観劇の感想

月組「ダル・レークの恋」観劇の感想(名作の至上の再演を祝す)

おはようございます。ヴィスタリアです。

赤坂ACTシアターで月組「ダル・レークの恋」を観劇してきました。

すばらしい作品のすばらしい再演に大感動、大観劇でした。

余韻が深くて魂がインドとパリに残されてしまったようで言葉にするのが難しいのですが
書ける範囲でヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想を書いてみます。

なお繰り返し再演されていることもあり作品の内容、セリフなどに触れています。

2021年の「ダル・レークの恋」変わったものと変わらないもの

みなさまの「ダル・レークの恋」はいつからでしょうか。

ヴィスタリアの「ダル・レーク」の恋は1997年星組再演からです。

といっても劇場で観劇したのではなく、上演からわりとすぐにテレビ放映されたのを見たのです。

映像とはいえ宝塚にハマりたてのころで、初観劇の大好きな星組だった上に
深いドラマとセリフ、名シーンの数々に衝撃を受けて強烈に印象に残りました。

2007年の月組再演時はヅカファンをお休みしていたので今回の再演にあたって映像を見ました。

なので今回ようやく劇場で「ダル・レークの恋」を観ることが叶いました。

それもよくぞこのキャストで再演してくれましたと快哉を叫びたいキャストが
うみれいこ(月城かなと・海乃美月)のラッチマン、カマラをはじめ揃いました。

2021年上半期の通うべき作品はこれだ――と発表のときから鼻息荒く思っていたのですが
緊急事態宣言の再発令により座席数半減の超チケット難のなかで手にできたのは1公演だけでした。

一般前売でどうにかく獲得したこの機会を大切に観てきました。

1997年、2007年を担当された酒井澄夫先生が今回は監修され谷貴矢先生が潤色・演出をされています。

2021年版で大きく変わったところ、新たに盛り込まれたと感じたものを挙げてみます↓

・プロローグ、フィナーレが長くなり内容も刷新された

・2幕冒頭のパリのレビューシーンがなくなった

・全編にわたって水の青年水の少女が踊っている

・セリフの場面でもBGMが流れていることが多く、音楽劇のようでもある

・ダル湖の映像が使われている

フィナーレで特筆すべきは新人公演学年以下の生徒さんのみの場面があることです。

これが時間がたっぷりとってある上にピックアップが手厚くて
1~3人くらいで踊り継いでいくんです。

最初はまばらだった手拍子がどんどん大きくなっていって最後は大盛り上りで、
生徒さんたちが輝いていて大感動でした。
思わず目頭が熱くなりました。

(初日から間もない日の公演でしたが手拍子はこの公演から入るようになったと通っているヅカ友さんが教えてくれました。)

新人公演の復活が見通せず、本公演では全日程出演できない生徒さんもいる中での
谷貴矢先生の思いやりある演出に大拍手です。

フィナーレはありちゃん(暁千星)が娘役さんに囲まれて踊ったり
男役さんの総踊りもあり、エキゾチックな雰囲気でとてもかっこいいです。

うみちゃんが男役さんを引き連れてのナンバーは
うみちゃんが強い美しさを放っていてカマラ姫とは違うプリンセスでシビれました。

どんなに激しく踊ってもたおやかさと淑やかさがあるうみちゃんの娘役としてのすばらしさに見惚れました。

このフィナーレ時間を確保するためか2幕冒頭のパリのレビューシーンはなくなっていましたが
レビューを手掛ける酒井先生とよりミュージカル的に仕立てた谷貴矢先生の違いの最たる部分かもしれません。

ミュージカル的になったと感じた理由が2つあります。

1つは全編にわたって水の青年/彩音星凪水の少女/菜々野あり、水の精たちが踊っていることです。

ダル湖の豊かな水、インドの港町、終幕のパリに降る雨――思えば水に満ちたドラマですが
その情感を高めてくれています。

ピンク~水色のグラデーションが美しい衣装で技術のあるお2人が踊るので目も幸せでした。

2つめはセリフの場面でもBGMが流れていることが多かったことです。

セリフをたっぷり聞かせる場面が多いからか録音演奏だからか
個人的には少し音楽が多すぎるようにも感じました。

これだけ芝居巧者な生徒さんが揃っていますから
もう少しセリフだけを聞かせてくれてもよかったような気もします。

映像もダル湖の湖面が揺れ大きな月が昇っている夜景の映像は美しく印象的でしたが、
映像のクオリティと効果を天秤にかけると
映像がなくても充分なのでは?と感じるところもありました(花が映し出されるところなど)。

また細かいセリフなどは変わりテンポがよくブラッシュアップされている箇所もあるかと思いますが
一方で変わらないもの、変えられないものはちゃんとありました。

ラッチマンの名台詞「来るんですか、来ないんですか」もそうですし
ラッチマンとカマラのやりとり(「人を殺したことはありますか」「女の魂を奪ったことはあります」とか)、
クマール一族の当時の社会情勢と身分を際立たせるセリフもそうです。

すべてのセリフを一言一句比べたわけではないですが
変えないでほしいと思っていた美しく、深く考えさせてくれるセリフたちは不変の、静かな輝きを湛えていたと思います。

星組「霧深きエルベのほとり」のときも何度観ても飽きず、観劇の度にさまざまなことを考えさせてくれる余白のあるセリフに感動しましたが
菊田一夫先生の作り出したドラマの、セリフのすばらしさに
「ダル・レークの恋」でも深く心を動かされました。

カマラがラッチマンにぶつけざるを得なかった心無い言葉、
ラッチマンが本当の正体を明かしてから告げた言葉。

一夜の後にラッチマンが「支払いの一部」としてカマラに要求したこと。

(この祝祭の場面の盛り上がりと下がる部分がなんと効果的なことか)

誇り高きインディラおばあさまの厳しい言葉、
身分差を呼吸するように当たり前のものとしてるアルマの言葉。

ああ、好きなセリフや場面を全部書き写したいくらいです。

ル・サンクを出してほしいと心の底から思いました。

じっくり考えたいセリフ、場面が散りばめられていますし
豪奢で美しい衣装、アクセサリーの数々を見たいです。

またセリフだけでなく絶対に変えないでほしい、むしろ変えることはできないと思っていた羽山紀代美先生振付の
フィナーレの真珠の男と女の場面
ラッチマンとカマラの一夜のデュエットダンス
も受け継がれていて、美と官能の極致ともいうべき世界にたっぷり浸らせてくれました。

デュエットダンスでは客席中のオペラグラスがばっと上がっていました。
もちろん自分もです。

このあたりの改変と不変の取捨選択も谷貴矢先生の手腕が光っていたのではないでしょうか。

今回のフィナーレも楽しかったですしときめきましたが
惜しむらくは星組版フィナーレのブロードウェイから招へいしたダレン・リー氏振付の曼陀羅の踊りが見たかった…ということです。

スーツで表情1つ変えずに踊る男役さんたちがシビれるかっこよさで再演に値する名ナンバーだと思います。

権利の関係などあるでしょうけれど映像でももう一度見たくなりました。

谷貴矢先生は「出島小宇宙戦争」のフィナーレもよかったですし
将来ショーを手がけることもあるのでは?と思いました。

宝塚の財産のような名作をよい形の再演で見ることができて幸せです。

キャストごとの感想は次に続きます!

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