観劇の感想

「霧深きエルベのほとり」誰も悪くないのに切ないキャストたち

おはようございます。ヴィスタリアです。

星組「霧深きエルベのほとり」のキャストごとの感想です。

感想を書きながら「霧深きエルベのほとり」という作品の懐の深さをあらためて感じました。

「この人は本当はいったいどんな気持ちでいたんだろう」「あの人はこのセリフをどんな気持ちで聞いていたんだろう」と思い出しては胸が苦しくなることばかりだったのです。

深い言葉と考え抜かれた場面で人物たちの感情がていねいに描かれているから、その気持ちに寄り添ったり、あるいはその後を考えたりができるのかなと思いました。

カール・シュナイダー/紅ゆずる

1983年の花組の映像で順みつきさんのカールを見てセリフがほとんど変わっていなかったことから、カールは一つの型があるような役なのかもしれないと思いました。

粗野な言葉、下品な立ち姿、トップスターがするこんな役、ほかにあるでしょうか。

べにーさん(紅ゆずる)はそのカールの型を自分のものにした上で、カールの傷つきやすくて純粋な心を表現していると思いました。

ヴェロニカにわあわあと本気で泣きつくところ、またヴェロニカがマルギットに「ゲスな自分が…と泣いていたよ」と伝えたセリフが痛いくらい辛かったです。

カールはマルギットが好きで好きで、でも自分ではマルギットを幸せにすることはできないとわかっている。
自分にはどうすることもできないの嫌になるほどわかっているのが伝わってきました。

カールはすごくピュアな男性だと思いました。

シュラック家を飛び出してから「もし文士だったら」と一人称の言い直すシーン もよかったですし、結婚披露パーティーの「カサンブランカのフカール」というおもしろくもない話をわざとしている演技もよかったと思います。

べにーさんのコメディセンスならおもしろくして客席をわかせることはお手の物でしょうけれどここはおもしろくなってはいけないところです。

またアンゼリカとの過去を思わせるセリフ、彼女とのやりとりも切なかったです。

マルギットについて「初めて女を振った」とも言っていて、カールはモテるけれど女から去っていくばかりの男なんだなと思いました。

べにーさんも泣いていて熱演でした。

マルギット・シュラック/綺咲愛里

白いふわふわの、レースたっぷりの衣裳に天使のような金髪の巻き毛のロングヘアのあーちゃん( 綺咲愛里)はとてもかわいかったです。
世間知らずな良家のお嬢様にぴったりでした。

カールとの結婚披露パーディーでの邪気のない笑顔の愛らしさが、「悪気がないのが一番たちが悪い」と思わずにいられず、しかしこうも純粋なかわいらしさを見せられると…ああ、切ないです。

ピアノはあーちゃんが実際に弾いておられるのですね。
ヴィスタリアはその昔ピアノを習っていたことがあり、難しい曲なのであーちゃん、すごいなあと思いました。
(ピアノといえばマリコさん(麻路さき)の「国境のない地図」で奇しくも星組ですね。)

ただ一つ、発声が気になりました。
裏声で話すときと地声で話すときの差がかなりあって一つのセリフの中でそれを行ったり来たりしているような気がしました。

どちらか話しやすいほうの声ではだめなのかしら?とヴィスタリアは思うのですが、これがあーちゃんの話しやすい声なのかもしれません。

フロリアン・ザイデル/礼真琴

聖人君子とは彼のような人をいうのでしょう。
いったい何を考えているのか人間ができすぎていて気味が悪いくらいの聖人です。

愛している女性が他の男と結婚を披露するというパーティーでどうしてあんなふうに振る舞うことができるんでしょう。

しかしこのときのフロリアンは心の底でカールのことをどう思っているのか、下に見る気持ちが一片もないと言い切れるかどうか、ことちゃん (礼真琴)の演技はそこを考えさせてくれる見事なものでした。

フロリアンは難しい役だと思うのですが、ことちゃんにできないことはないのだなと思わせる説得力のある演技
でした。

マルギットに「ピアノを弾くのをおやめ」と諭すところも喋らずに背中を見せている間も雄弁でした。

カールに手をあげる場面ではただカッとなって殴っているのではなく、「自制しなければいけないとわかったいるのに止めらない」とわかっていて手が出てしまったような、殴った瞬間には後悔しているような心が伝わってくるようだと思いました。

正装に白手袋もすてきでしたが、マルギットと一緒に港にカールを探しに来たときの誂えであろう仕立てのよいロングコート姿の着こなしが輝くようなかっこよさでした。
フロリアンの育ちのよさ、余裕が感じられ、男役としてかっこよかったです。

幕開きのビア祭りの軽やかでキレのあるダンス、たしかな歌もすばらしかったです。

ことちゃんの圧倒的なパフォーマンスを今後も楽しみにしています。

シュザンヌ・シュラック/有沙瞳

大好きなくらっち(有沙瞳)、今日もかわいかったです。

良家のお嬢様の品のよい美しさがくらっちにぴったりでした。
久しぶりに娘役のなかの娘役といった役のくらっちが見られてうれしかったです。
フロリアンに気持ちを告げた後のセリフもよかったです。

