おはようございます。ヴィスタリアです。
星組「眩耀の谷」のキャストごとの感想です。
いずれも独断と偏見と偏愛に満ちており、ネタバレ気味に作品の内容に触れています。
丹礼真/礼真琴と瞳花/舞空瞳
ことなこ(礼真琴・舞空瞳)の新トップコンビのお披露目本公演です。
ヅカファンに復帰してこうして組が新しくなる本公演を観るのは初めてで感慨深いものがあります。
プレお披露目の「ロックオペラ モーツァルト」でもことなこの相性の良さ、特に身体能力抜群のダンサー同士であることは証明されていますが、
今回は芝居で、愛とも恋とも謳い上げずに関係性が変化していくのをじっくり見られたのはよかったです。
ブン族の美しい鮮やかな衣裳からの連想で、水彩絵具や万年筆のインクがじんわりと滲んでグラデーションが濃く深くなっていくような、そんな2人の変化を目の当たりにしたように思います。
特に瞳花(トウカ)/舞空瞳の「私も礼真様のお顔が見てみたい」は関係が濃くなったシーンで印象に残りました。
またラストシーンの2人の姿も美しかったです。
丹礼真(タンレイシン)/礼真琴が登場したときの意気揚々とした青年っぷりにヴォルフガングが一瞬重なりました。
どちらも旅をする青年ですが、ヴォルフガングは未来(仕事)を、丹礼真は過去(ルーツ)を探すことになります。
押しも押されぬトップスターとなったことちゃんは、
踊ればキレキレの運動神経とかっこよさに圧倒され、歌えば正確な音程で豊かな歌声が心をのせて響きわたり、なにもかもが圧倒的で劇場中を魅了するスーパースターだと感嘆しました。
ことちゃんは作品として疑問を感じることがあったとしてもカバーしうる力量のすべてを持っていると感じました。
瞳花(トウカ)/舞空瞳は舞姫という役どころでなこちゃんのしなやかかつ鍛えられた身体性に拠るダンスにぴったりでした。
冒頭でも後半でも瞳花の踊りに圧倒されましたし、特に後半は心からあふれたものが踊りになっている迫力がありました。
瞳花は宝塚歌劇のヒロインとしては異色の、複雑な人生を送っている難しい役だと思いますが、
目が見えないこと、子どもと離れ離れになったことを丁寧に表現しようとする心が伝わってきました。
なこちゃんはダンス、ビジュアル、オーラは「トップ娘役として見せてほしい」と客席で(勝手に)望むものを見せてくれるすてきな、才能あふれる娘役さんだと思っています。
特にダンスはなこちゃん自身が卓越しているのはもちろんのこと、
ことなこの相性が最上で礼真琴の相手役は舞空瞳をおいていないと思わせる運命的なトップコンビになるのではと感じています。
歌うまで相性がよくて互いを高め合っているだいきほがそうであるように。
ことちゃんはダンスのみならず歌唱も非常にレベルが高いので、
歌においてもことちゃんの運命の相手役として輝いてほしい…とは求めすぎかもしれません。
が、音程は合ってますし心情も伝わってくるので声の出し方が綺麗になるといいのかな……と思いました。
現段階で詳細は未定ですが次の本公演はミュージカル「ロミオとジュリエット」ですし、なこちゃんだからこそ期待しています。
管武将軍/愛月ひかる
ようこそ星組へ、専科を経て星組生となった愛ちゃんは堂々たる美丈夫でした。
男役として恵まれた長身に風格があって舞台に映えます。
将軍の堂々たる衣裳も鎧姿も似合いっていましたし、剣舞の迫力とかっこよさといったら!
