こんばんは、ヴィスタリアです。
東京宝塚劇場で初日を迎えたばかりの月組「WELCOME TO TAKARAZUKA/ピガール狂騒曲」を観劇してきました。
まずは「WELCOME TO TAKARAZUKA」の独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。
美しいだけで涙することがある「WELCOME TO TAKARAZUKA」
今回は劇場の天辺、2階16列のセンター寄りというコスパのよい席で観劇しました。
これで2,500円は破格でありがたや~です。
予算の都合もありますが友の会でSS席が当たっているので全体を見たかったのと、月の場面はぜひ2階から見たかったのです。
なので今回はオペラでどなたかにロックオンするのは控えめにして舞台全体の美しさに浸ってきました。
そして幕が開いてからほとんど泣いていました。
ただただ美しいというだけで心を動かされて泣くことがあるのだと感じ入りました。
理由なんて説明するだけ野暮で、なので迷いながらこの感想を書いていますが、
ミエコ先生(松本悠里)と月組生のすばらしさを表現する方法が自分には言葉しかないので書いています。
そもそも開演前にプログラムの植田紳爾先生の言葉を読んだときから涙がこぼれそうでした。
一部抜粋してご紹介しますが宝塚歌劇を愛する方全員に全文を読んでほしいです。
宝塚公演のときには関東地区からも多くの方々がご観劇においでいただきました。
そして口々に”命懸けでここまで来ました”と仰っていました。(中略)そんな皆様の強くあたたかいお気持ちに少しでもお応えしようと、生徒たちも毎日必死で取り組んでおります。
また延期が決まって以来、彼女たちはどれだけ自己犠牲・自己責任として健康管理や感染防止に取り組んで参りましたことか。4月に公演延期が決まって以来の長い期間は忍耐の連続であったと、側で見ていまして彼女たちの涙ぐましい自己犠牲の精神には頭が下がる思いをしておりました。
稽古再開から公演中にいたる間、何度にもわたるPCR検査も全員克服しております。
それがどんなに日常生活のストレスになったか考えただけでも心が痛みます。
生徒さんが、そして植田紳爾先生はじめスタッフ・関係者のみなさまが
すべてを懸けて、相当な犠牲も払って作り上げた舞台だからこそこれ以上ないほど美しくて泣かずにいられなかったのだと思いました。
植田紳爾先生の作品は客席で???となってしまうことが多いのですが、生徒さんと宝塚歌劇への愛が満ちていて、
またとりわけ日本物にかける情熱も伝わってくる文章でした。
2年に1度の舞踊会も植田紳爾先生のご尽力が大きいように思います。
今作は坂東玉三郎さんが監修されていますが長年のつながりあってこその実現なのがうかがえるようです。
プログラムに寄せられた玉三郎さんのご挨拶によると「少しばかりですが、私なりの提案や意見をさせていただきました」とのことで、
それがどのようなものかはわかりませんが作品の完成度の高さを見るに果たされたものの大きさを感じます。
それにしても「WELCOME TO TAKARAZUKA」といい、谷正純先生の「ANOTHER WORLD」「マスカレード・ホテル」、酒井先生「Eclair Brillant」など
ベテラン、大御所の先生方が名作を生み出されていることをうれしく思います。
一方で指田珠子先生「龍の宮物語」、樫畑先生「壮麗帝」など若い先生の活躍も目を瞠るものがあり、こちらもうれしいことです。
雪と月と花と 場面ごとの感想
それでは場面ごとにまいります。
◆プロローグ
客席がいつもより濃い暗闇になって♪WELCOME WELCOMEという別世界へ誘うコーラスが流れてから
チョンパで幕が開いて明るい舞台に華やかで美しい月組生が勢揃いしていて、
それだけで胸がいっぱいになって涙がこぼれてしまいました。
宝塚の和物は財産ですね、本当に。
妙にクセになるコーラス「♪WELCOME WELCOME」に誘われた先はこの世の極楽でした。
すてきだなと思ったのはたま様(珠城りょう)が本舞台のアンサンブルを背に銀橋をお1人で渡られたところ。
