こんばんは、ヴィスタリアです。
公演が再開された東京宝塚劇場で星組「ロミオとジュリエット」A日程を観てきました。
ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。
役替わりを中止に、また作品の内容に触れています。
A日程はタイミングが合わず配信が見られなかったのでこれが初見です。
すでにB日程を3回(観劇1、配信2)見ているので比較するような表現をしているところがありますが、
A,Bの優劣をつけるものではありません。
どちらも違ってどちらもいい、そんな星組「ロミオとジュリエット」です。
星組「ロミオとジュリエット」公演再開直後の気迫がすごかった
5月12日に公演再開した翌日の観劇でした。
ことなこ(礼真琴・舞空瞳)はじめ集中力が高く、気迫のこもった舞台でした。
それに応える客席も熱く、場面を追うごとに手拍子が盛り上がっていくのを感じました。
フィナーレのロケットの手拍子、デュエットダンスの拍手がひと際大きく感じ
無観客ライブ配信で手拍子、拍手が入るところで無音だったのが頭をよぎり、この感動が届きますようにと精いっぱい拍手・手拍子をしてきまいた。
気迫がすごいと感じたお1人がロレンス神父/英真なおきで、
歌唱の安定、神父様の安心感はもちろんのことじゅんこさんからビリビリとした緊張感の高まりを感じました。
また乳母/有沙瞳がジュリエット/舞空瞳から預かった指輪をロミオ/礼真琴に渡しに来る場面での3人の歌のかけ合いが繊細になっていて、かつエネルギー値が高くてすごかったです。
力づけるように背中を押す乳母の歌声を受けて、
まだ揺らいでいるロミオの歌い出しの繊細さの対比が絶妙すぎて息をのみました。
A日程のみ出演のなかで注目しているちなちゃん(瑠璃花夏)がモンタギューの女でキレッキレに踊りまくっていたのもうれしかったです。
小柄な体で、でも上半身の動きがしなやかで美しく一際ダイナミックで目が吸い寄せられます。
ちなちゃんは体の動かし方が美しいので
治安の悪いヴェローナの若者の気だるげな立ち居振る舞いをしていても美しいんです。
「綺麗は汚い」ではベンヴォーリオ/瀬尾ゆりあと楽しそうに絡んでいてうれしかったです。
下手側です。
これからA日程をご覧になる方はぜひ注目してみてください。
A日程は退団される生徒さんが多くいらっしゃいますが
特にまめちゃん(桜庭舞)のキャピュレットの女が妖しく艶めいた美しさではっとしました。
かなり細く眉を描いておいでですがこれがまた雰囲気出ていて素敵です。
まめちゃんはダブルトリオでとっても楽しそうな笑顔で歌っていたのも印象的でした。
歌うま娘役さんで新人公演ヒロイン、エトワールもつとめてきて、退団公演に全日程出演できないことが残念でなりません。
はなむけにBとAでエトワールをわけてもよかったのでは…と思いますが、
エトワールで美声をたっぷり聞かせてくれる小桜ほのかちゃんも役不足ですから難しいかもしれませんね。
今回役替わりがあったのは男役さんばかりですが、「ロミオとジュリエット」は娘役の役どころが非常に少ないので
キャピュレット夫人、モンタギュー夫人、乳母も役替わりがあってもよかったのではと思う気持ちもあります。
ティボルト/愛月ひかる
B日程の死役がすごかった愛ちゃん、ティボルトもすごかった!です。
放つオーラとティボルトのギラついている、大人ぶっていても抑えきれないものが溢れていて圧がすごくて
愛ちゃんが舞台にいると空気が変わるのがわかります。
特に舞踏会のシーンはスポットライトだけでなく内側から発光しているのがわかって目が釘付けになってしまいました。
こんなこと書いたらすみれコードに引っかかってしまうかもしれませんが(不快に感じられたらごめんなさい)
かなり鬱屈していて性的なトラウマがあるのでは?という印象を受けました。
(「初めて女を知ったのが15の夏だった」というのはティボルトが隠し事をしている――彼が語れる範囲のことを語っているのではと勝手に思ってしまいました。)
叔母のキャピュレット夫人/夢妃杏瑠が色目を使い粉をかけてくるのを心底嫌悪しているし、
キャピュレットの女たちがしなだれかかってくるのも煩わしく、
