こんばんは、ヴィスタリアです。
Brillia HALLで花組「冬霞の巴里」を観劇しました。
1回限りの観劇で気づいていないこと、見落としていることもありそうですがヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。
「冬霞の巴里」役の感想
作品の感想は別記事で書きましたので役についても書いてみますね。
◆オクターヴ/永久輝せあ
ポスターからしてひとこちゃん(永久輝せあ)の耽美で退廃的で、まるで完璧な絵のような美しさにひれ伏しました。
そして実際に舞台を見て、主演をする男役にはこうあってほしいというすべてを兼ね備えたひとこちゃんのすごさに圧倒されていました。
美しいお顔も舞台化粧もスタイル、衣装の着こなしといったものはもちろん、芝居・ダンス・歌どれをとってもすばらしくて、色気もあって、ずっと「すごい…」と思いながら見ていました。
まず口跡の鮮やかさに話が追えなくなってしまうことがなく、Brillia HALLはあまり音響がよくないのでとても助かりました。
これはアンブル/星空美咲もですね。
それに声も低い声ともまた違う、ひとこちゃんにしかない声なのがとても魅力的だな…と台詞も歌も聞き惚れること度々でした。
フィナーレのダンスも美学のある巧さを感じました(これは「The Fascination!」のピアノファンタジィの場面でも感じたことです)。
しかも長いフィナーレで娘役さん、男役さんと入り乱れるように組んで踊り、最後はソロで圧巻でした。
最後にひとこちゃん一人残って暗転→スポットライトがつく間に髪を撫でつけているシルエットが見えて、その仕草・シルエットさえもかっこよかったです。
オクターヴは復讐を誓い姉アンブル/星空美咲に何かと執着し、燃えるような憎しみ抱きながら湿度が高い哀しみや孤独が渦巻く役で、そういう役がひとこちゃんにとても似合うなあと実感しました。
配役が発表になったときも「ハムレット」が見てみたいと思ったんです。
実力、華があるだけでなく「こういう役が見てみたい」とかき立てられるような役、イメージがあり、
客席の待望と作り手の思いが一致する――今回実際にそのような公演が実現して、永久輝せあは代表作の一つに出逢ったのだと感じました。
こんなふうに代表作と言える名作、役に出会えることはそうあることではありません。
明日海りお「春の雪」
望海風斗「BUND/NEON 上海」
珠城りょう「月雲の皇子」
瀬央ゆりあ「龍の宮物語」
和希そら「夢千鳥」
のぞ様(望海風斗)は主演の海外ミュージカルものでは「ドン・ジュアン」が思い浮かびますが、
オリジナル作品なら主演ではないものの、後に退団公演のショー「シルクロード」で再演することになる劉衛強でしょう。
後々振り返って「あれはターニングポイントだった」「あの役を見られてよかった」と心底思える出会いはそうあるものではありません。
ひとこちゃんの「冬霞の巴里」のオクターヴはそういう稀少な役でした。
出逢えてよかったです。
◆アンブル/星空美咲
「銀ちゃんの恋」の小夏役も今作もはっきりとヒロインなのにどうして主な配役の線より上にみさきちゃん(星空美咲)のお名前がないのかふしぎでなりません。
すばらしいヒロイン、娘役さんだと思うのですが…なにか事情があるんでしょうか。
「銀ちゃんの恋」はマイティー(水美舞斗)の、今作はひとこちゃんの相手役で学年差はありますが違和感がなく、
今回は歳の離れていない姉と弟にちゃんと見えます。
歌手として劇場に立つのも納得の歌唱でしたし、台詞の声がとても綺麗で聞きやすいのはもちろん、みさきちゃんのアンブルには緊張感と同時に弟オクターヴ/永久輝せあへの母性ような愛がありました。
