観劇の感想

「カンパニー」感想 各キャスト猛愛編

「カンパニー」のキャストごと、あるいは気になった場面の感想です。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちておりますので、特定の生徒さんのファンの方はお気を悪くされるかもしれません。
それでもよいという方はお付き合いいただければと存じます。
 
《青柳誠二/珠城りょう》
現代ものでサラリーマンの役をトップスターがやるのはめずらしいように思いますが、たま様のかっこいいスーツ姿がたくさん見られるのでこういう演目もいいなとヴィスタリアは思いました。
世の中にこれほどスーツにリュックサックの通勤姿がかっこいいサラリーマンがいるでしょうか。いやいません。
つい反語表現で強調してしまいましたが、たま様の青柳誠二は登場からしてかっこよすぎます。
 
スタイルがよくて清潔感があって優しくて、武道ができて、総務部の仕事のために書道までできる=仕事に必要なスキルアップも欠かさない。
たぶん有明製薬の女子社員のなかで人気ナンバーワンで、前妻ともみさんと結婚されたときは多くの女子社員が涙したことでしょう。
(たま様がかっこよすぎてヴィスタリアの妄想が暴走しました。すみません。)
 
最初に銀橋を主題歌を歌いながら渡るところ、劇場ではこの物語の世界に引き込まれましたし、何度映像で見てもいいなあとヴィスタリアは思います。
まだことのときの青柳さんは打ち破り突破すべきものが見えていなくて、妻を失った悲しみと喪失感のなかを漂っている、少しさみしそうな感情がにじんでいるようにと思うのです。
敷島バレエ団に出向して仲間を得てから歌うときとは違う青柳の心情が出ていて、この心情の変化をたま様はていねいに表現していると思いました。
 
青柳が個性豊かな仲間たちと協力しながらアクシデントを乗り越えたり、悩んだりもがいている人にはあたたかい助言で背中をそっと押したりするのは、月組トップスター珠城りょうとイメージが重なります。
(ヴィスタリアが勝手に抱いているイメージです。)
しかしこういう、自分に近い現代ものの演技は難しいように思うのですが、たま様の演技はナチュラルで説得力があると思いました。
たとえば美波に告白する「月がきれいですね」というセリフは相当かっこつけていると思いますが、青柳なら言いそうだと思えました。
(たま様のようなかっこいい男役さんが言うなら素敵の一言です。)
 
細かいところですがヴィスタリアが好きだったのはこのセリフです。
「プライベート、じゃじゃ漏れじゃないですか」
「溜まるのはマイレージとストレスだけでーす!」
じゃじゃ漏れという言葉がかわいいです。
そして後者の爽やかかつ笑いをとっていたのは、この舞台には笑いどころがたくさんありましたけれど、素直に笑えて楽屋落ちでもなくいい笑いだったと思うのです。
 
 
《高崎美波/愛希れいか》
ちゃぴちゃんの娘役としての力量の高さにヴィスタリアは脱帽しました。
・どんな衣裳でも着こなせる
・誠二さんに片思いをしているのがいじらしく、でもちょっぴり積極的なところがとってもかわいい
・ちゃぴちゃん自身は押し出しの強さがあるけれど、美波の肝心な舞台で弱さが出てしまう揺れも表現できている
 
バレリーナのレッスン着も「白鳥の湖」の衣裳も、浴衣も着物も黄色のドレスもかわいいですが、この舞台では珍しい衣裳を着ています。
一つは登場の普段着です。コートにニット帽に白いパンツ、かわいいです。
もう一つはコンビニ「ルナストア」の店員姿です。ハイソックスとスニーカーもちゃんと着こなしていて、これで脚が太くも短くも見えないのはさすがだと思うのです。
 
亡き妻を忘れられない青柳への「わたしのことは覚えていなあった」「奥さんへの思いでいっぱいなんですね」といったセリフがいじらしくてきゅんとしてしまいました。
その一方でけっこう積極的で、「青柳さんに質問させてください」と自分から言ったり、スーツの上着を脱がせてあげたり「有休とってくださいね」と念押ししたりするのがキュートでした。
 
ちゃぴちゃんの演技のレベルは宝塚を超えており、外の舞台でも他の人では代え難い存在だとヴィスタリアは思いました。
 
 
《高野悠(はるか)/美弥るりか》
青柳が高野のことを「見た目より男らしい」と評するセリフがありますが、まさにみやちゃんの役作りの外見は中性的で長い髪で華奢で、「新解釈白鳥の湖」では男でありながら王子を誘惑する役をやりたいと望んでいます。
 
しかし中身は男らしいというか、プライドと芯を持った人物です。
ユイユイにケアを頼む心情の変化、最後のパーティーで急に「由衣」と呼んでウィーンに誘うところの決断にそれが表現されていると思います。
ウィーンまで自費で追いかけてきたユイユイと青柳に心を動かされるところなど、昔気質というか義理人情にあつくて、それまでの高野にしたら唐突にさえ思える変化をみやちゃんの演技かていねいに表現していたのではないでしょうか。
 
