こんばんは、ヴィスタリアです。
花組「うたかたの恋/ENCHANTEMENT-華麗なる香水(パルファン)-」が東京宝塚劇場で明日大千秋楽を迎えるのよせて、ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想を書きました。
なお作品の内容に触れています。
「エリザベート」後のルドルフを描いた花組「うたかたの恋」
東京で花組本公演が完走できるのは2021年5~7月「アウグストゥス/Cool Beast!!」以来で、
特に「巡礼の年/Fashinable Empire」はほとんどが公演中止という悲しい公演期間になってしまいました。
別箱公演も全国ツアーやバウホールでしたし、花組公演が全然観劇できていないという関東圏のファンの方は大勢いらっしゃったのではないでしょうか。
自分自身も何人かのヅカ友さんから「久しぶりに花組を観る」といった話を聞きましたし、
公演中止の余波か公演期間が宝塚大劇場も東京宝塚劇場も1ヶ月ほどと短いせいか、「うたかたの恋/ENCHANTEMENT」はなかなかのチケ難だったのを身をもって実感しています。
大劇場で観劇したときに心を強く動かされたことについては書きました⇣
東京で何度か観劇することが叶い、小柳奈穂子先生が潤色した今回の「うたかたの恋」はミュージカル「エリザベート」以降の「うたかたの恋」を描きたいという意図を強く感じました。
従来の柴田先生演出の「うたかたの恋」との違いを中本千晶さんが詳しく書かれています⇣
久しぶりの寄稿。
私自身が気になったので、かなり詳しめに書いてしまいました。— 中本千晶 (@kappanosuke) March 13, 2023
ルドルフ/柚香光の自由思想への傾倒ぶり、
母エリザベート/華雅りりかとの共通点を語るゼップス/和海しょう。
フランツ・ヨーゼフ皇帝陛下/峰果とわがエリザベートと結婚できた理由をフェルディナンド大公/永久輝せあに突きつけるフリードリヒ公爵/羽立光来の「船」「舵」というキーワード。
「エリザベート」でルドルフの歌う「世界沈むときに舵をとらなくてはいけない」という歌詞が聞こえてくるようでした。
それらを「エリザベート」を知っていて今回初めて劇場で「うたかたの恋」を観た自分はおもしろく思いましたし、
新曲「双頭の鷲」の花組生勢ぞろいのドラマチックな合唱からの運命の舞踏会へのリフレインは演劇的な盛り上がりに高揚せずにいられませんでした。
装置の双頭の鷲、翼、歪んだ鏡たちも効果的だったと思います。
そしてロシェックやジェシカの笑いを誘うシーンがいい形に凝縮されてルドルフとマリーの物語に集中できるようになったこと、特に娘役さんの役どころが増えたことはいい変化だと思いましたが、
潤色の小柳先生の三組の恋人同士の対比のさせかた、「エリザベート」を踏まえた光の当て方は柴田先生の「うたかたの恋」とは別物だと思いました。
別物として、再演の潤色として、「こういうのもある」という新しい「うたかたの恋」として、一つの完成を小柳先生は見せた、のかな…と思っています。
一つ気になったのは幕前芝居、音楽→暗転の転換が非常に多くてセリをほとんど使っていないことで、本当にこの舞台転換、演出しかあり得なかったのでしょうか。
セリはエピローグでルドルフとマリーがせり上がるだけでした(←違っていたらすみません)。
せっかく数々のセリがある宝塚歌劇の専用劇場なのになぜ使わなかったのか、もったいないような気がしますし、
正直幕前芝居の多さは気になる、冗長に見えることは否定しきれません。
この小柳先生の潤色・演出で今後全国ツアーを回る予定があるなど、事情があるのかしら…と思っています。
れいちゃん(柚香光)のルドルフは常に死の予感と激しい孤独の気配を纏い、プロローグからして「ああ、殿下は死に場所を探しているんだ」と感じさせるものがありました。
ステファニーと踊るとき、正妻の彼女を見遣る目のなんと寂しいことか。
「あなたではない」というかすかな拒絶と深い孤独が湛えられていました。
マリーを初めて自室という極めて個人的なテリトリーに招き入れたとき、部屋のあちこちを見て回るマリーを見つめる視線が
愛というよりも「あなたはこの孤独に耐えられるか」と確かめようとするようにじ…っと見つめていたのにはっとしました。
死に場所を、きっかけを探していたルドルフがマリーに出会った、一人では寂しすぎるから(←これは「ポーの一族」)。
だからこそルドルフが孤独に苛まれて自身に銃口を向けるのをマリーが止め、ルドルフが自らの誓いを破るというのがとても自然に胸に迫りました。
あのときルドルフは自分がマリーがいなくては生きていけないこと、そしてマリーが自分の寂しさ、孤独を受け止められる相手であることを確信したのではないでしょうか。
そうしたルドルフの心の動きがれいちゃんの繊細な演技、表現から伝わってきました。
今回ありがたいことにSS席という前方で観劇する機会があったのですが、マリーに銃口を向けるとき咽び泣くれいちゃんの泣く演技があまりにもうますぎて、
そうだ、人は泣くときこうやって肩を震わせるし呼吸が浅くなるんだ…と目が釘づけになりました。
金髪に数々の美しい軍服の着こなし、ダンス(特にプロローグの登場したところ)は目から幸せでした。
ひとこちゃんのフェルディナンドもやはりこのプロローグのバレエ的といいますか(正しい形容ではないかもしれません)、ゆったりとしたダンスのあげた脚の滞空時間、美しさにはっとせずにいられませんでした。
花組「ENCHANTEMENT」は野口先生の傑作
野口先生のショー「ENCHANTEMENT」は大好きなショーになりました。
気品があって、清らかで美しくて、全編を通して野口先生がレビューを作ったと感じたのは「The Fascination!」に似たものが流れているのを感じたからかもしれません。
野口先生の作品の中でもベスト3に入るくらい好きですし、れいちゃんのトップになられてからのショーでは1番好きです。
プロローグの豪華さ、フィナーレの黒燕尾、マイティー(水美舞斗)の歌う「亡き王女のためのパヴァーヌ」から始まる「Aromatic」の場面はクラシカルでゴージャスな美の洪水でした。
れいちゃんの洒脱なかっこよさ、ダンスのうまさ、唯一無二のセンスとニュアンスがたっぷる楽しめるスーツの場面が2つもあるのもうれしいことです(「Floral」「Musk」)。
「Floral」はミュージカルの楽しいナンバーを切り抜いたようで、黒✕白✕パールのお衣装の娘役さんたちのかわいさといったら…!
