観劇の感想

花組「巡礼の年」主な役たちの感想(柚香光・星風まどか・水美舞斗・永久輝せあ)

こんばんは、ヴィスタリアです。

宝塚大劇場で花組「巡礼の年/Fashionable Empire」を観劇してきました。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた「巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」の主な役たちの感想で、作品の内容に盛大に触れています。

フランツ・リスト/柚香光と少年リスト/美空真瑠

フランツ・リストが馴染みがいいですが、彼の生まれたハンガリーではリスト・フェレンツが名前になることを今回の観劇で初めて知りました。

ラフな金髪のれいちゃん(柚香光)のリスト、とってもかっこよくてパリの”サロンの帝王”として君臨しもてはやされ数多の女性の心を奪っていたのも納得です。

一方で自分は天才ではないと自らを傷つけるようにめちゃくちゃな生活を送り、心配する友人のフリデリック・ショパン/水美舞斗らを遠ざける破滅的で退廃的な荒れた雰囲気が色っぽいのなんのって。

色っぽさは幕開きのジョルジュ・サンド/永久輝せあとのシーンにも大いに発揮されており、オペラグラスを下げられませんでした。

れいちゃんの芝居はその人物の呼吸、息づかいがまざまざと伝わってきて歩き方も立ち居振舞いもその役に染まるところが好きなのですが、
リストが走って捌けるときの、「はいからさんが通る」の伊集院忍少尉の疾走感とも「アウグストゥス」のオクタヴィウスの軽やかさとも違う、何かにとり憑かれて夢遊するように駆けていくのがツボでした。

音楽にのって浮遊するように駆けていく先には彼の音楽の真髄を批評に描き出したマリー・ダグー伯爵夫人/星風まどかがいました。

マリーとのすれ違っていく中でリストが他者からの評価と虚飾に溺れていく哀しさが伝わってくるのには
たまらない気持ちになりました。

初日よりも翌日の公演のほうが声がよく歌も安定しており、れいちゃんが歌うまとは言いませんが、きっと大丈夫…とほっとしました。

ダンスのシーンもあってれいちゃんにしかない軽やかさと美しさにうっとりと見入りました。

少年時代を105期のまるくん(美空真瑠)がすごく巧いと直感的に思いました。

どう巧いのかを言葉にするのが難しいのですが、音楽に愛された童たちがたくさん登場するなかで、まるくんがだけが違う、特別なものがあって、紛うことなきリストの少年時代だとわかるんです。

まるくんは新人公演ではエミール・ド・ジラルダン(本役 聖乃あすか)を演じます。

エミールは大きなナンバーもありますし、まるくんは「The Fascination」で歌声も聞かせてくれてWトリオの常連ですが大いに楽しみにしています。

マリー・ダグー伯爵夫人/星風まどか

ダグー伯爵/飛龍つかさの妻で、ダニエル・ステルンのペンネームでリストの批評をエミール/聖乃あすかの新聞に投稿したことからフランツ・リストとの恋が始まります。

貴婦人の豪奢なドレスに盛り盛りのカツラの星風まどかちゃん、とってもかわいい!
お化粧(特に眉と目元)がショーとはまた違ってお肌がツヤツヤなところが好きです。

批評を書くペンを走らせながら台詞が歌になっていくところがミュージカルらしくて、またまどかちゃんの歌唱の安定感を感じます。

白いカジュアルなドレスでのリストとのおにごっこのシーンもかわいくて和み、一方で現実をしっかりと見つける視線を持つ彼女はやがてリストと袂を分かつことになります。

駆け落ちや夢見心地の戯れ(おにごっこ、あるいはかくれんぼ)は次回本公演「うたかたの恋」に通じますが、この冷静な現実を、そして未来を見据える視線は「うたかたの恋」のマリーとは大きく異なります。

ぐっときたのはプログラムの最後のシーンの説明書きです。

1866年、ダニエル・ステルンは修道院を訪れる。
この修道院で僧職に就いているかついて”フランツ・リスト”として名声を得た男…リスト・フェレンツを訪ねるために――。

最後の場面は劇中のリストとの別れから20年近い年月が経っていますが、マリー・ダグー伯爵夫人でもマリーでもなく、魂を理解しあったダニエル・ステルンとリスト・フェレンツとの再会なのだと思うと、
やや唐突な感じがするのが惜しく、もう少し丁寧に描いてほしいと思うほどにいい場面です。

フリデリック・ショパン/水美舞斗

リストの友人であり、自らに天賦の才がないと自覚しているリストにとって叶うことのない天才としてフリデリック・ショパンは描かれています。

破滅的で享楽的に生きるフランス・リストが「モーツァルトは36歳で天に召された」と夭折を願うような言動をとる一方、リストの叶わぬ天才ショパンが病を得て39歳の若さでこの世を去るのはなんとも皮肉なものです。

ショパンの健康状態を映して青白めの舞台化粧でフランツ・リストを諭すように見守るマイティー(水美舞斗)、とてもよかったです。
好きです。

れいちゃんのお披露目公演以降「はいからさんが通る」鬼島軍曹、「アウグストゥス」の軍人アグリッパ、「元禄バロックロック」の敵役コウズケノスケと
物理的に強かったりアクの強い役が続いていましたから、こうした優し気なお役はずいぶん久しぶりなような気がします。

「何のために音楽をやるのか」とリストに柔らかく、しかし真髄に切り込むような問のまっすぐさ。

恋仲のジョルジュ・サンド/永久輝せあとの関係を匂わせるような、けむに巻くような台詞は余裕のなかにわずかな嫉妬があるような感じが好きです。

マリーと駆け落ちしたリストをジョルジュ・サンドが追いかけ、サンドのことをショパンが追いかけるところですね。

リストとサンドが「男と女に魂をわけあった」同志的な関係で描かれるので、そこに静かに対峙するショパンの対照的な静けさ、清らかな水が流れていくような涼しさが作品の陰影を深くしていたと思います。

ジョルジュ・サンド/永久輝せあ

生田先生は「CASANOVA」(2019年花組)に続いてトップスター、2番手スター、そして女役を任せた男役スターの三角関係を描きました。

こういうのお好きなのかしら。
生田先生、私は好きですよ…リストとショパンとサンドの分かちがたい、お互いにしかわかり得ないもののある関係(と、思わず呼びかけたくなるくらいです)。

ジョルジュ・サンドはこの作品の裏ヒロイン――かどうかはわかりませんが、自分にとっては間違いなくもう1人のヒロイン、これ以上なく魅力的なキーパーソンでした。

一番印象に残り、そして一番好きな役かもしれません。
ジョルジュ・サンドひとこちゃん(永久輝せあ)がこれまで演じてきた役の中でも好きな役になりそうです。

赤いベルベットのスーツに黒いウェーブがかったおろした髪(ほかの女性たちは長い髪を結い上げているます)、深紅の艶やかな口紅に加える煙草のなんと艶やかなことか。

リストと「魂を男と女にわけあった」というほど特別なものを感じ合っていたのが台詞のやり取りのみならず、特にダンスのシーンでのれいちゃんひとこちゃんの並びのよさ、相性のよさからも伝わってくるのも目から幸せです。

幕開きの「おはよう、私の王子様」という台詞もたまりませんでしたが、リストにとって欠くことのできない「野心」「野望」というキーワードがジョルジュ・サンドの口から出てくるのも、ショパンにもマリーにも入り込めないものが2人の間にあるのがわかります。

そんなサンドがショパンを愛していることが込められた台詞もたまらなかったです。

以上、主な配役の感想でした。
長くなりましたので他の魅力的な役については続きます!

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