こんばんは、ヴィスタリアです。
スカイステージで雪組「私立探偵ケイレブ・ハント」を視聴しました。
当時はヅカファンではなかったのでこれが初見です。
とても楽しく見たので偏愛に満ちた感想を書いてみました。
なお作品の内容に触れています。
「私立探偵ケイレブ・ハント」正塚先生のオリジナル本公演を愛しく思う
好きな演出家を聞かれたら正塚先生のお名前は必ず挙げます。
ビデオが擦り切れるまで見た「メランコリック・ジゴロ」「ブラック・ジャック」「LAST DANCE」
初観劇の「二人だけが悪」に初の別箱観劇「ブエノスアイレスの風」も思い出深いです。
高橋城先生との「心の翼」「変わらぬ思い」といった名曲はいつだって心を支えてくれる名曲です。
どの先生にも作品の当たりはずれはあるかと思いますが、「私立探偵ケイレブ・ハント」は大当たりの名作……とまでは言い切れないかもしれませんが楽しい作品でした。
正塚先生の久しぶりの本公演のオリジナル作品という高揚もありますし、正塚作品あるあるがあちこちに散りばめられていてたまりませんでした。
・セリフ、それも日常会話が多い
・女性の恋人への言葉遣いがナチュラル
・セリと盆を駆使
・内勤の人々を描く
・男の友情は欠かせない
・撃たれて怪我をしがち
・旅立つ恋人は引き止める
2016年のこの作品以後も正塚先生の本公演での新作はありません。
とはいえ再演を重ねている作品もありますし、日常とハードボイルドを宝塚歌劇に組み入れた功績、高橋城先生とのタッグによる名曲は宝塚歌劇の財産だと思います。
正塚先生はハッピーエンドと死に別れの悲劇以外の結末があることを、
男女が互いに好意を持っていてもそれが即ち恋愛になりその先に結婚があるわけではないことを教えてくれた気がします。
そして恋愛にのみ重点を置かずとも素晴らしい宝塚歌劇作品は実現可能で楽しめることも。
酒井先生が2019年に星組「Eclair Brillan」という大傑作を演出されたように、
正塚先生の次の新作本公演がいつになるのかはわかりませんけれど静かに待っています。
ちなみに「ケイレブ・ハント」はこんなお話です。
公式サイトの公演解説をもとに一部補足しています。
20世紀半ばのロサンゼルス。
探偵事務所の所長ケイレブ/早霧せいなは、共同出資者である探偵仲間のジム/望海風斗やカズノ/彩風咲奈と共にセレブ達の浮気調査やトラブル対応に奔走する日々を送っていた。
スタイリストとして働く恋人イヴォンヌ/咲妃みゆとの関係も良好だったが、互いの生き方を尊重する二人は新たな段階に踏み出す機会を見出せずにいた。
ある日事務所にメキシコ人のソリアーノ夫妻( エリアス/鳳翔大、ダナ/梨花ますみ)が「行方不明になった娘アデル/沙月愛奈を探してほしい」という依頼にやって来る。
しかしその直後に夫妻が事故死するという事件が起き、ケイレブは夫妻の願いに応えるために調査を開始する。
ケイレブが信頼を寄せる地元警察の刑事ホレイショー/彩凪翔とライアン/永久輝せあも事件を追って動き出す。
やがてある会員制の高級クラブでアデルらしき女を発見するが、別の調査を進めていたジムとカズノが追う人物もこのクラブの関係者であることが判明する。
果たしてそこは犯罪組織の隠れ蓑なのか。
クラブのオーナーマクシミリアン/月城かなとと接触するために彼の屋敷を訪れたケイレブは、そこで思いがけずイヴォンヌと遭遇する…。
参照元:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2016/caleb_hunt/info.html#intro
ケイレブ/早霧せいなとイヴォンヌ/咲妃みゆ
それではキャストごとの感想です。
◆ケイレブ・ハント/早霧せいな
オープニングのハットにストライプのスーツからかっこよくてシビれました。