ところで彼女の幸せはどこにあるんでしょうか。

カールが去った後、マルギットは気持ちが落ち着いたらきっとフロリアンと結婚してしまうのではないでしょうか。
そのときシュザンヌがどうなってしまうのか気がかりです。

トビアス/七海ひろき

七海ひろきのお兄様の最後の男役、かっこよかったです。本当に、最高にかっこよかったです。

デニムのおしゃれな衣裳が長い手足のスタイルによく合い、帽子やパイプの小道具の使いこなしもさすがです。

トビアス船員仲間のなかでもちょっとお兄さんで、言うことはびしっと言う厳しさもあるキャラクターだと感じました。

そんなトビアスがパイプを片手に「おまえはわかっているのか」と言いたげが厳しい表情をしているのがかっこよくてすてきでした。

ベティ/水乃ゆりとの水切りの場面のほのぼのとした愛は微笑ましく、マルチン/瀬央ゆりあではありませんが「うらやましい!」(ベティが)でした。
(ふだんあまりそういう目で宝塚歌劇を見てはいないのですが今回ばかりは許してください。)

しかも今回ヴィスタリアは上手側の席だったのでトビアスとベティの結婚のキスシーンがよく見えてキャー!!でした。
トビアス、ベティ、どうか末永くお幸せに。

またトビアスの旅立ちの場面のセリフが最高にかっこよかったです。
「諸君の航海の安全を祈る!あばよ!」

「あばよ」だけでなく「諸君の…」があるのが尚のことよかったです。
書いていたら思い出して涙が出そうになってしまいました。
劇場ではもちろん涙がボロボロでした。

ウエクミ(上田久美子)先生、すてきな場面を、爽やかに泣ける場面を用意してくれてありがとうございます。

アンゼリカ・ロンバルト/音波みのり

はるこちゃん(音波みのり)は今回もいいお役ですばらしい演技でした。

忘れ物を取りに来たといってカールと話す場面は胸が痛くなりました。
だってはるこちゃん、カールを追いかけるように銀橋に出てきたとき目にいっぱい涙を湛えていたんです。

カールとマルギットが出会ったときのセリフからアンゼリカがどれだけカールにとって大切な存在であったかがわかります。
そのアンゼリカがいまはカールが馴染めない上流階級の貴婦人となっていることが切ないですし、菊田先生の作品は考え抜かれていると思いました。

はるこちゃんはドレスの着こなし、仕草、なにをとっても美しくショーではダンスもよくてアクセサリーや鬘のセンスもピカ一でした。
朱色っぽい赤系とゴールドのドレスがとてもすてきでした。

娘役も女役もできて歌もダンスもセンスもよくて、渚あきさんのようなことが起きないかしらとヴィスタリアは思ったりします。

ヨゼフ・シュラック/一樹千尋

ヴィスタリアは80~90周年ころに第一次ヅカファン生活を送っていたのでヒロさん(一樹千尋)とじゅんこさん(英真なおき)が星組に出演というだけでうれしくてたまりません。
ハッチさん(夏美よう)もいたら…豪華すぎますね。

言葉は厳しいのですが娘のことを思っている父親を好演していました。
ヒロさんはお声が耳に心地よいです。

ヴェロニカ/英真なおき

じゅんこさんの女役、星組「エリザベート」のルドヴィカを思い出しました。

ヴェロニカはいい役、いい女ですね。
カールがなぜヴェロニカに頼みごとをするのかわかる、そんな情の厚い女です。

酒場でカールだけでなくたくさんの船乗り、そして一緒に働く女たちの気持ちを受け止めてきたのが想像できます。

「ドン・ジュアン」の厳しい父親役もできれば情の厚い女役もできる、貴重な専科生さんだと思います。

ベティ/水乃ゆり

うんと訛ったしゃべり方、おかしみのある走り方など工夫していました。

新人公演はヒロインのマルギット役で今後活躍されるのかなと思いました。
お顔立ちもかわいくて初々しかったです。

アドリアン・エルメンライヒ/極美慎、ローゼマリー・マインラート/星蘭ひとみ

上流階級の若いカップルです。
ローゼマリーは2歳のときからアドリアンと婚約させた、と彼女の母親が誇らしげに言うセリフがあります。

それがとても自然に見える育ちのよさ、品のある極美慎くんと星蘭ひとみちゃんでした。

お2人のセリフはあまりないのですが役に合っていて存在感がありました。
なんといっても美しかったです。

客席下りのこと

ビア祭りやカールとマルギットの捜索で客席下りがありました。

今回通路際に座っていたこともありすぐそばに生徒さんが来ると盛り上がるには盛り上がるのですが、芝居に必要なのかは考えてしまいます。
プロローグのビア祭りはショー的な要素があるのでまだわかりますけれど捜索の場面は必要だったでしょうか。

今後もお芝居で客席下りが多用されることになるのか気になりました。

星組さんの熱演は大劇場の千秋楽まで進化、変化していくでしょうし東京ではどうなっているのか再見するのが楽しみです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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