観劇の感想

雪組「壬生義士伝」新人公演キャストごとの感想

おはようございます。ヴィスタリアです。

雪組「壬生義士伝」新人公演を観劇しました。
いつものようにヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちた感想です。

※夏休み中につきこの記事は予約投稿です。
いただいたコメント、メッセージはあらためてお返事させていただきます。

雪組の実力を新人公演に見た

「壬生義士伝」は原作がある上に映画やドラマなど多くメディア化され、史実的な資料もたくさんあるでしょうし、本役さんもいて、役づくりの参考とすべきものが多く作品のなかで求められる役づくりはある程度見えやすいのかもしれません。

とはいえ全体的に非常にレベルの高い新人公演で、雪組の舞台技術の実力の一端を見たように思いました。

衣裳に着られている感がなく、芝居もたしかで歌もよく立ち回りもがんばっていましたし、
なによりも役同士の芝居の掛け算(後述しますが、たとえば“この”大野次郎右衛門と”この”ひさ、”この”斎藤一に”この”沖田総司)といったものがどの場面にもきちんとあったのがそのように思った理由です。

特に様々な立場の人物の思惑が交錯する見合いの場面でそれを感じました。

他でもない「この」役の演技を受けて、「これしかない」という演技でこたえ、場面と作品をともに作り上げ成立させているところに、今回の新人公演のすごさを感じました。

生徒さんたちの熱意やこの1回にかける思いははかり知れないほど大きいものだと思いますが、「このくらいは舞台人としてできて当然なのだ」という誇りのようなもの、「このメンバーで一つの公演を作り上げる」というチームワークを感じる新人公演でした。

なのでキャストごとに感想を書きましたが、本当は場面ごとによかったところを挙げるべきなのかもしれないと思いつつ、ヴィスタリアの筆力ではかなわずこのような記事になりました。

吉村貫一郎/彩海せら(本役 望海風斗)

102期生で初めての新人公演主演となったあみちゃん(彩海せら)は芝居に歌に大健闘で、等身大でいまできる吉村貫一郎をしっかりと見せてくれました。

あみちゃん、あらためて新人公演初主演おめでとうございます。

芝居はもちろのこと歌がとても上手で声がたっぷりと劇場に響いていました。
歌唱力がある上に心がこもっていてとてもいい歌でした。

登場のシーンで吉村貫一郎がセリ上がって笑顔がこぼれた瞬間、まぶしいばかりの花ざかりの春の季節まっただ中なのが伝わってくるようでした。

素直で純で、勉学も剣術も自分ができる精いっぱい打ち込んで生きている、そんなまっすぐな芯のある貫一郎でした。

だいもん(望海風斗)の吉村貫一郎はどん底の貧しさ、這いつくばってでも金を稼ぐのだという陰の部分、斎藤一を脅してみせる凄みや不気味さといった複雑な表現があり、だいもんの貫一郎が絶望を背景にしているのだとしたから、
あみちゃんの貫一郎は若さも相まって希望を背にしていると感じました。

斎藤一/星加梨杏の谷殺しを暴くシーンも抜け目のない不気味さではなく、家族と金のために自分のやるべきことをするのなら脅しも悪いことではないのだという芯を感じたのです。

斎藤に「誰かに喋ったのか」と訊かれてもそんなこと思いつきもしなかった、というような明るさで「誰にも」とあみちゃんの貫一郎は答えます。

これはこれであみちゃんの貫一郎としてよかったと思います。
希望が見えるからこそ潰えたときの悲しみが沁み、切腹のシーンは涙が止まりませんでした。

ところで斎藤一/星加梨杏が切りかかってくるシーンで傘を盾にしますが、あれは目にも止まらなぬ早業なのだということが新人公演を見てわかりました。

日本物が多く殺陣のスピード、迫力もずば抜けている雪組ですからこれからたくさん経験をされてこういった技術もより確かなものにされるのでしょう。
そうした舞台を見られるのが楽しみです。

しづ・みよ/彩みちる(本役 真彩希帆)