ケレイブという男性は宝塚歌劇のトップスターとして”わかりやすいかっこよさ”のある役には分類されないのではないでしょうか。
つまり演じる側の魅力と力量がモロに出る役と思うのですが、
ちぎさんの演技力であり培ってきて男役芸が存分に発揮されとってもかっこよかったです。
イヴォンヌ/咲妃みゆとの約束に遅れて謝るところなどのふつうの何気なく見えるシーンの間が絶妙だったり、嫉妬の見せ方のわかりやすさだったり、
正塚先生の作品のヒーローならではの味わいとちぎさんの演技力の両方をじっくり味わうことができました。
ケイレブは従軍経験があり探偵という風来坊な職業をしつつも情に厚くてヨーロッパで共に従軍したナイジェル/香陵しずるの身元引受人になったり、
メキシコから不法滞在していると思われるソリアーノ夫妻を放っておくことができません。
かつての正塚作品だったらそのまま1人でどこかへ行ってしまう男になっていそうですが、情の厚さを最後の最後でイヴォンヌに発揮してくれてよかったです。
◆イヴォンヌ/咲妃みゆ
スタイリストの仕事で懸命に自身を確立しようとしている女性で、仕事の時は赤×黒×白のコーディネイトで自己プロデュースも完璧です。
残念ながらまだゆうみちゃんの芝居を劇場で観たことがないのですが、きっと登場するだけで、一言喋るだけで劇場中の空気を変える演技力の持ち主なのだろうと映像でも思います。
仕事と恋人(彼女からしたら勝手に思える)の間で揺れ、ビジネスに私情を持ち込まれて怒るところも自然で上手でした。
そして特に自宅にいるところを襲われた後にケイレブと2人で話すシーンが印象的でした。
ホテルに避難にしてケイレブにここにいるようにと言われて答える「わかったから」の一言が光っていました。
襲われた恐怖とケイレブへの怒りや不満がないまぜになった感情を自身のなかに押しとどめて、興奮しているのを必死に鎮めて、ケイレブに答えて自分に言い聞かせている一言です。
この後のソロも素敵な歌でこの作品中で一番好きかもしれません(「定例会」もかなり印象的ですが)。
ケイレブ・ハントの仲間たち
◆ジム・クリード/望海風斗
のぞ様は情念が濃い役、宿命を背負っているような役が多いのでこういう肩の力が抜けた役は新鮮でした。
しかも仕事のできる洒落者で、ふつうに恋人ーーレイラ/星南のぞみがいてふつうに恋愛をしているのも新鮮です。
レイラとの約束に遅れて夕飯を食べに行くところの「牛殺してでも食べよう」の流れは思わずくすりとしてしまいました。
狙撃されて車椅子に乗っていてかなりの重傷かと思いきや突然立ち上がるタフさも正塚作品にありがちでやはり好きな「THE KINGDOM」を思い出しました。
事務所のコートニー/早花まこを息をするようにさらりと褒めるあたり、息を吸って吐くように女を泣かせてきたでしょうし慰めるのもうまそうです。
これではレイラはこの先も苦労するのでは…と思わせるのぞ様の軽妙な色男っぷりでした。
◆カズノ・ハマー/彩風咲奈
まだ頬の線に柔らかさが残っているさきちゃんが青年の探偵を演じています。
ケイレブに待機を言いつけられてなんともいえない表情でせり下がっているところの下がった眉毛の困り顔がキュートでした。
パーティーに正装していくこともしない初心さを残した青年がこのときのさきちゃんの幼さ(もちろんいい意味で)にぴったりでまぶしいくらいです。
一方でオープニングのスーツにハットの群舞は幼さを微塵も感じさせないかっこよさで、
これが数年後に「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」のマックス役で削げた頬と白眼の効いた目元に退廃的な色気を漂わせていくのに繋がっているんだよね…と思いました。
その気配は推理をしているときの鋭さ、ポーリーン/有沙瞳を見やる視線のクールさにも発露していました。
◆コーリーン/早花まこ