丹礼真/礼真琴との銀橋での歌い合いも緊張感と迫力がありました。
瞳花/舞空瞳とのドラマといい波乱に富んだ人生を送っているはずなのですが、
生き様の想像をかき立てられる描かれ方をしていないのでもったいなく感じました(もちろん愛ちゃんのせいではありません)。
武人であることを優先し冷徹な命令を下すのですが、たとえばここの葛藤がもっともっと描きこまれていて、瞳花/舞空瞳への思いであったり彼女との間にあったものが見えると作品としても深みが増したように思います。
作品の感想で丹礼真と関わりを持つ人物が少ないということに触れましたが、
トリデンテの関係に広がりがない描かれ方が惜しまれます。
丹礼真/礼真琴と/舞空瞳と管武将軍/愛月ひかるは平たく言えば三角関係なわけです。
柴田先生だったらこの3人にどんなドラマを描いたかな…と冥土歌劇団に思いを馳せました。
ところで宝塚GRAPH8月号の柴田作品の誌上上演で愛ちゃんは「あかねさす紫の花」をセレクトし、自分のほうが上級生であることを理由に挙げています。
誌面で見たときはどこか軽い気持ちで眺めていたのですが、舞台のこと愛は学年の差以上にルックス、雰囲気、持ち味の違いが大きので今作の愛ちゃんが上司というパワーバランスも自然でしたし、
愛ちゃん自身のセレクトも慧眼だと唸りました。
謎の男/瀬央ゆりあ
謎の男となっていますが、衣裳といいせおっちの声の厚み、重厚さからして謎ではなく正体が察せられました。
そういうストーリーになっているわけですが、せおっちの芝居の幅が広がっている瞬間にいま正に立ち会っていると感じました。
役として漂わすべき風格がありましたし、なんといっても声、一音からして伝わるものが役そのものだったんです。
本公演では赤鬼(「ANOTHER WORLD」)、アイドル(「GOD OF STARS」)、別箱では主演(「デビュタント」「龍の宮物語」)と幅広い役どころと大きな場を与えられ、
一回りも二周りも頼もしい男役スターになっていっているのを目撃しているんだなあと思いました。
歌の進歩、スタートしての存在感も公演ごとに増しているのをビシビシ感じます。
宣王/華形ひかる 敏麗/音波みのり・瑛琳/小桜ほのか
これがご卒業となるみつるさん(華形ひかる)なのに、芝居に深みと厚みを与えてくれる貴重な方なのに、
出番も役も描き込みも物足りなくて消化不良です(自分のなかで)。
宣王/華形ひかるが登場したシーン、第一声で空気が一気に緊張し引き締まったのにはみつるさんの存在感と演技力を実感した瞬間でした。
こういうことがあるから、肌身で感じられるから観劇はやめられません。
敏麗(ビンレイ)/音波みのりは巫女として宮廷を操り動かす力を持っていること、そに至るまでの野心さえも感じさせ、背筋から凍りつくようなおそろしさを感じました。
ドスが効いた声はこの宮廷の真の権力者が誰なのかを語っていましたし、片頬をゆがめるように動く口元が怖くてゾワゾワしました。
また妹の瑛琳(エイリン)/小桜ほのかにも強かさと蠱惑的な美しさがあり、姉妹がどのようにして生きのびてきかのかが伺えるようです。
瑛琳は歌、長い袖で円を描く中国舞踊が美しかったのですが、もう少し見ていたかったです。
あいちゃん(小桜ほのか)は役とご自分の魅力を引き出すメイク、カツラなどのセンスが光っているなあと「アルジェの男」のアナ・ベルの三編み、「ロックオペラ モーツァルト」のアロイジア目元を釣り上げたメイクを思い出すのですが、
今回も蠱惑的で烈しさを感じさせる美女でした。
ここに挙げた3人は王后/華雪りらを含めてドロドロの展開ができそうなのに…と思うともったいないです。
が、逆に言えば限られた場面の中で最大限の存在感を発揮していたお三方でもありました。
春崇/有沙瞳
春崇(シュンスウ)は語り部で、幕開きの一言も終幕のセリフも担っています。
