こんばんは、ヴィスタリアです。
星組「エル・アルコン―鷹―/Ray」千秋楽のライブ配信を視聴しました。
のたうち回るほど観に行きたかったですが今回は諸々の事情で見送りました(涙)
というわけでライブ配信を見ての独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。
なお初演は映像のみ拝見しており原作は未読です。
「エル・アルコン―鷹―」作品の感想
このブログをご覧いただいている方はご存知かと思いますが最近の齋藤先生の作品とは相性が悪いことを自覚しているのですが、
13年前に上演された「エル・アルコン」は原作がしっかりしているからか安心して見ることができます。
後半の詰め込み具合、駆け足具合が気になるものの原作のエピソードが盛り沢山で取捨選択が難しいのかもしれません。
ただ再演にあたり大劇場から梅芸メインホールになって舞台機構が限られたからか、あるいは映像で見ているからか、
幕前芝居が多く、場面ごとがやや説明的で展開がぶつ切りなような気もしました。
劇場で見れば気にならなかったのかもしれませんし、全国ツアーが予定されていたのでセットが限られていることも影響しているのかもしれません。
そういう演出面で気になることはありながらもクセになる音楽とトップコンビが演じるには珍しい関係性に絡まりあったドラマチックな人間関係は見ていて楽しいです。
また今回は別箱公演で出演者が少ないのでバイトも多く、海軍や海賊のなかに娘役さんがいたりと、ちらちらと映るなかで探すのも楽しかったです。
「エル・アルコン」キャストたちの感想
映像で1回見ただけなんで見落とし、見間違いなどもあるかもしれませんが偏愛のままにまいります。
◆ティリアン・パーシモン/礼真琴
2番手時代も黒い役が少なく好青年なことちゃんを見ることが多かったので
宝塚ではめずらしいダーティーヒーローを演じるのがあまり想像できないでいました。
ことちゃんのティリアンはまずヴィジュアルからして最高でした。
黒髪の長髪がかっこよくて、額にかかった前髪や艦上で戦闘シーンでまとめているのもかっこよかったです。
いずれの衣装もよくお似合いでしたが「ロックオペラモーツァルト」とはまるで違う濃赤✕黒の組合せと最後の真っ白な衣装が印象に残りました。
ことちゃんがなんでもできるのは知っていましたが、
好青年からこうした黒い役までなんでもこなす巧さに感服しました。
また「エル・アルコン」はプロローグから歌が続いて芝居に入るので歌が重要だと思っているのですが
歌唱もすばらしくて、
プロローグからソロの「七つの海」、クセになる「ミッション」に聞き惚れました。
初演のとうこさん(安蘭けい)も歌も声もよくて、セリフに強めの節回しをつけているのがとうこさんの声とティリアンという役に合っていました。
今回ことちゃんも節をつけた台詞回しでしたがやりすぎることなく聞き取りやすく、
初演を踏まえながらご自身のティリアンを作り上げるのに繋がっていてよかったと思いました。
ただ黒い、悪い役ではなく、ティリアンの心に昏い炎を灯し野心と野望を内に秘め、
周囲の人間も女性たちも道具のように扱うことができる冷淡さ、残酷さが伝わってきました。
また野心のままに生き野望を果たそうとしているはずなのにどこか刹那的で、
念願のスペイン海軍へ迎えられてからもいつ死んでもいいと思っているような投げやりさを感じました。
特に「レッド、君の負けだ」と嗤いならが目を見開く、どこか正気を失ったような表情は圧巻で、
ティリアンがすれすれの際どいところで生きている人間であるように思いました。
ギルダ/舞空瞳、ペネロープ/有沙瞳との濡れ場は直視できないような艶やかさでありながら恋情を感じさせず、
母イサベラ/万里柚美とのふれあいも心は凍ったままで、
心を完全に許すことのない男性の滴るような色気がありました。
ギルダとの決闘の末に「ウィですか、ノンですか」を問いながら剣をかけたギルダのことを見ていない冷たさが最高でした。
ギルダの懇願を叶えるためにしている行動をみればティリアンの心がどこにあるのかは明確なのに、
決してその思いだけに流されることもない――ティリアンは魅力的なキャラクターですし、
ことちゃんの新たな一面、魅力を見たように思います。
今まで見たことちゃんの役の中で一番好きかもしれません。
◆ギルダ・ラバンヌ/舞空瞳
フランスの女海賊を率いる強く美しいリーダーです。
かわいいなこちゃんのニンではないと思うのですがそんなことは何の問題でもないくらい、ギルダとして力強く生きていました。
彼女のバックボーンは完全には明かされませんが誇り高く、それなりの身分であろうことが「私の島だけは侵さないでほしい」
という訴え、演技、気高さからも伝わってきます。