新人公演で3度目のヒロインをつとめる彩みちるちゃん。

芝居のたしかさは本公演のみつ(少女)を見てもはっきりとわかり、可憐なかわいらしさもあり、何も不安することなく安心して見ることができました。

歌はソロも吉村貫一郎/彩海せらとのユニゾン、デュエットもしっかりと歌っていました。

ヒロイン経験も豊富で、おそらくまあやちゃん(真彩希帆)とは違う役づくりを見せてくれるのではないかと期待していたのですがその通りでした。

みちるちゃんのしづは入水自殺をはかったあとの慟哭が聞いていて苦しくなくほどしづの嘆きが伝わってきました。

京都の大店のお嬢様みつは振袖姿がかわいくて、いじらしくて切なくて、わがまま放題を言っているなかにも品がありました。

まあやちゃんのみよは自信にあふれていてお姫様のようなわがままさが魅力的であり、みちるちゃんのみよは吉村さんへの気持ちでいっぱいで、この大きな失恋からの立ち直り方が違うような役づくりだと思いました。

これからのいっそうの活躍を楽しみにしたい娘役さんです。

大野次郎右衛門/諏訪さき(本役 彩風咲奈)

しゅわっち(諏訪さき)はすっきりとした侍の大野次郎右衛門を作り上げていました。

洗練されており南部のお国言葉も少なめなのですが、お脇腹から大野家の跡取りとなり「剃刀」とあだ名されるほど差配役として敏腕をふるった切れ者ですから、役のイメージに合っているのかもしれません。

この次郎右衛門のいわば表の顔が高潔で自信があり武家としてのプライドがあるから、竹馬の友吉村貫一郎/彩海せらが脱藩する際の「行かないでけろ。お前がいないと心細い」という弱弱しさ、実母ひさ/羽織夕夏に秋田征伐に出征する前に「ここで泣いてからいけ」と言われて声を上げて泣く姿が一層人間味をもって伝わってくると感じましたし、
親友の貫一郎に切腹を申し付ける厳しさにも説得力がありました。

新人公演の長としての歯切れがよくて作品をからめての知的な挨拶も立派でした。

ひさ/羽織夕夏(本役 梨花ますみ)

山奥に幽閉され子と別れてもなお失わぬ矜持、プライドがあり、それが大野次郎右衛門/諏訪さきの「剃刀」というあだ名、武士としての厳しいプライドに通ずるものがあるように感じられれ、
この息子にしてこの母あり、という血縁を感じさせるなーこちゃん(羽織夕夏)のひさでした。

しゅわっちの大野次郎右衛門はさきちゃん(彩風咲奈)より方言が少なめで、それも母子で似ているんです。

なーこちゃんのひさは、身分違いでありながら大野家の先代と子をなすのも納得するような、凛とした美しさを秘めていることが伝わってきました。

土方歳三/縣千(本役 彩凪翔)

とってもかっこよかったです。
ヴィスタリアが今回一番オペラを奪われたのはあがたくん(縣千)でした。

カツラも日本物のお化粧も美しくてかっこよくて、出てくるのが楽しみでした。
日本物のお化粧だとゆりかちゃん(真風涼帆)に雰囲気がなんとなく似ているような気がしました。

お顔の美しさはもちろんのことですが殺陣での迫力、刀の収め方などもかっこよかったです。
また土方歳三のわざと崩している座り方を相当気をつかってかっこよく、美しく見える型を作っているのだと思いました。

事あるごとに「めんどくせえ」と口にしながらもそれはただのポーズ、やっていることは隊士たちへの思いやりにあふれており、組織を副長としてまとめあげる器の大きさも見事に示していました。

斎藤一/星加梨杏(本役 朝美絢)と沖田総司/眞ノ宮るい(本役 永久輝せあ)

斎藤一/星加梨杏は本役のあーさ(朝美絢)に、沖田総司/眞ノ宮るいは本役のひとこちゃん(永久輝せあ)に発声、外見などは寄せた役づくりだと思いましたが、
2人もとても上手だった上にこの斎藤一にはこの沖田総司しかいないという芝居の相乗効果がありました。

特に沖田総司/眞ノ宮るい斎藤一/星加梨杏のことを言葉にはしませんが常に心配し気づかうようにして見ているんです。

というのも斎藤一/星加梨杏があまりにも血気盛んでギラギラと凶暴で危ういのです。
あーさの斎藤一には自暴自棄的な「人のことも自分のことも愛せない」諦観がにじんでいますが、かりあん(星加梨杏)は「人も自分も大嫌いだ」という火傷しような熱量があると感じました。

またあーさもたいへんな美しさですがかりあんも美しく、特に警部補となってからの黒髪のオールバックは冷やかな美しさが際立っていました。

その他の印象的だったキャスト

◆谷三十郎/ゆめ真音(本役 奏乃はると)
この舞台で一番難しいのは谷三十郎のさじ加減ではないのかと思っていたのですが、まおとくん(ゆめ真音)は自分自身の谷三十郎を作り上げていました。

