観劇の感想

花組「フィレンツェに燃える」初日観劇の感想

こんにちは、ヴィスタリアです。

梅芸メインホールで初日を迎えた花組全国ツアー「フィレンツェに燃える/Fashonable Empire」を観劇してきました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。

若き日の柴田先生の意欲作「フィレンツェに燃える」感想

宝塚歌劇で好きな演出家は誰かと聞かれたらどなたのお名前を挙げられるでしょうか。

自分はまず柴田先生、正塚先生、小原先生、草野先生――映像しか知らない先生もいらっしゃいますけれど今でも見てときめきます。

小池先生はもちろんのこと、小柳先生、生田先生、藤井先生、稲葉先生、それに新進の指田珠子先生、栗田優香先生にも大注目しています。

というわけで柴田先生の、映像さえ残っていないという「フィレンツェに燃える」の再演を楽しみにしていました。

が、正直1回観ただけではわからない部分もあり、自分の許容できる器からあふれてしまったと感じました。

柴田先生の美しい言葉の片鱗とドラマチックでロマンチックな人間ドラマという基盤は間違いなくあるものの、
「哀しみのコルドバ」「茜さす紫の花」などの後年の作品のようにわかりやすく胸を打ち心揺さぶるものを受け取れませんでした。

やや冗長に感じられたりあまりにも古く感じられた言葉もありました。
(アンジェラがレオナルドを評しての「イタズラ坊主」とか)

演劇的というより小説的なところがあるといいますか、時代背景、人物関係の説明的な台詞を把握しておかないと
ストーリーのおもしろさから置いていかれそうになりました。

自分はあらすじを橘涼香さんの「《橘涼香の名作レビュー館》その3『フィレンツェに燃える』」で予習してから観劇しました。

アントニオ、レオナルドの尊敬しあう兄弟とパメラの関係、兄弟の行く末は悲しくもドラマとして興味深く、
そこにアンジェラが関わり、オテロとマチルドという恋人たちがいる――ストーリーは間違いなくおもしろく味わいがあり、ラストシーンの余韻もあってその後に思いを馳せたくなる。

けれども舞台作品としては劇的にわかりやすく燃え盛るのではなく、水の向こうに静かに炎が燃えるイメージかな…と
「フィレンツェに燃える」というタイトルをあらためて見て思いました。

フィレンツェの数日に渡って続くカーニバルのナンバーと主要人物たちのドラマが交互に進んでいくのは宝塚歌劇的ですし、祝祭は定番中の定番です。

しかしこのドラマが劇的なわかりやすさに集約しておらず、静かに、言葉で展開していって行間を読むようなゆらめきがあるのが若き日の柴田先生ということなのかなと、
今回演出を担当された大野拓史先生のプログラムの言葉を読んで思いました。

いわば柴田先生の若書きで正直1回めの観劇ではもの足りないところもあったのですが、
その後の数々の柴田作品が美しい言葉で綴られドラマチックにロマンチックに展開し、再演を重ねている基礎となるものが凝縮されていてる、いわば意欲的な若書きなのだと受け止めました。

再演作品における衣装・音楽・振付のアップデート

ところで2020年に雪組が「炎のボレロ」を再演したときも初演から約30年ぶりの再演で、観劇して作品のリズムが牧歌的すぎて古いと感じるところがありました。

が、振付が一新され(全場面をANJUことヤンさん(安寿ミラ)が担当)ドラマを一層際立たせ盛り上げていましたし、
新進の薄井香菜先生のお衣装が初演を下敷きにしながら洗練された、新しいセンスのものになっていて目からうんと楽しませてくれました。

やはり雪組が「ヴェネチアの紋章」を約30年ぶりに再演したときは謝珠栄先生の新演出で音楽が一新されて、まるで違う作品のような印象に生まれ変わりました。

自分は初演に愛着があるものの、原作を読んだ上で再演の方が原作のイメージに近くて好みだと感じました。

加藤真美先生のお衣装も素敵で、さききわ(彩風咲奈・朝月希和)のプレお披露目公演ということでお着替えもたくさんで目から幸せでした。

「フィレンツェに燃える」の衣装は河底先生が担当されていますが、これがあまりにも河底衣装で…(お好きな方、ごめんなさい)。

全国ツアーですから着回しも多く、テイストを合わせて作品世界を成立させるのは難しい面もあるでしょう。

それにしたって……という衣装がいくつかありましたし、トップコンビが並んだときにこの色合わせは素敵なんだろうか?と思うものもありました。

カーニバルでアンジェラが白いドレスにまとっている赤いストールが妙に派手なのも違和感がぬぐえませんでしたし、パメラだけが顔を隠す仮面を持っていたのも気になりました。

ショー「Fashionable Empire」も河底先生のお衣装で、宝塚大劇場で初日を観たときに河底衣装だなあ……と驚いたり目を白黒させたのを思い出しました。

舞台のすべてが美しい宝塚歌劇の世界で衣装は作品の重要な要素であることをあらためて実感した観劇でした。

ずっしりと重たい作品で、幕が下りたときに全身を緊張させて見入っていたことに気づきました。

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