で証明済ですが、幼いアマデウスというべき姿も演技もかわいいにもほどがありました。
◆サリエリ/久城あす
こんな明るくて華やかなサリエリ像があるんだと新鮮でした。
「ロックオペラモーツァルト」のサリエリとはまるで違うキャラクターを作り上げています。
◆青年ルートヴィヒ/彩海せら
すっかり男っぽくなり男(役)っぷりが上がっていて目を瞠りました。
少年役が続いていたかわいいあみちゃんがぐっと成長されて今後がますます楽しみです。
◆ブロイニング家の執事/ゆめ真音
ロールヘンの家の執事として幼いルートヴィヒに一筋の光となるような言葉をかけます。
この一言が沁みました。
芸達者で個性があって、やはり好きだなあと思いました。
作品の感想でも書きましたが観念的で時間の流れ・場所の移動が装置で圧縮されている分そのぞれの役の場面は
ストーリーの線で繋がっているというよりもクライマックスに向かって音楽のそれぞれのパートが強弱をつけながら盛り上がっていくようにも感じられました。
気づいていない、見えていないところがたくさんありそうなのでライブ配信で復習してから東京宝塚劇場で観劇できることを楽しみにしています。
そのときには皆様一層の進化と深化をされていることでしょう。
読んでいただきありがとうございました。
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