おはようございます。ヴィスタリアです。
月組「グレート・ギャツビー」の東京宝塚劇場初日を観劇してきました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容や役のプロフィールに触れています。
目次
「グレート・ギャツビー」役たちの感想 ジェイ・ギャツビー/月城かなと
初日、作品の感想でも触れましたが月組「グレート・ギャツビー」は重厚なストーリーが濃密に、テンポよく展開していく舞台で、それを作り上げている月組生の迫真の芝居を中心でひっぱるのはもちろんジェイ・ギャツビー/月城かなとです。
れいこちゃん(月城かなと)の芝居の巧さ、歌唱力、表現力、美しさ、かっこよさ――すばらしいトップスター、主演でした。
端正な美貌のれいこちゃんにアウトローなところのあるギャツビーがこんなにハマるなんて、ギャップに萌えるというより芝居・表現の巧さにまいりました。
次回の全国ツアーがアウトローな無免許医「ブラック・ジャック」ですが俄然期待が高まります。
ジェイ・ギャツビーの言動は傍から見ればときに(かなり)変ですし(作中でニック/風間柚乃に笑われたりしているように)、共感もしにくい人物なのかもしれません。
が、れいこちゃんのジェイ・ギャツビーは骨太で、生まれや恋情ゆえの野心を抱き様々なことをしてきた背景が立ち上ってくるような分厚い芝居で、ジェイ・ギャツビーがこういう生き方をしたこと、わかると思わされるし、どれだけの思いをしてきたんだろうという余韻と余白に浸る快感もありました。
そして滑舌のよさは言わずもがな、名曲「朝日の昇る前に」はじめ歌もうまいし発音がすごく綺麗だなあと舌を巻きました。
劇中で三度歌われるこの名曲がそのときどきで込められた想い、広がる心象風景、伝わってくるものがまるで違う表現力の確かさ。
すばらしかったです。
デイジー・ブキャナン/海乃美月
うみちゃん(海乃美月)のデイジーは金髪に目元がツヤツヤと光る舞台化粧、メインビジュアルの薄菫色のドレスから様々なドレスがとても美しかったです。
昼下がりのギャツビーとの逢瀬を思わせるシーンで、長椅子でデイジーがパールのネックレスを、ジェイがベストのボタンを止めるのを見て、「アンナ・カレーニナ」(2019年月組バウ)を思い出しました。
人妻で道ならぬ恋をしているのはデイジーもアンナも同じで、「アンナ・カレーニナ」の後朝も短いシーンでしたが匂い立つようでどきどきしたのが蘇りました。
ギャツビー邸のパーディーでギャツビーと躍り出たときの、黒のレースが美しいドレスに周囲の目が奪われるのもアンナと同じで、
時代もタイプも違えどファム・ファタルを演じ切る美しいうみちゃん、好きです。
若き日のトムと同じくエスタブリッシュメントのうんと美しくてワガママなお嬢様の烈しさ、身勝手さも印象的でしたし、
再会したジェイとの間で恋が刹那的に燃え上がるのも(正しい選択ではないのかもしれませんが)デイジーがそうするの、わかる…と、うみちゃんのデイジーを見ながら思いました。
小澤時史先生の新曲「女の子はバカな方がいい」の歌詞が、デイジーの決意が悲しくて、そうせざるを得ないことが胸に迫ってきました。
女の子はバカな方が幸せなのね
女の子はなにも知らないほうがいい(中略)
なるわ なってやるわ
何も知らない女の子に
考えることを知らない
ただのバカな女の子に
トムとの生まれたばかりの娘について「この子を綺麗なおバカさんにするわ」と宣言してみせるのもなんと哀しいことか。
こういう生き方しかできないデイジーというのが伝わってきて切なかったです。
トム・ブキャナン/鳳月杏
同じく初日を観劇していたヅカ友さんと「ギャツビーは変な男なのにかっこいい、そしてトムは酷い男なのにかっこいい」という話で盛り上がりました。
ちなつさん(鳳月杏)のトム・ブキャナン、エスタブリッシュメントゆえの傲慢さが酷くて、冷たくて、感情的で、ときに暴力的な気配があって、それでもかっこいいんですからまいってしまいます。
悪役というのとは違いますが歌舞伎でいうところの色悪とでもいうんでしょうか、こういう役は男役の醍醐味の一つでしょうね。
男役の色気のあるちなつさんだからこそのかっこいいトムでした。
またうんと洒落者で派手好みのスーツがちなつさんの長い脚のスタイルにお似合いで、特にブルー系のストライプのスーツが好きでした。
ニック・キャラウェイ/風間柚乃
うまいですねえ……と、つい語彙を失った感想を書いてしまいますけれど、おだちん(風間柚乃)の芝居の巧さは知っているつもりですがやはり巧いです。
ストーリーテラー的な役割もあって、初演では二番手スターだった一路真輝さんが演じた役です。
今回はトムと番手が入れ替わっていますね。
ニックは台詞も多く出番も多く、ありちゃん(暁千星)が星組へ組替えになったのに伴って堂々たる3番手をつとめていますが安定感があってすごいです。
前述の通りジェイは変な男、トムは酷い男ですから、まっとうに働いてうまいこと隣人付き合いから社交もこなして恋をするニックの真っ当さにほっとすることもできます。
そして最後の場面ではニックの優しさに癒やされ救われました。
ゴルフについてスカイステージの番組などで「風間先生がうまい」という話が出ていましたが、そりゃあそうですよね。