ひとこちゃん、だいやくん(侑輝大弥)、希波らいとくんとダンスうまな男役さんが揃っていて目もたりませんでした。
三井聡先生の振付も楽しかったですし、花組生が楽しくて楽しくて仕方ない!と踊って歌っているのに客席で大興奮でした。
今すぐ花組で踊りまくりのミュージカルを、本公演で見せてほしいと願わずにいられません。
花男のスーツ祭り「Musuk」も最高に高まる場面で、れいマイ(柚香光・水美舞斗)が銀橋でキメキメで交錯するのも最高でした。
硬軟、柔剛、陰陽、乾湿、それぞれの魅力は違う同期同士、トップスターと2番手スターのれいマイがいまの花組で輝いていることを噛み締めていました。
専科への組替えが発表がされているマイティーがこれからどんな活躍を見せてくれるのか大いに気になりそして楽しみにしているところですが、
ディナーショーがありますが花組公演への花組生としての出演はこれが最後になると思うとこんなに寂しいことはありません。
先日スカイステージで「Fanshonable Empire」のヴィジュアルコメンタリー(ホッティー(帆純まひろ)、あわちゃん(美羽愛)と)を視聴しましたが、
マイティーはずっと「れいが」「れいが」とれいちゃんの話をたーーーくさんしていて、ずっとずっと花組で一緒で、近くにいたことが胸に刺さりました。
中詰のオリエンタルなどテイストが変わりつつもアップテンポにアレンジされた耳馴染みのあるナンバーが違和感がなかったからか、全体を通して唐突感や入り込めない場面がなかったように思います。
フィナーレがオーソドックスに黒燕尾だったのもうれしかったですし、加藤真美先生のお衣装がどの場面もすてきでした。
ロケットのレース模様のタイツ、後ろに振り上げるめずらしい足上げも印象的でした。
そしてなにより「Woody&Marine」の場面は、娘役さんに重きをおいて輝きを、魅力をひきだす新しいものだったと確信しています。
・娘役さんのお衣装が一人ひとり違う(男役さんはお揃いなのに)
・娘役さんが本舞台で歌い踊ってからなおかつ銀橋にでる(男役さんは出ない)
・一人ひとりがかわいい!美しい!輝いている!
若手男役スターさんたちのアイドル的な場面はよくありますが、なぜ娘役さんがないのか宝塚歌劇の男(役)尊女(役)卑を感じることがあるのですが、出番や機関誌、スカイステージなどの露出が多いからこそ人気が出る部分は否定しきれないと思うので、
この娘役さんのアイドル的な場面と言っても過言ではない場面は、なにげないように見えて野口先生の見せた新境地だと思っています。
男役という文化は宝塚歌劇ならではのものですが娘役だってそうです。
両者の出番の差などはもっとなくなっていいのではないかと思っていることもあって、この場面の娘役さんたちのまぶしいほどの輝き、かわいさに毎度客席で涙していました。
大好きです。
花組「うたかたの恋/ENCHANTEMENT」ご卒業おめでとうございます
明日の大千秋楽は残念ながらライブ配信なども視聴することができないため、一足早く書いてアップした次第です(予約投稿など器用がことができなくて。。。)。
すばらしい大千秋楽、ご卒業される華雅りりかさん、
春矢祐璃くん、
都姫ここちゃん、
花翔ひかりくん、
ご卒業おめでとうございます。
りりかさんは今回エリザベート役で集大成なのがビシビシ伝わってくるしっとりとした落ち着き、存在感、美がありました。
パレードのご挨拶もど真ん中、しかもじゅわ~と色気のあるウィンクを綺麗に飛ばしているのを毎度観るのを楽しみにしていました。
ホッティー(帆純まひろ)と組んで踊る「Aromatic」の華やかで大人っぽい色気、忘れません。
また「TOP HAT」のキビキビ働くホテリエ リズがりりかさんの声とよくはまっていて忘れがたいです。
99期のみはるくん(春矢祐璃)、男役10年をようやくすぎてこれからではないですか(涙)
「TOP HAT」支配人のときから「フィレンツェに燃える」でおじさまのお役がめちゃくちゃ巧く、自然になっていて、
これからを楽しみにしていた矢先の退団発表でした。
都姫ここちゃんは104期、かわいくてかわいくて、今公演も「うたかたの恋」マリー・ヴァレリーのぱっつん前髪、ドレス姿、公園で歌い踊る姿、かわいさがスパークしていました。
ショーもそうですし、新人公演のステファニー役も巧くて瑞々しくてすばらしくって…!
なのに退団してしまうなんて早すぎます(涙)。
明日が花組生みなさまと劇場、配信で見守るファンの方々にとって佳き大千秋楽になりますように。