緊張感は母クロエ、叔父ギョームへの復讐とそのために近づく男たちへと向けられていて、会食のテーブルではクロエに歯向かうときものすごく顔を歪めているのが見えましたし(娘役さんがこんな表情をするんだと驚きました)、
劇場で歌うのがセイレーンというのもぴったりでした。
一方で弟の愛は、たとえば抱きしめたりタイを結んであげるとき、霧か霞がすべてを包み込むような底知れなさ、果ての見えなさもあって、もしかしたらアンブルは一番わからない人物かもしれないと思いました。
みさきちゃんがわからなく見せてくれているんだなあとも。
秘密を抱え、弟オクターヴに問いかけられて姉として答える――忘れがたいシーンでした。
タイトルの「冬霞」という指田先生の言葉のセレクトの秀逸さには唸りましたが、オクターヴが見ている巴里の印象であると同時に、まるでアンブルのことを指しているようにも感じました。
◆ヴァランタン/聖乃あすか
オクターブのパリの下宿先には女将の女将サラ・ルナール/美風舞良はじめ一癖も二癖もある下宿人たちが集まっていますが、ほのかちゃん(聖乃あすか)もその1人です。
これまで見たことのない、ほのかちゃんのインパクトと野性味のある外見に度肝を抜かれました。
これまでの「元禄バロックロック」「はいからさんが通る」のようなふんわりとした、フェアリー感のあるほのかちゃんはどこへいったの!?と驚きながら、美貌が一層際立つようでオペラで追いかけがちでした。
左側の髪の毛を刈り上げたツーブロックのヘアスタイル、眉の剃り込み、そして汚れたような舞台化粧はまるで消えることのない傷のようにも感じられ、彼の生い立ちや人物的な背景の多くは明かされませんがどのようにこのパリを生き抜いてたどり着いたんだろう…と思いを巡らせたくなりました。
クライマックスの静けさからの狂気にはゾワゾワとしました。
Brillia HALLは音響があまりよくない劇場ですが台詞がずいぶんと聞き取りやすくなったことにハッとし、ヴァランタンという役で新境地を拓いたと同時に研鑽されているのだな…と思いました。
アナーキズムの思想を持つヴァランタンと行動をともにする学生シルヴァン/侑輝大弥もまたやはり汚れたような化粧で華やかな美しさが際立ち、
すっきりとした長身、ダンスが舞台映えしてやはり目を奪われること度々でした。
◆ギョーム/飛龍つかさ
オクターヴ、アンブルの叔父で義理の父となり、そして警視総監という権力のある人物ですが、すごく難しい役なのでは…と思ったのは、物語が進行していくうちにギョームの内面が見え隠れしたり、見え方が変貌していくからです。
公演解説を読み、最初はオクターブ、アンブルの父親オーギュストを殺した”悪者”と思っていたのですが、本当にオーギュストは”被害者”なのか?悪いのはギョームなのか?と混乱し、世界の見え方が歪んでくる場面、台詞があるんです。
きちんと年上の、地位のある男性に見えて、ギョームの複雑さをきちんと表現できるのはさすが飛龍つかさくんだな…と唸りました。
オクターヴに復讐の、憎しみの強い感情を向けられたときに口にする「これで終わるわけではない」という台詞(正確に思い出せなくてごめんなさい)の切実さといったら。
ギョームがしてきたこと、背負い込み苦悩しているからの重たさ、迫るものがありました。
歌、ダンス、芝居と実力をかね備えた頼もしいスターさんだとあらためて思いました。
◆クロエ/紫門ゆりや
クロエはオクターヴ、アンブルの母で、夫オーギュスト亡き後その弟のギョームと再婚し社交界の花形となっている美しい貴婦人です。
「オレステイア」でいえばクリュタイムネストラに当たる役ですから魅力的かつ大きな役ですから専科生が配されるのは納得なのですが、
まさかゆりちゃん(紫門ゆりや)の専科生として初めての花組公演の出演がまさか女役とは…!