そんな彼女がなぜ海賊となりそれも女ばかりで海賊団を結成することになったのか気になるところです。
なこちゃんの等身バランスがすさまじくて本当に少女漫画から抜け出てきたようで、
特に濃紫色のドレスの腰の後ろの膨らみ具合とのバランスがすごかったです。
ティリアンに言われるままに潔くドレスを脱いでみせますが顕になった肩~腕のなんと細く筋肉で引き締まっていることか。
なこちゃんは日々の鍛錬とダンスによるものでしょうけれど、
女海賊として剣を振るい身体をもって命を懸けているのが重なりました。
脱げといわれれば潔く脱いでみせるのに、ティリアンを「ノン!」と強く拒絶するときの引きつった表情のリアルさがすごくて印象的でした。
新しい世界でようやく平穏を得たギルダです。ティリアンとお幸せに…。
◆ルミナス・レッド・ベネディクト/愛月ひかる
こちらもニンではないけれどそれを問題としない御方です。
学年、これまで演じてきた役からするとティリアンとレッドは中の人が逆の方がしっくりくるのかもしれませんが、それではおもしろくありません。
ことちゃんが新たな一面を見せてくれたように、
愛ちゃんも最近あまりない役――前途洋々の若者を見せてくれました。
レッドが海賊になってからは想像ができたのですが、豪商の御曹司でオックスフォードの法科で学んでいる何も知らない学生時代をどう演じられるのかが気になっていました。
そこには瞳を夢と希望できらきらさせて、未来は明るいことが伝わってくるまっすぐな青年がいました。
海賊となってからもそのまっすぐさは失われず、等身大として存在している巧さを感じました。
また金髪のロングヘアが美しくてお似合いでした。
色濃い役が多いですけれど正統派な愛ちゃんももっと見てみたいです。
◆ペネロープ・ギャレット/有沙瞳
プロローグで襟元の詰まったすみれ色のドレスを着ていて、傷の目立つ胸元を晒しているギルダと対照的でした。
淡い色のメイクに細かく編んだ金髪、繊細にきらきらと輝くアクセサリーがみほちゃんの美しさにとてもお似合いでした。
何の苦労もなく育ってきたことが自分の不満、心に浮かんだことを隠そうとしない表情や心にもない言葉に滲んでいます。
ペネロープは哀しい女性だとみほちゃんの演技を見ていて思いました。
何もかもが自分のものになると疑いもなく生きてきて、おそらく恋も愛もよくわかっていなくて、
ティリアンへの思いに気づいたときにそれをまっすぐに伝える術を知らず、かなり極端な行動に出て言葉を発します。
その行動が唐突に思えるくらいなのですが、ペネロープがこれまで生きてきた道をみほちゃんの演技は想像させてくれるんです。
ティリアンに「笑って」と言われるところでとんでもないことが起きていますが、困惑しながらも極わずかに笑みを浮かべようとするのが見えて、
こういう繊細な表現をするみほちゃんが大好きだとあらためて思いました。
またティリアンに押し倒されながらの「女は抱かれていればいい」のときカメラワークで
ペネロープの表情や身体の動きは見えなかったのですが劇場だったらどう見えただろうと思いました。
きっとどきどきしながらオペラグラスでロックオンしていたでしょう。
◆ジェラード・ペルー/綺城ひか理
おいしい役でありながら難しい役だなとあらためて思いました。
出番が飛び飛びでその度に状況も変わり、かつ短い出番のなかで伝えること、表現することの多い役なのだと思います。
後年になってからのソロはあかさんの美声にひたることができました。
ショーでもソロが増えて大活躍でしたが次の「ロミオとジュリエット」でたっぷり聞けることを期待しています。
◆エドウィン・グレイム/天華えま
ときに生徒さんが格段の進化と成長を見せ、いわゆる「化ける」ことがありますが、今回ぴーすけはまさに化けたのではないでしょうか。
今回もっとも芝居に心惹かれたのはぴーすけだったかもしれません。
まずエドウィンの登場シーンから人を疑うことのない朴訥さ、何も苦労をしたことのない温室育ちののんびりした感じがよく出ていて、
ティリアンとの対比が際立っていました。
その後の酔っぱらい具合は酒に溺れているだらしなさと緩さ、
2回目は相当にまずい酒であることが伝わってきて巧さに舌を巻きました。
ペネロープとの関係性の変化、復讐を誓ってからの行動力に
「そうだ、彼も軍人であり名誉を大切にする階級の人間なのだ」と思い出させるのもエドウィンという人間を際立たせていたと思います。
そしてショーでは歌が夏に東京宝塚劇場で観劇したときより格段に進化されていて、相当努力されたのではと感動しました。
客席、カメラを捉えながらのウィンク連発も最高でした。
◆シグリット・シェンナ/音波みのり
女っぽさ、おしろいの匂いがしそうなくらい濃ゆ~~~い愛人らしさが出ていてさすがの存在感です。
おそらく出る度に髪型とアクセサリーを少しずつ変えていたのではないでしょうか(違ったらすみません)。