高野の芯をもっとも感じ、また印象に残ったのがアイドルの那由多が王子役として「新解釈白鳥の湖」に出演することを知ったシーンです。
ヴィスタリアはこのシーンが高野で一番好きでした。
傷ついた表情、「このカンパニー、俺がいなくても大丈夫そうじゃないですか」という苦しげでしぼりだすような声、カンパニーを大切にしてきたし皆も盛り上がっているけれどどうしても自分のポリシーとプライドが許せないという、高野の引き裂かれるような辛さが伝わってくるようでした。
 
ほかにもみやちゃんの見所は多くて、「新解釈」で王子に見立てた青柳を誘惑するところはみやちゃんのあふれんばかりの妖しい色気にドキドキしました。
ロットバルトの派手派手な衣裳を違和感なく着こなしているのもさすがです。
ポスターもプログラムもこの衣裳ですものね。着ているのはほんの短い時間ですが。
 
あとほんとうに細かいところですが「スーパー銭湯」といいながら袖に入っていくときの歩き方も高野悠の自由人な感じが出ていて好きでした。
 
 
その他のキャストは一言ずつまいります。
《水上那由多/月城かなと》
登場からまばゆいほどの美貌で、きらきらのオーラがアイドルにぴったりです。
舞台で失敗してから落ち込む演技もよかったです。
トイレにこもっちゃうなんてかわいすぎます。
 
《阿久津仁/宇月爽》
なんという顔の小ささ、演技のうまさ、歌の確かさでしょう。
ちょっとしたダンスの動きの美しさもさすがです。
的確な演技とはこういうことをいうのだと思いますが、こういう別格スターがいないと宝塚の舞台は成り立ちません。後継者の育成を切に望みます。
ウェーブをかけた髪型もすてきだと思いました。
 
《瀬川由衣/海乃美月》
陸上競技ではないスポーツをしていて、マラソン選手のトレーナーになるというのは相当な努力と勉強をしないと難しいと思うのですが、それだけの努力を惜しまない熱意を感じさせる演技だったと思います。光っていました。
 
ただ、ちょっと痩せすぎなように見えて心配になりました。もう少しふっくらされてもよいかと思います。
そして瀬川コーチのジャージもマイマイの衣裳同様、陸上競技のものではないと思いました。舞台は現実とは違うとはいえ、かけ離れすぎのように思いました。
 
《山田正芳/輝月ゆうま》
うまい、本当にうまいと思いました。
「ほー」という言い方や椅子を動かして噂話する仕草、ごめんごめんという仕草、そういう小さなところが光っています。
芝居の月組の屋台骨の一人だと思います。今後も活躍を期待しています。
 
《有明紗良/早乙女わかば》
こういう娘役さんを姫役者というのでしょう。
ピンクの袖が膨らんでる衣裳をさらりと着こなし、ちょっと空気の読めない(というよりは読まない)お嬢様を演じています。
世間知らずさと自らのプライドの高さがよく出せていると思いました。
那由多にキスをして、ふつうの女の子だったらとても言えないようなセリフを説得力をもって言っていてさすがだと思いました。
 
《田中乃亜/憧花ゆりの》
強烈なキャラクターをうまく演じていると思いました。
「本日、閉店」「センセ、ここ禁煙です」といった一言で笑いをきっちり取れるのはさすがです。
 
《敷島瑞穂/京三沙》
専科のお姉様方がなぜ宝塚に必要なのかは、この舞台の京三沙さんを見ればわかるのではないでしょうか。
歌、演技、存在感、この方がいるからこその深みがあります。
「ギャンブラーでもあるの」「東京オリンピックまでに都内は全面禁煙になるのかしら」といったセリフのおもしろみがよかったです。
 
《長谷山蒼太/暁千星》
劇場でいまの月組についてほとんど何も知識を持たずに観てすごいと思ったのがありちゃんのバレエでした。
ヴィスタリアは知り合いがバレエを習っていてレベルの高い発表会(日本を代表する有名バレエ団)を見たことがあるのですが、ありちゃんのピルエットはそういったステージでも拍手が起きると思いました。
 
ところでBlu-rayをテレビの真ん前で凝視していて、ありちゃんの顔に傷があることがわかりました。
劇場では気づきませんでしたし、事情はわかりませんが早くよくなることを祈ります。
 
《黒川杏/白雪さち花》
歌にパッションがありました。
「エリザベート」も楽しみです。
 
《脇坂英一/光月るう》
フォークダンスといい花道の小芝居といい、一番笑ったかもしれません。こういうたしかな演技と存在感のある上級生がヴィスタリアは大好きです。
 
 
セリフのある役もない役も月組生の熱い思いの伝わってくる舞台だったのでほんとうなら月組生一人ひとりに触れたいのですが、特に気になった方たちについての感想を書きました。
 
芝居に熱い、「おもちゃ箱」の月組が今後も続いてほしいと願っているヴィスタリアでした。
 
 

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