きゃびぃさんの特技は正塚先生のモノマネとのことですが、正塚先生にとってもきゃびぃさんはある種ミューズなのでは?と思いました。
存在感があり事務所のコーヒーサーバーについてのやりとりはこの作品のよい息抜きになっていました。
この時代の働く女性のスーツ、品よくまとめた髪がきゃびぃさんにぴったりで、
ご卒業のときもシニヨンに緑の袴と同じリボン飾りだけのシンプルなスタイルだったことを思い出しました。
◆ダドリー/真那春人
黒縁眼鏡に事務職のアームカバーが似合いすぎです。
まなはるさんの振り切れ度、なりきりっぷりは本当にすばらしいです。
◆ナイジェル/香陵しずる
正塚作品を正塚作品たらしめる役どころ、アウトローでハードボイルドな男で存在感がありました。
ケイレブに「命を大事にしろ」と言いながら自らの命には投げやりでいつ死んでもいいと思っている…ケイレブと共に戦ったヨーロッパでなにがあったのか、アメリカに戻ってからどのように生きているのか。
直接語られることのない彼の人生が立ち上がってくるような役はやり甲斐があるでしょうしかっこよかったです。
そして男役さんの革手袋のかっこよさは反則です。
その他のキャスト
◆ホレイショー/彩凪翔
ケイレブが信頼をおく刑事です。
金髪を撫でつけてスーツに派手なアロハシャツを合わせて、上司には弱いけれど部下には強く出る人間味があります。
特に部下に強く出るところの圧のかけ方、技が好きでした。
凪様の強い目力、綺麗な目元がよく見えて、薄めのブルーのアイシャドウに金髪がよくお似合いでした。
相棒のライアン/永久輝せあは正統派二枚目のイメージが強いですが、腕まくりをして着崩したスーツにだらしのない立ち方、歩き方がうまかったです。
◆マクシミリアン/月城かなと
れいこちゃんが悪の中の悪を演じています。
事情のある悪役でも憎みきれないヒールでもなく、本当に自分のことしか考えていない悪役です。
正統派の美貌のれいこちゃんが悪い顔で片頬をゆがめると凄みがあります。
アデル/沙月愛奈を送り出す背中の押し方、一瞬で変わる表情にゾワゾワしました。
れいこちゃんの月組に組替えになってからのコミカルだったり抜けたところのある役しか知らなかったので新鮮でしたし、
芝居も歌もなんでもできる実力を備えたスターさんだとあらためて思いました。
◆アデル/沙月愛奈
ダンスがすばらしいのはもちろんのこと、必死で生きている強さ、優しさが印象的でした。
真っ赤なワンピースが華やかでブラウンのロングヘアによく似合っていました。
他の女性たちは襟がつまっている服が多いのかで襟ぐりが広くて、マクシミリアン/月城かなとがそこに札束を押し込んだのが非道さが際立ちました。
◆ポーリーン/有沙瞳
クラブの歌手で「Material Girl」など即物的な歌をパンチをきかせてパワフルに歌っています。
少し低めの音域もキャラクターもあまり見たことのないみほちゃんで新たなかわいさを知ることができました。
コケティッシュで積極的で、エネルギーに満ちた素直な女の子をみほちゃんが魅力的に歌い演じていました。
ひったくりの被害に遭ったところを助けてくれたカズノ/彩風咲奈に一目惚れをしたようですが、あざといくらい積極的でかかわいいです。
恋をしたら一直線、パーティーで再会したときも押せ押せでこの後カズノは逃げ回ることになりそうです。
◆空港職員/彩みちる
この時代のレトロな制服をとってもキュートに着こなしていました。
みちるちゃんのセンスが光っています。
劇場で観劇できる日はまだまだ先になりそうですし、またスカイステージで見た作品の感想を書いていけたらいいなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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