観劇の感想

星組「ロミオとジュリエット」役ごとの感想(B日程)

おはようございます。ヴィスタリアです。

緊急事態宣言発令の前に星組「ロミオとジュリエット」を観てきました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、古典作品で再演が繰り返されていることもあり作品の内容に触れています。

書くのに時間がかかってしまい今更かもしれませんが無観客ライブ配信の前に観劇の備忘録もかねて記事にします。

今回はB日程役替わりを中心に役ごとの感想になります。

乳母/有沙瞳

ヴィスタリアはみほちゃんが大好きなのですが、
今回贔屓目なしでみほちゃんの乳母がすばらしかったので乳母から書かせてください。

この学年で別箱ではヒロインも演じ、娘役としての可憐さ、かわいらしさもありながら乳母という大役を見事に演じ、
演技と歌で深い感動を届けてくれたことに感無量です。

ロミオとのやりとりなどコミカルさも絶妙で笑って楽しい気持ちになりましたし、
ジュリエットへの真心のこもった愛にはセリフも歌も涙せずにいられませんでした。

みほちゃんがすごいなあと思うのは
乳母がちゃんと年かさの女性に見えて、ちょっぴり下世話なキャラクターも表現しつつかわいさと品があること。

下がり気味に描いた眉、浅黒めに塗った肌、詰め物いっぱいのふくよかな体型などかなり思い切って外見を作っていますが
なんであんなにかわいいんでしょう。

そしていつもの高めでリリカルな声とはまったく違う、深みのある低い声でソロを歌い切る表現力と歌唱力があること。
泣いてしまいました。

あらためてみほちゃんが大好きになりましたし、得がたい娘役スターさんだと思いました。

乳母という女役で輝きながらヒロインとしても魅せてくれる娘役さんですが、
たとえばシェークスピア作品ならみほちゃんのオフィーリア(「ハムレット」)が見てみたいです。

「ロミオとジュリエット」の乳母がどれほど大切な役なのかを雪組で乳母を演じた沙央くらまさんが綴っておいでです。
少し前の投稿でご存知の方も多いかもしれませんが多くの方に読んでいただきたいです↓

死/愛月ひかる

劇場全体をも支配いているのではないかという異様なほどの存在感で舞台を掌握している愛ちゃんの”死”でした。

舞台の奥や端、あるいは階段の上と本筋が展開しているところから離れた薄暗い影にいるのに、
愛ちゃんがいるとそこから目が離せなくなってしまいました。

特にぞわぞわしたのはヴェローナ市街で悲劇的な血が流れてた後(だったと思うのですが記憶違いでしたらごめんなさい)で
上手の階段の上で手すさびに指を動かしているところです。

”死”の絶対零度まで冷え切った無関心さが心底恐ろしくなりました。

一方で亡くなった者たちの魂を抜く瞬間、神父の手紙を預かった従者を押しやる手には執着のような強い意思があって、
無関心さとの落差も印象的でした。

一言も発せずともこれだけの表現ができることと存在感に圧倒されっぱなしでした。

この舞台はヴェローナの街の一角を照らすような照明が印象的で、
光と陰のコントラストが強く、舞台全体を見ると暗めで陰影が濃いと感じました。

まるで愛ちゃんの”死”がこの街を静かに支配しているからのようだと感じました。

フィナーレでは舞台化粧は”死”のままですが大人の濃い色気が全開でとてもかっこよかったです。

大階段に座るのは反則ですよ。かっこよすぎます。
「Ray」に続いてみほちゃんとのアダルトで濃い組合せを見られてうれしかったです。

ティボルト/瀬央ゆりあ

黒髪にせよ金髪にせよ短髪の好青年というイメージをせおっちに抱いていましたが、
ティボルトの長髪✕浅黒い肌✕ギラついて燃える目に扇情的で濃い色気を感じました。

「初めて女を知ったのは15のときだった  ブロンド、ブルネットあらゆる女を抱いてきた」という歌詞も、
キャピュレット夫人/夢妃杏瑠が熱のこもった目で見つめ悩ましげに囁くのも納得です。

ロミオが自然な形でモンタギューの若きリーダーとして存在しているのなら
ティボルトは強い自負とプライドがカリスマとなってキャピュレットのリーダーに君臨している強さを感じました。

A日程ではベンヴォーリオを演じるせおっちですが
切り替えるのがもっとも難しい役替りのように思います。
(仮面舞踏会の振付など混乱しないんでしょうか。)

