観劇の感想

花組「舞姫」と雪組「ライラックの夢路」女性演出家が描く2人のエリーゼ

こんばんは、ヴィスタリアです。

ゴールデンウィークですね。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

ヴィスタリアはムラに行き宝塚大劇場で雪組「ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ!!」SS席からのバウホール花組「舞姫」初日というマチソワをしてきました。

というわけでヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想で、作品の内容に触れています。

女性演出家たちが手がける近代化を描いた作品「ライラックの夢路」「舞姫」

雪組「ライラックの夢路」は謝珠栄先生の作・演出・振付のオリジナル作品、
花組「舞姫」はいわずとれした森鴎外の小説を植田景子先生がミュージカル化した作品。

奇しくも女性演出家が手がけた作品でした。

前者は19世紀初頭のプロイセン、後者は19世紀後半の日本(とドイツ)が舞台と年代としては差がありますが、
近代化という背景は共通していると言えるでしょう。

のっけからごめんなさい……なのですが、謝先生のオリジナル作品を自分は楽しめるのか、不安を感じていました。

というのも月組ELPIDIO」を観劇した際に、
結婚、家族、そして子どもというテーマがかなり前面に出ていることがあまりにも強く印象に残り、それは正直に言えば残りすぎたと、自分は感じたからです。

月組「ELPIDIO」観劇の感想(コメディもメッセージも全部盛り)こんばんは、ヴィスタリアです。 KAATで月組「ELPIDIO」を観劇しました。 ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想...

また細かいことかもしれませんが単語の選び方にひっかかるものがあったこと、
結婚という選択肢からはもっとも遠くに思えたある女性が最後にした選択に、自分は違和感を抱かずにいられなかったのです。

「ライラックの夢路」でも女性の描き方で気になることがありました。

バイオリン弾きとして独立することを目指すヒロインエリーゼをある人物が彼女を「女性としての誇りを持っている」と称賛するのですが、客席で疑問が浮かびました。

このあえて「女性」とされた言葉に、それはいったいどういう誇りなのか?

人間として誇り高く志を持っているのと女性としての誇りは何が違うのか?

何気ないセリフのようですが素通りできなかったのは女性は女性でしかないという、作品の時代背景もあるのかもしれませんが、見方があるのを突然突きつけられたように感じたからです。

というのもエリーゼはオーケストラのバイオリニストを目指しますが、女性が弦楽器の職業演奏家になることをタブー視されているという当時の価値観から、女性であるという理由でオーディションを受けることさえできず門前払いとなります。

悲嘆に暮れた彼女を主役のハインドリヒが「気晴らしに女性用のアクセサリーを作ってみたら?」と提案して励まします。

彼女の作ったアクセサリーは評判を呼んで資産を持つある女性がアクセサリーを買い上げ、それによって得た資金でエリーゼはハインドリヒの窮地を救い彼の夢を実現へと近づけます。

この、エリーゼに提案されたことがあくまでも「女性のため」のアクセサリー作りで、
「女性の間で」評判となり、資産を持つ「女性」が買い上げ、
そして得たお金で男の夢を助ける――どこまでいっても女性は女性、男性は男性と分けられたストーリーに、自分はときめくことができませんでした。

これを女性の謝先生がリアルタイムで今この2023年に脚本から手掛けているんだよな……と幕がおりてから考えずにいられなかったのです。

ハインドリヒとエリーゼのロマンス、恋を描いていながら、新トップコンビのお披露目本公演でありながら、
エリーゼは「誇りがある」と言われながらあくまで「(男性から見た)女性としての誇り」であり、
この変えがたい世界の枠、男性と女性の差が厳然と変わらぬままあることが感じられるストーリーは正直堪えました。

一方で「舞姫」は原作からそうであるようにタイトルロール、ヒロインのエリス(ドイツ語的にはモデルはエリーゼという名であることはなんたる偶然でしょう)は、最初から美しい踊り子でしかありません。

エリスの誇りや将来への活路などは描かれません。

太田豊太郎はエリスとの恋に溺れますがそれが一時のものであることはわかっていたことであり気晴らしを提案したりなどはしませんし、将来の約束もしません。

その上で美しい言葉が書き連ねられていって結末を迎えます。

植田景子先生の舞台を久しぶりに観ましたが、セット・衣装・流れ・音楽とこだわりと耽美な美しさが随所に感じられる舞台でした。

そしていまの感覚で読めば「太田豊太郎はひどい男だしエリスがかわいそう」という一言に留まりかねない作品を
豊太郎がなぜその選択をしたのか、その結果どういうものを彼にもたらしたのか、といったことが丁寧に描き出し胸に迫る宝塚歌劇のミュージカルとして昇華されていました。

原作にはないある人物がこれからベルリン留学するにあたり、帰国した太田豊太郎に餞別の言葉を乞うシーンがあります。

この豊太郎が若き後輩に餞とした言葉に、彼が失ったものがエリスへの愛、二人の恋だけに留まらない、彼にとって二度と手にできないものであることに胸を打たれました。

舞台「舞姫」では大日本帝国憲法の制定がかなりクローズアップされ、別物ではありますが、憲法記念日の今日の日に観劇できたこともうれしかったです。

主演のほのかちゃん(聖乃あすか)がこのことについてお話されていたのも一層うれしさが増しました。

SS席からの初日というどちらも貴重な観劇でしたので感想はまた別記事で書いていけたらいいな…と思っています。

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