いつもはるこさんのヘアスタイルとアクセサリーのセンスを楽しみにしているのですが
ギラギラ輝く派手で大きめなアクセサリーがこの役にぴったりでした。
ティリアンに迫りながら這わせる手の使い方といったら。
男役さんは手が重要といいますが娘役の手も雄弁です。
◆ジュリエット・グリンウッド/桜庭舞
おいしい役をしっかり、存分に演じていました。
お花畑をふわふわしている登場シーンに「乙女心がピンクに染まる」は強烈に印象に残りました。
その後レッドたち海賊たちとの間でジタバタしているときの仕草がかわいくて、コミカルで、本当に上手だなあと思いました。
同期のパーシモン卿/朱紫令真が演技もアドリブ(?)の歌も頼もしい存在感を放っており、
本当にスケベな愛人を囲んでいる年上の貴族にしか見えなかったです。
◆キャプテン・ブラック/天飛華音
今回のキャスティングは抜擢といっていいくらい大きな役かつおいしい役だと思うのですが、カノンくんもまた存分に演じ見せてくれました。
エネルギーが弾けているのが画面からも伝わってくるようでした。
黒尽くめで長髪で、顔に大きな傷があって、キャプテン・レッドを渡り合うのは学年差を感じさせない存在感でした。
◆ニコラス・ジェイド/咲城けい
ティリアンの真の相手役では!?というくらい常に傍に控え付き従うこの役は抜擢でしょう。
すべての憧れを夢を主人のティリアンに託していることが居方からもティリアンを見つめる視線からも伝わってきました。
崇拝と尊敬を超えるくらいの強い思いでティリアンを見ていることと従者として出過ぎないバランスもよかったと思います。
◆ティリアン(少年)/二條華
少年役ですが大きな役で、芝居心もあり歌もよかったです。
とても自然に見えました。
星組パッション!千秋楽恒例の何かとなるか
ショー「Ray」の後、副組長デビューとなったなっちゃん(白妙なつ)から「感染が拡大するなかで」と観客に感謝の言葉が述べられたことにはっとしました。
短い公演期間の間に感染者数は過去最高を更新し続け不安の大きな中で迎えた千秋楽でした。
専科に組替えされたユズ長(万里柚美)の次の公演花組バウ「PRINCE OF ROSES」があたたかい言葉で紹介されました。
また来週ドラマシティで初日を迎える「シラノ・ド・ベルジュラック」と次の本公演「ロミオとジュリエット」の紹介がありました。
そしてウィットを含んだ言葉でことちゃんが紹介されました。
お稽古をしながら皆で「8日間か、慣れた頃には終わってしまう、むしろ慣れる前に終わってしまう」と話しておりましたが
ようやくバックヤードのこと、自分のペースがつかめてきました。これからがんばろう…と言いたいところですが本日こうして千秋楽を迎えることとなりました。
寂しいな、もっとやりたいと思える作品に出会えたことが幸せです。たくさんのお客様から笑顔、拍手にたくさんの幸せをいただきました。
また星組はパワ―アップして戻って参りますので轟さん率いるドラマシティ公演、次の本公演もよろしくお願いいたします。この公演で明日がもっと楽しい一日になりますように。
本日は本当にありがとうございました。
ことちゃんのご挨拶のなかで全国ツアー恒例のご当地出身者の紹介として
大阪府出身の生徒さん4名が紹介されました。
また2回めのカーテンコールでは京都府、兵庫県出身の生徒さんも紹介がありました。
「京都府はなかなか行くことがありません。また我々のホームは絶対に行くことがありません」とのことで、
これは全国ツアーが中止となって梅芸公演となったからこその粋な計らいで感動しました。
最後はスタンディングオベーションでした。
私、考えました。星組も千秋楽恒例の何かをやりたいと。
私が「熱いぜ!」と言ったら「星組」と返してください。(中略)熱いぜ、星組!燃えろ、星組!進め、星組!星組、パッション!
で締めたいと思います。
アツい星組らしさがあふれていていいですね。
花組の花組ポーズや月組の大ジャンプのようにこれから星組千秋楽の定番として定着していくでしょうか。
それも含めて次の星組も楽しみにしています。
ヴィスタリアが次に星組さんに会えるのは「ロミオとジュリエット」ですが、今日のライブ配信を見てますます期待が高まりました。
冒頭近くの「プリマス」のアンサンブルにソロもよかったですし各キャストで歌うべき方が歌っていて頼もしく耳福でした。
ことなこ、愛ちゃん、大好きなみほちゃんをはじめすでにキャストの一部も発表になっていますが
最高にアツい「ロミジュリ」を楽しみにしています。
読んでいただきありがとうございました。
はげみになりますので応援していただたらうれしいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