美園さくらちゃんと扇を渡し合うところも。
若衆姿、シャベ化粧はれいこちゃん(月城かなと)がとりわけ美しくて目を引かれ、雪組での豊かな経験を感じました。
またちなつさんが纏う色気はただものじゃなかったです。
特に目を伏せがちにすると危険…あれは本当に危険です。
そして「あの男役さん、オーラが眩しいし色気も鮮烈だなあ」とオペラをのぞくとありちゃん(暁千星)がいました。
ショースターとしての、ダンサーとしてのありちゃんの魅力はわかっているつもりでしたが
和物でも、劇場の天辺からでも一際目立ちます。
それだけ自分がありちゃんが好きということなのかもしれません。
プロローグが終わって大劇場では初舞台生の口上だったところはれいこちゃんの舞楽 越天楽に変わっていました。
疫病退散の祈りを込めての舞とのことでしたが、粋な変更ですね。
鈴の音にれいこちゃんの端正な舞に目から耳から心も浄化されるようでした。
ところでプロローグの歌手はAがおはねちゃん(きよら羽龍)とうたちゃん(詩ちづる)、
B日程が咲彩いちごちゃんとあつきちゃん(静音ほたる)。
月組の下級生娘役は歌うまさんがそろっていて頼もしいです。
A.B日程のチケットも押さえてあるので楽しみにしています。
◆雪の巻
暗闇のなかにぼんやりと浮かぶ千本鳥居、降りしきる雪。
装置、盆、映像の舞台芸術がすばらしい上に音楽がヴィヴァルディ「四季」の「冬」なんですからたまりません。
そして傘を手に佇む朱色の着物のミエコ先生の可憐さ、愛らしさ、そして深い悲しみ。
日本舞踊のことは何もわからない自分でもミエコ先生がせり上がってきた立ち姿だけですばらしいのがわかります。
いま自分が目撃しているのはとんでもなくすごいものだということがわかって、泣きながらミエコ先生の作り出す世界に深く入り込んでいました。
待ち続けている人が来ないこと、過去のこと、計り知れない時間が流れていることが伝わってきます。
ミエコ先生は乙女でありながら乙女のときの恋を思い出していることもわかって、それが時間を超えた美と幽幻の世界になっているのだと思いました。
ご卒業される日が来るとは思ってもいませんでしたが、こうして客席から拝見することができて本当によかったです。
◆月の巻
これこそ2階席から全体を見たい場面でした。
ベートーヴェンのソナタ「月光」がボレロにアレンジされ、背景の新月がだんだんと満ちていくのにつれて力強く奏でられます。
月が薄いうちは音楽も控えめですから衣擦れ、足袋が床を擦る音がよく聞こえました。
客席の緊張感もすごくて、張り詰めて舞台を見つめていました。
一糸乱れぬ扇の動きは、特に両手に扇を持つようになってからが圧巻で、マスゲームように舞台上を移動するのもすごい!
月が見えていて星が流れるのですから地球のどこかのはずですけれど、こんな場所は地上にもどこにもなくて、
宇宙につながる不思議なものが流れている特別な場所に迷い込んだような気がします。
……すみません、何言ってるのかわかりませんよね。
この場面の月組生が作り出している空気が宇宙のような、不思議で特別なものを感じさせるということです。
◆花の巻
れいこちゃんとおだちん(風間柚乃)が鏡合わせで登場する楽しい場面です。
れいこちゃんのため息からの変わり具合にこちらも心が緩みます。
お2人のシンクロ具合に驚いているうちに楽しく展開していき、雪の巻と月の巻と趣も変わってこの作品のバランスのよさを感じます。
着物のの引き抜きで幕開きの衣装に戻りフィナーレへ繋がるのもいい演出だと思いました。
ところで若衆姿のおだちんがなつめさん(大浦みずき)と面差しが似ていると思うのはヴィスタリアだけでしょうか。
フィナーレで再びこの世の極楽へ誘われ、
ミエコ先生の慈愛にあふれた舞に感動し、涙々のうちに幕がおりました。
上演時間45分と短いのですがまさに体感5秒。
あっという間に終わってしまいます。
何度でも観たい和物ショーで早くも次の観劇が待ち遠しいです。
読んでいただきありがとうございました。
はげみになりますので応援していただたらうれしいです。
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