映像の感想

スカステ「瑠璃色の刻」テレビの前で流れに置いていかれる

スカステでやっと美弥るりかちゃん主演の「瑠璃色の刻」を見ることができました。
 
ヴィスタリアがスカステ環境のある実家の母サラ(ライトなヅカファン)に録画を頼みすぎたせいかHDDの録画リストに3つあり、せっかくなので全部見ました。
なんといってもるりかちゃんの初単独主演作にして東上作品ですからね。
 
見終わってから1つだけ残して削除し、HDDの容量は空けておきましたけれど。
これからも録画をお願いしているものがたくさんありますから。
 
そんなヴィスタリアが3回リピートした「瑠璃色の刻」の感想です。
DWilliams / Pixabay

 

3回見はしたものの、3回目でも話の流れについていけず置いてけぼりをくらいました。
 
話の流れというより人物たちの感情、セリフ、あるいは時間の流れというべきかもしれませんが、唐突なことが多くて「なんでそうなるんだろう」と疑問に思うところが多かったです。
 
平民のシモンとジャックが貴族になりすましてヴェルサイユの社交界に紛れていい生活を送ってほどなくして、フランス革命が勃発します。
 
平民たちが蜂起するきっかけの一つ、ネッケル罷免をきっかけにシモンとジャックは別の道を選ぶことになります。
シモンは貴族として、ジャックは国民議会に平民として参加するのです。
 
このシモンの変わり身、平民を切り捨てるような言動がつい最近貴族になったばかりなのに、ずいぶん簡単に変わってしまって戸惑いました。
これだけならまだ、貴族の暮らしに執着していうのかなと思うのですが、マリー・アントワネットの肩をずいぶんと持つのは理解に苦しみました。
 
ジャックはジャックでロベスピエールに「シモンは俺の手で…」というようなことを言いますが、いくらすれ違ったとはいえ、ずっと一緒に旅まわりをしていたシモンに対してなぜそこまで思いつめてしまうのかよくわかりませんでした。
 
もっともわからなかったのはラストシーンです。
シモンがジャックに「アデマールのことだけは助けてほしい」と言いますが、アデマールは平民ですし処刑リストに入っているとも思えません。
王宮の舞踊団で踊っていたから貴族側とみなされるかもしれないと、シモンがロベルピエースの粛清ぶりを予言してアデマールに危険が及ばないよう頼んだということなんでしょうか。
 
そして3人で歌い、この3人の並びのよさに浸っているうちに幕がおります。
 
この後3人はどうなるんでしょう。
オープンエンディングとするならもう少し予感できる材料を見せてほしかったです。
(たとえばいま雪組が東宝でやっている「凱旋門」 も歌で幕切れとなりますが、その後なにがおこるかを予感させる流れ、演出、歌い方になっています。)
 
「瑠璃色の刻」はなにも予感させてくれない演出だったので全然わかりませんけれど、としさん(宇月颯)のロベスピエールの激しさからすると到底許されないように思います。
シモンはつかまったら裁判なしで処刑されるでしょう。
 
 

キャストごとの感想

シモン、サン・ジェルマン/美弥るりか
るりかちゃんがようやく果たした主演だと思うと開演アナウンスに感動しました。
「アンナ・カレーニナ」では生で聞けたいとヴィスタリアは強く思いました。
 
この手の妖しげな人物はるりかちゃんはお手の物だと思いますが、素で妖しいのではなくシモンがサン・ジェルマン伯爵になりきっていることで生まれるアンビバレンツがほかの役とは違うと思いました。
 
そのおかげで冒頭のシモンとジャック(月城かなと)との蓮っ葉な言葉のやりとり(「まずった」とか「すっげー!」とか)の妙味を楽しむことができますし、過去の強い否定が印象的でした。
 
「自分がサン・ジェルマンなんだ、サン・ジェルマンになろう」、と平民の旅まわりの芸人としての過去をなかったものにしようとして、シモンの言葉を途中で遮っるときの表情などがそうです。
 
また革命がなしとげられた後の、舞台の奥から遠くを見やるような、絶望をまとった表情がよかったです。
 
るりかちゃんの歌とダンスでこの舞台の世界に引きこまれると思ったシーンが多く、主演ならではだと思いました。
特に2幕の幕開けのダンスが情緒的でよかったです。
 
 
ジャック/月城かなと
いつも思いますけれど、れいこちゃん(月城かなと)の正統的な美貌は惚れ惚れする美しさです。
 
演技は、貴族として生きることはできないと決意し、シモンとの訣別を決めるところが印象に残りました。
1幕の上着を脱げ捨てるところ、2幕のロベスピエールとの対峙です。
 
バスティーユが陥ちた後の野性的なギラついた表情もかっこよかったです。
 
 
アデマール/海乃美月
アデマールは「ひかりふる路」の真彩希帆ちゃんと逆な立場なわけですね。
 
天覧舞台で踊るバレエがうまくて目を見張りました。
これだけ踊れるのならポワントで踊ってほしかったような気もします。
 
フィナーレのデュエットダンスも美して、るりかちゃんとの相性のよさも感じさせ、夢見られました。
先日のレビュー本で、海ちゃん(海乃美月)は思い入れのあるドレスにこのデュエットダンスの白いドレスを挙げていました。
 
歌もまあ…技術や声量はもっと、というのは望みすぎかもしれませんが、情景が目に浮かぶような、心のこもった歌唱がいいと思いました。
 
城でシモンとモリエールの一場面のセリフを口ずさんでいるシーンに漂う寂しさが印象に残りました。
 
 
ロベスピエール/宇月颯
テオドールはさすがの演技力です。
 
ロベスピエールは革命に燃える若き闘士として描かれており、としさん(宇月颯)
の背後に燃立つ炎が見えるようだとヴィスタリアは思いました。
 
ダンスのすばらしさは言うまでもありませんが、タメの余裕と一つひとつの決めの美しさに感嘆するばかりです。
銃を持って踊るところなど、その銃の角度がいつ見てもとしさんは完璧なんです。
 
歌もよくて、革命闘士たちの歌は迫力がありました。
 
としさんの映像を見るたびに好きになります。
(今回の帰省で「MOON SKIP」も見たのですが、としさんがしきりと「覚えてください」と紹介していた組子さんが活躍していたのにうれしくなりました。)
 
 
マリー・アントワネット/白雪さち花
すばらしい演技と歌です。
 
アデマールとサン・ジェルマン伯爵がアントワネット側につくことを選んだ説得力は、さちかねえさんの演技と歌が大きなより所になっていると思いました。
 
ソロの歌、退場していくときの脚の運び方には心が動きました。
 
 
ルイ16世/光月るう
不安げで自信のなさげな君主の風情が落ち着きのない挙動でよく表現されていたと思いました。
 
 
ネッケル/輝月ゆうま
安心安定のまゆぽん(輝月ゆうま)はさすがのうまさです。たしかな演技と迫力で舞台に重厚感が出ます。
こういう芸達者な生徒さんがいると舞台が締まります。
 
歌もよかったです。
 
 
 
「瑠璃色の刻」が上演されていたときヴィスタリアはまだヅカファンではなかったのですが、いまこうして見ると、好きな生徒さんばかりで劇場で見たかったと後悔しきりです。
 
カーテンコールでるりかちゃんがDVD発売が決まったこと、「テレビの前のみなさん」と言っていてうれしくなりました。
 
るりかちゃんのこういうところが好きだと思ったヴィスタリアでした。
 
 
 

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