イメージとしてはベンヴォーリオの方が似合うと思うのでどうか観られますように…と祈るような気持ちでいます。

フィナーレの歌唱指導で明るい爽やかな笑顔が輝いていました。

ベンヴォーリオ/綺城ひか理

ロミオ/礼真琴のよきお兄さん的存在でありマーキューシオ/天華えまのよき親友(あるいは良心)であるベンヴォーリオの優しさや器の大きさを感じました。

あかさんの芝居はその役の物語が立ち上がってくるのが好きだなあと
劇場で観る度思います。

「MESSIAH」なら鈴木の、「眩耀の谷」ならカイラの物語を想像したくなるんです。

今回はマーキュシオもロミオもジュリエットも、ティボルトも亡くなり、モンタギューとキャピュレットの両家が和解したヴェローナで
今後ベンヴォーリオはどうやって生きていくんだろう…という想像を掻き立てられました。

大人たちに植え付けられる憎しみの果てに生まれたこの悲劇を止められなかったことを
若者たちの中でも年長寄りで穏やかでロミオをかわいがりマーキューシオを諌めようとしてきたベンヴォーリオは
この先誰にも本当の意味で心を許すことはできないのではないか、自分を許すこともできないのではないか――。

妄想ようですが、あかさんの厚みのある演技があるから
自然と思いを馳せられるんです。

どうかベンヴォーリオが幸せになれますように、彼の心に安寧がおとずれますように。

梅芸「Ray」に続いてあかさんのすばらしい歌唱をたっぷり聞くことができて耳福でした。

音域の広さ、高音の響かせ方は圧巻で、「♪狂っている~~~」の高音に待っていました!と大いに高まりました。

「エリザベート」トートのシャウトをぜひ聞いてみたいです。

あかさんは4月号の「歌劇」えと文でモンタギューの男と女の紹介をしてくれていますが、この発想もユーモアがあって好きです。

(余談ですが、この同年代のワチャワチャの中でちょっとお兄さんな感じがはまるあかさんを見ていると、
もしも一条ゆかり「有閑倶楽部」を宝塚でやるなら清四郎はぜひあかさんでお願いしたくなりました。)

マーキューシオ/天華えま

ライブ配信「エル・アルコン/Ray」で自分のなかのぴーすけスイッチが入り、いま大注目しています。

ぴーすけは歌もダンスもうまい上に、
芝居もぐっと深くなりご自身にしかない魅力と色気が放たれていて目が離せません。

ぴーすけのマーキューシオは刈り上げて蜘蛛の巣を描いたヘアスタイル、眉も気合十分で、
存在そのものが凶刃で抑えきれないエネルギーの危うさにハラハラしました。

そしてこの危うさに危険な色気が滴っているのがもーーーーたまりません。
(フィナーレで唇をぬぐう振付もこの色気が凶悪なくらい漂っていたのが最高でした。)

2幕のロミオを問い詰めるところで舞台奥からベンヴォーリオと並んで手前へ歩み出るところで
肩を大きくゆすっているのが大好きでした。

仮面舞踏会でも女の子たちを相手にいろいろ酷いことをしていて、次の観劇でもっとよく見るのを楽しみにしていたのですが(涙)

ぴーすけの演技・ダンス・歌と安定した実力がこのときを待っていたとばかりに発揮され、
特に口跡の鮮やかさとたしかな歌唱力で「マブの女王」を楽々と歌いこなせるのはすごいことです。

その他の役たち

一言ずつですが触れさせてください。

◆パリス伯爵/極美慎
お金持ち、輝くばかりの美貌、スタイルよし、髪型のセンスなどちょっと風変わりでお人好しな気もしなくはないけれど
いたってまっとうにジュリエットに求婚してくる青年です。

パリス伯爵があんまり変な人物像だとジュリエットが親に言われた結婚を嫌がるのはパリスが嫌だからに見えてしまいますから
しんくんはいい塩梅でパリス伯爵を演じていたと感じました。