発表になったときは驚きましたが美貌に納得でしたし、最初は威圧感と抑え込まれるような迫力が怖くて、これは男役のゆりちゃんならではのものだと思いましたし、
ギョームと同じく物語が進むにつれてクロエの身に起きたことがだんだんと明かされていって可哀想にも思えて、ただの”悪者”でなくなっていくんです。
ゴージャスで迫力のある成熟した美女との落差がとても印象的でした。
◆オーギュスト/和海しょう
オクターヴの父、亡き者として舞台のあちこちに登場しするのですが美しい~~~。
妻クロエ/紫門ゆりやとの間に美貌の息子オクターヴ/永久輝せあが生まれるのも納得ですし、立ち姿、居住まいが美しくて白い正装が映えます。
が、ときに白い衣装に赤い雫が飛び散っていることもあって、復讐の女神エリーニュスたちとともにいることもあって、オーギュストもまた見え方が変わってきます。
しぃちゃん(和海しょう)、すばらしい歌声も聞かせてくれました。
しぃちゃんにしかないかっこよさと品、色気があるのを観劇のたびに感じます。
これからの舞台も楽しみです。
◆ミッシェル/希波らいと
オクターヴの義理の弟にあたる青年です。
両親に愛され、慕い合う婚約者がいて、将来は希望にあふれ輝いているような若き青年でオクターヴ/永久輝せあから見れば痛いくらい眩しいのが伝わってきます。
ミッシェルは義理の姉アンブル、義理の兄オクターヴを慕い心を寄せようとしますが、兄に向けた言葉が思いやりと愛に満ちたものだからこそ
オクターヴには耐えられないでしょう。
ミッシェルから救いとして向けられた愛に満ちた言葉がオクターヴにとっては刃であり、そうした心からの言葉を言えるのは育ちのよさ、汚れのない純粋さがあってでしょう。
こういう白い役を演じる希波らいとくんをほとんど初めて見たような気がしますし、歌のソロもこんなにしっかり聞いたのは初めてかもしれません。
らいとくんが主演の「元禄バロックロック」新人公演を東京宝塚劇場のライブ配信で見るはずでしたが公演中止になってしまいましたから(涙)。
黒い役より白い役の方が難しいと思うのですがらいとくんの芝居心を感じましたし歌唱も丁寧でした。
◆エルミーヌ・グランジュ/愛蘭みこ
ミッシェル/希波らいとの婚約者で、歌が得意な良家のお嬢様です。
愛蘭みこちゃん、とてもかわいくて歌声も美しい娘役さんですね。
目も耳も幸せでした。
オクターヴ/永久輝せあを心配したり元気づけようとするのですが、そこに色気めいたものがまったくないのが天使あるいは聖母のようですし、
ただ流されるのではなく自分なりの信念をきちんと持った女性でもありました。
下宿の一見ふしぎな住人たちにもお菓子を差し入れたり、当たり前のようにそうしたことができる女性で、オクターヴ(と姉アンブル)からしたらミッシェル同様に痛いほど眩しかったことでしょう。
幸せいっぱい、ミッシェルを愛しているのが伝わってきましたし、きっとこれから2人は幸せになるんだろうな…と予感させてくれて、
それがオクターヴとアンブルの先行きのどろりとした不透明さと対照的だな…と感じさせてくれました。
◆ジャコブ爺/一樹千尋
オクターヴの下宿先の、舞台化粧で度肝を抜かれた人物の1人です。
変貌ぶりに本当にヒロさん(一樹千尋)なの!?と驚きましたし、
印象的な声も台詞回しもたしかにヒロさんなのにこれまで聞いたことのないようなもので「ヒロさんだけれど本当にヒロさんなの!?」となりました。
「桜嵐記」の後醍醐天皇の怪演、声のおそろしさにも圧倒されましたが、まだまだ知らないヒロさんがいることを知りました。すごかった…。
◆フェロー男爵夫人/春妃うらら
クロエの女友達で、ときに物見高いところもありつつ自分の心のままに自由に振る舞っている女性です。
それが台詞から、立ち居振る舞いから自然と伝わってきて、「はいからさんが通る」の青江須磨子役もとても魅力的でしたが、巧いなあとあらためて思いました。
◆エリーニュス ティーシポネー/咲乃深音
幕開きはゆうきちゃん(咲乃深音)の高く澄んだ、美しい歌声から始まります。
すばらしかったです。
舞台化粧がものすごく独特なのでどなたなんだろう…と最初はわからなかったのですが、幕間にプログラムで把握し、2幕の歌声にも酔いしれました。
役付きの多さに対して自分の目が足りませんでしたが劇場で見ることができて幸せでした。
すばらしい公演でした。
読んでいただきありがとうございました。
押して応援していただたらうれしいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