舞台上では「ちゃんと」下手なフォームにスイングを表現していました。
ジョーダン・ベイカー/彩みちる
デイジーの親友のゴルフチャンピオン、ジョーダンはもしかしたら彩みちるちゃんのお役で一番好きかもしれません。
自信ありげで自分が美しくて才能があることもわかっていて、ときにちょっとばかり狡くもあって。
色気の濃淡――ドレスを着れば自分の魅力をわかっていて堂々と押し出し、自分の道を行くときはその選択をきっぱりとしてみせるキャラクターが息づいていました。
何度もお着替えをしていますがそれがまたお洒落でかわいくて、ふだんのおしゃれ番長のみちるちゃんのイメージとも重なり、真っ赤なリップに爪もお似合いでした。
ジョージ・ウィルソン/光月るう、マートル・ウィルソン/天紫珠李
ガソリンスタンドの夫婦ですが結婚生活はうまくいっているとは言えません。
ジョージ・ウィルソン/光月るうの、鬱屈とした仄暗さと何も映していないような目が印象的で、
妻マートルに酷いことをしますが(マートルも酷いことをしているのですが)説得力がすごい…巧いですねえ。
最後の歌もすばらしかったですし、るぅさんがこんなにも劇場を支配するところが見られて鳥肌が立ちました。
シビれます。
マートル・ウィルソン/天紫珠李はピンクのド派手な衣装が印象的で、友人たちと集まるとその色とりどりのお衣装が美しく、そしてどギツさもちゃんとあるのにはっとしました。
作品の感想でも触れましたが靴まで美しいのが見逃せません。
「綺麗なおバカさん」になろうとしてなり切れない――マートルの場合は「おバカさん」になろうとしているのではなく、傍から見ればバカに見える行動を取ってしまうんですよね。
そうしたエネルギーと恋と衝動に満ちたじゅりちゃん(天紫珠李)のマートルでした。
マイヤー・ウルフシェイム/輝月ゆうま、ビロクシー/礼華はる
専科のまゆぽんが月組本公演に凱旋です。
フィナーレの男役群舞にも入っているのも、この公演でご卒業される同じ95期のはーちゃん(晴音アキ)と並んで2人で大階段をおりてくるのもうれしいです。
まあなんと悪い、裏の社会で生き、取り仕切っていることがわかる出で立ちと纏う雰囲気か。
長身のまゆぽん(輝月ゆうま)、スーツに髭に白髪交じりのヘアスタイルが怖くてかっこいいのなんのって。
もぐり酒場「アイス・キャッスル」でスーツの男たちのナンバーがかっこよくてまいりました。
振付はAKIHITO先生。
まゆぽんを筆頭にみんなかっこよくて目が足りないのですが、
ダンスがキレッキレと思ったらかのんくん(彩音星凪)、
ダンス巧すぎる上に眩しいと思ったらまおまお(蘭尚樹)でした。
ビロクシー/礼華はるはジェイの執事ですが、一幕の幕開きの、紗幕の向こうに見えるギャツビー邸の豪奢なセットでただ立っているだけで、少し動くだけで悪くてやばいやつなのがわかるのが印象的でした。
月組の娘役たち 適材適所の大活躍
「グレート・ギャツビー」といったら1920年代のニューヨークの、享楽的で退廃的で、華やかさと虚無さが比例するパーティーシーンが印象的ですが、
一幕冒頭のギャツビー邸のパーティーシーンに乗り付けた車から美女が登場したときに一気にその世界へと引き込まれました。
ジュリア/蘭世恵翔とアイリーン/羽音みか、2人して華やかでゴージャスで長身で圧倒的な美!でした。
お2人は2幕冒頭のジークフェルド・フォリーズでもちょっとびっくりするくらい派手なお衣装で圧倒してくれます。
ここは男役さんも入っていて、圧巻の美しさでした↓
蘭世恵翔
瑠皇りあ
羽音みか
天つ風朱李
美颯りひと
このジークフェルド・フォリーズではこありちゃん(菜々野あり)、みうみん(美海そら)がポアントですばらしく踊っているのも目が離せません。
またコケティッシュなショーガールヴィッキー/結愛かれんの色気とかわいらしさと小悪魔な魅力はピタりとはまっていました。
一本物ということで役どころは少ないのかもしれませんが、ナンバーシーンでは特に歌唱力のある生徒の活躍が目立ちました。
月組は芝居もプロフェッショナルの集まりですが歌もすばらしいソロを歌える生徒さんが揃っているのをあらためて感じました。
アイス・キャッスルのクラブシンガー/咲彩いちご、
パーティーで歌うタンゴの歌手/蘭世惠翔、
ジークフェルド・フォリーズのアンナ/晴音アキとルディ/彩海せら、
2幕10場「神の眼」のカゲソロ白河りり。
そしてエトワールはちのちゃん(一乃凛)。
ジュディ/きよら羽龍は前作が休演だったのでこうして元気なお姿を見られたこともうれしく、ソロで響かせた美声の声量がすごくておお!となりました。
初演のジュディは歌姫純名里沙さんが演じていたのですね。
エディ/彩海せらとジュディ/きよら羽龍の愛らしいやり取りを見ながら、
どうか新人公演が東京では上演できますように、この2人のジェイとデイジーが見られますように…と強く思いました。
宝塚大劇場の新人公演は中止になってしまいましたから。
以上、初日観劇の感想でした。
まだチケットを握りしめているのでどうか無事に千秋楽まで公演ができることを祈っています。
読んでいただきありがとうございました。
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