フィナーレの総踊りでとにかくどこにいても何をしていても輝くような美しさとオーラで目に飛び込んできて、
スターとはこういうことだ…と思いました。

そしていつかしんくんのロミオが見てみたいと思いました。

◆愛/希沙薫
スカイステージのYoung+で「あの礼真琴が振りを確認するくらい振り覚えが早い」と証言されていたと記憶しています。

これ以上ないほど純度の高い愛を擬人化したらこうなる、ときさちんの美しくしなやかな”愛”を観て思いました。 

◆ヴェローナ大公/遥斗勇帆
99期のはるとくんがこの役替りに選ばれているのは
類まれな歌唱力あってでしょうが大躍進ですし、それにこたえるすばらしい歌でした。

99期は大好きな生徒さんがいて、いぶし銀タイプの生徒さんが多くて応援したいと思っているのでうれしいです。

舞台化粧も工夫されていて、上級生の多い星組のなかできちんとヴェローナを治めている為政者に見えました。

◆ロレンス神父/英真なおき
小池先生もプログラムで仰せですが「ロミオとジュリエット」における守護神、じゅんこさんです。

深い慈愛と歌声に出てこられるとほっとしますし、ロミオ/礼真琴がまとわりつくように甘えるのも納得です。

じゅんこさんが星組にご出演であることもうれしいです。

◆キャピュレット卿/天寿光希
プログラムのイケオジなスチールからしてきゃー!!でした。

こういうデザインした凝ったお髭の男役さん、大好きです。
そしてみっきぃさんの整った美貌にお似合いで、悪めの色気がしたたっていてたまりません。

こんな色男がお連れ合いではキャピュレット夫人/夢妃杏瑠は気苦労が耐えなかったのでは…いやいや、夫人は夫人でお楽しみでしょうか。

ジュリエットの望む形ではないけれどキャピュレット卿は彼なりに娘の幸せを願っていることがソロ歌唱で伝わってきてじーんとしました。

歌もこれまでのなかで一番よくて、先日スカイステージの番組で
上級生になっても常に成長なんですわ」とおどけつつ真摯に語っておいでだったのを思い出しました。

◆モンタギュー夫人/白妙なつ
ロミオはきっと一人っ子で母親の愛と期待を一身に受けて育ったのがうかがえるなっちゃんのモンタギュー夫人でした。

歌も耳福で、変わった形のドレスの着こなしも美しかったです。

◆モンタギューとキャピュレットの男と女たち
思い思いの髪型で思いっきりアピールしてくる星組生を見ていると目がいくつあっても足りません。

モンタギューはかなえさん(漣レイラ)
キャピュレットはひーろーさん(ひろ香祐)
放つエネルギーの大きさとダンスのキレ具合で目に飛び込んできます。

幕開きでひーろーさんがモンタギューのいーちゃん(音咲いつき)と愛し合っていながら引き裂かれ、
いたましい出来事によってようやく結ばれるのは涙せずにいられません。

りっひー(湊璃飛)のうんっっっと思い切った刈り上げ、
KABUちゃん(朝水りょう)の鋭い美貌にサイドを刈ったヘアスタイルが目に飛び込んできました。

キャピュレットの女は「あ、すごく美しい娘役さんがいる」と思うとはるこさん(音波みのり)でした。

身のこなし、佇まい、立ち居方が美しくて内面から発光しているんですよね。
スポットライトがあたっていなくとも、大勢の中にいてもご自身が輝いているので自然と目が吸い寄せられました。

同じくキャピュレットの女のいえちゃん(紫りら)も女ティボルトか!?というくらい危険な鋭さを放っていて印象的で、
ポンパドゥールにセットしたヘアスタイルがとてもお似合いでした。

2幕でものすごいアクロバティックなリフトをされていて「いったいどうなっているの!?」とびっくりしたのですが、
愛と知性のある記事を書かれるブロガー様が教えてくださいました。

上手奥の壇上でいえちゃん隼玲央くんにチョークスリーパーを決め→そのまま肩車されつつ舞台前方へ移動→そのまま前方にくるっと一回転して着地

この日自分は「くるっと」のあたりで気づいたので、次は絶対チョークスリーパーから見る!と心に誓っています。

モンタギューの女はおとねさん(紫月音寧)の厚く眉の上で切った前髪と
ちょっと危うそうな、マーシューシオに通じるような冷たさ、危険なものをはらんだ雰囲気が印象的でした。

小桜ほのかちゃんはエトワールの劇場の天井をつきやぶるような美声がすばらしかっただけに
モンタギューの女であることがもったいなくて、娘役も役替りがあってもよかったのでは…と思いました。

B日程の役替りが楽しみだったのですがこの観劇が最後になってしまいました(涙)
緊急事態宣言の延長がなければA日程も観劇できるはずですが、5月11日で本当に終わるのかどうか…。

まずは連休中の無観客ライブ配信を楽しみます。

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