アドリブなのか新人公演演出の町田菜花先生による変更なのか、笑いをとるセリフも変え、体当たりで演じながらも出すぎず、作品のなかで出すべき個性を存分に発揮していました。

◆松本良順/壮海はるま(本役 凪七瑠海)
長い手足に豪華な軍服がよく似合っていて歩き方も美しかったです。

松本の優しさ、穏やかさ、落ち着きをきちんと表現していましたし、歌をもっと聞いていたいと思わせるものがありました。

これでまだ研3とは頼もしく、今後が楽しみな男役さんです。

◆松本登喜/涼花美雨(本役 千風カレン)
貴婦人がいる、と思いました。
落ち着きといい気品といい、醸し出している雰囲気が貴婦人で目を引きました。

◆大野千秋/一禾あお(本役 綾凰華)
父の大野次郎右衛門/諏訪さきが貫一郎に切腹を申しわたす前の表情に、父がなにを言うのかを察している悲しさがみるみる広がっていくのが印象的でした。

新人公演の長の挨拶でしゅわっち「それぞれが石を割って咲く桜のように美しくこの作品に息づくことをに課題にした」お話された通り、「壬生義士伝」新人公演に美しく息づいた雪組生に心からの拍手を贈ります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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POSTED COMMENT

  1. うみひこ より:

    ヴィスタリアさん
    雪組新人公演、観に行けばよかったなーと後悔してるのは彩みちるちゃんがヒロインゆえでした。これまで少年役や無垢な少女役が多かったんですが、こういう多少重い役をどう演じるのか、この目で見ておきたかったです。

    羽織夕夏さん。新人公演では年配の役が多くなりましたけど、それも実力が認められているゆえと思います。ひさの役は難しそうですけど、印象的だったんですね。ファントム新人公演のカルロッタも見たかったです。

    ゆめ真音さん。呼び名の「けんじ」がどうにもハマっていて気になる存在です。ハマり具合は瀬戸かずやさんの「あきら」みたい。本公演のショーでも有栖妃華さんとデュエットしてる場面がありました。歌ウマですしね。
    スカステで最近やってたYoung+という下級生紹介番組でゆめさんが出ていたので、その録画を見直しました。そこで上級生の彩風さんが新人公演での谷三十郎のことを「マネでは無く自分の解釈で役を演じている」と評されていて、ヴィスタリアさんの感想と同じでしたよ。
    彩風さんはけんじを持ち上げることもけなすこともなく、単に思うところを語っているのですが、後輩への慈しみをすごく感じるトークでした。けんじを尊敬するとも言ってました。二人は信頼し合っているんだなーと。

    このYoung+と「うたごころ」という下級生の歌ウマさんが歌う番組が、スカステでの自分のお気に入りです。

    次回の花組公演の新人公演は行く予定です。

    • vistalia より:

      うみひこさん

      夏休み中で返信が遅くなり申し訳ありませんでした。

      雪組新人公演、すばらしい公演で芝居と日本物の基礎を感じました。

      彩みちるちゃんのしづもみよもよかったです。

      真彩さんのしづが母を強く押し出しているとしたら、彩さんは母である前に人間(女性)であるというイメージを抱いたのですが、彩海さんの貫一郎には彩さんのしづが合っていると思いました。
      (本文で書いたこの大野次郎右衛門にこのひさ、というふうに)

      そして羽織さんのひさは強く印象に残りました。
      短い出演シーンで役を生き、作品の中で出すべき存在感をきちんと出し、諏訪さんの大野次郎右衛門と場面を作っていました。
      本公演ではエトワールもされていてこういう娘役さんがいると心強いですね。

      心強いといえばゆめ真音くん。
      悲劇より喜劇の方が難しいと思うのですが、本役さんの真似ではなく劇場中のあたたかい笑いを誘っていました。
      私は書くときに愛称はおとめの先頭にあるものを選ぶことが多いのですが、ケンジ…納得です。

      たしか瀬戸さんの「あきら」は同期のどなたかが「あきらっぽい」と言ってあきらになったとどこかで読んだ気がします。
      愛称は本名から、芸名からなど想像がつくものも多いですが、こういう一体どういう由来なんだろう?と思うものもありますね。

      彩風さんと感想が一緒と聞くとうれしくなっちゃいますし、こうして書いている身としてほっとする思いもあります。
      そして彩風さんの真面目かつ思いやりのある人柄の伝わってくるお話を教えてくださってありがとうございます。

      花組の新人公演、私も観に行きます。楽しみですね♪

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