こんばんは、ヴィスタリアです。
宝塚歌劇では数多の愛と恋が描かれ名セリフ、シーンがあります。
そのなかには「愛」「恋」「好き」「惚れた」といった直接的な言葉を使わずに愛を表現するものもあります。
ストレートな「愛している」「おまえが好きだ」といった言葉もときめきますが、そういった言葉を使わない、I love youではないI love youの伝え方をしている作品には深く心を揺さぶられます。
いろいろなパターンがあるかと思いますがヴィスタリアが特に好きな作品を3つ選んでみました。
なおいずれも脚本などを持っていない上に舞台も映像も数回しか見ておらず多くを記憶に頼って書いており、
発音は映像を聞いて書きとったもの、外国語表記はネットで調べたヴィスタリア独自のものです。
お気づきのことがありましたら教えてくださいね。
雪組「20世紀号に乗って」本名と芸名の間にあるもの
「宝塚GRAPH」6月号に雪組「20世紀号に乗って」の舞台写真が載っています。
おなかが痛くなるほど笑った舞台のあれこれを思い出しながらページをめくりました。
笑いに笑ったのですがオスカー・ジャフィ/望海風斗とリリー・ガーランド/真彩希帆が罵りあいの果てにお互いの愛に気づくエンディングには痺れました。
以下、ヴィスタリアのたった1回の乗車の記憶に頼って書いておりますので記憶違いや間違いがありましたらこっそり教えていただければ幸いです。
ブロードウェイの舞台演出家兼プロデューサーのオスカー・ジャフィ/望海風斗があるオーディションで才能を見出したのがミルドレッド・プロツカ/真彩希帆です。
オスカーはミルドレッドにリリー・ガーランドという芸名をつけて一流の舞台女優に育て、またプライベートでは恋仲になります。
しかしオスカーとリリーは破局してしまいます。
リリーはハリウッドに進出してスターとなり新進の俳優ブルース・グラニット(彩風咲奈)を恋人にします。
オスカーは舞台女優としての、そしてかつての恋人としてのリリーに未練があり新作舞台への出演をもちかけますがリリーは断固拒否します。
オスカーはリリーを取り戻すためにある計画を実行しますがリリーに見破られ、2人はお互いをめちゃくちゃに罵り合うのです。
犬猿の仲とはこのこと、「このオタンコナス!」「アンポンタン!」というような感じで相手を罵るあらゆる言葉の応酬の果てにオスカーが「ミルドレッド・ブロツカ!」とリリーの本名を叫んだとき、2人の”喧嘩”は終わります。
オスカー「ミルドレッド・ブロツカ!」
(リリーがはっとして見つめあう)
オスカー「リリー・ガーランド!」(万感の思いを込めて)
(オスカーとリリーが抱き合う)
犬猿の仲ではなく、なんたら喧嘩は犬も食わないだったわけです。
それにしても名前だけで愛の告白を表現するとはなんてロマンティックなんだとヴィスタリアは客席でシビれました。
本名も芸名もすべてを知り許しあっているオスカーとリリーならではの告白のシーンだと思いました。
花組「ハンナのお花屋さん」外国語を習得する覚悟
映像でしか見ていないのですが花組「ハンナのお花屋さん」はいつもボロボロに泣いてしまうシーンがあります。
ロンドンで「ハンナズフローリスト」のオーナーをしていたクリス/明日海りおがデンマークへと拠点を移し自分の新しい生きる道、本当にやりたいビジネスを立ち上げたところに、
クロアチアの内戦を逃れてロンドンで必死で生きていたミア/仙名彩世が勇気をもって訪ねてくるところです。
なかなか言葉を発せないでいるミアにクリスが言うセリフには涙腺が崩壊してしまいます。
「幸せになっていいんだよ。1人じゃ生きていけないから。誰だって。ゆっくりと考えればいい、これからのことも」
そしてミアのデンマークでクリスと一緒に生きること、幸せになることの覚悟の伝わってくるセリフがとてもいいのです。
クリス「仕事は英語で大丈夫。デンマーク語を習いたければ僕が」
ミア 「マーゲンターク(Mange tak)ーーありがとう。花はブロムスト(blomster)。幸せは、リュッケ(lykke)」
クリス「ミア…」
ミア 「ヤビギャン ベアサムダイ(Jeg vil være sammen med dig)ーーあなたと一緒にいたい」
クロアチアからの難民であるミアがロンドンで生きることも大変なら、デンマーク語を取得することは相当苦労があったはずですし、
クリスのもとへ行くという一歩を勇気をもって踏み出したのが伝わってくる場面でした。
宙組「神々の土地」あなたの本当の名前
宙組「神々の土地」は上記の「20世紀号に乗って」の名前と「ハンナのお花屋さん」の外国語をミックスしたような形になります。
1916年ロシア革命前夜、皇族で軍人のドミトリー/朝夏まなととドイツから嫁いできたセルゲイ大公妃イリナ/伶美うららが想いを交わす場面です。
ドミトリーは過酷なペルシア戦線に向かう汽車から脱走してイリナを訪ねた翌朝の雪原です。
ドミトリーの「あなたに昔、ロシア語を教えた。この場所で」というセリフから始まります。
イリナ「ツレイク(снег)」
ドミトリー「雪。ーービルリ(белый)」
イリナ「白い。ーースローキー(широкий)」
ドミトリー「広い。よくできました」
イリナ「あなたがいたから私はこの国を好きになった」
ドミトリー「ゼルリャ(Земля)」
イリナ「ーー大地」
ドミトリー「リュボッヒ(любовь)」
イリナ「ーー愛。マトリョーシカ エトロスキー スヴェニエ」
ドミトリー「マトリョーシカ人形はロシアの名産です」
ドミトリーはイリナに「愛」と言わせますがイリナは真正面から言葉を返さずに「マトリョーシカ」と続けるのです。
「教科書なんて糞食らえよ」という言葉から2人はなかば本気で雪を投げつけ合った末にドミトリーがイリナを掻き抱きます。
この言葉のやりとりは直接「好きだ」「愛している」だけでは表現しきれないドミトリーとイリナの心の触れ合い、2人がどのような時間を過ごしてきたかが表されているのではないでしょうか。
ドミトリーはイリナに別れを告げて「我が麗しのイレーネ」とドイツ語名で彼女に呼びかけると、イリナはすかさず「イリナよ」と優しく訂正します。
「一度呼んでみたかった。初めて会ったときからずっと。あなたが結婚する前の名前をーーイレーネ!」
そう言い残してドミトリーは舞台を去り、ドミトリーとイリナは二度と会うことは叶いませんでした。
「ハンナのお花屋さん」「神々の土地」どちらも当て書きのオリジナル作品の佳作だと思います。
「愛してる」でも「好きだ」でもない愛の言葉がとりわけ深く心に残るのは、そこに至るまでがていねいに描かれているからではないでしょうか。
そんな宝塚歌劇の佳作、名作に劇場で出会えることを楽しみにしています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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