凛とした歌のすばらしさはもちろんのこと、滑舌、口跡もよくてセリフがとてもよく聞こえましたし、声に割れたりひっかかるところがなくツヤツヤした潤いを感じます。
語り部なので単独で舞台に存在し誰とも関わりを持たないせいか、俗世から離れ魂が浄化されたような天女のような「人ならざるもの」の雰囲気を感じました。
天女を連想したのは衣裳の美しさ、華やかさもありますし、どこか高貴さが滲んでいたからかもしれません。
その高貴さは「鎌足」の皇極帝の権力と併せもった女性とも違うもので、慈しみや清らかさを感じました。
みほちゃん(有沙瞳)は少し前にスカイステージで放映された「龍の宮物語」では情念を色濃くにじませて「人ならざるもの」を演じていましたが、
春崇は念やアクがすべて振り落とされてた清らかさがありました。
自分はみほちゃんが大好きなこともあって、ラストシーンの壮大な絵のような神々しさ、美しさには圧倒され大感動しました。
大げさかもしれませんがこの場面を劇場で観ることができて、生きていてよかった…と思うくらいの感激でした。
カイラ/綺城ひか理
初回の観劇はできる限り全体をフラットに見るように心がけています。
とはいえ人間なものでどうしても偏りが出てしまうのですが、観ているうちに自然と肩入れといいますか、惹かれたのがカイラ/綺城ひか理でした。
長身でお顔が小さくて手脚が長くて男役として恵まれたスタイルがかっこいいのはもちろんのこと、生き様がかっこいい上に役を生きている芝居に惹きつけられました。
具体的にどのセリフ、このセリフとは言えないのですが、むしろ1つひとつのセリフが表現する生き様が深く響くんです。
花組「MESSIAH」鈴木重成役もそうでしたが、あかさん(綺城ひか理)の芝居は舞台の主役は別にいるが、彼を主役にしたストーリーが想像できる余地があり、そこに惹かれるのかもしれません。
この2年強、宝塚歌劇にはまって観続けていますがこんなふうに思うのはもしかしたらあかさんだけかもしれない…と思い至りました。
役のウェイトでいえば主役はカイラではないのですが、観劇した自分のなかのもう一人の主役でした。
新天地星組で一層の活躍を期待しています。
その他のキャストたち
一言ずつですが触れさせてください。
■慶梁(ケイリョウ)/天寿光希
みほちゃんが慕ってやまないみっきぃさん、私も大好きです。
今回は「まさかこうくるとは」と驚きました。
逆に言えば、ストーリー・役の正体がわかりやすく見えるなかで意外性を見せて楽しませてくれたのがみっきぃさんでした。
もう一度観たいです。
◆アルマ(夢妃杏瑠)とテイジ(天飛華音)
アルマ/夢妃杏瑠は瞳花/舞空瞳をいたわりながら付き従うのがとても自然に見えました。
「ANOTHER WORLD」「サンダーボルトファンタジー」など強烈な役の印象が強く残っていたのですが、
瞳花を支え弟テイジ/天飛華音を思いやり、辛い境遇に耐える姿に表現力の幅広さをあらためて感じました。
芝居・歌・美しさ、どれをとっても星組に欠かせない上級生の娘役さんだと思います。
カノンくんは少年めいた役が続きますが、自分は星組の男役らしい熱さとオーラを感じる男役さんなので、もっといろいろな役を見てみたいと思いました。
神の化身/水乃ゆりはスタイルのよさ、ダンスの美しさが光っていました。
ブン族の男たちーークリチェ/天華えま、すっきりとした美貌のイムイ/極美慎、
リーダータカモク/ひろ香祐にテシャ/朝水りょうはかっこよくて目が足りません。
この公演を最後に専科へ組替えとなるユズ長(万里柚美)が芝居、歌、セリ上がりときちんとした見せ場があったことがうれしかったです。
以上、初見のキャストごとの感想でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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