「実の叔母と怪しいとか」とからかわれるとブチ切れてしまう。
だからこそジュリエット/舞空瞳への想いは純粋で神聖化されていると感じました。
ジュリエットを思って歌うのがとても丁寧で優しかったのも印象的でした。
ジュリエットがロミオと結婚して怒っているのはロミオへの嫉妬だけでなく
彼にとっての聖域であるジュリエットが結婚したことそのものにもありそうです。
薔薇の花がモチーフとして登場しますが、キャピュレット夫人がティボルトに投げかけたものを彼は「落とし物だ!」とはねのけるのに、
ジュリエットは(ティボルトには与えることを思いつきもしなかったであろう)薔薇をロミオに愛とともに託します。
この薔薇の使い方が痛いほど残酷に感じられたのは愛ちゃんのティボルトだからでしょう。
ベンヴォーリオ/瀬央ゆりあとマーキューシオ/極美慎
B日程のベンヴォーリオ/綺城ひか理、マーキューシオ/天華えまといるロミオ/礼真琴は年下で、
かわいがられている末っ子という印象を受けました。
A日程のベンヴォーリオ/瀬央ゆりあ、マーキューシオ/極美慎とにいるロミオは年下という感じがせず、
3人がフラットにわちゃわちゃしていると感じました。
完全に個人的な偏見ですが王道かつストレートなのはAの配役なのかなと思いました。
(もちろんどちらがいいという話ではありません)
◆ベンヴォーリオ/瀬央ゆりあ
銀髪の短髪がお似合いでとってもかっこいい!
これまで「龍の宮物語」清彦の黒髪が大好きだったのですが色の入った短髪もいいですねえ。
そして歌唱の進化を感じました。
「どうやって伝えよう」のソロ、とてもよかったです。
人柄のよさと器の大きさが感じられて、皆から一目おかれるのがわかります。
◆マーキューシオ/極美慎
鬱屈したり彼のなかで抑えきれないマグマがあるというよりは、
まっすぐで直情ゆえにティボルトとぶつかってしまう少年という印象を受けました。
まっすぐで素直だからこそロミオがジュリエットと結婚したときを知ったとき、
自分(たち)の大好きなロミオが自分(たち)だけのものでなくなったこと、ロミオが何も言わずに行動したことに
本気で腹を立てているような気がしました。
死/天華えま
Bのぴーすけの存在そのものが凶刃のようなマーキューシオが大好きなのですが、
死もいいですねえ。
まず踊りがすばらしい!たしかな技術がある上での表現が光っていました。
また死者の魂を掌にうけて飲み込むような仕草が不気味かつ扇情的でさえあって印象的でした。
役替わりの中で一番想像がつかなかったのが一言も喋らない愛と死だったのですが
こうも違うのかと目から鱗でした。
愛ちゃんの死は明確な意思と強い興味を持ってこの悲劇に介入し物語の糸をひいている一方、
ぴーすけの死は冷え切った無関心さがあって、死を捕食できればするけれど、積極的な介入ではなく手慰み程度にかき回していると感じました。
同時にぴーすけの死は、恐ろしく畏怖するものというよりも
生きている者のすぐ隣に当たり前にあるものとして存在しているように思いました。
「ロミオとジュリエット」は14世紀のイタリアのヴェローナが舞台で、ペストが大流行した時代でもありますから
いまよりもずっと死は身近なところに在ったのではないでしょうか。
死に相対する愛もB日程のきさちん(希沙薫)は悲劇を起こそうとする死/愛月ひかると強く対立し、
悲劇から恋人たちを守ろうと愛を降り注ぎつづけていました。
ぴーすけの死に冷ややかな無関心さがあるからこそ
愛/碧海さりおは対立というよりも1枚のコインの裏表、分かちがたいものとして存在しているように思いました。
AもBもこの”死”だからこそこの”愛”なのだというのを感じることができてとても興味深かったです。
1回限りの観劇であっちもこっちも見足りないですが、
これが少し早いmy楽となりました。
星組のみなさまが、退団されるみなさまが大千秋楽まで無事に観客のいる劇場で公演できますように。
読んでいただきありがとうございました。
押して応援していただたらうれしいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